小さな捕手と小さな強打者 ~最強のスラッガーを目指して! 外伝~   作:銅英雄

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第52球 私なりに精一杯頑張るつもりです

梁幽館との試合が終わり、整列も済ませて、私達は球場前の岩場で腰掛けています。武田さんは川口姉妹によるマッサージ中です。

 

「どこか変なところはない?」

 

「うん……」

 

「滅茶苦茶良い球を投げていたわね。ベンチから見ててもわかったわ」

 

「うん……」

 

「ヨミとはまた真剣勝負したいものだな」

 

「私も!」

 

「うん……」

 

武田さんが先程から生返事ですね。まだピッチングの余韻が残っているのでしょうか?

 

「お疲れ様です」

 

背後から声を掛けてきたのは梁幽館の中田さんでした。高橋さんも一緒にいますね。

 

『お疲れ様です!』

 

「これを……一緒に連れて行ってください」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

中田さんが主将に渡したのは鶴でした。梁幽館の部員全員が願掛けのつもりで折ったのでしょうか?

 

「試合では完敗だったが、武田との勝負では1勝1敗といったところか……。またどこかで勝負したいな」

 

「はい……」

 

「それと……少し二宮を借りても良いだろうか?場所を変えて話がしたくてな」

 

中田さんは私を指名して、話がしたいと言いました。何を話すつもりなんでしょうか……。

 

「み、瑞希ちゃん……」

 

「私は構いませんが……」

 

「なに、そんなに時間は取らせないさ」

 

「……行ってこい瑞希!わざわざ中田さんからのご指名だ」

 

「わかりました」

 

「後で中田さんとどんな話をしたか聞かせてね!?」

 

「それは約束しかねます」

 

「ありがとう」

 

場所を変えるという事は、余り他所には聞かれたくない話でしょうね。私の方は心当たりがないですが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今日の試合は終始君の思い通りに進んだ感じがしたな」

 

「そうですね……。二宮さんのマスク姿を見たのは小学校の時のクラブチーム以来ですが、相変わらず完璧なリードでした」

 

「そこまで褒められる覚えはないのですが……」

 

本当に褒められる事はしていません。私は私の出来る事をしただけに過ぎません。

 

「特に驚いたのは高代の2打席目だ。あそこのウエストコースで武田の決め球を投げさせるリードには皆が意表を突かれた……」

 

「本来ならウエストコースに外して、高代さんのスクイズを空振りさせるか、見送らせるものでしたよね?高代さんが強引に当ててくる事を一点読みしなければ、出来なかった采配の筈……。二宮さんはそれすらも簡単に読んだ……という事ですか?」

 

「あくまでもそれを視野に入れていた……というだけですよ。偶然にも実行する事が出来そうだったから、実行したまでです」

 

「あっけらかんと言ってくれるな……。普通の捕手にはまず出来ない事だぞ?」

 

「経験を積み、あらゆる事を想定に入れ、イメージトレーニングを重ねれば、誰にだって出来る筈ですよ。私にも出来るくらいなのですから、他の人も私と同様にリードする事も出来ます」

 

「いや、そんなリードが誰にでも簡単に出来てしまったら……」

 

「打者の打率が落ちる一方ですよね。その分投手の防御率は上がりそうですが……」

 

何やら中田さんと高橋さんがこそこそと話をしています。別段、変わった事を言ったつもりはありません。

 

「いや、今はその話をするのは止そう。私が君と話したいと思ったのはもう1件ある」

 

「もう1件……ですか」

 

「君は一昨年の春頃にウチの学校を訪れていただろう?」

 

一昨年に梁幽館に……?ああ、私と和奈さんがどこに進学するかを決める際の学校見学も兼ねていたあの時でしたか。

 

「確かにそんな時期もありましたね」

 

「そ、そういえばミーティングの時にも言っていましたね……」

 

「二宮が訪れたのは一昨年の春頃の……たったの1日だけだったからな。私と、秋と、栗田監督しか知らない。当時の3年生の投手が急激に成長した……と監督も、私達も驚いていた。一昨年に県大会を優勝する事が出来たのは、間違いなく当時の3年生だったあの先輩のお陰だ」

 

……そういえば梁幽館へ訪れた時に何やら伸び悩んでいると嘆いていた方がいましたね。成果を出す度逐一に私に耳タコで報告していたのを今でも覚えています。余程嬉しかったのでしょう。

 

「……私が彼女と関わったのはあくまでも偶然です。偶然通り掛かったところに、嘆いている人がいて、その人が偶然投手で、私の出来る事を指摘し、アドバイスをしただけです」

 

「……ちなみにその人は今でもプロで成績を残しているぞ」

 

「みたいですね。私にも時々報告がきます」

 

「な、何やらとんでもない事を聞いたような……。それでは何故二宮さんはウチに進学しなかったのですか?」

 

「理由は色々とありますが……大きい理由を挙げるなら、梁幽館は練習メニューが監督によって管理されたり、寮生活だったりで、私の動きが制限されるから……でしょうか?」

 

「君程の実力なら、監督の想像を越えそうな気もするが……」

 

私が関わった梁幽館OGの人にも同じ事を言われましたね。まぁ同じ返答を返しましたが……。

 

(他にも管理された練習メニューの影響で和奈さんの調子が落ちるから……とかもありますが、これは口にする必要はないでしょう)

 

「当時の私は中学2年生……進学先を確定させるのは早過ぎたんですよ。それに梁幽館は私からしたら賑やか過ぎます」

 

道が違えば、その賑やかな進学先へと足を進めた可能性が高そうですが……いえ、今の私は新越谷高校の一員です。もしもの話は止めておきましょう。

 

「そうか……。聞きたい事、言いたい事を言えて良かったよ。私達はこれで失礼する」

 

「1つでも……多く勝ってくださいね」

 

「……それに対してはなんとも言えませんが、私なりに精一杯頑張るつもりです」

 

それは捕手としても、ベンチからの指示出しだったとしても……。

 

「健闘を祈る」

 

そう言って中田さんと高橋さんは去って行きました。私も次の試合に向けて、情報を整理しておきましょう。

原作よりも数人が大幅パワーアップ!?そのメンバーは……。

  • 珠姫、息吹、詠深、理沙
  • 珠姫、息吹、稜、菫
  • 珠姫、息吹、希、白菊
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