インフィニット・ストラトス Reconstruction 作:kue
「っくしょん!」
数分前に出そうで出なかったくしゃみをティッシュで作ったこよりで、
鼻をホジホジしてスッキリしながらくしゃみを出した俺――――織斑一夏は、
受験会場の案内図を持ちながら会場内をウロウロしていた。
今、俺は藍越学園という学校の受験会場に来ているんだが。
「さすがに一時間前行動は早すぎたか……聞こうにも人がおらん」
受付のおっちゃんに驚かれたくらいに早い時間に来た俺。
なぜ、一時間前に会場にいるのかといえば別に勉強をするためではなく、
過去に待ち合わせ時間で凄まじい失敗をした影響からだった。
「えっと藍越学園受験会場案内図だよな? うん。
確かにそう書いてある……お、やっと見つけた」
ある一室の扉の前に紙に学園名が書かれた垂れ幕のようなものが置かれており、
上の二文字はめくれ切れていないせいで隠れているが下二文字は学園と書いてある。
~学園と続く学園はこの学区に二つあるけどかたっぽは女子校だから、
自然とただ一つとなってしまう。
扉を押して部屋の中へ入ると中には誰もおらず、部屋の中央には、
騎士が主人の前で跪き、待っているかのような格好でISが置かれていた。
IS―――――インフィニットストラトス。
それは宇宙空間での活動を想定し、世紀の大天才である篠ノ乃束博士によって、
開発された既存の兵器を超える力を持ったマルチフォーム・スーツ。
ちなみにその博士とは幼馴染なんだぜ? 羨ましいだろ。
めちゃくちゃ美人で巨乳でこれまた天真爛漫な性格。さらにその人には、
妹がおり、その妹も巨乳で美人と来た。名前は箒。
小学生ぐらいに引っ越したけど確か箒は剣道の全国大会で優勝してたよな。
まあ、そんなことは放っておくとしてだ。
ISは当初は注目もされなかったがある事件により全世界が注目し、
今や全世界が開発に躍起になっているがひとつだけ欠点がある。
それが女性にしか動かせないこと。
その欠点を好機とみた女性人権団体の連中がここぞとばかりに、
女性の人権云々かんぬんと声を上げるとそれに共鳴した女性たちがデモを起こした。
その結果、国は男性優遇策ぎみだったのを完全女性優遇策を取り始め、
今度は男性が弾圧されることとなった。
首相も女性、天皇陛下も女性がお勤めになられるなど変わり、
さらに勘違いした女性たちが男性たちを奴隷のように扱いだした。
ま、そんなところなんだが……この地図絶対間違ってるな。
なんでIS保管庫に……でも、千載一遇のチャンス!
男性は触れることすらできないので触ってやろうと近づいていき、
ISに触れた瞬間!
目の前にいくつもの画面が現れたかと思えばISが俺の体に装着されていく。
「こらぁ! 勝手に……な、なんで男がISつかえてんのよ!」
そう。今まで女しか使えないという常識をたった今、おれがぶっつぶしたのである。
「えっと、瞬時加速の読み方はイグニッションブースト。エネルギーを消費して、
何倍もの速度で動作が行える。あ、後付装備。読み方はイコライザ。
要するに追加武装だな……あ、あの何か?」
「う、ううん!」
俺がISを使えるという情報が全世界に発信された瞬間、どことも分からない、
生物学研究所とかいうところから研究者が家にやってきて、
金出すから解剖させてとか言われたり、凄まじい数の記者が家の前に常駐したり、
数か月ぶりに帰ってきた俺の姉の千冬姉が俺のことを心配してくれたりと色々なことがあった。
結局、俺はIS学園に強制入学となり、女ばかりの教室に一人ぽつーんと居る。
入学一か月前に千冬姉に渡されたIS基礎知識本なる太い本を渡されたのを、
必死に覚えているがこれがなかなかに難しい。
「PICは……パッシブ・イニーシャル・キャンセラー?」
「パッシブ・イナーシャル・キャンセラーだ」
声が掛けられ、顔をあげてみるとそこには俺の幼馴染である箒が、
胸のところで腕を組んで俺の机の前に立っていた。
……相変わらず凛とした雰囲気してんな。
「久しぶりだな、一夏」
「おう……それにしても大きくなったな~」
立ち上がって顔を近づけて俺と箒の頭のてっぺんを目測だけど計ってみると、
小学生の時は頭一つ分あった身長差がでこ一つ分の差になっていた。
「は、恥ずかしいぞ。一夏」
「へ? 何が?」
「べ、別に何もない……ところでそれ、覚えきれていないのか?」
「ま、まさか。全部覚えたぞ」
渡された本のまだ七割くらいしか完全に理解できていない。
一度は全部読んだんだが何度復習してもいくつか理解できていないんだよな~。
「ならばPICとはなんだ?」
「それはわかるぞ。ほら、あれだろ? 浮遊・加減速できる魔法だろ!?」
そう言うと何故か、周りにいた女の子たちが口を押さえて小さく、
くすくすと笑い始めた。
その状況を理解できていない俺とは違い、箒はでこを押さえて呆れたように、
小さくため息をつき、俺から本を取ってパラパラとページをめくって、
PICの説明部分を見せてきた。
「一夏。PICは魔法じゃない。れっきとしたシステムだ。相変わらずお前は、
カタカナ用語が苦手なんだな。その様子だと英語嫌いも治ってないな」
「よ、よくご存じで」
「ふ、ふん。これでも幼馴染だからな……ちゃ、ちゃんと情報は収集している」
「へ? なんて」
「ぅ! なんでもない! 先生が来るぞ!」
何故か、おれが顔を近づけると顔を真っ赤にする箒も昔と変わっていないようで、
その様子にホッとしながらも俺は再び本に視線を落そうとするがチャイムが鳴り、
それと同時に教員らしい女性が入ってきた。
身長は大人の女性の中では低い部類のようで、全体が子供っぽい、
雰囲気でありながら胸の部分だけは大人の雰囲気を醸し出していた。
すげえ。自分の体で矛盾を示している人なんて初めて見た。
「皆さん。ご入学おめでとうございます。私はこのクラスの副担任の山田真耶です」
山田先生が登壇に置かれている机を軽くたたくとホワイトボードに、
山田真耶という文字がボード全体に映し出された。
今気づいたんだがこの人の名前、回文になってんな。
上から読んでも下から読んでも同じだ。
その時、ガラッと教室のドアが開かれたかと思えばそこからスーツを着た、
俺の姉でもある織斑千冬が教室に入ってきた。
織斑千冬―――――IS世界最強を決めるモンドグロッソという大会の初代優勝者であり、
今でも世界最強であると認識されている。
「悪いな山田先生。任せてしまって」
「いえいえ、副担任ですから」
山田先生と場所を代わって千冬姉が教壇に立った。
「私が担任の織斑千冬だ。この学園に入れた以上、私が貴様たちを、
優秀なパイロットにしてやる。死なないようについてこい」
『千冬様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
モスキート音をとてつもなくデカイ音量で直に聞いているような音が、
耳の中に入り、思わず俺は手で耳を塞いだ。
女性生徒たちの甲高い声が共鳴に共鳴を起こしあい、窓にひびが入った。
す、すげえ。女子集まればウインドウクラッシャーが発動するのか!
「このクラスはバカばっかりか。静かにしろ! 授業を開始する!」
その一声でピタッと静かになった。
「疲れたなり」
「お前はちょんまげがついた黄色いロボットか」
屋上で寝転がりながら箒の突っ込みを受ける俺。
お昼までの授業がようやくすべて終了し、今はお昼休みということなので、
久しぶりに箒と一緒に屋上で昼飯を食っている。
本当なら学食でもよかったんだけど箒がどうしても屋上で食べたかったらしい。
「今日の授業って終わりだよな?」
「あぁ。と、ところで一夏」
「ん?」
「そ、その…………カッコ良くなったな」
顔を真っ赤にしながら箒が呟いた一言を聞き、
俺は口の中に入っていたお茶を思いっきり吹いてしまった。
い、いきなり何を言い出すかと思えば……ま、まあ悪い気はしないけど。
でも、それを言うなら箒だって美人になった……といってもいいんだけど、
それを言うと再起不能になりえるかもしれないから言わないことにした。
「そう言えば剣道の全国大会優勝したんだってな。おめでと」
俺がそう言うと箒はうれしそうな顔はせずに、逆に重い表情に変わった。
……お、俺なんか地雷踏んだか?
「……な、なあ。このあと、部活見に行かねえか?」
「もう私は剣道部に入部届けを出した」
ですよね~。
空気を変えるどころか思いっきり空気を悪くしてしまい、
俺たちの間には重苦しい雰囲気が充満しはじめた。
「……何故、あの時一夏の誘いを断ってしまったのだ」
一夏が荷物の搬入があるといい、屋上からいなくなってから箒は一人、
自己嫌悪に陥っていた。
いくら自分が全国大会優勝のことを嫌っていてもそのことを一夏自身が知る由もなく、
重苦しかった空気を変えようとしてくれた一言もバッサリと切ってしまった。
以前から、自分のこういうところが嫌いだった。
自分が思い出したくないことを相手に言われた際、
冷たい態度をとってしまう自分が嫌いで仕方がなかった。
――――――そもそも、こんな世界を作ったあの人が悪いんだ。あの人さえいなければ
「……何を考えているんだ、私は」
考えてはいけないことを考えかけていたのを頭を振って消し去り、
箒は部活へ行くために屋上から降りて行った。
さすがに一巻分を凝縮した奴を書けばこうなるよね。
もし連載化してほしかったら感想欄で感想とともに仰ってください。
書こうと思います。