【休載中】蜘蛛ではないけど、転生してしまいましたがなにか? 作:タオ
~主人公 Side~
「……」
「起きて下さい」
「ん…んん…?」
「起きて下さい!」
女性の大きな声が聞こえたので、俺は目を覚ます。
「ようやく、気が付きましたか…」
「えっ?」
声のした方を向くと、そこには長く見事なブロンドヘアの女性が無表情な顔でこっちを見ていた。
「あんた誰?…それに、ここは何処?」
俺の質問に女性から答えが返ってはきたのだが…。
「ここは次元の狭間で、私はユエ。転生神です」
「…はっ?」
俺は女性の言葉に思わず間抜けな声を出していた。
「ですから、ここは次元の狭間で、私は転生神のユエです」
「いや!別に聞き直した訳ではないのだが…」
「…そうなのですか?」
ユエとかいう、自称転生神は少しだけ斜めに首を傾け、不思議そうな雰囲気を出している。不思議そうな表情をした訳ではない…。あくまで俺が、そういう雰囲気を感じ取っただけだ…。無表情過ぎて感情が読み取れん!というか、仕草自体は可愛いのかもしれんが、無表情なままでやられたら、ホラーっぽくて逆に恐いわ!!そもそも、微妙に噛みあってない感じもする………。
「…まぁいいや…。ここが取り敢えず次元の狭間として、何で俺はそんな場所にいるんだ?」
だいたい予想がつくというか、テンプレ通りだとは思うのだが…。自分が当事者になると、幸なのか…。不幸なのか…。何とも言えない感じがするな…。
「貴方は残念ながら昨夜、寝ている間に息を引き取りました。しかし、貴方の死は予定外のものであったために輪廻の輪から外れ、転生ができない状態となってしまいました」
「うげっ!マジか…」
「このまま放置していれば貴方の魂は消滅してしまいます。よって、貴方の魂を次元の狭間に一旦連れてきて状況を説明し、転生神の権能によって異世界に転生してもらう事になったのです」
「それは…。どうありがとう。…ところで、何で俺は神様の予定とやらをぶっ壊して死んだんだ?」
「当時、仕事中だった担当死神の1柱がクシャミをしました…。その死神はちょうど、ティッシュを切らしていたので、近くにあった紙で鼻をかみ、そのままゴミ箱に捨てました」
「………はっ?」
「そのゴミ箱に捨てられてしまった紙が、貴方の人生が書かれた書類でした。結果、貴方の人生は滅茶苦茶になり、ゴミとして処分されていまったため、最終的に貴方は死んでしまいました」
「へ~~~…。そっか~…。俺の人生の書かれた書類がティッシュ代わりに使われたのか~………」
「その死神は、『書類作業は全部終了し、それぞれの部署に持って行った後だったため、貴方の人生が書かれた書類が残っているとは思わず、ただのコピー用紙だと思っていた』と、言っていました」
「「……………」」
「ふっ!ざっ!!けんなーーー!!!そんなの納得できるかっ!!!死神がクシャミなんかすんの?とか、ティッシュやコピー用紙があるなんて、神様の世界も現代的じゃね!?とか、色々突っ込みたいけど、今はどうでもいい!!!とりあえず、その死神を俺の気がすむまで殴らせろーーーー!!!」
俺は思わず、湧き上がる怒りのままに叫んだ。しかし、転生神にバッサリと切り捨てられてしまう。
「それはムリです。そもそも、魂だけの状態の貴方に殴る事はできませんし、普通の人間に神を害することはできません」
「クソがーーーーーーーーー!!!!!!」
それでも、俺の怒りはしばらく収まりそうにはなかった。
………
……
…
段々と怒りが収まってきたのはいいが、どちらも声をかける機会を窺っているような、何とも言えない微妙な空気になってしまった…。
「……………」
「ようやく、落ち着きましたか…」
と思っていたら、普通に話かけられた…。
「…ご迷惑をおかけしました」
「いえ…。気にしないで下さい」
「しかし…」
「そもそも自我を持つ生物の魂というのは肉体、または魔力なので作られた霊体とセットで本来はあるものです。ですから、例え神の力で維持していたとしても、魂だけの状態では存在が不安定であり、感情が暴走しやすいのです。私達にとっては驚く程の事でもないので、さっさと話を進めましょう」
「あっ…、はい」
何だか、あまりにも無表情で淡々と告げられたから、押し切られてしまった感が…。まぁ、いいか…。魂も不安定って言っていたし、ここで何かあったら、元も子もない…。なんていう、俺の思考を置き去りにして、自称転生神の話は進む…。
「貴方には【蜘蛛ですが、なにか?】の世界に転生して頂きます」
「………マジっすか?」
めっちゃ、死亡率の高い世界じゃん。でも、待てよ…。管理者Dが、青春高校生ごっこをやっていた地球に転生するなら…。
「但し、並行世界の地球に転生した後に、管理者Dを狙った次元魔法で事故死して、別の世界にまた転生。という流れをやる意味もないので、最初から主人公達が転生する世界に転生して頂きます」
ですよね~…。だと、思った…。というか、地球に転生したとしても管理者Dを狙った次元魔法で事故死するって、原作に絡ませる気満々じゃねーか…。ちくせう…。
「そして、貴方には転生特典が3つ与えられます。何がいいですか?」
3つか…。さて、どうするか………。
「そうだっ!転生特典を決める前にお願いがあるんだが、いいか?」
「なんでしょうか?」
「転生する時に、ここでの出来事と俺が持っている原作知識を俺の記憶から消してほしい」
「…それは、何故でしょうか?」
「理由は単純で、管理者Dにバレたら面倒な事になりそうだから…。管理者Dが俺に接触してきた時に、記憶を読まれてここでの事とか、原作知識とかを知られるなんて事になったら…。…うん。嫌な予感しかしない…」
「わかりました。これくらいの事なら、転生特典とは別扱いで大丈夫です。転生する際に記憶をを消しておきます。それでは、転生特典を決めていきましょう」
…これくらい…?……特典とは別扱い…。…ふむ…。
「まず1つ目は頭脳面の強化。とりあえずは、頭を良くして貰いたい。後、〈完全記憶〉と、〈瞬間記憶〉、〈完全記憶〉を持っている事への辻褄合わせとして、生前の俺の人生全ての記憶も欲しいんだが…。できるか?」
「…可能です…」
「んじゃ、1つ目はそれで…。2つ目は、精神の保護と強化をしてくれ。精神の強化は…まぁ…俺は豆腐メンタルだからな~…。今のままじゃ、それなりに裕福な貴族とかに転生しない限り、生き残れる気がしない…。精神の保護については…転生しても今の俺の自我のままでいられる確約が欲しいって感じだな…。折角転生するのに、前世の記憶を思い出しただけの別人になってたら意味がない。と、いう訳で精神面の強化と、今の自分の自我の保護は必須だと思う」
「わかりました…」
「3つ目は魔術の知識が欲しい。確か【蜘蛛ですが、なにか?】の世界は、スキルを魔術で実現できるんだったよな?原作や世界を滅茶苦茶にするような無茶をする気はないけど、やっぱり漫画、ゲーム、アニメなんかの特殊能力や技の再現って、浪漫とかやりがいがあると思うんだよね…。この3つで頼む。できるか?」
「可能です。しかし、随分控えめな希望ですね…。他の転生者の場合は、世界一の戦闘力とか…。世界一の魔力。他にも巨大ハーレムを作れる位の魅力と、財力。等を希望したのですが…」
おいおい…。ちょっとは自重しろよ…。他の転生者…。
「…ちなみに俺が世界一の魔力を特典として、希望していた場合はどうなっていたんだ?」
「その場合は特典の数が2つに減りました。希望する特典が強力過ぎるために、特典1つ分では実現不可能なためです。更に、もう1つの特典もさほど強力なモノは実現できなくなっていたでしょう」
トラップかよ…。やっぱり、さっき言ってた、『これくらい…』とか、『特典とは別扱い…』とか、そういう事だったか…。
「今からでも、特典を変更しますか?」
「しねえよっ!!数が減るってわかってんのに!!」
「そうですか…」
相変わらず無表情だが、残念そうな雰囲気を感じるのはなぜだ…。
「特典はさっきの3つ。頭脳面の強化、精神面の保護と強化、魔術の知識で頼む。それと、他に決める事はないか?ないなら、早速転生してくれ」
「わかりました。では、いきます」
転生神はそう言うと、いつの間にか隣にあった、上からぶら下がっている紐を引っ張った。…ん?上からって、何処からぶら下がって…。げっ!足元に大きな穴が空きやがった!…という事は…。
「…ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁーーーーー……………!!」
しかも、俺が落ちた穴に水が流れてきた!?これじゃ、まるで水洗ト…。
「…ガ、ガボボボボ!!ガボガボボーーー!!(…テ、テメーーー!!フザケンナーーー!!)」
こうして俺は【蜘蛛ですが、なにか?】の世界に転生したのだった。
~主人公 Side out~
………
……
…
~転生神ユエ Side~
「フフフフフ。とても、面白そうな方でした…。さて、転生特典の付与と、原作知識、ここでの記憶の削除は完了…。おまけで幸運補正も追加しておきましたし…。後は…彼をどんな種族に転生させるかですね…。とりあえず、面白くなりそうな種族にするのは確定なのですが…。むむむ………。これは難問ですね…」
………
……
…
…これで全てОK…。さて、貴方はこれからどんな物語を紡いでいくのでしょうか…。是非とも、私を楽しませて下さいね…。フフフフフ………。
~転生神ユエ Side out~
捏造設定解説
・転生神ユエ:某ありふれた魔王様の嫁をモチーフにしたキャラ。見た目だけはそのまま。キャラブレしてる可能性あり