ORIフライ・エフェクト   作:コンバット越前

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この世界(ORI)、何かがおかしい





番外編 ORIに翻弄されし者たち
モブの逆襲


「あたしたちは知らぬうちに催眠にかけられてるんじゃないかな?」

「へ?」

 

ある日の放課後のこと、一年一組に所属するとある少女は唐突にそんな問いを友人に投げかけた。

 

「聞き間違えかな?催眠って聞こえたけど」

「合ってるよ。催眠って言った」

「催眠?」

「催眠」

 

友人は少女にアンタ頭大丈夫?と言いたげな目を向ける。そりゃいきなり催眠なんてSFチックなこと言われても訳わからんだろう。普通は。

しかし彼女たちが暮らす知らず改変されたこのORIの世界においては、催眠なんて大したことではないことを彼女たちは知らない。だって転生なんて摩訶不思議を超えたイカレたことが成されている世界なのだ。それに比べりゃ催眠なんて屁みたいなもんである。

 

「友達として一応付き合ってあげるけどさ。それを誰にかけられてるって言うの?」

「そりゃ『あの人』に決まってるでしょ」

「あの人……」

 

あの人。

キン肉マンにおけるオリジンの『あやつ』と同じように『あの人』と言えば、それはオリ主を指すのである。別にどこかのマンさんのように、名前を呼びたくないからってわけじゃないけどね。

 

「皆あの人に催眠をかけられ洗脳されている。じゃないと今の状況が説明できない」

「冗談にしては笑えないね。クラスメートをそんな風に言うなんて」

「オーケー。気持ちは分かる。じゃあ何であたしがそう思ったのか話してあげる」

 

そうして少女はその突飛な発言に至った訳を明かし出した。

 

 

 

「今思えばあの自己紹介の頃からおかしかったのよね」

「自己紹介?」

「あの人が織斑君の後に自己紹介した後、何が起こったか覚えてる?」

「えーと……何か起きたっけ?」

「織斑先生の時と同じような状況になったじゃない」

「あ~そうだった。すごい歓声が上がったよね」

「それがそもそもおかしいのよ!」

「へっ?何で?」

 

キョトンとする友人をよそに少女は断言する。

 

「何であそこであんな頭の悪い大歓声あげるわけ?おかしいでしょ!」

「えっ?あの……」

「芸能人とかアイドルとかならまだ分かるわよ!もしくは織斑先生のような憧れの人とかね。でも何でただの一学生にあんなスターのような歓声があがるってのよ!」

「それは……かっこいいから?」

「顔が良いっていうなら織斑君だってそうでしょうが。しかもあの憧れの織斑先生の実の弟!普通に考えりゃコネ含めて狙いどころはソッチの方じゃん。でも実際は彼の時はお通夜みたいだったくせに、あの人に対してはみんな急に頭の悪いミーハー集団にジョブチェンジしたじゃない」

「む……確かに」

「しかも自己紹介にしても今思えば「危険な俺に触れんじゃねーぞ。怪我するぜ……」って感じのやたらカッコつけた、中二病全開の痛ったぁーいやつだったじゃん。フツーならドン引き、ボッチ確定コースだよ。なのに何であんな「カッコイイー!」「クールなのが良いー!」とか大歓声が起こったわけ?冷静になって見りゃただの痛い奴でしかないでしょーが」

「んー……」

 

友人は当時を思い出し眉をひそめる。

そういえばあの時は自分も歓声を上げた覚えがある。が、そうやって言われれば、なぜ急にあんな馬鹿みたいな態度を取ったのか分からなくなってきた。場の空気を読んだのだろうか?

 

「それにさ。この女尊男卑のご時世で皆があんな風に男に遜る態度取ると思う?」

「それは……」

「しかもあたし達って言っちゃなんだけど、天文学的な倍率を潜り抜けて入学してきたエリートなわけでしょ。何か最近自分でもその設定忘れそうになるけどさぁ!」

「どうどう。落ち着きなさい」

「ゴホン。とにかくご時世と立場を考えても、あんな頭の悪い態度取らないでしょ?ふつー」

「でもさ。シャルロットさんが『シャルル君』として来た時もあんな風に歓声上がらなかった?」

「そりゃあの時はもう何か月か経って、クラスでもみんな互いに気心が知れて、そういう空気が許される頃だったからでしょ。でもあの人の時はみな初めてクラスで顔を合わしたんだよ。今から新たな学校生活が始まろうとする中で、初っ端から男に熱上げて頭悪い歓声あげるなんて、そんな第一印象が頭パー子のようなことする?エリートのあたしたちがさ」

「……うーん」

 

勢いよく話す少女を前に友人は腕組して考える。

確かにあの初顔見せの緊張した場で、アイドルでも有名人でもないただの一学生に対して、しかもこの女尊男卑が蔓延する世界で、更にエリートたる自分らが、アイドルを出待ちするファンのようなアホ丸出しの黄色い歓声を一斉に上げるというのは……。

……やべ。凄く恥ずかしくなってきた。何であんな真似したんだろ?

 

「しかもその後よ」

「何かあったっけ?」

「織斑君がその次の空き時間に早速あの人に声かけに行ったじゃない。覚えてる?」

「あー。うん。あの時は初顔合わせで誰も遠慮して動いてなかったからね。覚えてるよ」

「そしたら織斑君をけんもほろろに追い返したじゃん。「気安く話しかけるな」だの「俺に関わるな」だの「口の利き方がなってない」だの散々罵倒してさ」

「んー。そういやそうだったね」

「おかしいでしょ。「よろしく」って当たり前の声かけに行っただけで、あんな酷い言葉事言われんのよ?そんな人とどうやってクラスメートとしての関係を築けって言うの?」

「でもあの時はまだ入学したばかりで、本当に一人になりたかったのかもしれないし……」

「じゃあ何で織斑君が篠ノ之さんといなくなった後、布仏さんが代わりに声を掛けたら、フツーに接したわけ?」

「それは……」

「しかもその場でキモイ……失礼。恥ずいあだ名まで付けられたのにさ。織斑君への態度を思えば「俺を馬鹿にしてんのか!」ってブチ切られてもおかしくないでしょ?でもそんな態度は微塵も見せずフレンドリーにそのあだ名さえ受け入れてたじゃん。さっきまでの冷たい態度どこ行った?って感じで」

「むむむ……」

 

友人は初日の一連の出来事を思い出す。

確かにあの変わり身の早さは謎と言えば謎かもしれない。

 

「澄まし顔で同性をぞんざいに扱っておいて、異性にだけ良い顔を見せる。優しくする。それってクールキャラでも何でもない、ただの色狂いの嫌な奴でしょ。何か勘違いしている人多いけどさ」

「あ、やめて!」

 

ヒートアップする少女を諫めようとする友人。

それ以上いけない。

 

「それだけじゃないわ」

「まだ続くの?」

「ええ。もうちっとだけ続くんじゃ」

「その言葉はあまり当てにならないね」

「とにかく!あたしの疑問はまだ終わらないの。次はISについてよ」

 

ビシっ!と変なポーズをとって少女は宣言する。

 

「あの人が使ってる専用機ってさ。ぶっちゃけ絶対にISじゃないよね?」

「うん。まぁよく分からないけど、あれをISとするには無理があると思う……」

「IS学園に入学しておいて、IS以外のモノを使う。先生も含めて何で誰もそこにツッこまないわけ?工業学校に入学しておいて、一人だけ農業やってるようなもんじゃん!」

「そのたとえはどうかと思う」

「でも実際そう見えるもん。ISを知りISを学びISを使う学校に入学しておいてさ、IS以外のナニカを使ってたんじゃこの学園に来る意味ないじゃん。学園にしてもそれを許すなら「ISより凄いものがありまーす」って自分で内外に宣伝してるようなもんでしょ。何のためのIS学園?大人ってみんなアホなの?」

 

ま、まぁORIの世界では大人は原作より更にアホに磨きがかかるのが常ですし。

全てはORIスゲーの為。ORIを持ち上げる為大人には犠牲になってもらう。仕方ないんや……。

 

「しかもあの人の態度がそれに輪をかけてるし」

「どういう意味?」

「あの人ISを凄く憎んでるじゃん。何かISのせいで大切な人が失われたって」

「そうらしいね。可哀想だけど」

「いや。つーかそもそもISで死傷者出していたなら、実際こんな風にお気楽に話進むわけ……ってそこはいいわ。とにかくもしそれが本当ならお気の毒だとは思う。でもだからといってぶっちゃけあたしたちにその責任があると思う!?」

「へっ……?責任?」

「そんなものないでしょ!あたしたちはISを扱える才能があって……誰より勉強して努力して!ありえない倍率勝ち抜いて!それでようやく誰もが憧れるこの学園に入学して来たのよ!」

「うん。それはそうだけど」

「なのにあの人はあからさまにISを憎み見下してんじゃん!二言目には「こんな学校入りたくなかった」とか「ISを許さない」とか言ってるしさ。そのISを学ぶために、頑張って入学してきた私たちの立場はどーなるってのよ!」

「むぅ……」

「志望校に行くために頑張って、頑張って……!ようやく努力が実って入学出来たと思ったら、そこに通う生徒が「こんな学校クソだ」って公然と非難しているのよ?しかも「学校のレベルが低い」って一人だけ違うことやってるし。おかしいでしょこんなの。つーか何で誰一人そのことに文句の一つも出ないの!? 人を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよー!」

「お、落ち着いてマイフレンド。走り続けないで」

 

興奮してブフーブフーと荒い息を吐きだす少女を鎮める友人。よしよしと背中をさする。

労わりの心。慈悲。それが友情なのだ。

 

ケンシロウ、友達はいいぞ!

ハーレムしか頭にない世紀末求愛者伝説の方には理解出来ないかもしれないけど。

 

「結局のとこさ。何を言いたいわけ?どしたん?あの人のことが急に嫌いになったの?」

「そうじゃないよ。むしろ嫌いになったっていうならあたし自身をだよ」

「どゆこと?」

「ねぇ。今のクラスの状況についてどう思う?」

「どう……って」

「……織斑君についてよ。あと篠ノ之さんもか。正直なとこ悲惨だと思わない?」

「あっ……」

「織斑君。みんなにあの人と比較されて力がないとか陰口叩かれてさ。あの人に比べ幼稚だとか笑われてさ。篠ノ之さんと二人……クラスから切り離された感じになってるじゃん……」

「それは……」

「あの人に事ある毎に責められて。教師でもないのにしょっちゅう長々説教されて。そしてその度に取り巻きの代表候補生の子らを中心に皆から文句言われてさ……。ねぇ?これ普通にイジメじゃないの?」

「いや……ど、どうなのかな?」

「何で誰一人「もうやめなよ」って言ってあげないの?あたしはこんなのを毎日見せられて喜ぶような人間だったの……?誰かが吊るしあげられているのを、ニヤニヤ笑って眺めている人間だったって言うの?……あたしは、あたしはそんなに醜い人間だったの……!」

「落ち着いて!」

 

落ち着かせるように友人は少女の両肩を掴んだ。

 

「ごめん。見苦しいとこ見せたわね」

「いいよ。気にしないで」

「ごめんね。でも……今長々と喋ったけどさ、あの人について、今の現状について、少しでもおかしいと思わなかった?」

「まぁ……言われてみれば。少しは」

「なのに誰も疑問の声をあげようともしなかった。あたしだってそうだった。あの人に熱入れて、あの人を全肯定して、そしてまるでそう導かれるように織斑君に酷いことを……。何の疑問を持つことなくそうしてた」

「……」

「でも不意に思っちゃったのよ。「あれ?何かこれおかしくない?」って。何でこの状況を何ら不思議に思うことなく、全て受け入れてるんだろうって」

 

少女は何かを振り払うように頭を振る。

 

「あたしはさ、決して出来た人間なんかじゃない。それでもクラスメートが酷い扱いを受けて、村八分みたいな感じになっているのを見て、悦ぶような人間じゃなかったと思う。……そう思いたいの」

「うん……そうだね。私もそう」

 

友人は少女の言葉に同意する。

皆で仲良くしたい。皆で楽しく過ごしたい。誰もがそう思うものなのだから。ORI以外は。

 

「正直私は催眠っていうのは信じられないけどさ……。でも確かに言われて初めて気付いたかも。何で疑問を呈することなくあの人の言葉を全て受け入れていたんだろうって。……なんで罪悪感もなく織斑君にあんな態度を……」

「うん。疑問を感じることなく全てを受け入れてたって……何か怖いよね。どうしてかな?」

 

なぜ?どうして?

相手に疑問を投げかける決して悪いことじゃない。それは相手を知ろうとすることだから。

しかしこのORIの世界ではORIの行動にモブが「なぜ?」と疑問を挟むのは許されない。なぜならORIはいつでも正しく、ORIに間違いはなく、ORIはいつでも賞賛されるべきものだからである。

 

「それで、どうするの?いやどうしたいの?」

 

友人が少女に問いかける。

これを自分に話してどうするつもりなのか。

 

「あたしは別にあの人をどうかしたいとか、あの人に心酔する皆の目を覚ましたいとか、そんなご大層なことしたいと思ってない。そんな力もないしね」

「ん?催眠って言ってんだから、それを解いてあげたいとかじゃないの?」

「うんにゃ別に。仮に催眠にかかっていたとしても本人が幸せならいいんじゃね?現に代表候補生の方々らは、現地妻の如く代わる代わるあの人に尽くしているけど、全員幸せそうだし」

「いいんかい!……んじゃ結局何がしたいのさ?」

「色事についてはどうでもいい。でも織斑君と篠ノ之さんについては見過ごせないよ。あたしはさ、ただこのクラスの雰囲気を変えたいだけ。皆が仲良く笑いあうクラスにしたいだけ。イジメや仲間外れのない楽しい学園生活をみんなと一緒に送りたいだけ。それだけよ」

「ふふ。優しいんだね」

 

皆がみなORIのように御大層なKAKUGOやらもって日々の生活などしていません。

大多数の生徒は毎日を如何に楽しく過ごすか。そう思って生きているものです。

 

「それにさ。もしこのまま悪化して自分のクラスから登校拒否やら、最悪死者とか出たらどーすんの?織斑君とか有名人だし絶対隠しきれないよ。将来にも絶対響いちゃうよ?マスコミや世間やネットで何て言われるか分かんないんだよ?」

「き、急に世俗的になったね……」

「だってあたし凡人だもん。聖人でもないしどうしてもそんなこと考えちゃうわよ」

「ま、そうだよね。この先を考えれば今の現状確かにヤバイかも」

 

よう考えれば世界初の男性操縦者であり、あのブリュンヒルデの弟を、アンチしマウントし追い込むなんてことよく出来るものである。天下のORIぐらいになると怖いものなどないのだろうか?

 

「その為にまずは挨拶から始めよう。おはようとさよならを笑顔で」

「えっ?そんだけ?」

「だって急に仲よくしたらあの人に目をつけられるかもしれないじゃん。そしたらまたあたしも洗脳されてしまうかもしれないし」

「洗脳説諦めてないんだ……」

「それに挨拶舐めちゃいけないよ。挨拶は日常の基本。たとえ短い言葉でも笑顔でそれを向けてくれる人がいれば元気が出るってもんさ」

「そうだね。うん、そうかも」

「少しずつ仲間を、同士を増やしていこう。目的は一つ。この今のクラスの現状を変えること!」

「了解」

「よーし。やるぞー」

「おー」

 

少女と友人は誓いの握手を交わすと、気合を入れる。

全てはより良い学校生活の為に!皆が笑って過ごせるクラス作りの為に!

 

「見てなさい。あたしたちにだって誇りはあるんだから!」

 

モブだって生きているんだ!

その巨大な力で世界すら改変し支配するORIに対し、名も無きモブの少女の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思い立ってセシリア編をよそに書いてしまった。すまぬ、すまぬ……。
昔の下書きがあったとはいえ、驚きの速さで仕上がった。このスピードが仕事にもあれば…!



仲間外れや疎外されているクラスメートを見て悦ぶ人ってそういるものでしょうか?
自分の内に秘めるのではなく公の場で誰かを嫌うっていうなら、せめて嫌われる覚悟くらい持って欲しいものだと思います。アンチし踏みつけいたぶっておいて、それでも周りからの賞賛、賛同、愛は欲しいなんてのは、どうなのでしょうか?



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