妖精魔界戦記ディス・アヴァロン   作:サンダーボルト

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バレンタインイベント始まりましたねぇ。

石は空になったけれど、モルトリ親子の礼装出たからワシ満足。


アルトリア・キャスターの冒険(Ⅴ)

「聞いたわよ~アルトリアちゃん。モースの軍団に加えて、厄災の怪物相手に獅子奮迅の大活躍だったらしいじゃない!住民も憲兵も皆、凄い凄いって褒めそやしていたわよ?」

「あはは……どうもありがとうございます」

 

 

 事後処理を終わらせた後、ペペロン伯爵の屋敷で歓待を受けていたアルトリア。厄災も祓い終ったし、もう用済みだと言わんばかりにさっさと出ていこうとした二人を、ペペロンは一旦引き止めた。『少しは休んでいきなさい。旅に必要な物の補充くらいは世話させなさいな』というノリッジの総意をペペロンから伝えられた二人は、つかの間の休息をとっていた。

 

 

「……はぁ、美味し……」

 

 

 今や渦中の人物であるアルトリアは、ここまで来る間に民衆に囲まれて賛美の言葉をかけられていた。正直慣れていなかったので助けてもらいたかったものの、頼みの魔王はいつの間にか離れた場所に逃げている始末だった。それに怨嗟の念を送りつつ、笑顔を振りまいて逃げてきたアルトリアは、淹れてもらった暖かいお茶に舌鼓を打つ。

 

 

「ああいうのは苦手かしら?」

「ええと……まあ、はい」

 

 

 疲れた様子を見て気遣う言葉をかけた伯爵に対し、予言の子は曖昧な笑みを返した。予言の子として動いている以上、ああなるのは避けられないと分かっていた事だ。

 

 ただ、それに耐えられるかどうかは別の話。否が応でも、頭には思い出したくない記憶が浮かんでくる。

 

 

(あの時みたいに助けてくれたっていいじゃん……)

 

 

 ティンタジェルでの生活を断ち切った自分の持ち主に、アルトリアは心の中で口を尖らせて抗議した。今は出発の準備が整うまで、ノリッジで掘り出し物を探しているらしい。本音を言うと自分も行きたかったが、また囲まれるのは御免だったので見送った。

 

 

「あら、ラブの気配がするわね」

「……はい?」

「好きなの?彼の事」

「――――」

 

 

 唐突な恋バナに硬直するアルトリア・キャスター。感情豊かな年頃の娘ならば、惚れた腫れたを人に指摘されれば赤面の一つもするだろう。

 ただ一瞬、心臓の鼓動が早まったアルトリアだったが、思いの外反応は鈍かった。

 

 

「……どうなんでしょう」

 

 

 はぐらかす風でもなく、自分の抱く気持ちが何なのかを理解できていない顔。好意的に見ているのは確かだが、それがモルガン達が彼に向けている感情と同じなのかと聞かれれば、自信が無い。

 

 そもそも自分は彼の所有物であり、ここまで強く育てて貰った恩義もある。それとごっちゃにしていないだろうか?アルトリアの抱く心情は複雑だった。

 

 

「好きか嫌いかで言えば、好きだって答えられます。でも、伯爵の言うラブかどうかっていうのは、私にはまだ早いかなって……」

「そうかしら?それはアルトリアちゃんが、尻込みしてるだけじゃなくって?」

「え……」

「貴女には貴女の立場があるんでしょうし、思うように動けないのかもしれない。でも私が見る限り、彼は部下に束縛を強いるタイプではないと思うけど?」

「……はい」

 

 

 それは彼女も知っている。バーゲストとのやり取りを見るに、徹底して上下関係を叩きこまれているとも思えない。

 

 

「部外者がいきなり突っ込んだことを言ってごめんなさいね。でも、アルトリアちゃんみたいな女の子には、もっと自分に正直になって欲しいのよ」

「正直に……?」

「彼、貴女が思っているよりも良い人よ。少なくとも、自分を慕う相手を無碍にしたりしないわよ?したい事とかやりたい事とか、言ってみたらどうかしら」

 

 

 ペペロンの言葉を受けて、考え込むアルトリア。果たして自分のやりたい事とはなんだろうか?

 

 ……いや、そもそも。

 

 所有物でしかない自分が、言っていいものなんだろうか?

 

 彼は自分をどう思っているのだろうか?

 

 

「……ちょっと、考えてみます。お茶ご馳走様でした」

 

 

 アルトリアは席を立ち、貸してもらっている部屋へと引っ込んだ。それと入れ替わりになるように、コバヤシが散策から戻ってくる。

 

 

「おかえりなさい。良い物は見つかった?」

「いいや……空振りだった」

「それは残念だったわね」

 

 

 フードを脱ぎ、僅かに疲れた様子のコバヤシは椅子に座ってお茶に口を付けた。ふと見ると、ペペロンが神妙な面持ちでこちらを見ている。

 

 

「どうした、何かあったのか?」

「アルトリアちゃんがね……ちょっと心配なのよ」

「心配?今のブリテンにアイツをどうこう出来る存在なんていないだろう」

「違うわよ。あの子がこれまで、どんな生き方をしていたかは知らないけれど。私が思うに、あの子は我慢する事に慣れちゃってるんじゃないかしら」

「……んー……どうだか。周りが自分より強い連中ばっかりだったし、自分を抑えこんでた面はあるかもしれないが……」

「そう……」

「ま、巡礼の旅で力が解放されていくって分かった事だし、そのうち解決するだろうよ」

 

 

 ごっそさん、と言葉を残してコバヤシも部屋へ戻っていく。

 

 休憩を終えた二人の次の目的地はオックスフォード。モルガンからオックスフォードとグロスターの巡礼の鐘が解放されたと連絡があった。北の果てのオークニーへの道すがら、二つの街へ寄る予定だ。

 

 伯爵が気を利かせて、見送りに来た人数は最小限になっている。握手を交わした予言の子はノリッジを背にして歩き出した。異邦の魔術師も後に続こうとしたところで、伯爵が最後に話し出す。

 

 

「あの子の事、しっかり見てあげないと駄目よ?」

「あん?そこまで過保護にならなくても良いだろうに。アルトリアの脅威になりそうな奴はそういないし」

「分かってないわねェ。どれだけ強くなってもね、女の子は頼りになる誰かに、傍にいて欲しいものなのよ。等身大の女の子のアルトリアちゃんの事、アナタはちゃんと見てあげて」

「…………まあ、心に留めてはおこう」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 巡礼の旅について、私はモルガン陛下から必要以上の情報を教えてもらえなかった。旅が進むにつれて、楽園の妖精の使命がどういうものなのか知識が与えられると。それだけは教えてもらえた。

 

 ……妖精國に戻ってから、嵐のような風が酷くなった。魔界の空は真っ暗だけど、他の魔界の輝きが星のように散りばめられてて綺麗だった。

 でも、ブリテンで目を瞑った時に見える光景は、真っ暗なだけで何も無い。前は見えていた一つの星の光すら、今は弱くなっていてギリギリ見えるかどうかだ。

 

 

(――帰りたい。魔界へ、帰りたい)

 

 

 ソールズベリーで一人になった時、とても心細かった。

 

 ノリッジで囲まれた時、とても苦しかった。

 

 体は強くなったし、前みたいに好き勝手される事は無いけれど、悪意に晒され続けるのはどうしたって慣れない。

 

 悪魔たちのように悪意をむき出しにして襲ってくる方が、私にとっては楽なのだ。妖精はいつだって、言葉の裏に悪意が潜んでいる。私が楽園の妖精だから。私が楽園の妖精であり続ける限り、私はブリテンの妖精達にとって、潜在的な脅威になり続けるんだろう。

 

 コバヤシも妖精眼がどういう物かは知っていても、ブリテンがどう見えているかまでは想像できていないんだろう。私も言うつもりは無い。

 

 ――だって、迷惑かけたくないもん。

 

 本当はすぐにでも帰りたくなったけど、レベルが打ち止めになっている現状じゃ、私はただの足手まとい。皆が強くなっていってる中、私だけ弱いままだといつか愛想を尽かされるかもしれない。

 

 妖精眼は本当の心が見えるけれど、それで相手の全てが分かる訳ではないのです。

 

 ……それに、もし。

 

 自分を助けてくれた相手にまで、見捨てられたら。

 

 私は、どうすればいいの?

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 オックスフォードに着いた私達は、鐘つき堂に向かったのだけれど。鐘を鳴らし終わった後に、領主の使者の方が私達をレストランへ招待してくれた。

 

 初めはワクワクしてた私だったけれど、お店に着いて店員さんが扉を開けてくれて、中の光景を見たら固まってしまった。

 白を基調とした店内は落ち着いた雰囲気を纏っていて、とても上品な香りがした。間違いなく、上級妖精が通うような格式高いレストランだった。

 

 入店を促されても動けなかった私の背中を、コバヤシがそっと押してくれて、ようやく足が動いた。用意されていた私達の席に店員さんが案内してくれたんだけど、やっぱり緊張して上手く動けなくて。

 

 

「そう強張るな」

「あっ……」

 

 

 コバヤシが私の手を取って連れて行ってくれて。その手がとても優しくて。

 

 

「……ありがとう」

 

 

 ――胸の鼓動が早くなったのを自覚した。

 

 その後のコバヤシは別人のようで。私に椅子を引いて座らせてくれて。立ち振る舞いが素人目から見ても洗練されていると分かる。

 

 運ばれてきた料理を食べる時も、食器の擦れる音すら聞こえないまま、綺麗な姿勢で綺麗に食べ進めていた。

 

 

「美味しいね」

「そうだな。ここまでの料理が出て来るとは、予想外だった」

「コバヤシはこういう場所で食べるの、慣れてるの?」

「まあ……マナーなんかはしこたま叩き込まれてな。俺を魔界に召喚した魔王、セラお嬢……セラフィーヌっていうんだが、そいつにな」

「そうなんだ……」

 

 

 気付けば私は、声を抑えて静かにお喋りしながら料理を楽しんでいた。場違いだと思っていたけれど、いつの間にか体の力みは抜けていた。

 

 

「えっと……」

「ナプキンは適当に置いておけ。綺麗に畳むと不味いって意味になる」

「そ、そうなんだ」

 

 

 時々フォローしてもらいながら食事を終えて、私達はお店を出た。

 

 牙の氏族の妖精達が私達の事を目を丸くして見ていて、私は少しだけ誇らしくなった。私の持ち主は凄いんだぞぅ。

 

 

「……また来たいな」

「ほう。この店気に入ったのか?」

「そうだけど、そうじゃないよーだ」

「はあ……?」

 

 

 訳わからん、とコバヤシは頭を搔いて先に進んでいく。片方の手は空いたまま。

 

 また握ってもらいたい。でも握りに行けない。

 

 振り払われるのが、恐いんだ。

 

 自分に正直になって、その結果が拒絶されるかもしれないなら。

 

 私はずっと、このままで良い。




・アルトリア・キャスター

 ぶっちゃけ巡礼の旅とかやりたくない。でもやらないと強くなれない。楽園の妖精がブリテンの妖精達にどう扱われるかを再確認して辟易している。
 コバヤシは一度拾った物を捨てる気は無いのだが、アルトリアはそれを信じきれていない。心の奥底で離れるのを恐れているが、自分の行動で嫌われて捨てられたくないので我慢できる良い子を演じている。


・魔王コバヤシ

 魔界に来るキッカケはセラフィーヌによる召喚儀式。そこから紆余曲折あって魔王まで上り詰めた。
 初めはプリニーより少しマシ程度の境遇だったものの、後に今の名前を贈られて色々と叩き込まれて魔王まで至る。
 アルトリアとの関係はモルガン達に比べて絆が深まっていない。ペペロンチーノの助言もあったが、進展は中々難しい。

この作品の設定を使った別の小説をぼんやり考えてます。なんか面白そうだと思ったものがあれば、一票どうぞ。

  • 転送事故でオラリオへ(ダンまち)
  • 転送事故でワノ国へ(ONE PIECE)
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