ロン・ポン・チ―! ~クソ顧問に無一文で置き去りにされたけど、麻雀で帰ります~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第8局 豪遊! きらきらドレスでいざ開局!

 わたし達が泊まった部屋も相当だけど、10階以上のフロアは空気から違っていた。

 

 足元に敷かれたカーペットは雲みたいにふわふわで、足音が全くしない。照明は天井を照らすタイプのもので、薄暗さを感じさせない柔らかい光が、等間隔で並んでいる。その廊下を抜けた先に、広がる空間は……漫画でしか見たことない、社交界のダンスホールだった。

 

「……やっぱりわたし帰っていい?」

 

 さっき後悔しないよう過ごしたいって言ったけど、あれは嘘だ。もう場違い過ぎて、現在進行ですっごく後悔していた。

 

「ここまで来て何ふざけたこと言ってんの⁉」

「声が大きい」

 

 ナルちゃんが、怖気づくわたしと怒声を上げたメンちゃんをたしなめる。

 慌てて口元を押さえるけど……いや、だってシャンデリアあるもん⁉ 

 初めて見るよ、あんなの!

 荘厳としか言えない装飾で囲まれた空間に負けず、煌びやかで且つ上品な服装を着こなしている人達しかいない。

 

「大丈夫、こーいうのは気にしないもん勝ち。堂々としてたら、あたしらも負けてないさ」

「プラっちの言う通りだよ。だから――いい加減、肩隠すのやめたら?」

「むりだよ、 恥ずかしいもん!」

 

 腕を交差させて、露出した肩を隠す。

 まるで自分自身を抱きしめているみたいだった。

 メンちゃんが選んでくれたのは、空色のワンピースドレス。

 

 全体的にそよ風を纏ってるみたいな軽やか(エアリー)なドレスだ。

 首から胸元にかけて薄い青色のベールが掛かっていて、ウエストにあしらわれた花柄のレースが可愛い。

 でも……肩の露出(オフショルダー)はわたしにはハードル高すぎる!

 

「そりゃ、メンちゃんやナルちゃんみたいに綺麗だったら良いけどさ」

 

 俯いたわたしは、ちらりと2人を見上げる。

 ナルちゃんは青みがかかった黒のドレス。

 スリットの入ったロングドレスから、細く長い脚が覗く。右肩は、背中の肩甲骨まで露出してるけど、ナルちゃん自身の堂々とした態度と相まって、クールな美しさを醸し出していた。

 

 メンちゃんは一番露出度が高い、真っ赤なドレス。

 自分の女としての長所――谷間を惜しげもなく露わにして、ロングスカートに入っているスリットから太腿が見えていた。赤のインナーヘアーの下で、ピアスがワイルドに輝いていた。

 

 

 要は――――2人ともすごい大人っぽかった(エロキレイ)

 

 大人顔負けの色香から、わたしは逃げるようにして離れて、プラちゃんにひしと抱き着く。

 

「はぁ……プラちゃんの傍って落ち着く」

「それどういう意味だぁ~? ぶつぞコラァ~」

 

 同じオフショルダーだけど、わたしより露出が少ない紫色のドレス。年相応な少女的(ガーリィ)なドレスがわたしの味方だった。

 

「なにをグズグズしてるの、さっさと行くわよ」

「え、いやちょっと⁉」

 

 落ち着けていた心が再び乱される。

 ナルちゃんはわたしの手を取るなり、問答無用でダンスホールを縦断した。そして奥にあった『麻雀ルーム』の扉を開け放つ。

 

 ――――牌と牌が混ぜ合わさる音が、鼓膜を支配した。

 

 何十台も並んだ、それぞれの麻雀卓の上で、136枚の牌が人の手によってかき混ぜられている。綺麗な衣装に身を包んだ老若男女が、同じ熱を秘めた眼で、自らの手牌を見つめている。

 

「私、楽しみにしてるんですよ。ラブさんが今、どのくらいの実力なのか」

 

 目の前の光景に呑み込まれていた意識が、ナルちゃんの言葉で引き戻される。

 横に立つナルちゃんの藍色の瞳が、期待に輝いている。

 でも、その期待は壮大な麻雀ルームではなく……わたしに向かって注がれていた。

 

 そっか。

 わたしこの3か月ずっと麻雀を打って来たけど、他の人と打ったこと無かった。

 

 意図せず、肩が震える。

 ナルちゃんから注がれた期待が、胸を膨らませ、わたしの目に熱をともす。

 こういうのを武者震い、って云うのかな。

 

 もう、物怖じなんてしてられなかった。

 




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