「……僕は人間なの?」   作:サブサブ221

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『第十二話』 決意

「……ふん、足手まといがいなくなってせいせいするわい」

 「……先生そんな言い方はないじゃないですか……」

 

 眼鏡を上げて、頬を膨らましてシラスに文句があるようだった。

 

 「……まあええ、またいつでも来るといい、少しは歓迎してやろう」

 

 ミキに言われたのか、シラスは絶対に言わないような台詞を言った。

 

 「……えーと、この先生は偽物ですかね?」

 

 ミコトは猜疑心を持ってシラスを見る。

 

 「……全くだから、儂は嫌だったんじゃ、こやつは褒めると直ぐに調子に乗るタイプの人間じゃ」

 

 シラスはため息を吐くと、ミキに同意を求める。

 

 「そんなことないですよ。ミコト君は勉強熱心ですし、努力を怠らないタイプですよ」

 

 ミキはミコトを褒めて、ウインクするとミコトは顔を赤らめて喜んだ。

 

 「ありがとうございます。ミキさんがいなかったら僕は来るのを辞めていたかもしれません」

 「それは、ありがとうミコト君もお仕事頑張ってね」

 「はい、先生もミキさんも体に気を付けて」

 「お世話になりました」

 

 ミコトはシラスとミキに頭を下げて、少し暗くなった夜道を歩いていく、仕事が終わった後は気分がすがすがしいと思うが、ここまでの晴れ晴れとした気分はなかった。

 歌でも歌って、この素晴らしく晴れやかな気持ちを誰かに伝えたかった。

 夜空を見上げて,帰りを待っている人を想像して、車に乗り込みマニュアルで動かし夜の道を走る。

 

 「夜も遅いし……みんな寝ているだろうな」

 

 ミコトは車を運転しながら、別れの挨拶もあり、少し遅くなりすぎたかと思い車を急がせる。

 それは少し急いでたかもしれないが、それが良かったとミコトは後に思う。

 焦燥とでもいうのだろうか、急がなければいけない感情に支配されて階段を駆け上がり、自宅の鍵を開ける。

 

 「お帰りなさい」

 

 ドアを開けると、満面の笑みでエマが迎えてくれた。

 

 「ただいま」

 

 まさか、起きているとは思わずにエマに先手を取られて反射的に帰ってきたことを告げるのがミコトは精一杯だった。

 

 「……やけに遅かったけど、何かあったの?」

 

 エマは自分の祖父の元から戻ってきた、ミコトに何かあったのかと尋ねた。

 

 「……それが、もう来なくていいって言われて、別れの挨拶とかしてた」

 

 エマは驚いたようにミコトの方を振り向く。

 

 「え、それ本当‼ おじいちゃんに何言われたの? ミコト君休みの日も頑張ってるのに‼ 私から色々言っといてあげる」

 

 ミコトのもう来なくていいという言葉にエマは憤慨して、祖父に文句の一つや二つでも言わなくてはすまないという勢いだった。

 

 「そうじゃなくてですね。褒められてですね。エマさんの病気の情報とか教えてもらいました」

 

 ミコトは誤解がないようにエマにシラスに褒められたことを伝える。

 

 「ええ!! あのお爺ちゃんが人を褒めたの‼ 信じられない‼」

 

 エマは心底信じられないのか、疑心暗鬼の表情でミコトの方を見ると頷いてるという事はそういうことなのだろう。

 

 「……後は任せるって言ってました」

 

 そこまでは言ってないとシラスは言いそうだが、要はそういうことだろう。

 

 「……ふーんあのお爺ちゃんがね……頑固で偏屈で自分より頭がいい奴はいないとか言いそうな人がね」

 

 エマも思うところがあるのか、少し物思いに更けながら呟いた。

 ミコトはエマの家族にしか分からない褒めているのか貶しているのか分からない言葉に苦笑した。

 そんなミコトの姿が可笑しかったのかエマとミコトは互いに見つめ合って苦笑した。

 

 

 

 和やかな雰囲気の中で、家の呼び鈴を鳴らす音が響く。

 エマとミコトはこんな時間に誰だろうと、警戒を高めてお互いを見る。

 

 「愚息よ今すぐにエマとヒカルを連れさせて、避難させろ。何人もの人の気配がする」

 

 ヒロキはいきなり起きて、エマとヒカルに避難するように促す、獣特有の危機感だろうか、猫科特有の耳を立てて、音を聞き取り鼻で匂いを嗅いでいた。

 「火薬の匂いもするな、恐らくエマの事がばれたんだろう……」

 

 エマの事が露見したのなら、一刻の猶予もないヒロキとミコトは示し合わせたように動いた。

 

 「はい。どなたでしょうか?」

 「私だ。テスラ少佐だが、藪遅くにすまないね。少し聞きたい事があるのだがいいかね?」

 「はい構いませんよ。僕も少佐に聞きたい事がありますし……ただ少し待ってもらっていいですか?」

 「構わないよ。令状はあるのだが、私としても無理やり開けるのは不本意でね。少しだけ時間をあげよう」

 

 機械音と共にモニターが切られた。

 ミコトとテスラ少佐が会話をしている間にエマとヒカルとヒロキは脱出している、このような事が起こるかもしれないためにエマとヒロキとミコトで避難経路は用意してあるのだった。

 最も使いたくはなかったが、このような事態になってはしょうがなかった。

 ミコトは装備を整えてノックをする力が段々と強くなっていくドアを開ける。

 

 「お疲れさまです。少佐。こんな遅くにどうしましたか?」

 「やあミコト少尉。こんな遅くにすまないね」

 「いえいえ構いませんよ。それで何の用ですか?」

 「特に用と言うわけではないんだが、君と一緒に住んでいるエマという女性はいるかね?」

 

 テスラ少佐はミコトとの化かし合いに応じるわけでもなく、単刀直入に本題に入った。

 

 「今はいないですよ……実は喧嘩して出て行ってしまって、恥ずかしい限りです」

 

 ミコトはエマとシラスがいたら、信じらないような感じでサラリと嘘を付く。

 

 「…そうか。一足遅かったか……まあいい時間の問題だしな」

 

 テスラ少佐はエマがいないことに落胆もせず、ミコトが付いた嘘を、全くといっていいほど怪しまずに信じた。

 どのみち脱出しようがしまいが、ミスラに捕捉された時点で終わりなのだという事を少佐は知っていた。

 例え自分で合っても世界そのものから逃げるということはできないだろうという結論だからだ。

 

 「ミコト少尉、重ね重ねすまないが、時間はあるかね? 少し散歩をしないか?」

 

  ミコトはテスラ少佐の事を警戒していたが、出された質問の意図が分からずに言葉の意味を理解するのに数巡かかった。

 

 「……ええ別にいいですよ」

 

 そもそもミコトの役割は陽動と時間稼ぎだった―――それが指揮官のテスラ少佐となら願ったり叶ったりだった。

 

(……だが、どういうつもりなんだろ?)

 

 テスラ少佐の意図が分からずにミコトは夜の道を人がいない方に、向かっていることを理解する。

 

(……誰も付いてくる気配がないな……)

 

 ミコトは人数に物を言わせて、自分を葬る気なのかと思ったがそれも違う。

 テスラ少佐は言葉通りに、夜の散歩をミコトと二人でしているだけだった。

 

「ここらへんでいいだろう」

 

 テスラ少佐は辺りを見回すと、周囲には遮蔽物などが殆どないと広場に着いた。

 

「……どういうつもりですか少佐?」

 

 ミコトはテスラ少佐の意図が分からずに、敵に問いかけるなど愚かな行為だと思ったが聞かずにはいられなかった。

 

「なにどうもこうもないよ。少尉と散歩したかったそれだけではダメかね?」

「……いえ、ダメというわけではありませんが、何が狙いですか?」

 

 ミコトはやはり年の功やこういう化かし合いは苦手なのだと考えた。

 相手の意図が分からずに尋ねてしまい結論を急ぐ所が、甘いというか若さなのだろう。

 

 「……簡潔に言おうミコト少尉。私と共に来る気はないかね?」

 

 ミコトは成程と得心がいった。確かにテスラ少佐は自分の事を評価していた口があった。

 だからこその誘いなのだろう。

 

 「お断りします」

 「予想できた答えだが……では私からも聞かせてもらおう、私を倒して、その後はどうするつもりかね?」

 「……それは勿論あなたを倒して…」

 

 ミコトはエマの事が露見したときの事を―――そこまで考えていなかったのである。

 テスラ少佐はミコトを見下ろし。

 

 「……やはり考えていなかったか、大方、いつまでも見つからずに墓の中まで持っていけるとでも思ったのだろう」

 

 20歳にもならない少年に世界そのものと戦う決意など出来るはずがないというのがテスラ少佐の見解だった―――そしてミコトは公共権力に所属しているために社会の大きさと逆らった時にどうなるかを理解していると考えていた。

 

 「下を俯いているところを見ると、考えていたのは追ってを倒せばどうなるかと考えていただけだろう」

 

 「……そんなことない僕は、エマと一緒に……」

 

 (……僕はどうしたいんだろう……?)

 

 ミコトはテスラ少佐に言い返そうとする言葉を探し、記憶を回想する。

 エマとヒカルと猫のヒロキ、数日前に笑い合い一緒に食事を取っていた人の顔を浮かべる。

 そして一人の女性の顔が浮かぶ、頭の記録に残る金色の髪の女―――その女が何処かで悲しんで泣いてる。

 

『……私、明日死ぬかもしれないの……』

 

 そうだ、ミコトは思い出した自分への誓いを。

 

 「思い出しました」

 「何をだね? 少尉?」

 

 テスラ少佐は、ミコトの迷いを振り切った目を見てなれ合いもここまでかと察する。

 

 「……俺にも守りたいものがあったことです」

 

 旧世紀の哲学者に書かれた本には、人は二度生まれるといったそうだ。

 一度目は、ただ生きるために生まれ、もう一度は誰かの為に生まれるというそうだ。

 ミコトは目を開き、口調を変えて、大太刀の草薙を握りしめる。

 ならば彼女を守るために生まれたのが、自分の生きる意味なのだろう。

 

 「俺は俺の力で願いを叶えてみます。例え、この体が機械で作れていようとも……俺には関係ない、エマをミスラだけでなく全てから守って見せる!!」

 

 ミコトは思いを口に吠える。

 そんな様子をテスラ少佐は冷めた目で見つめる。

 

 「……やれやれ、理解しかねるな」

 

 テスラ少佐がクレイモアを構えると同時に周囲から、ライトが照らされミコトを殺すためにサイボーグ型の武装された兵隊がミコトを囲む。

 

 ここからは平和な暮らしは望めない、全てを薙ぎ払うだけだ。

 

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