マギのアラジンと雁夜おじさん行く聖杯戦争   作:ロマニ

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友達「どうせなら、全部作り変えれば良かったじゃん。アラジン視点増やして」
私「パニクってそれどこじゃなかったンゴ」


第六夜

 間桐臓硯との一件から一週間が経った。

 その間、何があったかと言えば特筆するところはあまりない。雁夜は聖杯戦争に参加するべくアラジンと共に魔術の鍛錬に打ち込み、また鶴野は間桐家当主としての業務に追われている。

 そんな中、桜はというと未だに突発性のある発熱を繰り返していた。時には40度近い体温の上昇さえ見受けられる。子供の体力的な問題を見れば、かなり危ない状況だと言えるだろう。それに相まって、桜は我慢強い性格だ。誰も知らないところで苦しんでいるということが多々あった。

 雁夜とアラジンはこれを受け、一刻も早い状況の緩和を目指すべく、日々魔術の鍛錬とは別に桜の体調不良の原因追求を行なっていた。と言っても、彼らは魔術の「魔」の字も知らない素人だ。師と仰げる存在がいるならまだしも、彼らは独学だけで魔術の域に踏み込むしかない。その成長スピードはあまりにも緩やかと言えるだろう。

 だが、アラジンに関してだけは少し事情が違う。彼の特殊な性質である「ルフが見える」というものは非常に役立った。普通の魔術師では見えない領域でさえ、彼はその目に映す事ができるのだ。ルフから情報を読み取るということを、アラジンは本能的にできつつある。これをマスターできれば、そのうち彼は独力のみで新たな魔術体系を打ち出す逸材となるだろう。だがそれは、たった一年で叶うはずもないステージだ。

 そんなアラジンは、この一週間で出来る限り集めた情報を伝えるべく、雁夜が寝泊まりしている部屋に訪れていた。

 

「どうも、桜さんの突発的な発熱は魔力切れによるものみたいなんだ」

 

 アラジンがベッドに腰掛けて言った。

 ルフが見えるアラジンは、桜の魔力枯渇という問題を見抜くことに成功していた。桜の体調が優れない時に限って、少女の体から出る魔力が非常に乏しいのだ。魔力とは生命力を糧に精製されているもの。簡単に言えば、少女は生命力自体を奪われているということになる。このままの状態が続けば、桜が本当に弱った時、命を落とす可能性は十二分にあった。

 

「だが、桜ちゃんに魔術は教えていないはずだ。兄さんからもそう聞いている。どのタイミングで魔力を使うって言うんだ?」

 

 雁夜の疑問は当然のものだ。魔術を使えない桜が、どうして魔力切れなんて現象を引き起こしているのか。先天的なものであれば、遠坂家が何かしらの施術を行なっているはず。となれば、この魔力枯渇は後天的なものと言える。

 アラジンは雁夜の言葉に頷きながら、一つの書物を取り出した。

 

「うん。僕もそう考えて調べてみたんだけど、問題は別のところにあったのさ。桜さんの体内に虫が入っている可能性が高い」

 

 アラジンが持っていた書物は、どうやら間桐の魔術が記されている魔導書だったらしい。その魔導書をベッドの上に置き、あらかじめ印のつけていた所を開けて雁夜に見せる。

 すると、そこには使い魔らしき蟲が夥しく描かれていた。

 思わず雁夜の顔が顰められる。

 

「取り除けないのか?」

「今の僕じゃ難しいよ。虫が体内のどこにいるかも分からないし、何よりどう摘出すればいいのかも分からない」

 

 自身の無力さに歯痒い気持ちを抱くアラジン。

 現状、少年の実力では桜の体から安全に蟲だけ取り除く技術を持ち合わせていない。一応、そこまで高位の使い魔では無いと文献にも書かれているため、ある程度の実力を持った魔術師ならば摘出も容易だろう。鶴野が誰かしらの魔術師に連絡を取れれば、すぐに解決できる事案かもしれない。

 

「病院……に連れて行けば魔術の秘匿やらなんやらで時臣が勘づくか……」

 

 雁夜も他の手段が無いか思案するが、これと言ったものは思い浮かばなかった。

 アラジンは知らなかったが、この世界では魔術という存在は秘匿しなければいけないらしい。そんなの関係なしにアラジンはこれまで、何度かウーゴくんを外に出していたが、今思えばかなり危ない行為だったのだろう。下手をすれば、魔術協会に雇われたフリーランスが殺しに来ていたかもしれない。

 その事実を思い出し、アラジンは少しだけ薄寒さを感じた。

 

「そう言えば、聖杯戦争とやらは他の魔術師も集まるんだよね?」

 

 ふと、アラジンが思いついたように声をあげる。

 

「? ああ」

「なら、キャスターじゃなくても、その人たちにお願いできないかな」

 

 アラジンが考えたのはこうだ。

 聖杯に興味を持っていない間桐陣営は、桜を治すのに協力してくれたところへ協力関係を持ち込む。そうすれば、いくら気難しい魔術師たちと言えども、無下に扱うことはできないだろう。相手にとっても明確なメリットがあるわけだし、当然こちら側には十分なメリットが存在する。

 それに、7分の1でキャスターを確実に召喚できるとも限らない。聖杯戦争で狙った英霊を呼ぶには、触媒となるものが必要らしいが、臓硯なき間桐家にそれらを収集する力など無いのだから。

 だとすれば、それに対する保険を一つくらいは考えておくべきである。

 最も有力なのが、自分たち以外でキャスターを召喚成功した陣営。それらとコンタクトを取るための準備だけでも進めておいた方がいいのかもしれない。

 

「確かにアラジンの言う通りだな。いざとなれば、マスター権と令呪はくれてやってもいいが……」

 

 雁夜は顎先を摩り、そう呟いた。

 だが、これには一つだけ懸念すべき点がある。

 それはサーヴァントとして呼ばれた英霊が聖杯を欲した時だ。その場合、間桐陣営は聖杯を取りに行くしか無い。最悪、その英霊とやらに殺されるかもしれないのだから。

 

「そのあたりは呼んでから考えるしかないね」

「行き当たりばったりすぎて、俺は少し不安だけどな」

 

 アラジンと雁夜は力無く笑い合う。

 海外にいたときは、平穏という二文字が似合う生活をしていたのに。なんの反動か、日本に来てからは血生臭い話が一気に舞い込み続けている。

 だが、それが嫌だからと言って彼らは途中で投げ出したりしない。諦めたりしない。

 彼らが目指すのは間桐の人間が、葵や凛が笑い合えるそんな未来だ。例えそれが茨の道だろうと、アラジンは迷いなくそれを突き進む覚悟でいた。

 

「さて、俺も召喚を成功させるために魔術の鍛錬は怠らないでおくか」

「おじさん。また魔力切れ起こして倒れないでね?」

「うぐっ、これでも少しだけ強化の魔術ができるようになったんだぞ……」

 

 雁夜とアラジンがそんな談笑を続けていると、入り口の方からノック音が響く。

 

「アラジンくん」

 

 そこに立っていたのは、弱々しい立ち姿をした桜だった。まるで闇夜に怯える少女に見える。

 ——さっきまで眠っていたはずだけど、今起きたのかな。

 アラジンはそんなことを考えながら、彼女の方へと近寄った。

 

「やあ、桜さん! どうしたんだい?」

 

 アラジンがそう問いかけると、桜はもじもじとスカートの裾を手で弄った。

 

「……一緒にあそぼ」

 

 ぽつりと溢れた少女の声は、確かにアラジンと雁夜の耳に入る。

 最近ではこうして自分から遊びに誘ってきてくれるようになったため、アラジンも心なしか喜んでいた。アラジンだってまだまだ小さな子供だ。遊ぼうと言われたら、その魅力に逆らいきれない。

 だからこそアラジンは、桜の手を取って笑顔の花を咲かせた。

 その一言を聞くまでは……。

 

「フフフ、なにして遊ぼっか!」

「ドッチボール」

「え”っ」

 

 ドッチボール。

 凛にボールを躊躇なくぶつけられたトラウマがアラジンの中で蘇る。

 なんてことはない。あの柔らかいゴムボールが、ざらざらとした表面のままアラジンの顔面に投げ込まれただけである。

 ——あれは痛かったな〜。

 アラジンの走馬灯とも思えるフラッシュバックが、容赦無く少年の心にヒビを入れた。

 

「ねー、桜さん。僕はブランコというものをやってみたいのさ。一緒にしないかい?」

「ううん。ドッチボールがいい」

「ほ、ほらドッチボールは危険がいっぱいなんだよ? 頭に当たったらとても痛いしね!」

「それでも、ドッチボールがいいの」

「……」

 

 哀れみを孕んだ目で見つめる雁夜。

 絶望に彩られるアラジン。

 結果など誰に語るまでもないだろう。

 これが、体を鍛えたことのない少年が、初めて体を鍛えようと覚悟した日であった。

 

 

 

§

 

 

 

 魔導書を片手に、元蟲蔵だった場所へと足を早めるアラジン。少年の頬には湿布が貼られており、膝には絆創膏が貼られていた。男の勲章といえば聞こえはいいが、それを誰に負わされたのかを聞けば非常に情けない気持ちになる。

 元蟲蔵だった部屋に着いたアラジンは、笛とターバンを地面に置き、魔導書を開ける。手には、臓硯が使っていた杖をアラジン用の長さに調整したモノが握られていた。

 アラジンはそれを地面に翳し一言「熱魔法(ハルハール)」とだけ唱える。すると、杖を向けていた地面から熱気を帯びた空気が発生した。

 

「さて、今日もやるか!」

 

 言っては悪いが、臓硯の「魔術」を目の当たりにしてから、アラジンはそれの虜になっていた。雁夜や鶴野、さらに桜が聞けばあまり良い顔をしないだろう。が、それでも自分が何者か分からないアラジンにとっては、魔術も己を知るための一手段として捉えている。

 そのため、こうして一人で地下に潜り込んでは人知れずアラジンは魔術に打ち込んでいた。

 

「んー、間桐の家にある書物はかなり偏ってる気がするな」

 

 さらりと流れる青髪を掻きながら、アラジンは魔導書と睨めっこする。

 そもそも、魔術師の家にはそれぞれが専攻する魔術系統が存在する。

 死霊魔術、黒魔術、宝石魔術、召喚術、ルーン魔術、天文魔術などなど……それは魔術基盤に依存するところである。

 そのためアラジンが間桐の家の魔導書を見たところで、あまり参考にならないのは当然と言えるだろう。そもそも、間桐の家が本来バックアップを受けていたのはロシアの土地——その魔術基盤である。そこから離れてしまったがために、間桐臓硯は零落したといってもいい。まあ、彼の代が間桐家の限界だったことも起因はしているが。

 

「教えてもらうためにウーゴくんを出すにしても、力がずっと必要だしな〜。それじゃ僕の修行ができないし……誰か一人、僕の先生になってくれる人がいればいいんだけど」

 

 アラジンはそうため息を吐き、次に首を横に振る。

 

「ううん! 高望みはできない。今あるものだけで頑張らなくちゃ!」

 

 ——せめて、聖杯戦争でおじさんが死なないように!

 アラジンが目指すのは、誰も傷つかない終幕である。桜も死なせない、雁夜も死なせない、当然ながら鶴野もその息子も臓硯だって、アラジンは殺させたくはない。

 聖杯戦争。

 その苛烈さは、未だ争いへ身を投じたことのないアラジンからすれば、全く想像できない未知の領域。万能の願望器と呼ばれる聖杯をめぐり、七人のマスターと七人の英霊が殺し合う。

 そんな物騒極まる戦渦に飛び込んで、無事でいられるのか分からない。

 けれどやらなければならない事は、アラジンにも見えていた。

 

「よし! 頑張るぞ!」

 

 アラジンはそう叫び、もう一度魔導書へと目を落とした。




んー、どうしよ
もう少し幕間を挟むか悩んでますが、さっさと本編始めろよと私も思っています。
なので、幕間は筆休めに適宜投下しながら本編を始めようかな。
と言っても、まだサーヴァント召喚してないから、ランスロさんがくるまで時間はかかりますね。

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