妖精魔界戦記ディス・アヴァロン   作:サンダーボルト

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魔王と女王

「…………ぅ…………ここ、は……?」

 

 

 悪魔的な力を受けて吹き飛んだモルガンの意識が戻り、ゆっくりと目と頭を覚ましていく。あれほどの熱量をこの身に受けて未だに自分が生きているのは、何かしらの意図があって生かされたのだろうとモルガンは推測した。

 

 どうやら、自分はベッドに寝かされていたようだ。隣にはバーヴァン・シーが寝かされている。他の2人も一緒で、自分と同じように生きたまま連れてこられたようだ。

 

 

「お目覚めになられましたか」

 

 

 穏やかな雰囲気を纏った女が、モルガンへと声をかける。

 

 

 ――――弱い

 

 

 自分と戦ったあの男とは比べるまでもない。モルガンにとって脅威になり得ない強さだ。

 この女を倒すべきか一瞬迷ったが、それは悪手だと結論づける。上を見れば暗黒の空がこちらを見下ろしていた。どう考えても自分の知っている世界ではない。

 

 

「お体の具合はいかがでしょう?どこか痛い所などはありませんか?」

 

 

 モルガンは自分の体を調べて、傷一つ残っていない事に驚愕した。体が蒸発しかねない魔法を受けたのだから、傷跡の一つくらいは残っていてもおかしくないくらいだ。それに戦った時に消費した魔力も体に充填されている。

 

 

「……問題ない。むしろ調子が良いくらいだ」

「それは良かった」

「ここはどこだ。それと私達を連れてきた男はどこにいる」

「ここは魔王コバヤシ様が所有しているミニ魔界です。コバヤシ様にお会いになりたいのでしたら、ここの一番高いところにある展望台にいらっしゃるかと。それほど広い魔界ではありませんので、迷う事は無いと思います」

 

 

 いまだ目を覚まさない騎士たちを置いていくのは気が引けたが、何かされる心配も無いだろうと考えて空へ飛びあがる。

 

 女の言っていた通り、ある程度の高度から全てを見渡せる程度の広さだ。展望台に座って空を眺めている男を見つけたモルガンはゆっくりと近くへ降り立った。

 

 

「おー、起きたか。まずは自己紹介でもしておこうか。我が名は魔王コバヤシ。見ての通り人間だ」

「……モルガン。モルガン・ル・フェ。私の真名です」

 

 

 少しわざとらしいポージングで自己紹介を始めた魔王は、確かに人間だった。モルガンの妖精眼がコバヤシの言葉の真偽を見抜く。そして同時に恐怖がぶり返してくる。コバヤシに秘められている魔力量がモルガンを遥かに凌駕しているからだ。

 

 だが、恐怖に屈するわけにはいかない。モルガンは自分を律して口を開く。

 

 

「魔王コバヤシ。何故我々をここに連れてきたのです。我々に何を望むのですか」

「元々はお前たちまで連れて来る気は無かったんだがなぁ。俺がモルガンを倒した後、周りに居た連中がお前とあの騎士達を差し出してきたのさ。これ以上暴れるな、帰ってくれって。ま、俺としてはお前の持ってた武器目当てであの世界にやってきたわけで、あれ以上暴れる気も無かったからありがたく頂戴して帰ってきたけど」

「……そうでしたか」

 

 

 自分達が生贄として捧げられた事に対して、モルガンは落胆も失望もしない。遠い昔からアレらに期待などしていない。

 

 

「と、いう訳で既にお前達四人は俺の所有物になったから、この魔界に連れて帰ってきたんだ。お分かりかい?」

「私達は敗者です。正面から戦い、負けたのなら納得するしかありません」

「お、話が分かるのは高ポイントだ」

「とは言え、私達の待遇がどうなるのかは教えていただきたいですね」

「そりゃそうだ。まあ暫らくは魔界の生活に慣れてもらう事になるな。魔界暮らしは自由だけれど、力が無ければ全てを奪われる厳しい世界だ。今のお前達だと、そこらの下級悪魔に負けることはないにしても、上級悪魔に勝つのは難しそうだ」

 

 

 その言葉にモルガンは少し安堵する。少なくとも、コバヤシのようなデタラメな存在がうようよしている世界ではないようだ。

 

 

「ま、連れて帰ってきた以上、面倒は見るさ。少なくとも修羅悪魔から身を守れるようになるくらいには鍛えてやろう」

「……その、修羅悪魔というものの強さはどれ程なのでしょうか?」

「ステータスだけなら俺と同じくらいだな。修羅次元に行くとうようよいるなぁ」

 

 

 モルガンの心の安寧は砕け散った。

 

 

「……魔王コバヤシ。私はもう、ブリテンには帰れないのですか?」

「うん?ブリテンってお前のいたあの世界?帰りたいならたまになら帰っても構わないが……帰りたいのか?自分を売った連中がいるのに?」

 

 

 心底理解できない、といった表情でコバヤシは聞き返す。確かに、忠誠心のない連中の元に帰るのは度し難い事なのだろう。

 

 

「それは……はい。貴方には分かり得ないでしょうが、私は自分だけのブリテンを追い求めてきたのです。それを、手放したくはないのです」

「そうか……。でも、()()()()()()()()()()()()()。それは分かってる?」

「…………ええ。承知の上です。ブリテンは、滅びゆく事を定められている。それでも、私にとってブリテンは、そう簡単に諦められるものではないのです」

「ふうん……」

 

 

 興味があるのかないのか、顎をさすりながらモルガンの瞳を覗き続ける魔王コバヤシは、良い事思いついた!とばかりに手を叩いた。

 

 

「じゃ、モルガン。お前があの世界の魔王になってしまえばいい」

「……からかっているのですか?」

「まさか。どうもあの世界は、行く末を他の大きな力に握られてるらしい。だったらモルガンが力ずくで奪って造り変えれば、滅びの道を変えられるだろう」

「…………そ、そんな事が本当に?」

 

 

 モルガンの心が大きく揺らいでいた。元より支配欲が大きい彼女にとって、今の提案は非常に魅力的だ。目の前の魔王の力の強さも、この話の信憑性を大きく上げていた。

 

 

「教えてください、魔王コバヤシ。ブリテンを我が物にするにはどうすれば……!?」

「まあ、兎にも角にもお前が魔王級の力を手に入れないと話にならないな。あのブリテンを魔界にするのは、こっちの世界の法則に引きずり込むって事だ。俺がブリテンに目を付けたのは偶然だけど、本格的に魔界として機能すれば、他の魔王にも確実に目を付けられるだろうね」

「そうですね……自らが治める國を自らで守れぬなど言語道断です」

「よし、そうと決まれば早速行動するか。モルガンは一旦魔界病院に戻って、他の三人が起きたら説明しておいてくれ。俺はお前達を受け入れる準備をしておくよ」

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きなさい」

「「はぶぅっ!?!?」」

 

 

 戻るや否や、気付けの魔術で妖精騎士二人を叩き起こしたモルガン・ル・フェ。

 

 

「へ、陛下!?ここは一体!?わ、私達は一体どうなったのですか!?」

「落ち着きなさいガウェイン。混乱するのは分かります。とりあえず二人とも、体に異常はありませんか?」

「……失礼いたしました。自覚できる痛み等はありません」

「僕も同じです女王陛下。でもなんで?確か僕はあの人間に空で組み付かれて地上に落とされた筈なんだけれど……」

「それを言うなら私もだ。……今でも信じ難いが、指先一つで倒された」

「あの人間が何者なのか。今の私達の状況はどうなっているのか。これからどうするのか。全て説明します。トリスタンが起きてから」

「「……」」

 

 

 モルガンはトリスタンの頭を膝に乗せて撫でていた。扱い違い過ぎない?と二人の妖精騎士は思ったが口には出さないでおいた。

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  • モルガン・ル・フェ
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