もしもワンダショがポケモンの世界にいったら?If Wonder's go to the Pokémon world 作:GAOまる
追記
ワンダショの新しいmv「Glory Steady Go!」
最高すぎました!私の書きたいワンダショ像が全て詰まってます。イベントはまだ読めてないですが、曲だけでこれほどワンダショらしさを感じられるのはすごくいいですよね!
寧々の場合
暑い…むしむしとした夏の猛暑が容赦なく寧々の体を包む。
最初は軽快だった脚もだんだんと歩幅が小さくなった。
昔から運動ができるというわけではなかったが、2時間越えのショーを演じたりと体力には自信があった…はずなのだが、築き上げてきた自信がぼろぼろと崩れる。まぁ、所詮砂場で作った小さな城みたいな自信だったため、大したショックはないが…。
(1人で来たの間違いだったかも。あいつらがいれば暑さも紛れるのに…)
寧々は落ち込んだ。思えばこの時間に1人でいること自体が何年ぶりであった。日中はいつも3人の中の誰かがいて、憂いも忘れるようなバカ騒ぎで気にならなかった暑さがここにきて寧々を蝕んでいる。
「はぁ…はぁ…もう…限界…。」
そろそろ木陰で休まなくては、寧々の体から放たれる危険信号がどこからか聞こえるポケモンの声とこだまする。
(休めそうな場所…少し開けてるところがいいよね。野生のポケモンは危ないって類も言ってたし。暗すぎず…明るすぎず…そんな場所…どこかにないかな…)
寧々は道の脇の茂みに入る。少し怖いが、このまま陽が差している道を歩き続けてもそんな場所は見つからないだろうからだ。
森の中は鬱蒼としていて、さすがというべきか先程の道よりもポケモンがたくさん見つかる。寧々は虫などはあまり得意ではないが、不思議と不快感はない。柔らかい見た目をしているからだろうか?まぁ、こんな見た目でもどこかの誰かさんは悲鳴をあげて逃げ出しそうだが。
(…でも、それにしても多すぎない?)
よく見るとポケモンの群れも見つけられる。寧々は図鑑をかざしてみた。
[ビッパ!まるねずみポケモン!ノーマルタイプ!いつも大木や石をかじって丈夫な前歯を削っている!水辺に巣を作り暮らす!]
(ビッパ…これだけの数がいるってことは近くに巣があるってことだよね…。じゃあそこに行けば水場がある!)
思いがけない収穫だ!水場があるならこの暑さを一瞬でもかき消せる。寧々は巣に戻るビッパにこっそりついていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うわぁ…!」
そこは疲れ切った寧々の体にとってまさに楽園だった。
涼しげな清流と渓谷から吹く爽やかな風は、寧々にまとわりついていた暑さを滑らかに拭き取り、清々しい自然の衣服を着せてくれる。
寧々は河川に近づき、足を水に入れる。ひんやりとして心地がいい。
(しばらくここで休憩しようかな。)
寧々は岩場に腰掛け、カバンの中から昼食をとりだす。
司が朝作ってくれた木の実をたっぷり使った特製サンドイッチだ。口に運ぶと、さっぱりとした甘味と酸味が広がる。
(これ、私好みの味だ…。それにこっちはとっても甘い、えむの好きな味…、こっちはガッツリしてて、類が好きそう…。)
「あいつ、朝からこんなに手の込んでいるものを…。ふふっ
あいつのくせになかなかやるじゃん。」
味わってたべろよ!という声が聞こえてくるようで、寧々は手を進める。すると寧々の足にもふりと何かが当たった。
「ヒャウン!」
食べるのに夢中だった寧々は思わず変な声をだしてしまった。
…ビッパが足元に乗っている。警戒心ゼロで寧々にお腹をみせている。
「もしかして…分けて欲しいの?」
露骨にビッパが起き上がった。どうやらイェスらしい。
「まったく…図々しいやつ…。」
寧々はサンドイッチをちぎってそばに置く。
するとビッパは飛び跳ねてガツガツと食べ始めた。
晴天の下、山々に囲まれた小川の麓で少女と小さな獣がサンドイッチを頬張っている。それはなんとも奇妙な光景であった。
ビッパはサンドイッチを食べ終わると、寧々の方を向き歩き始める。少し歩くとまた寧々の方を振り向く。さらに歩くとまた寧々の方を向く。
(これ、なんなの?しかもちょっとドヤ顔だし…。)
「ついてきて…欲しいの…?」
ドヤ顔がまた一段と明るくなった。なんだかコロコロと変わる表情が司とえむに似ている。
(体力はもう十分回復してるし、そろそろ行こうかな)
寧々は立ち上がると意気揚々と進むビッパの後をついていく。
「ちょっと、置いていかないでよ」
寧々は少し小走りに、小川の下流の方へ進んでいった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
10分ほど歩いただろうか、目の前に大きな藁束のようなものが見えた。
「わぁ…大きい。これって、あなたたちの巣?」
ビッパは頷くと巣の手前に座った。あまりの大きさに天井に目がいってしまうが、巣の前にはたくさんのビッパが座っている。
みんな目を輝かせて、まるでショーを見にきた子供のようだ。
純粋な瞳に吸い込まれるように寧々は巣に近づく。
(なにが起こるかわからないけど、せっかくここまで連れてきてもらったんだし、私も見てみようかな。)
寧々は並ぶビッパの隣に座った。藁の絨毯が敷いてありそびえ立つ舞台もあいまって開放的な劇場のようだった。
ビッパたちの拍手が響く。どうやら始まるようだ、寧々も合わせて拍手をする。
すると巣の向こう側から何かが上ってきた。それは巣を軽々と飛び越え優雅に着地し、一回転を決める。かなりステージに慣れている動きだ。沸き立つ歓声を前にウインクをし、歌い始めた。
「ーーーーー♪ ーーー♩! ーーー! ーーーー♪」
「すごい…!」
ポケモンが歌うことにも驚いたがそれ以上にこのポケモンは歌がうまかった。
「伸びやかなだけじゃない。ちゃんと感情をのせて歌ってる…。
このレベルになるのにどれだけ練習したんだろう…」
寧々だって、心から歌えるようになったのはつい最近だ。過去のトラウマがあったのもそうだが、それ抜きにしてもこのレベルになるまでにだいぶ時間を要した。
聞いていて楽しくなる音、歌っていて楽しくなる音、寧々が目指している音の一つだ。それがまさかここで出会えるとは。
(まずいかも…衝動が…抑えきれない!)
本来ステージの最中に観客が乱入するなどもってのほかだ。
だがそんなルールすら忘れてしまうほど寧々はこの音の虜になった。
(もう…我慢できない!)
寧々は立ち上がると、ステージの上に駆け上がった。驚いているビッパを横目に、そのポケモンと相対する。
「私!草薙寧々!あなたの歌、とってもすごかった!感動した。私も、ショーで歌っているの。もしよければ一緒に歌ってもいい?」
寧々は頭を下げて手を差し出す。頬が紅潮した。思えば自分からデュエットを頼むなど初めてだ。
どくどくと打つ心臓の鼓動が指先まで巡り熱くなる。時間がゆっくりに感じた。すると熱かった指先にひんやりとした手が絡んだ。どうやら許可をもらえたようだ。寧々の体温とそのポケモンの体温が混ざり合い、一つになった感覚がした。
そこから先は夢のような時間だった。観客のビッパたちの前で、そのポケモンと共に歌い踊った。軽々とした風の妖精が、寧々のポテンシャルをさらに引き出す。それに感化されてさらに歌声に磨きがかかる。互いに互いを高め合っていた。
(最後、フィナーレ!)
終わりを惜しみながら寧々はポーズを決める。この一瞬の共演で終わるのがもったいないほど楽しい時間だった。
そしてそれは相手にとっても同じらしい。
惜しみない拍手に包まれる中、今度はそのポケモンが寧々の方に手を差し出した。
空間が切り取られ、静寂が身を包む。互いの鼓動だけが響く中、寧々はこれが運命の決断だと確信していた。
おもむろにボールをとりだし、その小さな指先に当てる。
吸い込まれたように、中に入り、3回揺れた。
「これが…ゲット…」
寧々は緊張からの解放でへたり込んでしまった。じわじわと喜びが押し寄せる。両手で大事にボールを抱えステージから降りると、ビッパたちに一礼してその場を立ち去った。
少し歩いた先でボールからポケモンを出す。寧々は凛と立つその子にカメラを向けた。
[ツタージャ!くさへびポケモン!くさタイプ!太陽の光を浴びるといつもより素早く動ける!手よりもツルを上手くつかう!]
「ツタージャ…ツタージャかぁ…!」
ツタージャは照れ臭そうに寧々を見る。ショーのときとはまるで別人だ。
「ふふっ、これが本当のあなたなんだね。大丈夫、どっちのあなたも素敵だよ。これからよろしく。ツタージャ。」
寧々が差し出した手にツタージャはツルでハイタッチした。
このセカイは不思議なセカイだ。でも怖くはない。こんな素敵な友達をこのセカイはくれた。これから何が起きたって、この子がいれば大丈夫。
胸に宿った小さな灯りは寧々の心をしっかりと暖めた。
後書き
寧々ちゃん編、閲覧ありがとうございました!寧々ちゃんとツタージャめちゃくちゃ似合ってますよね。これからも2人の成長を見守っていってください。さて、これでワンダショ全員がポケモンをゲットしました。これからどんな物語が幕を開けるのか、楽しみにしててください。
そして作者も大学が忙しくなってきました。投稿ペースも落ちてしまうかもしれません。遅くはなりますが、決して忘れている訳ではないので気長に待ってくれれば幸いです。
それでは、次の話でお会いしましょう。