ORIフライ・エフェクト   作:コンバット越前

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もしも僕がオリ主でも、友達でいてくれますか?





オリ主Lv999

織斑一夏が魔境IS学園に入学して2年。夏。

 

オリ主はますますウルトラ・スーパー・デラックス化し、最近では敵役も「あんなヤベーのに勝てるわけねーだろ常考」とようやく達観ムードになり、平穏な日々が続いている。だが襲撃やイベントが無くなったせいで俺カッケーが出来なくなったオリ主は、賞賛や感謝を得るために、今や学園内での生徒同士の些細な喧嘩やモメ事、果ては関係のない学校行事や部活動にまで我が物顔で介入し、あれこれ口を出している始末である。スポットライトを浴びた者はその注目と賞賛が忘れられなくなる、とは言うがまさにオリ主のことであろう。

 

またそんなスゲーオリ主様によって、ISや代表候補生なんてもはやどーでもよくなったヒロインたち。その彼女らも原作とはだいぶ様変わりしていた。

 

箒は剣道に再び己を見出し。

セシリアは名家の家主として、また財閥の長としての帝王学に励み。

シャルロットとラウラの部屋からは夜な夜な苦しそうな声が聞こえ(トレーニングだよ?多分…)

鈴は酢豚だった。

 

そして一夏とはいうと無料の情報誌を見ながらバイトを探している日々である。

大会でもタッグマッチでも実技でも何でもかんでもオリ主一人が前に出て、全てを奪い取っていくことから、他の者は己をアピールする機会が全く与えられず、卒業後の進路もあやふやな者が出ていた。一夏もまた進路が未定であり、また特にやりたいことや、情熱をかけるものもなく、半ば無気力に高校生最後の夏を迎えていた。

 

「よお一夏」

 

頬杖をついてパラパラとページをめくっていた一夏の前に現れるオリ主。一夏は顔には出さないようしながらも内心ゲンナリする。オリ主の顔を見て、経験上この後己の身に起こる災難がはっきりと予測できたからだ。

 

「なにしてんだよ?」

「別に。暇つぶししてるだけ」

「ふん。嘘つけよ、その開いてるページは何だ?バイトのコーナーだろうが」

「……」

「お前なぁ。恥ずかしいと思わないのか?この大切な時期にバイトなんざ探してよ」

「……」

「もっとちゃんとやれよ。俺らは選ばれたエリートなんだぞ。俺は、いや俺たちは上に立って下々……じゃない、か弱き者たちを導いていかなきゃならない立場なんだ。ブリュンヒルデの姉の顔に泥を塗る気か?全くお前って奴はよぉ……」

「……」

「何度も言ってやってるだろ。お前はKAKUGOが足りねぇんだよ。何時までも甘ったれたことやってんじゃねぇよ。俺らは常に注目を浴びる特別な存在として、それに相応する模範の姿じゃないと駄目なんだよ!俺がこうやって心配してやってるのにどうしてお前はちゃんとしないんだ!」

「……」

 

一見すると友を心配して敢えて厳しいことを言っているようにも聞こえるオリ主の言葉。ただそれはORI特有の一夏を下げて悦に入るSEKKYOUに過ぎない。だってその証拠にオリ主の口元はこれでもかと厭らしそうにつりあがっている。尤もらしい理由付けて一夏を口撃できることが楽しくて仕方ないのだ。

 

それに対し一夏はどこまでも冷めていた。

オリ主が持つ一種の病的とも言えるエリート意識とやらがさっぱり理解できない。一夏としては流されるままこの学園に入学してしまっただけ。いわば不慮の事故みたいなもので、自分が選ばれたエリート様だなんて露ほども思ってないからである。

 

それとオリ主が事あるごとに一夏に言うKAKUGOであるが、百歩譲ってその覚悟を持とうにも、その機会も成長イベントも全部奪い取っているのは他ならぬオリ主である。原作知識を生かし一夏の活躍を全て根こそぎ横から略奪・コピーしておきながら、偉そうに彼を批判するその神経。厚顔無恥もここまでくればある意味芸術かもしれない。

 

 

 

ウルトラ・スーパー・デラックスオリ主から今を生きる高校生諸君らへの金言です。

『少年よKAKUGOを抱け。KAKUGOを持つことこそがORIへの近道なのだから』

 

 

 

 

オリ主のありがた~いSEKKYOUが熱を帯びていく中、一夏は頬杖を解きながら、オリ主にバレぬように束さん印の超小型高性能イヤホンを耳の中に入れる。そして顔は反省するような表情を作りながらもそっと操作する。すると耳奥から何かの御喋りのようなものが流れて来た。

 

入学からここに至るまでの学園生活で、三桁を優に超える程繰り返されてきたSEKKYOU。もはや一夏にとっては慣れっこであり、今ではそれを受けながらこっそり音楽を聴けるまでになった。

勿論これはオリ主には絶対にバレてはいけないこと。オリ主は自身のSEKKYOUが無視されるのを何よりも嫌うナイーブな生き物なのだから。だが大前提としてオリ主は相手に反論や意見など求めない。オリ主にとって大事なのは自身のありがた~いお話を、相手が黙って聞いてくれることなのだから。反省する顔作って適当に頷いてりゃそれでご満悦なのである。

故に2年に及ぶSEKKYOU地獄の中で、遂にその境地へと達した一夏は、最近ではオリ主からSEKKYOUを受けながら音楽、終いには落語を聴けるようになるまで成長したのであった。それを成長と呼ぶのかは分からんが。

 

ずっと自分の世界に入って喋っていたオリ主だったが、ようやく満足げな顔をして一息つく。SEKKYOUを受けるプロである一夏は、それが終了のサインだと取ると、より一層神妙な顔を作ってオリ主の顔を見た。

 

「そうだな。お前の言うとおりだよ。忠告ありがとな」

 

一夏はそう言って深く頭を下げる。

暫くその体勢でいてから頭を上げる。目の前には予想通りのオリ主のドヤ顔。

 

「分かればいいんだよ」

 

一夏の態度にオリ主は満足げに鼻息を出すと、椅子に身体を預け偉そうにふんぞり返った。

 

 

 

 

 

 

「一夏さーん」

「ん?……セシリアか」

 

オリ主のSEKKYOUをやり過ごした数日後、食堂において今度はオリ主にバレないように周りの目を気にしながら、それでも変わることなく雑誌を見てバイトを探していた一夏。その彼を見つけ、セシリアが駆け寄って来た。

 

「何をされているんですの?」

「ん~。バイト探してる」

「バイトですか」

「セシリアは知ってるだろうけど、俺は今のとこ進学とか考えてないし」

「では就職を?」

「うーん。正直難しいな。ここって一般へのそういうのはあまり想定されてないだろうし」

「そうでしょうね」

「いっそ専門学校に入ろうかとも考えてるんだ。料理の学校とか」

「料理……」

「IS学園にまで入って何考えてんだ、って怒られるかもしれないけどさ。でもこの学校でこれといってやりたいことも見つからなかったし。身に着けたものもないし。それもいいかなって」

「そう……ですか……まだ決めて……」

 

セシリアが少し考え込むような顔して黙り込んだ。

一夏はそんな彼女に笑いかける。

 

「セシリアは当然国に帰るんだろ?鈴から聞いてるよ、最近経営者になる為の勉強を一層頑張っているって」

「今は信頼できる方にお任せしていますが、いずれわたくしが引き継がねばなりませんから。たくさんの従業員の方やそのご家族、その人生をも預かるということですし。半端な気持ちでは出来ませんわ」

「そっか。偉いなセシリアは」

「いえそんな……」

「じゃあな。俺そろそろ行くよ」

「あ、あの一夏さん!少しよろしいですか!?」

「ん?なに?」

 

急に強い声で呼び止められた一夏が怪訝そうに振り返る。セシリアは少しだけ逡巡する態度を見せたが、大きく息を吐くと一夏の方へ一歩踏み出した。

 

「確認しますが、一夏さんは進路の方はまだはっきりとはお決めになっていないのですね?」

「まぁ……この時期に恥ずかしい話だけど」

「で、でしたら、卒業後は、あの……」

「なに?」

「あの、宜しければ、えっと……」

「セシリア?」

「わ、わたくしと……わたくしと一緒にイギリスに行きませんか?」

「……えっ?」

 

 

 

 

「俺がイギリスに留学……」

 

セシリアと別れた後、一夏は部屋に戻るとベッドに身体を投げ出した。そのまま手を枕にして見慣れた天井をぼんやりと眺める。

 

『じ、時代はグローバル化ですの!今や世界では国や地域の枠組みを超えた、多種多様な人材が必要とされているのです。つまり、えー、留学を経験なさることは、一夏さんにとっても決してマイナスではないと……』

 

セシリアから提案された思いもよらぬ留学。おそらくは未だ進路があやふやな自分を心配してのことだろう。でも日本を離れるなんて考えたこともなかった。本来なら彼女の好意に感謝しつつも、そこですぐ断るべきものだった。

 

なのに……。

 

『それに留学を経験された方は、お給料の良い所への就職にも効くんですわよ』

 

彼女のその言葉が一夏を惑わせていた。

そもそも一夏が元々藍越学園を受験しようとしていたのは、そこが就職に有利だったということが大きかった。ここまで育ててくれた姉の為、一夏は早く自立して姉を楽にしてやりたかったのだ。

 

職業に貴賤はない、姉からはそう言われてきたし、給料に関係なく、どんな仕事であれ汗水流して一生懸命働いていける自信がある。それでもやはり貰えるお金は多いに越したことは無い。当たり前である。

 

 

だがこれは別に一夏に限ったことではない。男ってのは『給料がいい~』『月収○○万円保障!』そんな言葉に弱いのである。己の価値を稼いでくるお金で計ってしまう男の悲しい性なのだ。

やりがいやらプライドやらでメシが食えるか?家族養えるか?理想だけじゃやっていけない。現実ってもんがあるんスよ。

 

 

……まぁそんなわけで彼女の提案に少し心が揺れ動いている一夏であった。それにこんな自分を心配して提案してくれた、セシリアの友情を無下に出来ないという思いもある。

 

ただまぁぶっちゃけセシリアの提案は、彼女の欲望が100%入り混じった私欲溢れるものだったことだが。でも仕方ないのである。卑怯だろうが何だろうが恋愛とは戦い勝ち取るもの。行動しない者に勝機は訪れないのだ。

 

「おい居るか?入るぞ」

「あっ、おい……」

 

悩む一夏をよそに、いきなり我が物顔で他人の部屋(領域)に入ってくる不届き者。その名はオリ主。

せめて返事するまで入ってくるなよ、一夏は思う。もしオ〇ッてたらどーすんだ。

 

「何か用か?」

「ありがたく思え。感謝しろ。馬鹿のお前の為にこの俺が良い話を持ってきてやったぞ」

「良い話?」

「バイトなんざ探しているってことはどうせ進路も決まってないんだろ?ったくしょうがねぇな」

 

それについて生徒の大半は色んな意味でお前のせいだろうけどな。

一夏は思う。何にでも出しゃばる誰かさんのせいで困ってる人もいるんだよ。

 

「俺については知ってるだろ?世界のありとあらゆる大学、機関、そして国。世界中からオファーがひっきり無しに舞い込んでいる。優秀過ぎるのも困ったもんだよなぁ?天才って辛ぇわー」

 

その度にドヤ顔で報告されるこっちの方が辛ぇわー。

一夏は思う。なんでこいつは何かある毎に自分のところに言いに来るんだろうか。

 

「そこでだ。出来の悪い奴の今後を世話してやるのも、上に立つ者の役割だと思ってな」

「は?」

「まだどこにするか決めてねーけど、俺の行くところにお前も付き人としてでも置いてやるよ。なーに俺が一言言えばどこの国だろうが、大学だろうが、研究機関だろうが、フリーパスだ。仕方ないからお前も俺の行くところに連れてってやる。俺の近くでお前には分不相応な夢を見させてやるよ。お前みたいなグズの面倒まで見てやろうっていう俺の気高い友情に感sy」

「よし決めた。俺イギリス行こうっと」

 

一夏は決心した。

日本の外だろうが、メシマズだろうが、KAKUGOとSEKKYOUが織りなす『ORIとの生活』に比べれば、絶対に天国に違いないだろうから。

 

 

 

 

 

 

3月。それは別れの季節。

織斑一夏は空港で学園で出会った友に見送られながら、新たな生活に踏み出そうとしていた。

 

「一夏。元気でな」

「箒もな。元気で」

 

箒が涙をこらえるように、それでも気丈に笑って見せた。

大切な幼馴染。いつか心技共に日本一の剣士になって欲しいと思う。

 

「これ向こうで食べて。とっておきの真の酢豚だから」

「ありがとう鈴」

 

鈴が涙ながらに特大のタッパーに詰められた酢豚を渡してきた。

相変わらずの酢豚っ子ぷりだ。でもこれ税関で没収されないだろうか?

 

「一夏。今までありがとう。ボク本当に助けられたよ」

「頑張るのだぞ。一夏」

 

シャルとラウラが微笑みながらエールを送ってくれた。

その二人の手はしっかりと恋人繋ぎで結ばれている。幸せになって欲しいと思う。心から。

 

「皆さん。一夏さんのことはわたくしにお任せください」

 

えっへん、って感じで腰に手をあててセシリアが言う。

信用ならねー、変なモノ食わせて一夏を殺すなよー、そんな笑い声混じりのブーイングが一斉に起こり、セシリアがムキー!と怒る。

 

一夏は目を閉じ回顧する。魔境IS学園。良いことも悪いことも……なんか殆ど悪い思い出しかないような気もするが、それでも彼女たちに出会えたことは一生の財産になるのかもしれない。

 

「なぁみんな。ところで……アイツは?」

 

一夏は皆を見渡し、一番気になっていたことを尋ねる。確か今日この日に旅立つことを、前もって連絡してくれていたはずだが。

 

「ああ。それなんだがな。え~と、急に電波がな」

「伝えようとしたんだけど、あたしのスマホ急に電波が悪くなって」

「そうそう。ボクのもメールする瞬間に急に電波がおかしくなって」

「時に人は電波の前には無力となる。これは軍人でもどうしようもないことだ」

 

「そうか」

 

電波障害なら仕方ないな。

 

「じゃあみんな!行ってきます!」

 

一夏は元気よく言うと大きく手を振る。そしてセシリアと並んで歩き出した。

 

 

 

 

一夏は飛行機に乗り、窓際の席に座ると外を見た。

日本の景色。暫く見れなくなることを思えば少しセンチな気分になる。

 

「一夏さん?」

 

セシリアが少し心配そうに聞いてくる。一夏はそれに大丈夫という風に笑って首を振った。

 

「日本を長い間離れるのは初めてだからな。やっぱ少しだけ緊張するよ」

「当然ですわ。でもわたくしがいますから」

「ありがとう。ところでセシリア」

「はい。なんですか?」

「電波障害なら仕方ないよな」

「はい。仕方ありませんわ」

「真相は?」

「せっかくの旅立ちの日に最悪な顔を見て最悪な気分になりたくありませんもの」

「そうか」

 

そこで飛行機離陸のアナウンスが入り、一夏は目を瞑る。

さようなら日本。さよならオリ主。

 

そうして間もなくして、二人を乗せた飛行機は飛び立った。

 

 

 

 

 

その後無事に霧の国イギリスに辿り着いた二人。旅の疲れで泥のように眠っていた一夏は、繰り返されるストーカーコールによって強制的にザメハされた。電話に出ると何やらオリ主が大声で喚いている。自分が無視されたことが気に入らないようだ。

 

電波障害だし仕方ないだろ。

そう伝えるといきなり火の付いたように怒り出した。思わず携帯を耳から離す。

 

オリ主の罵詈雑言を聞きながら一夏は視線を動かす。時刻は午前3時。

 

時差を考えてくれよ。

心からそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリ主は人の心が分からない。





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