最強パーティーを作りたい 作:きーた
「アクセススタート」
『ようこそ、アンリミテッドワールドへ』
ベッドに寝転んでそう呟くと、俺はシステム案内音声を聞きつつ意識を失う。
「……ん。ここがイチバンムラ、か」
数秒の無意識の後、目の前にのどかな村の風景が現れる。
視界の隅っこにあるのはハヤトという名前。俺自身が戦うことはないから、よくあるステータスなんかはない。
今やり始めたのは、二千二十五年の現在ではどこにでもある、フルダイブ型のRPGをベースにしたゲーム。特徴は、色々なアニメや漫画のキャラが、垣根を越えて登場するくらいだ。それなりに奥深くはあるらしくそこそこの人気は保っているらしい。
サービス自体は半年と少し。高校受験を終えてようやく参加できるようになったということで、俺もこうしてやって来たわけだ。
「最初は……ポケモンか」
システムメッセージに従って超田舎特有の、整備されていない道を歩いていくと、あんまり大きくはない研究所へと辿り着く。ポケモンの研究所って最初の町にあるやつは小さいからなぁ。
そこをリスペクトしてということだろう。
ちなみに中には誰もおらず、勝手に選んでもいい。まるで盗んでいるみたいだが、まぁそんなに気にしなくていいだろう。
というか金、銀だとライバルが思いっきり盗んでるしな。
「御三家……どうするか」
埃っぽい机に無造作に放置してあるボールの山を見下ろし、呟く。
ポケモンといえばやはり御三家や伝説のポケモン……ではあるが、最初から後者が出ていては面白いわけがない。ポケモンたちと旅をして、終盤に捕まえるのが基本だし。
ともかく最初にもらえるのは火と水と草タイプのポケモン。
知名度からしても納得だ。
指示をきちんと聞いてくれるし。
進化して強くなるし、意志疎通がしにくいのを除けば完璧だ。
逃がすことだってできる。手持ちにできるキャラクターに制限はないから使う必要はほとんどないだろうけど。今更だがこのゲーム、基礎部分はポケモンを踏襲しているような感じだ。
様々なキャラクターを使役し、戦う。活かすも殺すもプレイヤー次第。
他のプレイヤーと戦い順位を競うのが基本の遊び方。もちろん緩やかに広い世界を旅する遊び方もあるが、メインコンテンツはあくまでも対人。
三ヶ月のシーズン制が採用されているのは、スポーツなんかに倣ってだろうか。大体のスポーツは一年周期だけどそれだと長いし、これくらいがいいんだろう。
話がそれたけどお陰で決まった。俺はヒノアラシを選ぶ。
「うおっ、眩しいな……」
ボールを持ちながら研究所の外に出ると、太陽が眩しいくらい輝いている。現在のゲーム内の天候設定は晴天だ。
快晴じゃないのでぽつりぽつりと雲があるが、概ね冒険日和。
「こっちか……」
現実味のある景色を横目に、村の外に出て道なりに進む。
安全地帯は基本的に村や町や特定のスポットのみらしい。
それと、明らかにレベル差がある場合はそもそも他のプレイヤーと戦闘ができない……これはまぁ普通か。
ユーザーが減ったならともかくとして、勝率三割以下の対戦とか避けたいもんな。
「出てこいヒノアラシ」
ヘルプメニューを閉じ、トレーナーになりきったつもりでモンスターボールを投げる。もちろん出てきたのはヒノアラシ。
ひねずみポケモン。首の回りを覆う炎がカッコいいポケモンだ。
「ヒノー!」
「可愛いなぁやっぱり……おーよしよし……食べちゃいたいぜ」
食べないけど。
頭を撫でつつヒノアラシを抱っこすると、愛くるしい声で鳴いてくれる。もちろんプレイヤー以外はAI技術の塊、結晶だ。
現実にいてくれたらいいのに。これは誰もが思うことだろう。
初期は可愛いけど最終的にバチクソイケメンになるのはあまりにも有名なのがヒノアラシだ。
「ん……エネミーエンカウントか……」
腕の中から飛び出したヒノアラシが炎をゆらゆら揺らめかせているので、俺も身構える。
ガサガサ揺れる草むら。
俺の腰ほどの高さもあるそこから飛び出してきた敵は……。
「ピキー」
ぷるるん青色ボディが魅惑的な、ドラクエシリーズのスライムだ。もちろん彼らにも様々な強さがあるが、初期の村で出てくるスライムなんてたかがしれてるだろう。
強いスライムが出てきたらそれこそ次の場所へ迎えないし。
「ヒノアラシ、たいあたり」
「ヒノー!」
簡単な指示を出して二回ぶっとばしてやると、煙を出して消失した。
落とすのは確率のアイテムと金。金は確実で金額がランダムらしい。
八ゴールド落ちたので回収すると、手持ちにあった五百にプラスされる。
「ステータスはないけどポケモンは経験値で上がるから分かりやすいよな……早くマグマラシにしてあげたいぞ」
「ヒノー」
草むらを歩いて次の町へ……行きたいが、どんなモンスターがいるかチェックしたいので戦闘続行だ。
何度か右往左往して、開けた場所でエネミーエンカウントが発生した。
「なんじゃ人間よ、儂の顔に何か付いとるか?」
「えー……」
現れたのは富士山のような頭の形をした特級呪霊、漏湖だ。
もちろんあんな化け物が最初の村に出てくるわけがない。
そんなわけで、出てきたのは頭だけだ。
五条先生に身体を消し飛ばされた状態だからまぁ何もできないのか……コイキング状態。一部の敵はこうして弱体化して出てくることがあるのはバトルを楽しまないライト層向けのためだ。
決してネタ枠ではなく、救済措置扱い。もちろんこの状態から成長……というか回復? させることもできるのは言うまでもないだろう。
力を取り戻すと言った方がいいかな。
「ヒノアラシ、たいあたり」
「ヒノー!」
「ぐぉっ!? やめんか!」
「ヒノアラシ、たいあたり」
「ヒノー!」
「ぶべらっ!? ま、待……」
「ヒノアラシ、たいあたり」
「ヒノー!」
「ごぉへっ! わ、分かったから待て! 言うことを聞くから落ち着け!」
三回繰り返したら従順になったので距離を置く俺たち。
漏湖は仲間になりたそうな目でこちらを見たりしないが……従えることはできるようだ。
ウィンドウに出ているからな。
ある程度戦闘経験値を済ませないといけないから仲間にするか迷うけど……。
炎って被ってるしなぁ……。
まぁいいか。とりあえず仲間にしておこう。要らなくなったら捨てればいいんだし。
「じゃあ、俺のパーティーに加わるということで」
「くっ……まぁよかろう……」
漏湖さんはこんなこと言わなさそうだけど無力になったらまぁこんなもんかな……さて、今度こそ次の村に向かうとするかぁ。
漏湖さんって頭部のまま戦えるんですかね。