インフィニット・ストラトス Reconstruction   作:kue

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第三話  決闘

――――――――俺は大嫌いだった。

『千冬様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

 

――――――――千冬姉ばかりが賞賛されているのが。

『お姉さまと比べて貴方はだめですわね!』

 

 

 

 

――――――――誰も俺を俺としては評価してくれない。最強の弟という色眼鏡をつけてでしか。

 

 

 

 

 

―――――――でも、あいつだけは違った。俺を俺としてみてくれる。

 

 

 

 

―――――――だから、俺は――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよだな。一夏」

「あぁ」

セシリア・オルコットとの決闘当日の昼ごろ、俺は箒とともに学食で軽食を取っていた。

あまり運動をする前にガッツリは食えないのでサンドウィッチを二つほど、

食しながら箒と話をしていた。

どうも俺たちの決闘のことはすでに全生徒に広がっているらしく、

周りの生徒たちが遠くのほうからコソコソと話していた。

この一週間、ISを借りたりなんかして一応の基本動作はできるようになったし、

切り札らしきものも一応用意できた。

あとはその時の状況と気合だけだ。

「そろそろ行くか」

「うむ」

開始十五分前になったのを確認し、学食を出て第三アリーナのAピットへと向かい、

ピットの中へ入るとすでに山田先生と千冬姉が先に来ていてもろもろの準備をしていた。

が、妙に山田先生がそわそわしているのに気づいた。

「あのどうかしたんですか?」

「じ、実はですね……織斑君の専用機がこれなくなったんです」

「……はぁ!? 専用機が来ない!?」

「ひぃ! そ、そんな怒らないで下さいよ~。倉持技研さんからさっき電話があって、

専用機をもっていけるような状況じゃなくなったって」

専用機をもって行けなくなる状況っていったいどんな状況なんだよ。

本来、俺の専用機が置かれている場所には国産ISである打鉄(うちがね)が、

セットされており、会場となるアリーナには満員のお客が集まっていた。

さらに入りきらなかった生徒も出たらしく、

そういった人たちはモニターで見ているらしい。

「仕方がなかろう。今回は打鉄で行け。世代差はあるが戦い方によっては勝つこともある」

いや、そりゃ千冬姉からすれば世代差なんて関係ないんだろうけど、

もろの一般人だった俺からすればその世代差って言うのは大きくてな。

でも、仕方がない。起こったことはもう巻き戻しがきかねえんだから。

制服を脱ぎ、ISスーツだけになって装甲が開いている部分へ体を預けると、

空気が抜けるような音があちこちで響き、装着が完成するとハイパーセンサーが作動し、

周りの視界が一気に広がった。

『気分はどうだ。一夏』

「あぁ、最高に良い……箒。おまえの言ったこと、証明してくる」

「う、うむ……行ってこい! それで勝ってこい」

「うっしゃ! 行くぜ!」

ピットのゲートが開いたと同時に脚部と背部にあるスラスターを軽く吹かせると、

体が勝手に動き出し、ゲートから抜けるとセンサーが、

青いISを身に纏っているセシリアをとらえ、相手の情報が目の前で処理されていく。

ブルーティアーズ……第三世代ISでスペックのほうは相手のほうが断トツ上だ。

それにあの長い銃……スターライトmkⅢっていうのか……すでに、

トリガーは外している……レーザーライフルか。

「待たせたな。さあ、証明を始めるぜ!」

「ふふっ。戦いの最中、矛盾を見つけて絶望しなさい!」

セシリアが俺にレーザーライフルを向け、トリガーを引くがそれよりも先に、

俺が空中へ逃げたので放たれた青いレーザーはアリーナの壁に直撃し、消滅した。

あっぶね~。いつも行動を早くしておいてよかったぜ……さすがに、

放たれた瞬間に避けるのなんて無理だからな。

視界に映る画面に端に小さく武装一覧を開き、それを見ると刀が二本と、

適当な銃が何丁か装備されていた。

俺は次々に放たれてくるレーザーを移動しながら避けていき、アリーナの壁をけり飛ばし、

その勢いと同時にスラスターを吹かしてセシリアに殴りかかるが、

向こうもそれを避けると同時にレーザーを撃ってくるが体をずらして、

それをスレスレのところで避けた。

「やるではありませんか。とても初心者とは思えませんわ……ですが、

それもそこまで! 代表候補生の力はこんなものではありませんわ!」

そう叫ぶとセシリアは横に移動しながらレーザーを何発も放ち、

そのすべてが移動中の射撃にもかかわらず、正確に俺のほうへ向かってきた。

移動しながら俺に向けるとか一体、どんな撃ち方してんだ!

その時、一瞬で避けられないと判断するレーザーが俺に向かってきたのを確認し、

その手に刀を呼び出して、刀で叩き切ってそれを回避した。

「遠距離攻撃の相手に近距離攻撃ですの?」

「拳銃よりも刀のほうが俺は好きでね!」

刀を両手で握りしめ、放ってくるレーザーを回避しながら、

攻撃のチャンスを窺っていくが奴の言う通り、遠距離相手に近距離の武装が、

相性最悪なために近づけなかった。

……あれ、やるか。怖いけど。

俺はセシリアから敢えて距離を開き、セシリアの周囲を素早く回っていく。

「すばっしっこい方ですわね!」

俺に当たらないことにイライラしはじめたセシリアの射撃が、

先ほどと比べて正確さが徐々になくなっていく。

「あぁぁぁぁ!」

「っっ!」

円形に動き回っていたのを地面を強く蹴ってセシリアのほうへ向くと同時に、

瞬時加速(イグニッションブースト)を発動させて一瞬でセシリアの、

目の前に移動するとそのまま刀を全力で振り下ろそうとした瞬間!

「うわぁ!」

突然、奴の背中からビットが射出されたかと思えば、

レーザーが放たれ、俺の腹部に直撃し、大きく吹き飛ばされて壁に激突した。

「まさか、あなたが瞬時加速を使えるとは思いませんでしたわ。

ですが、チャンスを失いましたわね。もう近づけませんわ!」

さらにやつの背中から三つの新しいピットが射出されると次々と、

レーザーを放ってくるのを確認し、俺は慌ててその場から脱して、

レーザーを避けるが俺の死角から飛んでくるレーザーに反応できず、

一発背中にもらってしまった。

こいつ! 俺の反応できない場所から撃ってきやがる!

つまり今、俺は四つのビットからとセシリアのライフルを含めた五つの、

レーザーを避けなきゃいけないのかよ!

そう考えている間に死角……正確には俺の見えないところから、

飛んできたものが直撃し、エネルギーが削られていく。

残りは70%……やるしかない。

「終わりですわ!」

全方位からの射撃反応が画面全体に警告として示された直後、

俺の周囲から四つのレーザーが放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

が、俺はもう片方の手にもう一本の刀を呼び出し、それを握り締めて、

コマのように回転し、全方位からのレーザーをたたき落とした。

「なっ! に、二刀流!?」

さらに俺は刀二本を宙へほうり投げ、空いた手に二丁のマシンガンを呼び出し、

それを握り締めて回転しながら無茶苦茶に引き金を引くと凄まじい数の弾丸が、

飛んで行って四つあったうちの二つに直撃して破壊した。

「さあ! 一気に行くぜ!」

銃を戻し、落ちてきた二本の刀をキャッチしてセシリアに向かって駆け出していく。

「ティ、ティアーズ!」

「うらあぁぁぁぁぁぁぁ!」

ビットからレーザーが放たれてきたと同時に高速で回転し、

レーザーをはじき返すと運がいいことに一つがビットに直撃して破壊した。

刀を逆手に握っていたものを順手に持ち直し、セシリアへと一本振り下ろし、

避けられるがもう片方の刀を横薙ぎに振るうと相手の装甲に傷をつけた。

「くっ!」

苦し紛れに俺の目と鼻の先の距離で引き金を引いてレーザーを放つが、

指が見えているおかげで放たれる瞬間がわかり、顔を傾けて避けると、

一気に距離を縮め、二本の刀で深く相手の切り裂いた。

「ああぁぁぁぁぁぁぁ!」

叫びながら二本の刀を連続で振り下ろしていく。

残っていたビットからレーザーが放たれて直撃するがそんなものお構いなしに、

二本の刀をひたすら振るっていく!

「終わりだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「貴方がですわ!」

刀を振り下ろそうとした瞬間! 

奴の腰の両サイドにあったアーマーが開いたかと思えばそこから、

二つのミサイルが俺めがけて放たれてきた。

この距離じゃ避けられない! でも、あと少しであいつを!

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「っ!」

ミサイルが目前に来ているのを理解しながらも瞬時加速を発動させ、

両腕の刀を瞬時加速の速度でセシリアに投げつけた瞬間、

二つのミサイルが俺に直撃して目の前の景色がぶれた。

爆風で頭が揺れ、視界が定まらない。

だが、セシリアの勝ったと確信した笑みだけははっきりと見えた。

……まだ勝者が決まったコールはされていない。

俺はまっさかさまに地面めがけて落下しながらも装備一覧に目を走らせていくと、

一発だけだが連射式ミサイルを見つけた。

俺はすぐさまそれを呼び出し、握りしめると笑みだったセシリアの表情が崩れ去った。

どうやらあいつももうエネルギーは少ないらしい……俺だってもう十パー切ってるさ。

でも、約束したしな……証明するって!

俺は握りしめた装備の引き金を引いた瞬間! 銃口が回転を始め、

そこから凄まじい数のミサイルが放たれ、セシリアが爆発に巻き込まれたと同時に、

頭に衝撃が走った。

……勝ったぜ……箒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んぁ」

一番最初に移り込んできた景色は白い天井だった。

起き上がろうとすると腕に重みを感じ、そちらのほうを見てみると箒が俺の腕を、

枕代わりにして眠っていた。

……勝ったのか負けたのかわからねえな。

そう思ったとき、ドアが開いた音が聞こえ、そちらを見てみると、

スーツ姿の千冬姉だった。

「あ、千冬姉」

「起きたか。相変わらず無茶な戦い方だ……私の言った通りだっただろ」

「あぁ……戦い方で世代差は埋めれた」

セシリアが油断していたという点もあることはあるがそれを除いたとしても、

世代差のスペック差でのあの善戦ぶりは十分な結果だったと思う。

「ところで結果は」

「残念ながら貴様の負けだ。向こうよりも早くエネルギーが尽きたのでな」

まあ、連射式ミサイルを放った衝撃で体が地面にちょっと近づいて、

落ちる時間が短くなったせいもあるな。

……でも、俺もまだまだだ。こんな程度じゃみんなを守れない。

「まぁ、あの模擬戦でお前の評価も変わっただろう……よくやったな」

そう言い、小さくほほ笑むと千冬姉はそのまま部屋から出て行った。

……これからもっと、強くなってやる……箒も千冬姉も守れるくらいに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……納得がいきませんわ」

自室に取り付けられている小さなシャワールームの中でセシリアは忌々しそうに呟くが、

その呟きはシャワーの流れ出る音によって掻き消され、本人以外には聞こえない。

本来なら代表候補生の実力で織斑一夏を圧倒し、倒すことで男という存在の無様さを知らしめ、

完膚なきまでに叩き潰すのが本来の結果だった。

だが、その結果は起こり得なかった。

「私の勝因がエネルギー残存時間が相手よりも長かったからなど認めませんわ!」

初めてだった。今まで色々な相手とISで戦ってきたがどれも結果は、

圧倒的に勝つか負けるかの二択でしかなかった。

今回ほどの屈辱的な感情は今までにもったことがなかった。

しかも相手は本来ならば専用機を使うところをアクシデントにより、

第二世代の打鉄で挑んできたことも彼女のプライドに触っていた。

世代のスペック差という壁は非常に大きい。

「織斑一夏…………私が倒すべき相手ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで一組の代表は織斑君に決定いたしました~」

山田先生のその一言の後にクラス中から拍手が送られてきた。

俺は今の状況に納得がいかず、セシリアのほうを向くがキッ! と睨みつけられ、

その凄みに思わずたじろいてしまい、そのまま前に向きなおった。

「でも、どうしてオルコットさんは辞退したんですか?」

良いこと言ったよ山田先生!

山田先生の質問で今度は俺だけじゃなく、クラス中の視線が一気にセシリアに向けられた。

「簡単なことですわ……あんな勝ち方で代表になっては私のプライドが許しませんの。

私は代表候補生ですわ。それなのに素人に負けかけるなど……ですから、

この一年間は実力向上に努めますの……そして一年後、あなたを完膚なきまでに叩き潰して、

正真正銘の代表になって見せますわ!」

ズビシィ! と指を向けられ、そう高らかに宣言してからセシリアは座席に座った。

「……え、えっと今のはライバル宣言として取ってよろしいんでしょうか?」

「ええ、結構ですわ」

「織斑君すご~い!」

「代表候補生に認められたんだよ!」

セシリアのライバル宣言を聞き、周囲から俺に対して称賛の声が次々にかけられていく。

「そう言うわけで、一年間お願いしますね。”織斑代表”」

『織斑代表ー!』

この女性の団結感は侮れぬ。

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