インフィニット・ストラトス Reconstruction 作:kue
箒との出来事から数日、第二アリーナのフィールド内で試合が始まるのを待っていた。
目の前には一回戦の対戦相手である鈴が既にやる気に満ち溢れた表情をし、
その手には双刃刀を握り締めて、時折バトンの用に振りまわしながら浮いていた。
「ところで鈴」
「ん?」
「なんであんなこと宣言したんだよ」
「あぁ、あれ? 別に深い意味はないんだけどどうせなら仲が良い奴と一緒になりたいじゃない」
そんな事だろうと思った。昔から鈴はこうだ。
新学年に上がった時も最初の一か月くらいは小学校から一緒の俺とつるんでおいて、
俺に話しかけてくる女子と話していく。
そしてその女子の友人とも話していきその友人とも話していきを続けていき、
たった二ヶ月ちょっとで名前と顔を一致させやがった。
今回もそうなんだろうけど……よくクラスが違うのに先生が許可出してくれたな。
しかも一年の寮長って千冬姉だぞ。
「そろそろね……一夏。あんたあたしにやられる覚悟はできた?」
「まさか……おまえを倒す覚悟ならとっくの昔にできてる!」
互いに言いたいことを言い終えると同時に試合の始まりを告げるサイレンが鳴り響き、
己の獲物を握り締めて同時にその場から駈け出した!
「えあぁぁぁぁぁ!」
「はあぁぁぁぁぁ!」
鈴の双刃刀と俺の刀――――雪片弐型がぶつかり合い、火花が散ったがその直後に、
鈴の双刃刀が真っ二つに折れたかと思うと折れたほうの刀を鈴がつかみ、
俺に振るってきた。
が、そんなのは武器の構造からして予想済みだ。
俺は脚部のスラスターだけを吹かして刀が振るわれてくる進行方向と、
同じ方向に体を傾けて鈴の一撃を避けると同時に足を振り下ろして、
蹴りをぶつけてやろうとするが鈴が後ろに下がったことで俺の脚は空を切った。
「やるじゃない。大抵の相手はさっきので一撃食らわせるんだけどな」
「じゃあ、俺は大抵の相手以上に強いわけだ」
「そうなるわね……でも、これはどうかしら!」
鈴がそう叫んだ瞬間、目の前に空間の異変を知らせる画面が出現し、
それを理解する前にその場から慌てて飛びのくと俺の肩を何かがかすったかと思えば、
地面がいきなり爆発し、砂が舞った。
……何だ今の。
そう思った直後に再び異変を知らせる画面が出現し、その場から離れるとともに、
動きを止めないように鈴の周りを旋回していくが壁や地面に何かがあたり、爆発していく。
白式のデータからするにあの両肩に装備されている砲台みたいなのから飛んでくるみたいだな。
そんでもって撃つタイミングも不明、それどころか撃たれた球さえ見えない。
「とんでもないものを積んでいますな!」
「褒めるなら軍部の技術部門の連中に言ってやりなさい!」
球も見えない、撃つ瞬間もわからない……そんなパーフェクトに見える兵器でも、
鈴自身が目標の場所を正確に認識していなければ撃てないだろうし……ならば!
思いつくや否や、俺はスラスターを全開に吹かせて瞬時加速を使わない状態での最高速度を出し、
鈴の周囲を高速で旋回し続けると爆発もなくなってきた。
やっぱり、鈴が認識していなきゃ意味がない!
さて……白式のワンオフアビリティーでとどめを刺してやる!
「うらぁ!」
「ぐぅっ!」
瞬時加速で一気に鈴に近づき、雪片を思いっきり振り下ろすが、
鈴はケロっとした状態……とまで言わないがそこまで大きなダメージはおっていないように見える。
慌てて鈴から距離を取ろうとした瞬間!
「甘い!」
「ぐぁ!」
真正面から凄まじい衝撃が走り、そのまま地面に叩きつけられてしまった。
くそ……なんでだ……なんでワンオフア・ビリティーが発動してないんだ!
目の前の画面を横目で見つつもこちらに向かって放ってくる見えない砲弾を避けていくが、
何故発動しないのかの理由が全く分からなかった。
「なぜ、さっき織斑君は使わなかったんでしょうね」
「さあな……ただ、使わなかったんじゃなく使えなかったんだろう」
「と言いますと?」
「さっきの様子で使わないと思うか? ただでさえ奴のアビリティーはエネルギーを食らう。
それに上乗せする形で瞬時加速分のエネルギー消費だってある。
おそらく奴はあの一撃で決めるはずだった……だが、能力が発動せずにただの斬撃になってしまった」
千冬と真耶の話を聞きながらも箒は目の前のモニターに映っている一夏の姿に釘付けとなっていた。
(一夏……がんばれ)
「さっきのはびっくりしたけど……その影はもうないわね」
「うっせぇ」
戦いが長引けば長引くほど俺のほうが劣勢になってくる。
代表候補生であるあいつのほうがISの実戦経験に関しては俺よりも遥かに上だし、
IS戦闘のための武術だってやってきているはずだ。
対して俺は部活に入らず、武術だって何もやっていないただの中坊だったやつだ。
勝てるわけがない……でも、勝たなきゃいけないんだ。
そう考えれば考えるほど早く勝たなくてはという気持ちが湧き出てくるが、
今の鈴に先ほどの用に近づける自信は全くないしエネルギーだってもう半分を切りそうだ。
……そう言えば俺、何のために戦ってんだっけ。
戦いのさなか、そんなことを俺は考え始めてしまった。
―――――クラス代表だから仕方なく鈴と闘っているのか?
いや、違う……もっと別の理由だ。
――――――ならば世界最強の千冬姉の顔に泥を塗らないため?
そうでもない……もっと単純な理由なんだ。本当に単純な……あ。
その答えにたどり着いた瞬間、俺の頭の中にあいつの顔が浮かび上がった。
そうだ……何を忘れてんだ。俺が戦ってる理由は箒のためだ。
あいつが応援してくれる限り、俺はそれに応える……そんな簡単なことを忘れるか、普通。
「ん? 急に立ち止まって……降参……じゃないわよね」
「あぁ……降参じゃないさ」
俺は立ち止まり、前方に鈴を見据えながら雪片を握り締める力をさらに強め、
昔、やっていた剣道を思い出しながら構えた。
そう……俺が今、この場に立って戦っている理由っていうのは
「何があったか知らないけど……これで終わりよ!」
俺を俺としてみてくれているあいつのため――――――ただそれだけだ。
「なっ!」
剣をゆっくり上へ上げると何かが当たったような感触がした後に俺の背後で爆発が起きた。
そして画面には零落白夜発動準備完了の文字が。
……行くぜ……白式。
「おぉぉぉぉぉぉ!」
「くっ!」
鈴は何発も俺めがけて見えない砲弾を放ってくるが俺に当たる前に瞬時加速を発動させ、
彼女の後ろへ回ると両肩を斜めに切り裂くと肩にあった砲台が二つとも爆発を起こし、
その姿を消した。
鈴はすぐさまその手にある双刃刀を俺に振り下ろしてくるがそれを腕で受け止めると、
驚きのあまり動きを一瞬だけ止めた鈴めがけ、刀を槍のように彼女の装甲に突き刺すと、
火花が目の前で散った。
「うおおぉぉぉぉぉぉ!」
「くうぅぅぅぅ!」
そのままスラスターを吹かせ、鈴ごと壁に激突しようとするが寸前のところで脱出され、
後ろへ回り込まれるが刀を横薙ぎに振るうと振り下ろされてきた刀とぶつかりあった。
「いったいあの一瞬で何があったってのよ!」
「別に……ただ、戦う目的を理解しただけさ!」
鈴の腹部をけり飛ばし、その衝撃を利用しつつも彼女から距離を取った。
……この一撃にかけるしか俺に勝利の道はない!
「うおおぉぉ!」
俺は瞬時加速を発動させた状態で刀を投げると瞬時加速の速度で鈴めがけて飛んでいく。
対して鈴も瞬時加速を発動させているので俺が投げた刀は普通に見えている。
だから彼女は双刃刀で向かってくる刀を叩き落とそうと振り上げた。
……それを待ってたぜ!
俺は彼女のそのモーションを見た瞬間に雪片弐型を粒子に変換し、
いったんパルスロット内に戻した後にもう一度手に戻し、
全速力の瞬時加速で彼女に近づいていく!
――――――
「せいやぁぁぁぁぁ!」
瞬時加速で彼女の目の前に移動した直後に零落白夜を発動させ、
光が走った状態の刀を振り下ろした!
一撃をくらった鈴は悲鳴にっていない悲鳴をあげ、数歩後ろへと後ずさった。
『勝者・織斑一夏』
突然のことに静かになった観客の耳にそのアナウンスが入った直後、
会場を揺らしているんじゃないかと思うほどの大歓声が響き渡った。
ふと画面の端にエネルギー残量が示されているのが見え、拡大化してみた。
「……5%……あぶね」
「……な、なんだったのさっきの」
互いに呆然としながらもクラス対抗トーナメントの第1回戦は無事、終了した。
「……ふぅ」
シャワーも済み、寝る準備も整った俺はふかふかのベッドに背中からダイブした。
ついさっきまで、下の学食で第1回戦突破おめでとう会なるものが開かれており、
そこでたらふく飯を食うことができた。
まあ、優勝したらどんなに豪華になるんだって話なんだけどさ。
その時、部屋の扉が開く音が聞こえ、そっちのほうに視線をやると、
洗面道具をもって髪を下ろした状態の箒が中に入ってきた。
……降ろした状態の箒もいいな。
「い、一夏……お、お疲れだな」
「そうか? どっちかというと」
俺はすぐそばの彼女の手を強めに引っ張って俺のほうへ倒すとそのまま抱きしめた。
「俺はこっちのほうが気になる……今は、だけど」
つい先日のあの出来事……あれの決着は試合が終わってからだったし。
「……一夏。先日言ったことは変わらない。わ、私は……ずっとお前が好きだ」
それはいつからだ? とか言う野暮な質問はせずに俺は小さく笑みを浮かべると、
そのまま彼女に顔を近づけていき、唇を合わせた。
俺を俺としてみてくれる唯一……千冬姉と鈴を除けば唯一の彼女……俺はずっと守り続ける。
心の中でそう誓いながら俺は彼女を抱きしめつつ、キスを楽しんだ。
Reconstruction……それはとても……とても短い再構成。
これでもうISは書かない……たぶん。