マギのアラジンと雁夜おじさん行く聖杯戦争   作:ロマニ

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第十夜

 コンテナターミナルから離れた高台。そこから双眼鏡と携帯を使って状況把握していたアラジンと雁夜は口をぽかんとさせていた。それはもう震天動地という言葉が似合うほどだ。

 

『バーサーカーよ、我が軍門にくだり共に聖杯を勝ち取ろうではないか。さすれば、うぬらをこのイスカンダルの朋友として遇し、どのような願いも聞き入れる所存である。どうだ、そう悪いことではないと思うが』

『なに堂々と真名をバラしてくれてやがりますか、この馬鹿はぁ!!?』

 

 イスカンダルと共にチャリオットに乗っていた少年の声が、携帯越しにアラジン達の耳にも入った。

 確かに、あのような威風堂々した登場。マスターである少年からしたら頭を抱えたくなる。聖杯戦争では素性を隠すのが常套句でもあるのだ。そのシステムを理解できていないのではないかと思えるほど、ライダーのとった行動は意味不明だった。アラジンの隣にいる雁夜ですら、「あんな馬鹿に世界は征服されかけたのか……」と呆れている。

 対して、アラジンは口には出さないもののライダーが漂わせる雰囲気に感心していた。イスカンダルの放つ闘気——いや、正確には彼の周りに漂っているルフというべきだろうか。色んなルフがイスカンダルを慕うように纏わりついている。しかも、その数が尋常じゃない。見たこともない数で夥しく覆われている。

 

 ——あれが……王様か。

 

 アラジンの心は自然と踊った。イスカンダルの懐のデカさ、その堂々とした立ち振る舞い。話したことがないにも関わらず、アラジンは自然と彼のあり方に好感を抱いていた。

 しかしながら、同じ英霊であるランサーの反応も雁夜同様に芳しくなかった。アラジンがランサーを見てみれば、射殺さんばかりの眼光でイスカンダルを睨みつけている。マスターの許しを貰えたならば、彼の誇る長槍が今すぐにでも胸元に風穴を穿つだろう。

 その苛立ちはランサーのマスターも同じであるらしく、酷く心証が悪いと言った声色で言葉が紡がれた

 

『そうか、よりによって貴様か……ウェイバー・ベルベット』

『っ!!?』

 

 その言葉にビクッと反応したのは、ウェイバーと呼ばれたライダーと共にいる少年だった。

 

『一体何を血迷って私の聖遺物を盗み出したかと思えば、まさか君自らが聖杯戦争に参戦する腹だったとはね』

 

 ウェイバーはそれだけで心底怯えたように震え出した。双眼鏡越しに覗いているアラジンですら、本当に恐怖しているのが伝わってくる。多分、ウェイバーとランサーのマスターは知り合いなのだろう。いや、先程の話を聞く限り、ただの盗人と被害者の関係なのかもしれない。

 

『そこの驕傲なサーヴァントについて言及したいところだが……ふん、マスターが君ならその太々しさまもお似合いであろう。君については私が特別に課外授業をしてあげようではないか。魔術師同士が殺し合うという本当の意味を……光栄に思い給え。君は私自らが苦痛と恐怖を教えてあげるのだからね』

 

 ランサーのマスターがそう告げれば、ウェイバーは今にも泣きそうな顔で跪いた。見ているこっちが胸を痛める光景ではあるが、ここからではアラジンも何もできない。

 そんな時、ずっと静観を決め込んでいたランスロットが電話口で問うてきた。

 

『カリヤ、どうしますか。私の独断のせいとは言え、状況は勝手に進展しています。ここを逃せばこの二つの陣営、どちらとも協定が結べないかもしれない』

「本命のキャスターは出てこないのか?」

『分かりません。私とランサーを監視しているものはまだまだいますが……その中にキャスターがいない方が可笑しいとは考えています』

 

 ランスロットの言う通り、サーヴァントが三体以上集まっているコンテナターミナル。聖杯戦争に参加している者であれば、誰もが注目しなければならない筈だ。キャスターとして呼ばれたほどの知恵者であれば、ここを逃すはずもない。それに、キャスター陣営からしても、ランスロットの提案は美味しいはずだった。

 

「だったら、キャスターさんが出てくるまで話を伸ばした方がいいね」

 

 アラジンは雁夜とランスロットにそう告げる。雁夜もアラジンの言葉に同意なのか、頷いてランスロットにお願いした。

 

『分かりました。できるだけ、話を伸ばしてみましょう。いい意味でも悪い意味でも、今は現場が荒れていますからね』

 

 そうランスロットが言い終われば、また勝手にライダーが場面を進め始めた。

 

『ふん……ランサーのマスターよ! 察するに貴様はこの坊主に変わって予のマスターになるつもりだったらしいなぁ。だとしたら、片腹痛いのう。予のマスターたる男は、予とともに戦場をはせる勇者でなければならぬ。姿を晒す度胸すらない臆病者なぞ、役者不足も甚だしいわ、ヌハハハハハッ!!!』

 

 豪快にそう笑い飛ばすライダー。主を馬鹿にされたランサーの目つきはさらに鋭くなっていた。しかし、それとは対照的にウェイバーの顔は何か削げ落ちたように見える。

 

「おいおい、めちゃくちゃ煽るじゃないか、あのライダー……」

「多分、ウェイバーおにいさんのためなんだろうね」

「それにしてでもだろ」

 

 各々ライダーに対する所感を漏らせば、二人して乾いた笑みを浮かべあった。

 

『おうら! まだおるであろう! 闇に紛れ覗き見している連中は! バーサーカー陣営からの協定——よもや、受ける腹づもりがない者はおるまいて。さぁ、予の眼前に姿を現し、競り合うとしようではないか! バーサーカーも異存ないな?』

『……ああ』

 

 ライダーの言葉に、時間稼ぎをしようとしていたランスロットが頷けば、ウェイバーもランサーも顔を顰めた。雁夜やアラジンからすれば、「ライダー、ナイス!」とサムズアップしたいところであるが、最初に協定を持ちかけられた側からしたらたまったものじゃないらしい。胸中では、ライダーの挑発に誰も乗ってこなければいいのに、と思っていることだろう。

 けれど、ランサーのマスターやウェイバーの願い虚しく、コンテナの一角から二つの影が現れた。一つは銀色の長髪を靡かせた赤い眼の麗人。もう一つは、黒スーツに身を装飾した金髪の若者である。

 アラジンの目はそこで再度見開かれた。

 

『お招きにあずかり光栄ですわ、征服王。バーサーカーからの協定、ちょうど私たちも受けたいと考えていました』

 

 その麗しい姿を見て、どきんと雁夜の胸が高鳴ったらしい。

 

「——いい……あの長い髪、お淑やかな雰囲気。豊かな胸、甘い声……まるで西洋の葵さん、いや、別次元の葵さんだ……! もしかしてこれは出会いのチャンスなのか……!? 聖杯は『葵さんもいいけど新しい出会いもあるよ』と俺に告げているのか!?」

「雁夜おじさん?」

「ひゃう! なな、なんでもないぞ、アラジン! 決して聖杯戦争を利用してあの麗人とお近づきになろうとか、キャスターよりもあっちの女の人の方がいいとか、そういうのは考えてないからな!?」

 

 アラジンが不可思議そうな顔を浮かべると、雁夜がこほんと小さな咳払いで誤魔化した。

 そんな妙竹林な掛け合いなど知らず、コンテナターミナルでは話が進んでいく。

 

『ふむ。その人離れした美しさと淑やかな身持を評し、名乗りあげることを予が許す』

『お言葉に甘えさせていただきます。私はアインツベルンのマスター。こちらが私のサーヴァントです。聖杯戦争の特質上、真名をお教えできないことはご容赦ください』

 

 そう言って紹介された金髪のサーヴァントは堂々と目を伏せるだけに留めた。その所作、きっと生前は相当偉い立場にいた人間なのであろう。必要最低限の礼儀だけを見せるその姿勢に、アラジンは見入っていた。

 

「ぐあっ」

 

 けれど、その思考が一つの呻き声によって遮断される。

 アラジンが横を振り返ってみれば、雁夜が鉄格子を掴み荒い息遣いで蹲っている。

 

「あ、うぐ……なん、だ、これ…………!!」

「っ!? どうしたんだい、雁夜おじさん!?」

 

 あまりの激痛に顔を歪め倒れる雁夜。身を抱え、まるで痛みに悶え苦しむかのように、ガタガタと体が震えている。額からは見たこともない量の脂汗が発汗し、体内の血液が逆流してきたのか吐血を繰り返した。

 

 ————これは普通じゃない。決して、普通のことじゃない。

 

 アラジンはどこかから攻撃を受けたのかと思い、咄嗟に臨戦態勢をとるが、それらしいものは見当たらなかった。周りは鬱蒼と包まれた闇と月明かりのみ。マスターやそのサーヴァントが集まっているコンテナターミナルからは、かなりの距離がある。

 ならば、何が原因なのか——アラジンが思考の海へ埋没しかけたその時、雁夜が持っていた電話から獣の雄叫びが轟く。

 

『Hooooooo!!!!!』

 

 アラジンはその声を聞いて、一つの可能性に辿り着いた。

 慌てて双眼鏡を握り、コンテナターミナルの方を見れば、そこには——雁夜のためにと纏わなかった鎧を身に纏い、まるで狼のような遠吠えをあげるランスロットが。

 

「ランスロットおじさん……!?」

 

 アラジンの思考が追いつかない。雁夜がいきなり倒れ、コンテナターミナルを見ればランスロットが発狂している。

 何が、どうして、こんなことに……。

 ただ、アラジンの目に映ったランスロットのルフは寂しげに、悲しそうに、ただ怒りに塗れているようだった。

 

「おじさんの狂化……そうか、それが暴走したんだ……!!」

 

 停止していた思考回路を無理やり復活させ、アラジンは一つの回答に帰結する。何が原因かは分からないが、ランスロットはここにきて理性という鎖が引きちぎられたのである。

 ランスロットは言っていた。

 

 ——今は比較的狂化スキルが発動していませんが、何をトリガーに爆発するか私でも分かりません。他者と協力するのであれば、この上ないデメリットになるでしょう。

 

 そのタイミングがちょうど今だった。

 ランスロットが危険視していたことが、この上なく最悪な場面で訪れてしまった。

 雁夜の少ない魔力提供など我関せず、ランスロットはマスターを殺す勢いで魔力を吸い上げている。その反動で、雁夜の魔術回路が焼き切れるように体を蝕んでいるのだろう。今のランスロットはトランス状態と言ってもいい。安全装置であるはずの令呪を発動しようにも、雁夜はあまりの痛みに令呪を使う暇すらないらしかった。

 

「僕がなんとかしないと! 飛べ!! 魔法のターバン!!」

 

 アラジンは頭に巻いていたターバンを取り、それを広げる。同時、ウーゴくんを笛から呼び出せば、痛みに悶え苦しんでいる雁夜をターバンで包み隠した。

 流石に流血までして苦しんでいる雁夜を一人置いていくわけにはいかない。あの中に連れて行くのも恐ろしいが、ターバンで身を隠せば平気だろうとアラジンは判断した。雁夜を乗せたターバンを笛に括り付ければ、そのままウーゴくんにコンテナターミナルまで走ってもらう。

「騒ぎを起こす」そうランスロットは言っていた。それが、まさかこのような悪い意味での騒ぎになるとは……。

 

「死なないで、おじさん…………!」

 

 人気のない港を走破する中、アラジンは二人の男を想った。

 

 

 

§

 

 

 

「Hooooooo!!!!!」

 

 場面は戻り、コンテナターミナルにてバーサーカーが発狂を始めた瞬間である。

 突然のバーサーカーの変わりように、ライダーを含め、その場にいる全員が目を見張った。さっきまで、理知的な態度を貫いていたバーサーカーが突如発狂したのだ。誰もが驚くのは仕方のないことである。

 

「————おい、バーサーカー。いきなり叫んでどうしたというのだ」

 

 一足先に驚きから帰ってきたライダーが、代表して声を掛けた。

 が、そんなものは今のバーサーカーの耳に入らない。完全なる狂化。バーサーカーとしての本懐。言語能力すらも失い、大切であるはずのマスターさえも顧みない獣は、ただ己の欲を満たすためだけに一人の少女に突進した。

 

「Gaaaaa!!!」

「っ!? アイリスフィール、下がって!!」

 

 金髪のサーヴァント——セイバーが咄嗟にそう叫ぶと、魔力で編んだ鎧姿へ変身する。

 どのような理由からかは知らないが、自分が狙われていることは理解できていた。そのため、風に纏われた宝剣を出し、セイバーはバーサーカーの木刀と切り結ぶ。

 

「これはなんの真似だ!? バーサーカー!!」

「Arrrrrrrrr!!!!!」

 

 セイバーの怒声も聞こえない。バーサーカーはただただ荒ぶる剣技で、セイバーを圧倒する。

 これには先ほどまで戦っていたランサーも困惑していた。この状況、どうするのが正しいのか彼には分からないのである。さっきまで騎士として誇りある戦いを行っていた者が、突如、私欲に塗れた畜生に成り下がった。加勢するべきだろうか。それとも止めるべきであろうか。どちらを取ろうとも、ランサーの中ではしっくりとこない。

 それは、ウェイバーもケイネスも同じであった。バーサーカーとの協定を考えていた両者であるが、このような姿を見ては共闘したいなんて思わない。いつ、どこで、彼の牙が自身の喉元に差し迫るか。そんな危険性を冒してまで、バーサーカー陣営とお近づきになろうとは思えなかった。

 

「——仕方ない。撤退しろ、ランサー。こうなっては協定も何もない。いつそのバーサーカーがこちらを狙うとも限らん。ここで始めれば、乱戦になる」

「いいのですか?」

「構わん。そこのバーサーカーがアインツベルンのサーヴァントを討ってくれてもいい。逆もまた然り。こちらの損失が無いだけ僥倖だ」

 

 ケイネスはそう言って退却の準備を始める。人払いの結界はこのまま維持させておいていいだろう。さっきも言った通り、ケイネスからしたら、バーサーカーが勝手に敵を減らしてくれるかもしれないのだ。そうなれば、彼にとってはメリットしかない。ただ一つ不満があるとすれば、その敵を減らすのが自分たちではない、と言う点だけである。

 

「ではな。いずれ君たちもこの私が剋するとしよう」

 

 ケイネスはそう言ってチラリと未だに動きそうにないライダー陣営を見た。ウェイバーはその宣誓に「ひっ」と小さく喉を震わせるも、ライダーは関心すら向けない。ライダーの目に映るのは突如として暴走を始めたバーサーカーだけである。その瞳に、どのような思慮が混じっているのかは、マスターであるウェイバーにも分からなかった。

 

 そんな時である。

 ずっと打ち合っていたセイバーとバーサーカーの戦いに佳境が訪れた。

 バーサーカーは木刀でセイバーの剣を弾き返すと、いつの間にか持っていた革製のベルトでセイバーの首を絞めあげる。

 

「がっ!!」

 

 鋭く、しなやかに放たれたそれにセイバーは反応できなかった。

 負けじとセイバーもそのベルトを断ち切るため剣を振るう。だが、その隙をつかれ、バーサーカーの木刀が彼女の頭部めがけて走り——、

 

「ウーゴくん!!!」

 

 バーサーカーの攻撃はあと一歩のところで届かなかった。

 横から出現した巨大な青い手のひら。それがバーサーカーの身体を襲ったのである。

 セイバーに集中していたバーサーカーは当然反応できず、そのまま叩かれて吹っ飛んだ。吹き飛ばした犯人である青い巨人は、そんなことお構いなしの様子で笛へと戻る。

 

「何が……」

 

 そう呟いたのは一体誰だったのか。

 突如、出現した青い巨人に誰もが言葉を失っていた。今さっき命を掠め取られそうになっていたセイバーですら、何も言えずバーサーカーが吹き飛ばされた方角を凝視してしまっている。

 少しして、ようやく状況を理解できたセイバーは青い巨人が収納された方向を見る。そこには青い髪の少年が、穏やかな笑みを浮かべて立っていた。

 

 

 

§

 

 

 

「落ち着いておくれよ、おじさん」

 

 アラジンは嘆願するようにそう言った。今、あそこで手を出さなければ、きっとランスロットはセイバーを完全に敵に回してしまっていただろう。今ならまだお互いに無傷なため——ランスロットに傷はできているかもしれないが——、なんとかなるかもしれないが、これ以上の暴走は見逃せなかった。

 対してランスロットは、そんなアラジンの慟哭など聞こえないのか、立ち上がるなり唸り声を漏らす。ウーゴに力を抑えていてもらったとはいえ、あまりの頑丈っぷりにアラジンは少しだけ目眩がした。

 

「おねえさん、ごめんね。ラ……バーサーカーおじさんも悪気があるわけじゃないんだ」

 

 とりあえず、バーサーカーに対する心象を少しでも改善しようと、アラジンは困ったような笑顔を向けて謝罪する。未だにアラジンたちが求めているキャスターは出てきていないため、下手に敵対する者を増やしたくなかった。

 セイバーはそんなアラジンの対応を見て逡巡するも、いえ、と淡麗に返す。

 

「少年……あなたのおかげで私もマスターも助かりました。あなたが言うのであれば、その言葉を信じましょう。失礼ですが、あなたとバーサーカーの関係は……?」

「友だちだよ。僕はマスターじゃないけどね」

 

 そう言ってアラジンはセイバーに両手の甲を見せた。マスターの資格である聖痕はアラジンに刻まれていない。一流の魔術師であれば、この程度隠蔽もできるのだが、セイバーはなぜかそれを疑う気にはなれなかった。

 

「ありがとうございます。助かりました」

「いいや、こちらこそごめんよ」

 

 アラジンはそう言って、ランスロットに向き直る。

 

「……さて、おじさん。そろそろ落ち着く気になったかい?」

「Ooooooo……」

「僕の声も聞こえないんだね……仕方ない」

 

 アラジンは首を振ってそれだけを告げると、持っていた杖を天に掲げた。

 するとどうしたことだろうか。

 アラジンが持つ杖に黄金の何かが集約する。目を凝らして見てみれば、その黄金の何かは一つ一つ、鳥を象っているのが分かった。

 

 

 

「おい、坊主。あれはなんだ?」

 

 いきなり現れたアラジンの姿に、とうとうライダーが声を漏らした。青い巨人を使ってサーヴァントを吹き飛ばしたかと思えば、次は見たこともない現象を引き起こしている。魔術の類というのは分かるが、ライダーにとっても意味不明すぎることが目の前で広がっていた。

 そのため、ライダーは自身のマスターである魔術師に説明を求めたのだが、残念。ライダーと同じく、魔術師であるウェイバーはその光景に見惚れていた。

 

「分からない……あんなもの見たことがない」

「ふむ……専門家の坊主でも分からぬか」

 

 ライダーは顎をさすりながら、ならばこの目でしかと確かめようと、凝らす。

 それと同じく、セイバーにアイリスフィール……いや、帰ろうとしていたランサー陣営に、闇に紛れている遠坂陣営、それに衛宮切嗣ですらも、全員がアラジンの動向に緊張を走らせた。

 

 

 

「いくよ」

 

 アラジンは声掛けと同時、杖を振るおうとした。ランスロットはそれを止めるべく、全身のバネをフルに使いアラジンへと——その奥にいるセイバーへと駆ける。

 振り下ろされる杖に、弾道のごとく駆け抜けるランスロット。

 アラジンの杖から放出された魔力。それがランスロットに当たった瞬間、彼の身体は後方へ飛ばされた。

 

「Ga!?」

 

 ランスロットがコンテナに着弾した瞬間、魔力の塊がまるでボンドのように拘束する。じたばたと抵抗してみるも、ランスロットの体は言うことを聞かなかった。

 それを見たライダーは「見事」と声を漏らした。

 アラジンの後ろにいるセイバーも感心したように瞳孔を開いている。

 ランサーも、アラジンの秘められた力に感づいたのか、無意識に槍を持つ手に力が入った。

 

「ごめんよ、おじさん。でも、こうするしかなかったんだ」

「Arrrrrr……」

 

 アラジンがそうやって謝り、ランスロットの手に触れれば、幾分か暴れたランスロットはそのまま沈黙した。

 周りから見れば何が起こっているのか分からない。

 けれど、アラジンは理由をきちんと知っているのか、ニコッと静かに笑ったのだった。




コンテナターミナルの話が思ったより長い……。
あと一話で終わらせられるはず。
英雄王? 知らない子です。
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