ウマ娘怪文書   作:ダン・モロ

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いつも未実装ウマ娘ばかり書いている気がします。
さくっと読める量です。
もしかしたら別の話としてもっと深掘りするかもしれません。


第4話

ネズミと呼ばれたシンデレラ。

 

中々、悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はトウメイ、何の変哲もないウマ娘。

いや、他のウマ娘に比べ、私は小さかった。バランスの取れた体つきで昔は期待されたモノだが、私の成長はあっさりと止まった。

 

体の大きさが全てを決めるわけではないが、矢張り大きい方が有利なのは常識だ、歩幅から違うのだ。

 

まだ全速力で走った事はないが、並みのウマ娘達よりかは速いとなんとなく自分でも分かっていた。

一緒にかけっこをしても、鬼ごっこをしても、加減せねば誰もついてこれなかった。

 

全くしかし、私を産んだ両親は非常に残念な事に私に対する期待は体格だけで捨てるに十分だったらしい。

 

トレセンに行く前に私専属のトレーナーを雇う話にもなったが、小さく見栄えのしない私のトレーナーになりたがる人間は居なかった。

他のウマ娘とセットで、と余りにお粗末な扱いですら、私の専属になりたがる人間は居なかった。

 

だが同情と、“価格“の下がり具合から、面倒を見てくれる人間が出て来た。

そいつらに連れられて、私は家を後にした。

 

 

トレセン学園への見送りは、使用人だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そこまで行ったにも関わらず、私の世話を見る人間が膵臓を患って急死。

暫くはトレセン預かりだったが、矢張りここでも私を預かろうとする人間は居なかった。

 

ダラダラとつまらないトレーニングを続ける日々、辟易としていた。

 

そんな私の面倒を、責任を取る形で受ける人間がまた一人。

 

結局、本気にもなれない私の姿を見て、地方への移籍の話も出て来たが、これまた預かり手が出ずに頓挫。

結局その人間の弟とやらが私の面倒を見る事になった、哀れな話である。

 

 

だがこの頃になると私は私を見出さない人間に何の期待もしなくなっていた。

 

そんな私に近づきたがる人間もウマ娘も居るはずが無かった。

 

 

そんな鈍った生活の中で、取り敢えずと放り込まれたデビュー戦。

 

ウマ娘8人中6番人気、まあそんなモノだろう。

 

これで引退、というのも癪なので少し馴らし気味に走ろう。

 

 

 

 

 

 

 

本当に、馴らしのつもりだったのだ。

 

 

結果は二着。

 

 

はて、とゴールした後、汗だらけで息を切らす一着のウマ娘を見て、必死にゴールする他のウマ娘を見て、不思議に思った。

 

どうしてこんな程度で彼女達は苦しそうにしているんだろう?

 

どうして、走る事がそんなに辛そうなのだろう。

 

 

翌月、なんとなく雰囲気を掴んだ私は確認の意味も込めてギリギリ息が上がらない程度のスピードで走った。

 

 

一着。

 

 

はて?

 

 

 

そこから、私の評価は一変し、臨時だった弟の奴の代わりに担当になりたいと言う奴も出て来た。

 

適当に、一番最初に来た奴に決めた。

 

 

 

私はそこからペースを探り、探り、気が付けば関西でも屈指とまで呼ばれるようになった。

 

 

 

そこからさくっと取れてしまった重賞に呆気なさを感じたが、まあ私は私の走りをするだけだ。

 

 

 

そこからなんとなく勝って負けてを繰り返して、私の脚に故障が見付かった、ついでにトレーナーがまた急死した。

 

復帰までは少しばかり時間がかかるそうだが、まあ休養と思えば苦痛では無かった。

 

 

しかし何よりもレース中、走れと言われるあのストレスから逃げられるのが何より気楽だった。

 

私はお前に走らされているわけじゃ無い、私の意思で、私が走りたいように走っているだけだ。

 

有象無象が私に指図するな。

 

そのせいで集中力が切れて何度抜かれたと思っている、勝って欲しければ黙って口を噤んで、私の勝利を信じていれば良いのだ。

 

そういえば復帰には反対の声もあったらしい、まだ走らせるのか、だとか、こんなに走ったのにだとか。

 

 

 

嘗めているのか。

 

 

莫迦か、こいつらは。

 

 

目玉を取り替えてやろうか。

 

 

 

私は私だ、私は私だ、私は私だ!

 

 

誰の指図も受けない。

 

 

私は私の意思で走る。

 

 

私が走りたいからだ。

 

 

騒ぎ立てるな。

 

 

私の走る道を邪魔するのか。

 

 

そうか、ならば宜しい。

 

 

必要なのは証明か。

 

 

見せれば良いか。

 

 

その曇った眼にも見えるように。

 

 

宜しい。

 

 

私を見ろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

復帰四戦目、ここから始める。

 

 

私を見ろ。

 

そうだ、お前達がネズミと呼んだ私だ。

 

 

私を見ろ。

 

そうだ、お前達がたらい回しにしてきた私だ。

 

 

私を見ろ、今、菊花賞とやらの勝者を下したこの私を見ろ。

 

 

ハンデ?ああいいさ、いくらでもつけろ、58キロ?その程度か。

こんなもの、ハンデの内に入らない。

 

そら見ろ。

また一着だ、だから言った。

 

 

またハンデ、59キロ。

正気か?あと20キロは増やさないと勝負にならない。

 

そう訴えたのに、そうら、快勝。

 

 

 

気が付けば、私は天皇賞秋に出走していた。

三番人気、悪くない。

そうもなる、菊花賞にダービーウマ娘まで出ている。

むしろよくこんな私を応援しようと思うものだ、物好きが多い。

マイルの女王だのなんだのと言われて3200mをどう乗り切るかなんて聞かれたが……

 

 

 

そんなもの、1600mを二回走るだけだろう。

 

 

 

一着。

 

 

 

勿論、当然。

 

 

私にインタビューをしに、人間が近づいてきた。

面倒な仕事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私には声援も、人気も、ましてや他のウマ娘すら私には関係が無い、入賞も一着も、オマケに過ぎない。」

 

 

会場が戸惑っていた。

インタビューマイクを向けた本人ですら。

 

 

「私は、私の心にだけ従う。

 私の心が走るという内は脚が折れても走る、ただそれだけだ。

 ……だが、私は未だ、一着にはなっても、一番先にゴールしたことは無い。

 壁は余りにも高く、いつもその背には手が届かないんだ。

 ……漸く今日、手がかかった。

 次だ。次は勝つ。」

 

 

そう締め括られたトウメイの、初めてのまともなコメントには賛否や謎が錯綜した。

 

だが皆最後は口を揃えて言った。

 

 

『彼女らしい。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

有マ記念前の事だった。

インフルエンザの流行、多くのウマ娘が苦しまされた。

実際それで有マの有力候補が二人も辞退して、私が一番人気に繰り上がった。

 

私は……あまり同室の奴を怖がらせるのも可哀想なので寝泊まりは休憩室でしていた。

だから、感染を免れた。

運が良い、他の奴はどうでも良いが私にまでうつされては洒落にならない、良かった良かったとこの時は心底ホットした。

 

 

 

 

 

有マは6人で行われた。

寂しく感じてしまう程の人数だが仕方ない。

 

まあそれに、私にはそんなモノ関係は無いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆、必死に走るものだ。

 

適当な位置につけ、第四コーナー前。

 

頭の中で何かがカチリとハマり、目の前には私が走っている。

 

ウマ娘の幻影。

 

 

私の競う相手はいつもこいつだった。

 

私の前を常に行く私。

 

なんて屈辱だろうか。

 

だが、今日は違う。

 

今日は逃がさない。

 

私はこの有マで、私を越える。

 

今日の私は、強いぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、トウメイの目の色……」

 

「……真っ黒だ、白目と黒目が逆転したみたいに……」

 

「それにあの表情……まるで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『外を回ってトウメイ、外を回ってトウメイです!』

 

 

 

クソッ!速い……!やっと並んだ、なのに先に行けないッ!

 

 

 

『トウメイ先頭』

 

 

 

それでこそだ、なあ、お前も苦しいだろう、だからこれで終わらせよう。

 

 

 

『トウメイが先頭です。』

 

 

 

 

お前は生涯を通して、私にかかった魔法だ、お前が居たから走り続けられた。

 

 

 

 

『トウメイ先頭』

 

 

 

 

 

だから感謝してる。

 

 

 

 

 

『トウメイ先頭』

 

 

 

 

 

だから、これが私に出来る!

最大の感謝とッ!

最高の賞賛とッ!!!

 

私に出来る、唯一の恩返しだ!!

 

 

 

 

 

『トウメイ一着でゴールイン!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一着。

 

初めて抜き去って、倒れ込みながら息を整えていると、幻影の私は何も言わず、ただ顔を背けて消えていった。

 

きっともう二度と会うことは無いだろうと奇妙な確信があった。

だからきっと、ここが潮時なんだろう。

 

ありがとう。

 

さようなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「辞めることにした。」

 

 

私はあっさりと学園を辞めた。

これ以上走る理由も無かった。

 

だがあの家に帰るのは少し癪だった……なので見送りをしてくれた使用人を呼び寄せ、賞金で小さな家を建てた。

ついでに軽く走れる小さいコースなんかも用意したのだが……

 

 

「きゃははー!!」

 

「わーい!!」

 

 

今では近所の子供、特にウマ娘の集まる遊び場だ。

時々昔来てくれていた現役のウマ娘も遊びに来てくれる。

遊びを強請ってくる子供達に引っ張られながら軽くかけっこをしたり、使用人の作ったお菓子を食べたり、ミルクや紅茶を入れたり。

 

きっと昔の私が見たらひっくり返ってしまうかもしれないが、穏やかな日常が続いている。

 

……取材記事で色々と話したらシンデレラなんて書かれたのは小っ恥ずかしかったが、まあ、あの幻影は魔法だったのかも、なんて思ってしまう私も居る。

 

 

……なあ、魔法使い、お前はどこに居るのだろうか、今でも私を見てくれているか?

お前にも、お前のかけた魔法にも見せてやりたいよ、こんな幸せがあるんだって。

 

 

「メイおばちゃん遊ぼー!」

 

「ああ、どれ、今行くよ。」

 

 

 

 

 

今日は何をしようか。




トウメイ、前々回のヒカルイマイと血が繋がっています
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