アルゴと離れた後、調味料などをNPCから買い、ホルンカに戻る。
ここを拠点として、鍛冶屋開くか。
素材集めとしてフィールド出る事あるからその時、HPが危険なプレイヤー居たら援護に入ろう。
***
そんな生活を続けていたら、12月にはいった。
未だに第1層は攻略されていない。
《デスゲーム》が開始されてから約3週間。
死者数は1000人も上回った。
今日も元気に鍛冶屋開くかぁと思った時、キリトが現れた。
「お、今日も開くのか」
『開くつもりだよ。やっぱ、生産職と戦闘職一緒にするのキツいね〜』
「…そうだろうな。明日…の夕方トールバーナで第1層攻略の会議が開かれるんだが知ってるか?」
『いや、知らなかったな。参加しよ』
「良かった」
『教えてくれてありがと。トールバーナの方で店開くよ』
「ああ」
トールバーナの転移門に移動し、すぐ近くに噴水広場がある。
そこに隣接するように鍛冶屋を開く。
結果と言えば、トールバーナの方で開いた方が稼げた。
最前線組が迷宮区に篭ってレベリングしてるからだろうな。
今日だけで修理を何回したことか。
そして、翌日。
午後4時。
《第1層攻略会議》が始まる時間。
隣の広場を見てみると大勢のプレイヤーが集まっていた。
総勢46 人。
それが噴水広場に集まったプレイヤーの人数だ。
私は奥側に居たアルゴの横に立つ。
「リーちゃん、来たのカ」
『ああ、キリトが教えてくれたお陰で』
「前線としてカ?」
『そのつもりだが…。鍛冶スキル取ってるやつ居ないだろ?それの宣伝にでもなれたらなと思って』
アルゴと世間話をしていると、パン、パンと手を叩く音がした。
音がした方を見てみると、青髪の男性が声を上げていた。
「はーい、5分遅れちゃったけど、そろそろ会議始めたいと思いまーす!オレの名前は《ディアべル》!職業は気持ち的に《ナイト》をしていマース!」
SAOにシステム的な《職業》は存在しない。
各プレイヤーは与えられた複数の《スキルスロット》に自由な選択で各種スキルを設定し修練できる。
例外として、生産スキルを習得している者は《鍛冶屋》、《お針子》、《料理人》などの職名で呼ばれる場合がある。
実際私が名乗っているのもあるけど。
戦闘職は聞いた事がなかったが、どんな職名を名乗ろうと個人の自由だしな。
「……今日、オレ達のパーティーが、迷宮区あの塔の第2層に続くフロアボスの部屋を見つけた!」
ディアベルの言葉を聞いて、広場にどよめきが走った。
…そこまで到達しているのか。
私も行ったけど、15層で断念したや…。
「オレ達はボスを倒し、第2層に到達して…このデスゲームをいつかきっとクリアできるってことを、はじまりの街で待っている皆に伝えなくちゃならない! それが、今この場所にいるオレ達の義務なんだ! そうだろう、皆!」
熱の籠ったディアベルの言葉に、所々から「あぁ…」などと賛同するような声が聞こえてきてから、喝采するように拍手の音が鳴り響く。
「オッケー! それじゃ早速だけど、これから攻略会議を始めたいと思う。まずは六人の《パーティー》を組んでみてくれ!」
その言葉に私は頬をピクリとする。
学校で言う、2人1組になってねーとやつじゃねぇか。
ぼっちだった私は先生と組んだり、中の良さそうな2人組の中に無理やり参加させられたり…。
嫌な予感しかしない。
周りが着実と6人パーティを組む中、2人組のパーティが居た。
そこに参加させてもらおう。
そこまで移動したら、相手が誰か分かった。
キリトともう1人。
『キリト〜。パーティ組もっ?』
「オレは良いけど」
「私は大丈夫よ」
『良かった。……えっと、よろしくね?アスナさん』
キリトにパーティ申請を送り、左上にキリトとアスナと2人分のHPバーが見える。
「どうして、私の名前…」
『パーティ組むの初めて?左上にパーティメンバーとHPバーが増えてると思うけど…。ああ、顔は動かさずに…』
顔を左方向に向けようとした彼女に動かさないように指示を飛ばす。
「なるほど、よろしく」
「ちょ、まったんかぁ!!」
無事にパーティも組めてホッと一息ついてると、広場に響き渡った声。
特徴的なダミ声赤いサボテン男は続ける。
「攻略する前に、1つ!詫び入れなぁあかんやつおるやろ!?」
「話をする前に名前聞かせて貰えないかな?」
「わいは《キバオウ》ってもんや」
彼は1歩、2歩と進み出て、噴水の前まで達したらこちらを振り向いた。
「キバオウさん、詫びとは?誰にだい?」
「はっ、決まっとるやろ。今まで死んで行った約1000人のプレイヤーに、や。奴らが何もかんも独り占めしたから約1ヶ月で1000人も死んでもうたんや!せやろ!?」
彼が言おうとしている事は理解した。
「キバオウさん、君の言う《奴ら》は元……ベータテスターたちの事かな?」
腕組みをしたキバオウが厳しい表情で確認する。
「決まっとるやろ。ベータ上がりどもはこんクソゲーが始まった日からダッシュで始まりの町から消えていた。9000人ものビギナー見捨ててな」
「奴らウマイ狩場やボロいクエストなど独り占めして、ジブンラだけポンポン強くなって。……こん中にもいるはずや。ベータ上がりを隠してボス攻略の仲間に入れてもらおうとする小狡いヤツらが」
「そいつらに土下座させて、溜め込んだ金やアイテムをこん作戦の為に吐き出してもらわな、パーティメンバーとひて命は預けられんし、預かれへんとわいは言うとるんや!」
確かに、私はベータ上がりでデスゲームと化したその日から始まりの街を脱出していた。
しかし、素材集めの時にHP危うい人が居たら助けには入ってたから、そんなに…いや、1000人も死んでるから少なくはないか。
「発言いいか」
その時、ハリのあるバリトンが夕暮れの広場に響き渡る。
頭はスキンヘッド、身長は…190ぐらいある。
背中には両手斧。
肌はチョコレート色で顔は彫りの深い顔立ち。
「オレの名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことは、元ベータテスターが面倒みなかったから、ビギナーがたくさん死んだ。その責任を取って謝罪・弁償しろと言いたいんだな?」
「そ、そうや。アイツらが見捨てへんかったら死なずに済んだ1000人や!しかも、ただの1000人ちゃうで。ほとんど全部が他のMMOじゃ、トップ張ってたベテランやったんやぞ!アホテスター連中が情報やらアイテムやら分け合っとったら、今頃、2層やら、3層やら突破できとったんじゃうか!?」
「あんたはそういうかも知れんがな、情報ならあったぞ?」
そう言ってアルゴが作って各町の道具屋に委託していた、表紙には丸い耳と左右3本ずつのヒゲを図案化した《鼠マーク》のエリア別攻略本だ。
「このガイドブック、あんただって貰っただろ。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布されてるんだから」
「無料配布…だと?」
隣で小さく呟くキリト。
『え、お金払ったの?』
「ああ、1冊で500コル…」
『初版だったからじゃない?コルもそんなにないのに、最初から無料配布はキツイでしょ』
「私も貰った…」
「タダで?」
その言葉にアスナはこくりと頷く。
「――もろたで。それがなんや 」
「このガイドはオレが新しい村や町に着くと必ず道具屋に置いてた。あんたもそうだろ。情報が早すぎると、思わなかったのか」
「せやから、早かったらなんやねん」
「こいつに載ってるモンスターやマップのデータを情報屋に提供したのは元ベータテスターたち以外には有り得ないってことだ」
プレイヤーたちが一斉にざわめく。
キバオウはぐっと口を閉じ、その背後でディアべルがなるほどとばかりに頷く。
「いいか、情報はあったんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。その理由は彼らが他のベテランのMMOプレイヤーだったからだと考えている。このSAOを他のゲームと同じ物差しで測り、引くべき所を見誤った」
「――けど、今はその責任を追求してる場合じゃないだろ。俺たち自身がそうなるかどうか、それがこの会議で左右されるとオレは思っているんだがな」
エギルという両手斧使いの巨男の態度は堂々としており、意見も真っ当だ。
エギル以外の誰かがソレを言ったとしても、反論されてるだろう。
「キバオウさん、君の言うことも理解できる。オレだって右も左も分からないフィールドを何度も死にそうになりながら、ここまでたどり着いたからさ。でも、エギルさんの言う通り、今は前を見るべき時だろ?――元ベータテスターだって……いや、元テスターだからこそ、その戦力はボス攻略に必要なものなんだ。彼らを排除して、攻略が失敗したら意味が無いじゃないか」
ナイトを自称するだけのことはあると思わせる、爽やかな言い方だった。
元テスター断裁すべしという空気が穏やかになるのを感じて安堵する。
「皆それぞれに思うところはあるだろうけど、今だけはこの第1層を突破するのに力を合わせて欲しい。どうしても、元テスターと一緒に戦えないって人は抜けてもらっても全然構わないよ。ボス攻略ではチームワークが何より大事だからさ」
会場をぐるりと一周した彼は最後にキバオウを見つめる。
しばらくは見つめ返していたキバオウだったが、押し殺すような声で言った。
「………ええわ、ここはあんさんに従うわ。でもな、ボス戦終わったら白黒つけさせて貰うからな」
振り向き、装備をジャラジャラ鳴らしながら集団の前列まで引っ込む。
結局それがこの会議の1番のハイライトだった。
迷宮区は最上階に続く扉を見つけたという事だったし、ボス攻略しようにも扉を開けて《ポップ》…湧出させないといけない。
その姿を見ないとどんな敵でどんな武器を使っているのかなどが分からないからだ。
ベータの時の情報も言いたいが、せっかく溝が浅くなったのにわざわざ広げたくないものだ。
ゲームオリジナルキャラの参戦(SAOに関する)
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