オリ主Lv99
織斑一夏が魔境IS学園に入学してから1年。春。
「じゃあ行って来る……!戦いの場に……!」
今日もIS学園が誇る我らがオリ主様は、毎度お馴染みどっかから都合よく乱入してきた、企業だか機業だがまぎらわしい亡国のアホ共から皆を守るために戦場に向かう。スカした笑みを浮かべ、カッコつけたポーズまでとってみせるその姿はまさにヒーローそのものだ。オリ主の中のヒーロー像とは常に(女性)ギャラリーの目を気にしなくてはいけない。どうすればもっとカッコ良く映るのか、インス〇に映えに命かける女心のようにオリ主心もまた繊細なのである。
そんな英雄に向けられる沢山の黄色い声援。その声の主はISが誇る可憐なヒロインたち。
「頼んだぞ」
「あなたなら出来ますわー」
「とっておきの酢豚作って待ってるから」
「あ、あの。頑張ってね!」
「信じてるぞ。父よ」
ヒロインらの熱い声援を受け、オリ主は親指を立てて応えて見せた。最後に少し離れた所に立っている一夏に目をやる。一夏は一瞬ビクッと身体を震わすと、歪な笑みを浮かべた。
「えっと、頑張れよ。あと気をつけてな」
明らかに挙動不審な姿。オリ主はやれやれと首を振る。
一夏のこの態度の訳は分かっている。なぜなら自分は鈍感の一夏と違って察しの良い男なのだから。大方ヒロインの声援と愛情を独占している自分に嫉妬しているのだろう。一夏のこういう小ささには時に本気で嫌になる。
織斑一夏。己の無能さを棚に上げて何てダサイ奴なのだろうか。
オリ主はやれやれと首を振る。でもまぁ一夏なら仕方ないか。心が海より広い男、具体的には瀬戸内海くらいの心の広さを持ったオリ主は思い直すと、一夏を可哀想な子を見るように哀れみを以って見下してやった。
でもこんな情けなくダサイ奴に対しても友達として扱ってやってる俺って凄くね?
俺最高!優しさに濡れる!抱いてやってもいいんだぜ子猫ちゃんたち。
一人で自己問答し『スゲー俺様かっけー』という毎度の絶対真実に行き着いたオリ主は、ヒロインに蠱惑的というべきORIの眼光を放つ。その後伺うようにこちらを見てくる一夏の方を向き、フンと小さく鼻で笑うと、颯爽と身を翻した。
「大丈夫だ!俺に任せておけ!俺が皆を守って見せる!」
でもどうせその皆の中に男(一夏)は入ってないんでしょ?というツッコミは当然聞こえてくるわけもなく、オリ主は自分に酔った台詞を大声でキメると、どう見てもISに見えない己の専用機に乗り込んで行く。ISという世界観において場違い感が甚だしい機体だがオリ主は気にしない。この場のオリ主以外の人は優しいから言わないだけで全員気にしてるけど。
「ガン〇ム!行きまーす!」
オペレーターなんていやしないのに毎回大声で誰に向けて言ってんの?守護霊のメリーさんでも憑いてんのかな?というツッコミもやはり聞こえてくることなく、オリ主は自分が行って来ることを大声で謎アピールすると共に、意気揚々と空に向かって飛び出して行った……。
オリ主が出て行ったのを見送ると、さっきまで心配そうにしていたヒロインたちが一斉に安堵のため息をついた。
「やれやれだ。やっと行ったか。毎度ながら疲れる」
「一人で行くのが決まってるのに、毎回もったいぶって長いんだよね……」
「訓練を受けた軍人の私でも、あの男の舐めまわすような視線には妙な怖気が走る」
「セシリア。アンタやる気無さすぎ。バレたらどうすんのよ」
「知ったことじゃありませんわ」
オリ主が去った途端に、一斉に聖女の仮面を脱ぎ捨てて愚痴り出すヒロインたち。
一夏はそれを引きつった顔で見る。毎回のことながら女性の変わり身の早さには驚くしかない。
「いつまでわたくしたちがこんなお馬鹿さんのような真似をしなくてはいけないんですの?」
「仕方ないだろ。機嫌損ねたら何するか分からないし」
「にこにこ笑いかけてキモイ声援浴びせてりゃ害はないんだからさ。我慢しなさいよ」
「シャルロット。私もおなか減った」
「もうちょっと我慢しようねラウラ」
スマホを取り出してイジる者。談笑する者。なぜか酢豚を食い出す者。まさにフリーダムである。ちなみに戦いに赴いたオリ主を心配している者なぞ一人もいない。
「なぁみんな、アイツ一応俺らの為に戦ってるんだからさ。その少しは心配を……」
失礼。心配している人が一人だけいた。織斑一夏その人である。
「どうせ圧勝楽勝畜生するのが決まりきってるのに、なにを心配しろっていうんだ?」
「そーそー。しかも毎回ワンパンで終わるのを舐めプしていたぶるような奴にさぁ」
「人として終わってますわね。騎士道の欠片もないのでしょうか」
「シャルロット。私の腹がペコちゃんなんだが」
「仕方ないなぁ。じゃあ持ってきたお菓子一緒に食べようか」
しかし一夏の友を想う優しさも何処吹く風で、ヒロインたちは菓子の包み紙ほどの心配もしない。一夏は難しい顔でオリ主が飛んで行った方を見る。
「一夏さ。いい加減肩の力抜きなさいよ。なんか痛ましくて見てられないから」
「でも鈴。アイツだってああ見えて色々背負って頑張ってるんじゃ……」
「あのウルトラ・スーパー・デラックスマンにそんな大層なもんなんてあるわけないでしょ」
ウルトラ・スーパー・デラックスマン。
日本にも馴染み深い鈴がオリ主をして例えたヒーローの蔑称もとい名称である。
何がデラックスなのか。スーパーやウルトラだけじゃ駄目なのか。
そんな一夏の問いにも鈴は意味深に笑うだけだった。
ウルトラ・スーパー・デラックスマン byオリ主。
その在り様を一言で言うなら「やはり
セシリアとの初戦に始まり。
無人機の乱入。
学年別トーナメント。
銀の福音戦。
タッグマッチトーナメント。
亡国乱入。
スパイ乱入。
束乱入。
乱入。
また乱入。
いい加減にしろ乱入。
その度にオリ主はOHANASHIというお題目の
しかし物事には限度というものがある。みんなで協力?何それ美味しいの?って感じで原作イベントが起こる度に毎回毎回毎回オリ主が一人で出しゃばり、人外のチートで以って有無を言わさず解決していき、尚且つ個人の悩みにおいても頼んでもないのに介入し、SEKKYOUとKAKUGOを押し付けてくる様を見て、周りの人はどう思うだろうか?
心から感謝するだろうか。心からありがとうと言えるだろうか。
否!それよりも真っ先に出る感情は普通の感覚の人間ならば『恐怖』ではなかろうか。
この場にいるヒロインの一人、シャルロットもそうであった。
男と偽りIS学園の潜入に成功したボクっ娘。すったもんだで女であることがバレて、一夏とどうしようかと頭を悩ませていたところに、「待たせたな!」とばかりに登場したオリ主。原作一夏の案を「何の解決にもならない」「だからお前はアホなのだ」と散々ダメ出し後、じゃあどーすんの?という疑問にオリ主が示した答え。それはフランスに単身乗り込み、デュノアパパやら会社やら国やらを
その手があったか!さすがオリ主様!なんて素晴らしい解決策なの!
……などと思う子がISのヒロインにいるだろうか。一個人が他人の親を、企業を、国家を、力で屈服させる。常識的に考えて普通はドン引きである。親に思うところがあるにしろ、シャルロットにとっては実の父親が学友によって脅されるということになり、しかも挙句に家族も会社もまさかの国でさえ「オリ主には勝てなかったよ…」と無条件で白旗を上げるのを目撃することになったのだ。その間僅か数日。いくらこの後原作でのイベントが控えていて時間かけられないからといって無理あり過ぎな展開である。しかしその不可能を可能にするのがオリ主であり、そんなのが叶ってしまうのがこのオリ主が望んだ『ORIの世界』なのだから。
フランスにまで乗り込み、全てを
帰って早々シャルロットに「もう大丈夫だ」とばかりにハグを求めた。それを受けたシャルロットはヤベーおクスリ患者の禁断症状のようにガクブルだったが、オリ主はそれを彼女の感謝感激雨嵐のせいと受け取り、一夏にこれ以上無いほどの勝ち誇った笑みを見せたものだった。だがオリ主が気付かないだけで他の皆は分かっていた。ただシャルロットは恐怖で震えていただけのことを。
だって普通に考えてたった一人で親やら会社やら国やらを屈服させた男に、今後どう接していけというのか。こんなことになって本当に自分は母国に帰れるのだろうか。それ以前にこの人の機嫌を損ねたら自分はこの先どうなるのだろうか……まずそう不安に思うのが当たり前である。
オリ主の胸先三寸で地獄行きになるかもしれないという不安。ORIからは逃げられない恐怖。
それはシャルロットに強い圧迫感をもたらすこととなり、結果彼女は極度の人間不信というか男性恐怖症に陥ってしまった。そんな彼女を救ったのは同じようにオリ主によってヤベー精神状態になっていたラウラの存在であり、シャルロットは彼女の世話を献身的にすることにより、どうにか自我を保ち回復していったのである。最近はその仲が良すぎてキマシタワーな関係になっていると専らの噂だが、愛の形は人それぞれ。男同士だろうか、女の子同士だろうが、本人たちが幸せならそれでいいのである。絶対に。
何かある度に誰も頼みもしないのに「俺に任せろ!」と出ていくのがオリ主。
誰も敵わず誰も何も言えない
何よりオリ主と他ではあまりに実力が違い過ぎるのだ。中学生の地方大会にメダリストが紛れ込んでいるようなものである。どうやってもオリ主には追いつけないし、共闘したところでただの足手まといにしかならない。これじゃ代表候補生のプライドなんて細切れである。バランス調整無視のロンダルキア以上のクソゲー感だ。
ここに至るまで厳しい競争を勝ち抜いてきた、無二の才能を持つ選ばれしエリートである彼女たち。だからこそ言葉に出さずとも理解することが出来る。出来てしまう。
この男にはどうやっても敵わないと。いやそういう次元の相手ですらないと。
っていうかここまでレベルが違うっつーならぶっちゃけさぁ……。
『もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな』
そんなORIの世界における絶対の真理に辿り着くのはもはや必然であった。
いつの間にやら持ち込んだお菓子などを広げ、思い思いにお喋りに勤しんでいるヒロインたち。一夏は教師仕事しろよ、と居るはずの山田に目を向けるが、その巨乳教師はというとスマホ片手に「またガチャ失敗しちゃいましたー」など言いながら頭を抱えている始末である。やってらんねー。
でもここまでオリ主スゲーが過ぎる世界では、教師なんてもはやお飾り。アホに磨きがかかるしかないのです。出来る大人がいると困るのですよ。俺カッケー出来なくなるし。
つまりこの惨状は何でも一人でやりたがるこのオリ主のせいであって、原作IS学園の大人は決して無能ではないのです。いいですね?誤解しちゃいけませんよ?
「ラウラちょっといいか?」
一人だけ真面目に心配している自分がおかしいのでは?という考えを必死に振り払う一夏。とはいえやる事なく暇を持て余しているのも何なので、お菓子を貪り食っているラウラに問いかける。
「ん?どうした一夏」
「さっきのアレなんだ?」
「アレとは?」
「アイツのこと父って言ってただろ。何かの遊びか?」
「遊び?いや違う。あの男にそう呼ぶよう言われたんだ」
「……え?」
「正確には『パパ』だけどな。そう呼ばせることへ何やら尤もらしい理由を色々つけていたが」
「パ……パ」
「ついこの間まで頭悪そうに『お兄ちゃん♪』と呼んでくれと五月蠅かったんだがな。何故かいきなりパパときた。何を考えているんだろうな」
マジかよ。こんなの犯罪者の一歩手前じゃないのか?
一夏は膝が崩れ落ちそうになるのを必死で耐える。同級生の子にパパ?正気の沙汰じゃない。この学園に来るまで普通の学生やってた一夏にはとてもじゃないがオリ主の神経が理解できなかった。血の繋がりもない、出会って一年にも満たないクラスメートにそんなこと言うか普通?
……お兄ちゃん……パパ……PAPA……。
「一夏!戻ってきて!」
「……ハッ!」
シャルロットの声で我に返る一夏。
「大丈夫だよ一夏。ラウラへのそんな吐き気を催す邪悪はボクが許さないから」
「シャル……知っていたのか」
「当然だよ。完全スルーしたいけど、無視してそれでヘソ曲げられたら困るし。だからせめて父呼びが妥協案かなと。そうみんなで話し合ったんだ」
「そうか。みんなも知って、協力を?」
「同級生の友達が『お兄ちゃん♪』だの『パパぁ~』だのサブイボ間違いなしのキモ過ぎる呼び方するのを看過出来るわけないでしょーが。そんなのがもし日常になったらさすがに辞めるわよこんなとこ」
「だよなぁ」
鈴の正論に頷くと一夏は額に手をやる。
もうわけわかんないよ。
「おいみんな。そろそろ帰ってくるみたいだぞ」
頬杖ついてモニターを眺めていた箒が言う。
どうやらいつも通り我らがオリ主様は敵を撃退したようだ。
「はぁ~。またあの頭の悪い演技をしなければならないことを思うと嫌になりますわ」
「そう言わないの。ヒーロー様にはこれからも上手く踊って貰わないといけないんだからさ」
「しかしなぜあの男は力は凄いのに、こうも人として終わっているんだろうな」
「それはねラウラ。馬鹿だからだよ。ああなっちゃダメだよ?」
口々にぶつぶつオリ主への文句を言いながら、散乱するお菓子のゴミなどを片付け始めるヒロインたち。一夏はそれを虚ろな目で眺める。
これがオリ主によってこの世界にもたらされたもの。ORIによって改変された一つの未来……。
でもみんなが無事で安全ならいいのか。
一夏はそう結論付けると、乾いた声で小さく笑った。
「一夏さん?どうされたんですの?大丈夫ですか?」
「なぁセシリア。これでいいんだよな?俺たちはこれで……」
心配そうに尋ねて来たセシリアに一夏はそう返す。
これでいいんだと。これで間違ってないんだと。そんな希望を乗せて。
それに対しセシリアはにっこりと天使の笑みでもって答えてくれた。
「そんなわけないじゃないですか」
「お疲れ。さすがだな」
「あなたなら出来ましたわねー」
「酢豚食べる?」
「あ、あのお帰りなさい!」
「信じていだぞ。父よ」
今回もいつも通り敵を華麗に撃退し帰って来たオリ主。そんな彼を迎えるのはISが誇る麗しきヒロインたち。皆がそれぞれに労う言葉を口にしながらヒーローの帰還を喜んでいる。
「大丈夫だ。厳しい戦いだったが俺はこうやって帰って来た。俺はみんなを一人にしない……!」
そんなオリ主のかっけー宣言に対し嬉しそうに頷くヒロインたち。オリ主はその愛すべき者たちの姿に感極まったように震える。これこそが真に『守る』ことが出来る力を持った者こそが得ることができる賞賛と充実感なのだ。
最後に少し離れた所に立っている一夏の方に顔を向ける。
一夏は一瞬ビクッと身体を震わせた後、歪な笑みを浮かべた。
「えっと、お帰り。怪我はないか?」
そんな一夏にオリ主はこれ以上ない程の勝ち誇ったドヤ顔を向けたのであった。
ウルトラ・スーパー・デラックスオリ主。
学園の平和とヒロインの笑顔を守る為に今日も彼は戦い続けるのである!
ウルトラ・スーパー・デラックスマン。
正義感が強く、世を正したいと願うも、何の力もなく何も出来ない己の無力さに日々鬱憤を溜めていた凡人。そんな彼がある日突然力を手に入れたら……というものだが、人間を超越した力を手に入れたとしても、思い通りにはならない現実。狂っていく価値観。傲慢。孤独。そして結末に至るまで、色々考えさせられるお話であります。
ウルトラ・スーパー・デラックスマン。
テンセイ・チート・オリ主。
その違いって何だろうね……?