小さな捕手と小さな強打者 ~最強のスラッガーを目指して! 外伝~ 作:銅英雄
この試合も残すところは7回の攻防のみ……。この時点で私達が梁幽館を相手に1点だけとは言え、リードしている事に観客席からざわめきが収まりません。たかが1点、されど1点ですね。
「あっ、また中田さんと吉川さんが交代してる!」
「この回は瑞希ちゃんから……。どうやら瑞希ちゃんの打席の時は徹底的に中田さんが相手にするみたいだね」
「本当にワンポイント制になってるね……」
だから何故私に対してのワンポイントなのか……という話ですよね。和奈さん、山崎さん、中村さん、主将……他にも私より優れた打者はいるでしょうに……。
(……まぁそんな打者がいる中で、私を指名してくれているみたいですし、私はそれに応えるべきでしょう)
(二宮瑞希……君と梁幽館との縁は一昨年のあの時から始まりそして、あの時からこうして敵対する事は決まっていたのだな。当時の先輩が世話になった礼も込めて、君だけは私が全力で抑える。この打席の半分以上は個人的な想いだが、私の投手としての誇りを賭けて……勝負だ!)
初球から打ちに行く訳にはいきませんね。前の打席と同じように、球数を稼ぎに行きましょう。
ズバンッ!
『ストライク!』
「まさかの中田さん再登板!?」
「……どうやら二宮を相手には徹底して中田さんをぶつけるつもりのようだね」
「最後には三振しちゃったけど、確かに二宮さんは吉川さんの球を完全攻略してるように見えたもんね。それならまだ中田さんの方が抑えられる可能性はあるって事か……」
「だけどここで二宮が中田さんから打つ事が出来れば、新越谷の勝ちは確定したようなものだね」
「そうなの?」
「新越谷が追加点を取れるかはまた別だけど、二宮がここで打つなら、中田さんを完全に折る事が出来るからね。多分二宮はそれを狙ってる」
(まぁ中田さんが二宮との勝負に固執する理由まではわからないけどね。もしかして二宮と何かしらの縁があるって事……?)
カンッ!
『ファール!』
(……ストレートにも、チェンジUPにもタイミングが合ってますね)
(配球が読まれている可能性もある……か)
(それなら球威で押して行きましょう。二宮の打力を見る限りでは前に飛ばすパワーはない筈です)
(一理あるな。前の打席でもカットが精一杯に見えた……。わかった。ストレートを中心に投げていくか)
(はい!)
「…………」
(前の打席と、この打席での私を見て『タイミングは合っているけど、力負けしている』……という先入観を植え付ける事にはひとまず成功でしょうか?)
カンッ!
『ファール!』
私の目的は先入観を植え付けざるを得なくする事……。これにより、私がどの球種に弱いのかを錯覚させるのに成功しました。今回の場合は中田さんのストレートですね。
カンッ!
『ファール!』
(粘るわね……)
(だが確かに力負けしているようにも見える。この攻め方で正しいという……そんな錯覚に陥っているような気もするな)
私自身は確かにパワー不足である事は否定しませんが、それでも狙った場所に打ち分ける事くらいはなんとかなります。
カンッ!
『ファール!』
(……流石にストレートしか投げてない事がバレていますね。ここで落としていきますか?)
(いや、ここはもう1球ストレートだ。彼女はその心理を逆手に取る事が出来る。それを利用していくぞ)
(わかりました)
次で10球目……。ここまで5球連続でストレートを投げて、次もストレートで押していく……と見せ掛けて、チェンジUPでタイミングを外してくる可能性が高いですね。
(しかしその裏を突いて……という可能性は切れませんね。和奈さん程ではありませんが、私もギリギリまで球種を見極める技術がありますからね)
それを駆使して、見極めてみましょうか。
(これで勝負だ……!)
腕の振りからではストレートと、チェンジUPの判断は付きにくいですが、中田さんが投げてくる普通のチェンジUPなら打つ事が出来ます。中田さんが投げたのは……。
(ストレート……でしたか)
チェンジUPを待っていたので、本来のフォームが崩れてしまいましたね。ですが……。
カキーン!!
「「なっ!?」」
読み違いましたが、チェンジUPをカットするつもりのストレート打ちと同様に力を込めて正解でしたね。打球はそのままフェンスに直撃です。
「すみません。まさか二宮が悪球打ちが出来るとは思っていませんでした……」
「気にするな。私だって今のバッティングには驚いた……。どこかで二宮の打力を甘く見ていたのかもな」
(2打席目であれ程の粘りを見せて、今回も10球近くも彼女に投げた……。なのに何故あれだけのバッティングが出来ると気付かなかった!?)
「奈緒先輩……」
「……すまないが、残りの打者も私に投げさせてくれ。私のわがままで、二宮を出塁させてしまった事への償いだ」
「は、はい……」
(……あんなに悔しそうにしてる先輩は初めてだ。次に当たる機会があったら、今度は私が……新越谷の打者を全員捩じ伏せてやる!)
『アウト!チェンジ!!』
「ああっ!?」
「続投した中田さんからは皆打てなかったね……」
「そう考えると瑞希ちゃんがよく打ったなーって思うよ」
「そうね……。前の打席と合わせて、中田さんに20球食らい付く投げさせたんだもの」
「粘り打ちが瑞希ちゃんの得意分野だもんね……」
「私はカットが出来そうだから、続けて打っているだけに過ぎません。それ以上でも、それ以下でもないです」
「いや……簡単に言ってるけど、そんなに簡単な事じゃないぞ?」
私からすれば粘り打ちの技術が身に付いたのは情報収集の延長線上からなんですよね。だから簡単に思えてしまうかも知れません。
(それでも私自身の打撃能力が低めである事は間違いないですね。なるべく早めに克服しておきたいところです)
「と、とにかく!リードは1点だけだ……。この1点をなにがなんでも守り抜くぞ!!」
『おおっ!!』
「まさか新越谷がここまでやるとは思わなかった。或いは嘗めていなくても同じか……。打順は下位に向かっていくが、各々で全力で武田の球に食らい付き、必ず逆転するぞ!」
『おおっ!!』
「瑞希ちゃん」
「なんですか?」
「このまま勝っちゃっても良いのかなぁ……?」
「……武田さんがどう思っているかは知りませんが、片方のチームが勝利するなら、もう片方は敗北します。引き分けになれば再試合ですし、勝利か敗北しかありません。武田さんは敗けても良いのですか?」
「それはやだ!」
「それなら勝って、梁幽館の想いを背負っていきましょう。勝者は敗者の様々な気持ちを背負って次に進みます」
「うん。そうだよね……!」
まぁ今の新越谷には3年生部員がいませんし、負けても悔しい想いが他と比べて半減されそうですが……。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
(それでも、1つでも多く勝ちたいところですね)
『ゲームセット!!』
3対2で私達新越谷高校が、梁幽館高校を打ち破る快挙がこの瞬間、生まれました。
原作よりも数人が大幅パワーアップ!?そのメンバーは……。
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珠姫、息吹、詠深、理沙
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珠姫、息吹、稜、菫
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珠姫、息吹、希、白菊