ロン・ポン・チ―! ~クソ顧問に無一文で置き去りにされたけど、麻雀で帰ります~ 作:ビーサイド・D・アンビシャス
麻雀同好会に入ってすぐ、沼田先生は公言した。
『俺が君らに教えるのはイカサマの方法、それだけだ』と。
最初は眉をひそめたわたしだったけど、イカサマを学ぶってことは同じイカサマに引っ掛からないようになることだと、後で知った。
わたし達が誰かにカモにされないように、あの人なりの考えがあって教えてくれたんだろう。
まぁ、でも教えられた技をどう使うかは本人達次第な訳であり。
「あの料理美味しかったねー!」
「うち、そもそもフルコースなんて初めてだったよ!」
「プラさん! あなた露骨に仕込み過ぎよ! 危うくバレるとこだったわ!」
「いーじゃんいーじゃん。その甲斐あって、いっちばん高いフルコース食べれたんだし!」
夏の夜空の下、
思う存分、最上階のレストランの料理に舌鼓を打ったメンちゃんはすっかりご満悦だった。
「ちょっと今日のうちら凄くない⁉ なーんかバイトするの馬鹿らしくなっちゃうわ~」
「でも、それは相手が高レートで、東風戦を受け入れてくれたからよ。平常時はこんなに上手くいきっこないわ」
「あと自動卓じゃなかったのが良かったよね。あたしらの技って手積み限定だしさ~」
「……そうだね」
有頂天だった気分が、プラちゃんの指摘でちょっと冷静になる。
今時はイカサマ防止も兼ねて、どこの雀荘も全自動卓――つまり機械が自動でシャッフルしてくれるものが多い。
こんな高級ホテルなら尚更、自動卓だし……おかしいな、わたし。みんなと美味しいもの食べれて幸せなのに……自動卓だったら良かったって思っちゃう。
そしたら、あのおじいさんとおばあさんと――――――もっと。
わたしは口元まで湯船に浸かって、ポコポコと泡を出す。
するとナルちゃんがわたしの頭を撫でながら、このホテルの雀卓が手積みである訳を話した。
「簡単なことよ。珍しくここの麻雀卓が手積みだったから、沼田和義はこのホテルを気に入ってるのよ」
「そういうことかー」と、プラちゃんが手を叩く。
わたしは伸びをして、湯船に背を預けた。
ジャグジーの湯加減は絶妙で、思わず「ほぅ」と吐息が出る。ドクターフィッシュみたいに、きめ細やかな泡が体の疲労を取ってくれる。
少しくすぐったいけど、そのくすぐりが胸の中のチクチクをちょっとずつ和らげてくれた。
エステとはまた違う気持ち良さに
至福って、こーいうことを言うんだろうなぁ~。
思ってた以上に「非日常」にはしゃいでたみたいで、その反動がやってきた。意識がふにゃふにゃになって、舟を漕いでる自分に気づいていて……。
すると、スマホをいじっていたメンちゃんが唐突に目を輝かせた。
「え、まじ! 行く行く! ねぇ皆、沼先(ぬません)が花火買ってきてくれたって!」
「やるーーーーー‼」
わたしは跳ね起きた。
こうしてわたし達はバスローブ姿で沼田先生のところに行って、ホテルの駐車場で花火を楽しんだ。こんな風に、楽しい合宿旅行はあっという間に過ぎ去っていった。
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