ロン・ポン・チ―! ~クソ顧問に無一文で置き去りにされたけど、麻雀で帰ります~ 作:ビーサイド・D・アンビシャス
わたし達が泊まった部屋も相当だけど、10階以上のフロアは空気から違っていた。
足元に敷かれたカーペットは雲みたいにふわふわで、足音が全くしない。照明は天井を照らすタイプのもので、薄暗さを感じさせない柔らかい光が、等間隔で並んでいる。その廊下を抜けた先に、広がる空間は……漫画でしか見たことない、社交界のダンスホールだった。
「……やっぱりわたし帰っていい?」
さっき後悔しないよう過ごしたいって言ったけど、あれは嘘だ。もう場違い過ぎて、現在進行ですっごく後悔していた。
「ここまで来て何ふざけたこと言ってんの⁉」
「声が大きい」
ナルちゃんが、怖気づくわたしと怒声を上げたメンちゃんをたしなめる。
慌てて口元を押さえるけど……いや、だってシャンデリアあるもん⁉
初めて見るよ、あんなの!
荘厳としか言えない装飾で囲まれた空間に負けず、煌びやかで且つ上品な服装を着こなしている人達しかいない。
「大丈夫、こーいうのは気にしないもん勝ち。堂々としてたら、あたしらも負けてないさ」
「プラっちの言う通りだよ。だから――いい加減、肩隠すのやめたら?」
「むりだよ、 恥ずかしいもん!」
腕を交差させて、露出した肩を隠す。
まるで自分自身を抱きしめているみたいだった。
メンちゃんが選んでくれたのは、空色のワンピースドレス。
全体的にそよ風を纏ってるみたいな
首から胸元にかけて薄い青色のベールが掛かっていて、ウエストにあしらわれた花柄のレースが可愛い。
でも……
「そりゃ、メンちゃんやナルちゃんみたいに綺麗だったら良いけどさ」
俯いたわたしは、ちらりと2人を見上げる。
ナルちゃんは青みがかかった黒のドレス。
スリットの入ったロングドレスから、細く長い脚が覗く。右肩は、背中の肩甲骨まで露出してるけど、ナルちゃん自身の堂々とした態度と相まって、クールな美しさを醸し出していた。
メンちゃんは一番露出度が高い、真っ赤なドレス。
自分の女としての長所――谷間を惜しげもなく露わにして、ロングスカートに入っているスリットから太腿が見えていた。赤のインナーヘアーの下で、ピアスがワイルドに輝いていた。
要は――――2人ともすごい
大人顔負けの色香から、わたしは逃げるようにして離れて、プラちゃんにひしと抱き着く。
「はぁ……プラちゃんの傍って落ち着く」
「それどういう意味だぁ~? ぶつぞコラァ~」
同じオフショルダーだけど、わたしより露出が少ない紫色のドレス。年相応な
「なにをグズグズしてるの、さっさと行くわよ」
「え、いやちょっと⁉」
落ち着けていた心が再び乱される。
ナルちゃんはわたしの手を取るなり、問答無用でダンスホールを縦断した。そして奥にあった『麻雀ルーム』の扉を開け放つ。
――――牌と牌が混ぜ合わさる音が、鼓膜を支配した。
何十台も並んだ、それぞれの麻雀卓の上で、136枚の牌が人の手によってかき混ぜられている。綺麗な衣装に身を包んだ老若男女が、同じ熱を秘めた眼で、自らの手牌を見つめている。
「私、楽しみにしてるんですよ。ラブさんが今、どのくらいの実力なのか」
目の前の光景に呑み込まれていた意識が、ナルちゃんの言葉で引き戻される。
横に立つナルちゃんの藍色の瞳が、期待に輝いている。
でも、その期待は壮大な麻雀ルームではなく……わたしに向かって注がれていた。
そっか。
わたしこの3か月ずっと麻雀を打って来たけど、他の人と打ったこと無かった。
意図せず、肩が震える。
ナルちゃんから注がれた期待が、胸を膨らませ、わたしの目に熱をともす。
こういうのを武者震い、って云うのかな。
もう、物怖じなんてしてられなかった。
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