妖精魔界戦記ディス・アヴァロン   作:サンダーボルト

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小説書く時、筆が進む時と進まない時がありますが、書きたい場面の時はガンガン進みますが、そこへ至るまでの過程を書くのが難しい。

同じような文章にならないように注意したいですね。


アルトリア・キャスターの冒険(Ⅱ)

 ソールズベリーの鐘つき堂で、アルトリアとコバヤシは巡礼の鐘を鳴らそうとしていた。

 

 

「ねえ、コバヤシ。私、考えたんだけどさ」

「なんだ?」

 

 

 神妙な顔つきのアルトリアが、自身の考えを口に出す。

 

 

「モルガン陛下は、この鐘を鳴らす巡礼を何度も何度も繰り返してきたんだよね?」

「そうだな」

「じゃあ、一度に沢山つけば、その分いっぱい強くなれるんじゃないかな……?」

「…………」

 

 

 

 

 

 

「お前天才だな。いいぞ、やっちまえ」

「よーーーーーし!やるぞーーーー!!」

 

 

 気合いを入れなおしたアルトリアは、巡礼の鐘を連打する態勢に入った。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 ――――ゴーーン、ゴーーン、ゴーーン

 

 ロンディニウムに滞在する円卓軍は、突如響き渡る鐘の音に耳を傾けた。

 

 

「団長!これはまさか……!」

「……この場所まで届く鐘の音か。間違いない、巡礼の鐘が鳴らされたんだ」

「ならば、予言の子が遂に現れたのですね!」

 

 

 救世主の登場を知らせる鐘の音に円卓軍は沸き立った。

 

 

「(遂にこの時が来た。我々円卓軍も立ち上がる時だ。人間と妖精が互いに手を取り合える世界の為に……)」

 

 

 ――――ゴーーン、ゴゴーーン、ゴゴゴンゴーーーン

 

 

「……あれ?」

 

 

 おかしな鐘の鳴り方にパーシヴァルは疑問符を浮かべる。騒いでいた円卓軍達も、我に返って静かになっていく。

 

 

 ――――ゴンゴーーン、ゴゴゴーーン、ゴンゴンゴンゴーーーーン

 

 

「……ど、どうなっているんだ……?」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「わーーーーーーーい!!」

 

 

 巡礼の鐘を鳴らす度、力が漲るのを感じるアルトリアはテンション高く鐘を連打していた。聞く者によっては胸が締め付けられたり忌々しく感じたりしているとはつゆ知らず、それはもう楽しそうに鳴らしていた。

 

 

「アルトリア、もうその辺で良いんじゃないの?」

「ん……そうだね」

 

 

 ようやく落ち着いたアルトリアは、高まった力を確かめるように手を握って開く。

 

 大聖堂の外へ出た二人。不意に、コバヤシの頭の中に声が入り込んだ。

 

 

「……」

「どうかした?」

「おー……モルガンに呼び出された。もうすぐ夜だし、悪いがどっかの宿を見つけておいてくれ」

「え……うん、分かった。いってらっしゃい……」

 

 

 水鏡の術でコバヤシはその場から消え去る。アルトリアは一人、宿を探して街を歩いて回る。

 

 

「……頭痛い」

 

 

 ごうごう、ごうごう。

 

 アルトリアの妖精眼に映る、悪意の嵐。自分に寄せられる勝手な期待にうんざりしながら、少しでもマシな場所を求めてアルトリアは動いた。

 

 

「……あっ」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「いや、あのさ……。俺、宿を見つけてくれって言ったんだけど。お前、これ……酒場じゃん」

「大丈夫!一泊だけなら許してくれるって言ってたから!ね?」

「お、おう。上の部屋はどうせ使ってないから良いけどよぅ……」

「……まあいいや」

 

 

 モルガンの呼び出しから戻ってきたコバヤシを迎えたのは、街の酒場の一室を一晩借りたアルトリアの満面の笑みだった。

 

 

「ああ、そっちの人間。お前さんに客が来てるぞ。部屋に通してあるから、早く行ったほうがいいぞ」

「俺に客?誰よ」

「ほら、コーラルさんだよ」

「へえ……何しに来たのやら」

 

 

 コバヤシは酒場の二階、自分達が泊まる予定の部屋にいるコーラルに会いに行く。扉をノックして中に入ると、部屋の中を見回していたコーラルが出迎えた。

 

 

「どーも、さっき振りですなぁ」

「……こ、こんばんは、人間」

「人間が使う部屋が、そんなに珍しいか?」

「いえ、ただ……私達の部屋と、そんなに変わらないな、と」

「そりゃ、人間の真似してるんだからそうなるだろうよ」

「そ、そうですね……」

 

 

 どこかぎこちない様子のコーラル。コバヤシはテーブルを挟んだ向かいの席に腰を落とす。

 

 

「それで、何の御用で?」

「……これをお返しに」

「……ん?」

 

 

 コーラルが取り出した大きめの袋。その中には、コバヤシが大聖堂に置いてきた金の延べ棒が入っていた。

 

 

「これは……やり過ぎた分、詫びとして置いて行ったつもりだったんだけどねえ…」

「だと思いました。なのでありがたく使わせて貰った分の残りです」

「……わざわざ返しに来たのか」

「ええ。修繕費と治療費分は頂きましたので」

「……どーもね」

 

 

 渡された袋を懐にしまいながら、コバヤシはコーラルを見定める。

 

 

「アンタは……妖精國じゃ稀に見る、良い妖精だな」

「……何です、いきなり?」

「この町……いや、この国じゃアンタみたいな妖精は、さぞ生き辛いだろうな」

「そんな事は……」

「俺の見立てじゃあ、ソールズベリーはアンタがいなけりゃ、もっと無秩序の町になるだろうよ」

「この町はオーロラ様がいてこそ成り立ちます。私の力など足元にも及びません」

 

 

 僅かに眉間に皺を寄せるコーラルは、異邦の魔術師に食って掛かる。

 

 

「予言の子の側近とはいえ、不用意な発言は控えなさい。オーロラ様は人間にもお優しいお方ですが、私は違います。人間など嫌いですし、対等のものとは考えていません」

「そこだよ、俺が認めてるのは」

「なんですって?」

「アンタは嫌いな人間でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。誰にだって出来る事じゃない。ましてやアンタは妖精で、好きでもない相手だというのになあ」

「見当違いも甚だしい。人間に仕事を与えているのは、オーロラ様の慈悲に対する報いです」

「そうかい。拾った後の人間がどうなったか、アンタの主人が気にしてるとも思えんが」

「お黙りなさい。例え予言の子と共に旅する異邦の魔術師と言えども、オーロラ様への侮辱は許しませんよ。ましてや――私とオーロラ様を比べるなど、それこそ許されない」

「許されないって、誰からだ?ここには俺とアンタの二人しかいないし、それに俺は良い所を良いと言ったまでだ」

 

 

 怒気を滲ませて睨むコーラルに対し、コバヤシは自分の主張は間違ってないと視線を受け止め、ただ見つめる。

 

 

「…………ぅ」

 

 

 先に音を上げたのはコーラルの方だった。視線を逸らした彼女は、少し気まずそうに席を立った。

 

 

「とにかく、貴方は発言に気を付けるようにしなさい。誰がどこで聞いているのかなんて、分かりませんから」

「分かったよ。もう戻るのか?」

「ええ。もう用事は済ませましたから」

 

 

 そのまま部屋を出ようとするコーラルだったが、扉に手をかけた所でコバヤシの方へ振り返った。

 

 

「……その、次の目的地は決まっているのですか?」

「んー……いいや」

「それならば、ノリッジに向かうといいでしょう。予言によると、次の厄災が起こる場所はノリッジで間違いないでしょうから。

 町を治めているスプリガンも、どういう訳か滅多に表に出てこなくなっているようですから、妨害される心配も少ないかと。予言の子の実力ならば、かの厄災を退ける事も可能でしょう。……くれぐれもお気をつけて」

 

 

 一言を添えて、今度こそコーラルは部屋を出て行った。

 

 部屋の窓から外を見て、大聖堂へ戻るコーラルを見送るコバヤシ。気付けば空は暗くなり、街灯の明かりがぽつぽつと街を照らすのが見えた。

 

 

「……飯にするかな」

 

 

 一階に降りたコバヤシは、厨房で話している店主とアルトリアを見つけた。

 

 

「あ、コバヤシ。夜になったしご飯にしようよ。店主さんが料理に凝ってて、色んな食べ物や調味料が置いてあるよ!」

「ま、まあそんな大層なものでもないけどな……」

「へー……カレーはあるのか?」

「カレー?……いや聞いた事ないな。どんな食い物なんだ?」

「……カレーが無い……だと……!?」

 

 

 コバヤシは未だかつてない衝撃を受けた。何せカレーとは魔界で一番馴染みのある料理であり、艱難辛苦を共に乗り越えてきた戦友も同然の存在である。

 

 そうか、妖精國がこんなにも地獄なのはカレーが無いせいか。コバヤシはブリテンを哀れんだ。

 

 このやたら顔面が濃い妖精にカレーを教えてやるために、コバヤシは自ら厨房へ立つ。一口大に切った肉と野菜を鍋で炒め、水を加えて灰汁を取りながらじっくり煮込んでいく。

 

 

「……コバヤシって料理出来たんだ」

「まあ、カレーは良く作ってたからなぁ。具も煮えてきたし、後はルーを入れてまた煮込んでいくぞ」

「お、おお……!こんな料理があるんだな!中々いい香りがするな!」

「よーし、最後はそこら辺の物を片っ端からぶち込んで……」

「待って待って待って待って待って」

 

 

 調理の〆にかかろうとしたコバヤシを、アルトリアは全力で止めに入った。

 

 魔界暮らしのアルトリアは知っている。魔界で作られるカレーには、入れた具材の種類により追加効果が得られる事を。

 

 前線へ出ているバーゲストが、メガネが大量に入っているカレーを無表情でボリボリ食らっていた事を。

 

 戦う時なら我慢するが、そうでない普通の食事なら遠慮してもらいたいアルトリアなのであった。

 

 

「ぐおっ……!?口の中が痛くなるぞ、この料理!だけどウマイ!スプーンが止まらねえ!

 ……待てよ?こんなに辛い食い物なら、甘い飲み物と一緒に食べれば良いんじゃないか?ミルクと果物を混ぜてみるか……」

「か、から、かりゃい……!?ひえぇ……これ辛口だぁ~……」

「自分で飯作るのなんて久しぶりだな……。昔はウサリアにせがまれて作ってたんだったな。あー懐かし……」

 

 

 その後、カレーに目覚めた店主にウサリア秘伝のカレーレシピとカレールーを分けてやり、妖精國にカレーを布教したコバヤシは満足気に床へ就いた。




・魔王コバヤシ

 カレーはどんな辛さでもイケるクチ。
 大嫌いなカレーを食べないと暴走する呪いをかけられた仲間がいた為、よくカレーを作ってあげていた。ただ、食べていくうちにカレーが好物になっていたので、呪いが解けた後もカレーをねだられていた。


・アルトリア・キャスター

 カレーは甘口が好き。
 辛口のカレーは苦手だが、アルトリアらしく食欲でカバーして食べきった。
 大の男と一緒の部屋で寝泊まりするというシチュに気付いて赤面していたが、当の本人がカレー布教に満足してサッサと寝てしまったため、アホらしくなってスヤスヤ眠った。


・店主の妖精

 カレーの魅力に憑りつかれた妖精。原作と違って名前を貰っていない。
 元々、創意工夫で料理を生み出していった彼にとって、スパイスの組み合わせで千差万別の味に変わるカレーは新たな生きがいとなった。
 そう遠くない未来で、彼の店は妖精國にカレーを広めた有数の店になるのだが、現時点では誰も予想していないだろう。
「カレーは良いぞ、カレーは!そこのお前!カレー食っていけ!」


・コーラル

 カレーは中辛が好み。
 彼女に渡された金塊は魔界で賄賂に使われるアイテムであり、誰に渡しても非常に喜ばれる。それを必要以上に受け取らなかった辺りに、彼女の自制心の高さが窺える。
 帰った後、自分も騎士を従えて邪魔したくせに人が妨害される心配とか何様…!?と、ちょっぴり自己嫌悪。


・パーシヴァル

 カレーはできれば甘口がいい。
 立ち上がる時が来たかと思いきや、滅多矢鱈に鳴らされる鐘の音に困惑。虐げられている者を助けるのが彼や円卓軍なのだが、人間に加えて多数の妖精が強制労働させられている現状では、どうしても手が足りずにパンク気味。


・魔界のカレー

 魔界のスーパーフード。アイテムとしては体力と魔力を割合回復させる高性能回復薬であり、ミニ魔界のカレー屋ではアイテムを具材として入れてオリジナルカレーを作れる。
 オリジナルカレーには、入れたアイテムによって様々な効果が食べたものに付与される。バーゲストが食べていたメガネたっぷりのカレーだと、クリティカル発生率が+100%される。
 メガネ以外にも剣だの槍だの筋肉だの入れられるし、エクレアとかガムとかパフェを入れてもカレーになる。なんならカレーの具材として野菜カレーやチキンカレーを入れたカレーも作れる。カレーの可能性は無限大である。

この作品の設定を使った別の小説をぼんやり考えてます。なんか面白そうだと思ったものがあれば、一票どうぞ。

  • 転送事故でオラリオへ(ダンまち)
  • 転送事故でワノ国へ(ONE PIECE)
  • 汎人類史モルガンを陰から守る会
  • ゲーティア絶許・グランドオーダー
  • 原作6章、カルデア殲滅ルート
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