妖精魔界戦記ディス・アヴァロン   作:サンダーボルト

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遂に冒険が終わりました!!

でも後にカルデアオーロラ異星の神ケルヌンノス奈落の虫いるんだよね!!

この小説いつ終わるかな!?


アルトリア・キャスターの冒険(終)

「光が止まって出てきたと思ったら……どうなっているんだい?

 聖剣は君の手にある。そしてキャスターも君の手にある。

 ……いやいや、おかしいだろう。等価交換だって言ったじゃないか!?なんで両方持って帰ってこれたんだい!?

 星の炉心の中で何が起きたのか、私に教えてくれ……ぐはっ!?」

「うるせえ」

「マーリン……」

 

 

 聖剣を懐にしまったコバヤシは、置いてあったヤドリギの杖で詰め寄ってきたマーリンを殴って黙らせた。

 幻覚を見せたのは自分で頼んだ事なので罪悪感が湧いたアルトリアは、コバヤシの手をくいっと引いた。

 

 

「あんまり怒らないであげて。あれは私が頼んだの。マーリンは私のお願いを聞いてくれただけだから」

「いや、別にそれはいい。俺はモルガンと違ってコイツに恨みは無い。

 ただうるさかったから殴った

「扱いが酷くないかい!?」

「黙れロクデナシ。……モルガンがお前の事を嫌うワケだよ。

 昔、アルトリアに魔術を教えたのはお前だろうに。どうしてそれを炉にくべる選択が出来るかね……」

 

 

 じろり、心底理解できないという目をする男に対し、花の魔術師の態度は不自然だった。

 

 

「……魔術?……はて?」

 

 

 とぼけた様子も無く、本気で覚えが無さそうに首を傾げたマーリンに、コバヤシは彼に向けた目を逸らして伏せた。

 

 

「――いや、何でもない。

 さっきも言ったが、俺はお前に恨みとかは無いんだ。()()()()

 

 

 彼の言葉に含まれたニュアンスから、嫌な予感を感じる。

 アルトリアの手を引くコバヤシは、選定の場の外へ出る直前でマーリンを手招きした。

 

 

「老婆心ながら言っておく。その性格直さないと、この先ロクな目に遭わんぞ」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「………………えっ、なにあれ」

 

 

 アヴァロンの(ソラ)の彼方から飛んでくる魔力をアルトリアは感じた。

 煌めく黄金と白銀の光が、螺旋を描いた矛先を楽園へ向けている。

 天を見上げて落ちてくる星を見たマーリンの表情は引きつっていた。

 

 

「あ、あれは君か!?君がやったのか!?

 あれは最果ての槍(ロンゴミニアド)じゃないか!どうして楽園に撃てるんだ……というか、なんでそんなに離れてるんだい!?」

 

 

 コバヤシはアルトリアを連れてマーリンから距離を取っていた。コバヤシは呆れた表情で語りだす。

 

 

「キャメロットの城壁に装備されてるアレ。ロンゴミニアドな。他の異聞帯の攻撃にも使えるらしいんだわ。

 だけどそれには、砲撃する場所の正確な座標がいるんだ。適当に空に撃ったところで、宇宙の彼方に消えるだけだしな」

「いや、アヴァロンはそもそも星の中にあるんだけどね?地上の砲台が地下を攻撃できるっておかしくないかい?」

「まあな。だけどそれを可能にする術がある。

 ()()()()()()()。ビーコンを持った奴を狙いたい場所に送り込めば、ロンゴミニアドはその信号が発信されている場所に向かって落ちる。

 位置が分かっていれば、水鏡を通して余計な被害を出さずに狙えるんだよ」

 

 

 アルトリアもマーリンも、コバヤシの言っている理屈は理解できた。

 しかし、それには誰かがそのビーコンを持っていなければならない。

 魔術によって仕掛けられた誘導装置など、誰かが持っていれば分かるだろう。

 

 

「いや、ずっと疑問だったんだよねえ」

「え?」

「旅に出る前に、どうしてアイツがいきなりあんな事をしたのか」

「な、何を言っているんだい?」

「マーリン。お前、本っっっっ当にモルガンから嫌われてんのな」

 

 

 コバヤシは口を開けて、思いっきり舌を出して見せびらかした。

 

 その場所には、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「そ、それはモルガンの魔術刻印!?よりにもよってそんなところに!」

 

 

 驚き慌てふためくマーリンの叫びによって、アルトリアの脳裏に電撃が走る。

 

 

「――――あっ」

 

 

 アルトリアの記憶が呼び起された。あの時は突然の衝撃で固まっていたけれど、見たものはしっかりと記憶に残っている。

 

 

『……んっ……』

『……おまじないをかけました。我が夫が無事に帰って来られるように』

 

 

「あの時かーーーーーー!?!?!?」

 

 

 旅に出る前の二人の接吻の時に仕込んでいたらしい。

 

 体内に仕込まれた魔術の刻印は、本人の魔力量の高さに加え、モルガンの隠蔽工作により他者から発見されないように徹底されていたのだ。

 

 アルトリアは戦慄した。あの短い時間のキスで、舌まで突っ込んでいたモルガンのキステクやべえ、と。

 

 

「ここにいるのは本物のお前じゃないんだろうが……あのモルガンの事だ。それも織り込み済みの砲弾でも詰めてるんだろうよ」

「ひゃあ……!?」

 

 

 繋いでいた手を引っ張り上げられ、抱き抱えられたアルトリアは思わず声を上げた。

 

 

「じゃあな。せいぜい惨たらしく苦しんでくれ。そうすりゃアイツの溜飲も数十年分は下がるだろうよ」

 

 

 そう言って二人はアヴァロンから飛び去った。後には強張った表情のマーリンだけが残される。

 

 彼は諦めたように深々と息を吐いた。

 

 

「……ま、仕方がないか。なに、これくらいの罰なら受けるとも」

 

 

 そう独り言を呟いたマーリンは空を見上げた。

 

 ――楽園を狙う流星が群れを成していた。

 

 

「…………え、ちょ、こんなに来るの!?いやこれは流石に想定がぎゃああああああああああああああああ!?!?!?

 

 

 着弾したお仕置きロンゴミニアドの爆風に、マーリンは断末魔と共に飲み込まれる。暫くの間、アヴァロンには光の槍が情け容赦なく叩きこまれるのであった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 霊洞を超高速で上がるアルトリアは、しがみついたコバヤシの背の後ろから迫りくる炎に目を見開いた。

 

 

「コッ、コバヤシーーーー!!爆炎が!爆炎がこっちに来るよ!?」

「どんだけハッスルしてんだあの女……。

 今の俺、レベル1で出力下がってるの忘れてるんじゃないだろうな……。アルトリア、補助かけてくれ。このままだと巻き込まれそうだ」

「ふざけるなよあの年増!!」

 

 

 折角助かったのに、味方の誤爆で死にたくはない。思わず罵倒したアルトリアはコバヤシの身体能力を上げる魔術をかけた。

 

 加速が増して炎を引きはがしていく。目に入る風景が全て線になる世界で、アルトリアは自分の故郷に別れを告げた。

 

 

「……さようなら。楽園は綺麗な場所だったけれど……それでも私は、みんなと一緒に生きていきます。

 

 ――だって、そっちのが楽しいもん!食べ物も美味しいし!旅だってもっと行きたい!」

「どうした急に……」

「決意表明!コバヤシ、これからもよろしくね!」

「はいはい……」

 

 

 霊洞を抜け、ブリテンの空へ帰ってきた予言の子一行。

 

 巡礼の旅は、今ここに終わりを告げた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「そういえば、さ」

「ん?」

「幻の私、外で何て言ってたの?」

 

 

 地面へ降りたアルトリアは、疑問に思っていた事を訊いてみた。選定の場での話は聞こえていたが、外に出てからは自分は聞いていなかったのだ。

 少しワクワクしながら聞いてきたアルトリアに、コバヤシはなんてことない事のように告げる。

 

 

「俺の事が大好きだってさ」

「――――――」

 

 

 アルトリアは石になった。

 

 思いを告げられた彼からすれば、あれは幻だった為に今更揺さぶられはしないが、とんでもない台詞を偽物に吐かれた本物は話が別だ。

 妖精眼判定シロを確認。そしてフリーズ。使命を終えて高性能になった頭脳が情報の整理を始め、しかし感情は処理が追い付いていなかった。

 次第に熱暴走が起こり始め、全身が燃え出したように熱くなる。

 

 

「ノ、ノーカウント!!」

「え」

「あれは幻影だから!マーリンだからノーカン!!いいね!?」

「アッハイ」

 

 

 うがー!!と爆発したアルトリアは目の端に涙を浮かべながら叫んだ。

 おのれマーリン。この恨み晴らさないでおけようか。あの夢魔を殺す魔術を編み出すと密かに決めたアルトリアだった。

 

 

「それじゃあ、旅も終わった事だし……いい加減帰るか」

「あ……ちょっと待って。最後に行きたい場所があるの」

 

 

 ようやく帰れると思った矢先、アルトリアに引き止められコバヤシは流石にうんざりした顔をした。

 それに苦笑を返すアルトリア。少し申し訳ないとは思ったが、彼女も最後のケジメをつけたかったのだ。

 

 

「――ティンタジェル。潮騒のティンタジェルへ連れて行って。会いたい人がいるの」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 かつて、アルトリアを拾った村ティンタジェル。

 

 お世辞にも裕福とは言えなかったその村は、アルトリアと共に流れ着いた財宝を売って生計を立てていた。

 

 だからだろうか。

 

 

「……村が」

「こりゃあ……」

 

 

 転移した二人が目にしたものは、村だった場所の成れの果て。

 焼け落ちた家屋が野ざらしにされており、妖精一人残っていない有様だ。

 良い思い出が無い場所とはいえ、育った村の変わりようにアルトリアは言葉を失っていた。

 

 

「……エクター!!」

 

 

 我に返ったアルトリアは、友人の名前を叫んで走り出した。目指した先は、村からそう離れていない岬に建つ一軒家。

 一目散へ玄関にたどり着いた少女は、友の名前を呼びながら激しくドアを叩き続けた。

 

 

「エクター、エクター居る!?居るよね!?居るなら開けてよ!!」

 

 

 ドアを壊しかねない力でノックするアルトリアを止めるべきか悩んだコバヤシだったが、耐久力が限界を迎える前にドアが開いた。

 

 

「ええいやかましい!!どこの妖精だ、こんな辺鄙な場所に――」

「エクター!!」

 

 

 顔を出したのは、煤で黒く汚れた髪と立派な髭を蓄えた土の氏族。怒りの形相はアルトリアを目にして驚きに変わり、髪の毛で隠れていない片側の目が見開かれた。

 友人の無事を確認したアルトリアは、ほっと息を吐いて碧眼を潤ませた。

 

 

「……エクター、ただいま。私――」

 

 

 少女が言い切る前に、ドアが勢いよく閉められる。

 

 

「……ワシは、お前のことなど知らん!人違いだ、帰れ!!」

 

 

 ドアで隔たれた向こう側でそう言われ、物音が家の奥へ遠ざかっていく。

 予想外の事態に固まったアルトリアは、言い放たれた言葉にトドメを刺されて失意に暮れる。

 

 

 ――――なんてことはなく。

 

 

「……ちょっ、どういうつもりだコラー!!人が心配して来てあげたのに!!私のこと知らないとか、すぐバレる嘘吐くなよエクター!もう一度、私の前で言ってみろよコラー!!」

 

 

 扉を力任せに引き千切る暴挙に出たアルトリア。コバヤシが驚いたのを後目にして屋内に突撃していく。

 

 家の奥から野太い声の悲鳴が上がったのが聞こえて、コバヤシも遠慮がちに家の中へあがりこんだのであった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「…………なんか、悪かったな爺さん。ウチのアルトリアが……」

「ふん、あの子は昔から猪だ。もう慣れた。それより、ウチのと言ったが、村の連中からあの子を買い取ったのはお前さんか?」

「ああ、そうだよ」

「……そうか」

 

 

 簡素ながら頑丈な作りの机と椅子に、男二人が顔を突き合わせて座っていた。

 扉を壊した魔猪の氏族は、工具を持たされて直してこいと尻を蹴られた。自業自得である。

 

 

「あの村の連中はどうしたんだよ。……まさかと思うが、自滅した?」

「……分かっていたのか?」

「マジかよ当たりかよ……。まあ、もしかしたらそうなるかも、くらいには考えていたが」

 

 

 エクターによれば、アルトリアを売った代金を取り合って殺し合いに発展したようだった。初めは平等に取り分けていたようであったが、生活に困窮していた妖精達は、自分はアルトリアの面倒をよく見ていたのだから、その分自分の取り分を増やせとトラブルになったらしい。

 コバヤシも最悪のパターンとして予測はしていたが、金を払う立場の自分が村の財政事情まで知るかと考えるのを止めていた。それでしっかり自滅しているのだから、流石の彼も失笑するしかなかった。

 

 

「結局、滅びるべくして滅んだだけだ。そんな連中の話はいい。それより爺さん、アンタどうしてアルトリアを遠ざけようとした?」

「……ふん。ようやく静かになったというのに、更に面倒事なぞ抱えたくもなかっただけだ。今も昔も、あの子には迷惑ばかりかけられとるんだ」

 

 

 そう言い捨てたエクターであったが、コバヤシにはその言葉が嘘くさく思えて、思わず鼻で笑った。

 

 

「ハッ……嘘を見抜くのは楽園の妖精の特権じゃないんだぜ。爺さん、嘘吐くの慣れてないだろう」

「…………」

「アンタの言葉から悪意を感じない。……言ってみろ。アンタはアルトリアの恩人で、友人だ」

「……恩人、か」

 

 

 エクターの厳つい顔の眉尻が下がる。

 

 

「…………今更、あの子と合わせる顔も無いと思っただけだ」

 

 

 ぽつり、ぽつりとエクターの口から零れる後悔の言葉。

 

 

「アルトリアにはここの鍛冶を手伝わせていた。二日に一度、ここに来ていたあの子がバッタリ来なくなってな。村の者には、体調を崩したからだと聞かされた。

 

 加工した鉄は妖精に悪い影響を与える。楽園の妖精は鉄には強かったが、気分が悪くなるくらいはあるだろうと休ませているつもりでいた。

 

 ……ひと月、ふた月と経つにつれて、流石におかしいと隠れて村に様子を見に行ったのだ」

 

 

 エクターは片手で顔を覆った。コバヤシもまた、同じ光景を見た者としてその気持ちは分かる。

 

 

「……ああ、あれが夢ならばどれ程良かったか。年端もいかぬ童女が、鉄の首輪を付けられて作り笑いを浮かべながら、村の中を引き回されていた」

「…………あれを、見たのか」

「お前さんも知っていたか……。本当は、すぐにでも連れ出してやりたかった。だが、村の連中はあの子の存在を必死で隠し通そうとしておった。あの子は予言の子ではない、自分達が飼っている単なる馬なのだと。

 だから、あの子を自分達の目の届く場所に置いておこうとしていた。村ぐるみで匿われては、ワシ一人ではどうにもできなかった。

 

 そうして手をこまねいていたら、お前さんがあの子を買い取った。……あの地獄から、あの子を連れ出してくれたのだ」

 

 

 俯いたエクターの声は震えていた。机の上で組みなおしていた両手も同じように震えていた。

 

 

「あの時、何もしてやれなかったワシが、今更なにを言えようか。あの子が心の底で助けを求めていたであろう時に、何もしてやれなかったワシが、何を……」

 

 

 状況からすれば、安易に手を出してはいけないとエクターも理解していた。

 それでも、無理にでも助けに行くべきではなかったかとエクターは後悔の念に蝕まれていた。

 もしも、コバヤシがあの場に現れなかったら、アルトリアは今頃……。

 

 

「――アルトリアは楽園の使命を終わらせた」

「!!」

 

 

 その言葉に、エクターは弾かれたように顔を上げた。

 

 

「アイツはその身を糧に聖剣を造ろうとしていた。俺は、それを止めようとして……アイツの願いを聞いたんだ。

 その時、真っ先に出てきたのがアンタの事だ」

「――――な」

「あの時、アルトリア・キャスターを引き止められたのは、間違いなくアンタのお蔭だ、エクター。

 ――ありがとうよ、アルトリアをずっと助けてくれて。アンタがいなかったら、きっと止められなかった」

 

 

 エクターを見る彼の目が、真剣な声音がアルトリアの恩人の心根に染み入った。

 

 何もしてやれなかったのではない。

 

 何も無い、二人で過ごしたありきたりな日常こそが、彼女をアルトリア・キャスターとして留めていたのだと。

 

 

「…………そうか」

 

 

 エクターはやがて、小刻みに体を震わせて背を丸めた。ゴツゴツした大きな手の平を、自分の顔に押し付ける。

 

 

「…………そう、か……!!」

 

 

 くぐもった声で万感の思いを吐き出した。

 

 コバヤシは席を立ち、海の見える窓を開けた。彼の耳には、寄せては返す波の音しか聞こえなかった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 扉を直して戻ってきたアルトリアは、工房に置かれていた一つの宝飾具(かみかざり)に目を留めた。

 

 

「エクター、あれ……」

 

 

 彼女が指さした先を見たエクターは、「ああ」と目を細めてそれを手に取った。

 

 

「これは、誤差の範囲だったからな。売り物にはならん。欲しければ持っていけ」

 

 

 ――もしかして。あの時からずっと、取っておいてくれたの?

 

 

 友人が優しい嘘を吐いているのが分かっていたから、アルトリアはその言葉を飲み込んだ。

 代わりにポケットから金貨を取り出して、エクターへと差し出した。

 

 

「ううん、買うよ。これ、お仕事して貰ったお給料なんだ」

 

 

 エクターは眉をひそめた。彼としては、彼女にあげるつもりだった物なので、金を取る気は無かったのだろう。

 まだ、遠慮しているのだろうか。そんな考えが頭をよぎる。

 

 

「売ってやれよ。当たり前のことを、させてやれ」

 

 

 そう背中を押されてハッとして、改めてアルトリアの顔を見てみれば。

 

 欲しい物を目の前にして、ワクワクして待っている子供がそこにいた。

 

 お金を受け取り、差し出された両手の上に宝飾具(かみかざり)を置いてやると、アルトリアは飛び跳ねて喜んだ。

 

 そのまま魔王の元へ駆け寄って、「コバヤシ、つけてつけてー」と催促を始める。

 彼女の宝物を手にした彼は、金色の髪の一束を手にすくい、星のような飾りに絡めた。

 

 

「ど、どう?似合ってる……かな?」

「……良いねぇ。似合ってるじゃないか」

「え、えへへ、えへへへへへ……」

 

 

 少し頬を朱色に染めて、ふにゃりとアルトリアは笑った。幸せそうな彼女に釣られて、魔王の相好も優し気に緩む。彼が頭や頬を撫でてやると、彼女はされるがままに身を委ねた。

 

 満足したアルトリアはエクターに礼を言って、家の外に駆け出していった。

 

 

「コバヤシ、といったか」

「あん?」

 

 

 エクターがその名を口にすると、コバヤシは立ち止まった。

 

 

「陛下の新たな夫となった男の名だ。妖精國大統領、魔王コバヤシ……お前さんが、そうなのだな」

「ああ、そうだとも。それが何か?」

「……かつて、ワシとモルガン陛下は同じ道を歩いていた。救世主でなくなった日から、道は違えてしまったがな」

「…………」

「あの方は、あの日から本当の孤独になってしまった。婚約者と円卓は殺され、ワシもトトロットもあの方の進む覇道には、最早ついてゆけぬ」

「仕方ねえよ。モルガンの願いはそれこそ、自分の生の全てを捧げてようやく達成できるかどうか、だからな」

「お前さんは、それを知っていて尚、行くのか」

「ブリテンをくれてやると契約したからな」

「そうか」

 

 

 エクターの厳つい顔が破顔した。

 

 

「安心したよ、陛下の傍にいるのがお前さんで良かった。

 あの方にそっくりのあの子が、あんなにも懐いている。きっと陛下も、お前さんに甘えたい筈だ」

「モルガンがねえ……」

「どうか、受け止めてやってくれ。妖精達に疎まれ、嫌われてばかりのあの方とあの子が、心から笑える世界を作ってやってくれ」

「――――まあ、出来る限りはやってみよう」

 

 

 エクターは笑顔のままで頷き、コバヤシはそれを見て立ち去った。

 

 一瞬、魔力が膨らみ消えたのを感じ取り、エクターは椅子に深く腰掛けた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「我が夫。巡礼の旅、ご苦労様でした」

「おう……」

 

 

 久しぶりの自室のベッドに倒れ込むコバヤシ。なにやら女の甘い匂いを感じるが、考えない事にした。

 

 アルトリアは外で仲間達に揉みくちゃにされている。「コイツ自分から身投げしかけたんだよな」という魔王の告発により、妖精騎士を筆頭にお説教の嵐に晒されている。赤毛の鍛冶師は呆れたように、それを遠目で眺めていた。

 それが終われば、彼女の頭についている髪飾りに話題が移ることだろう。

 

 エクターと会った事は話していない。モルガンの優しい笑みが、全て分かっていると語っていたように思えたからだ。

 

 

「ストレス発散はできたか?」

「ええ、それはもう」

 

 

 一番のイイ笑顔である。火力が強すぎるのを注意しようと思っていたが、この顔を見てどうでもよくなったコバヤシであった。

 

 

「それにしても、これがエクスカリバーですか……」

 

 

 机に置かれた剣を見て、モルガンがその刀身を撫でる。

 

 神造兵装エクスカリバー。

 

 アルトリアにもまた、聖剣作成の魔術理論が組み込まれており、魔界の戦力は一段とパワーアップを果たした。

 

 

「……さて、モルガン」

「はい、我が夫」

 

 

 つかの間の休息を経て、コバヤシはモルガンの対面にエクスカリバーを挟んで座る。

 

 

「ブリテンに潜んでいる悪意。何者かまでは判断つかなかったが……()()()()()

「……やはり」

 

 

 妖精達は悪行を成せど悪意はない。

 だが、コバヤシは時々妖精國に何者かの悪意が混じっているのを感じ取っていた。

 

 

 ――例えば、バーゲストの記憶改竄。

 

 ――例えば、やたら攻撃的だったソールズベリーの兵士。

 

 ――例えば、アルトリアに接近したマーリンを騙る何者か。

 

 

 全てが悪意からの行動でないにしろ、何者かの介入を疑っていた。そしてそれは巡礼の旅の中で確信へと至る。

 

 魔界大戦争を生き残った男は、裏工作に関してもそれなりに心得がある。この國を崩そうと企む、裏で蠢く刺客を炙り出す為に旅へ出たのだ。

 

 

「情けない話だ、尻尾の一つも掴めないとはな。相手は相当の手練れらしい」

「貴方に責任はありません。全ては監視を怠った我が身にあります」

「……なら、お互い様か。責任云々はいい。それよりも、汎人類史のブリテンの話を、もっと詳しく教えてもらおうか」

「ブリテンの脅威全てに対策を施すと?」

「正体が絞れない以上、そうするしかない。幸いにも、それに相応しい武器がここにあるからな」

 

 

 エクスカリバーを眼前に掲げるコバヤシ。モルガンは持ち手に己の手を重ねた。

 

 

「間違いから始まり、厄災だらけになった國だが、旅を通じて少しだけ好きになれたし、好ましい妖精もいた。

 このブリテンが、正史から外れた消えるべき運命にあったとしても。そこで生まれた以上、滅びに抗う権利は誰にだってある。

 ……手を貸してやる、なんてもう言わん。共に行くぞ、モルガン」

「――はい。我が身、我が心は、我が夫と共に在ります。いつまでも、どこまでもついていきます」

「阻むものが滅びの運命だろうと、他の世界だろうと……なぎ倒して進んで行くぞ。仮にとはいえ、俺の妻を名乗り上げたんだ。それくらいはやってもらうぞ」

「覚悟など、とうの昔に決めています。――行きましょう、魔王コバヤシ」




・アルトリア・キャスター

 巡礼の旅を終え、使命から解放された一人の妖精。妖精眼は消えないが、ウザったい鐘の音は消えたので幾分か楽になった。
 アヴァロンには至らない強化形態。アヴァロンがマジンガーZEROなら、本作のキャスターはマジンカイザー。


・エクター

 アルトリアを引き止めたキーパーソン。彼がいなければ、アルトリア・キャスターは助からなかった可能性すらある。
 妖精眼も敵わない慧眼の持ち主。


・魔王コバヤシ

 巡礼の旅の真の目的は、ブリテンで暗躍する誰かさんを探し出す事。誰がいるまでは分からなかったが、誰かがいる事は分かった。


・マーリン

 シスベシフォーウ!!





















Dis Avalon


 タイトル回収。
 1人は楽園の使命を放り投げ、1人は使命を果たして楽園から出ていった。
 約束された栄光よりも、彼女達にとって価値あるものなどいくらでもある。
 そして、それを選ぶ自由もある。
 モルガン・ル・フェとアルトリア・キャスターは自ら楽園への道を閉ざした。
 だって、自分達の帰る場所ができたのだから。

「でも、たまには里帰りも良いよね!」
「マーリンがいなくなれば考えよう」

この作品の設定を使った別の小説をぼんやり考えてます。なんか面白そうだと思ったものがあれば、一票どうぞ。

  • 転送事故でオラリオへ(ダンまち)
  • 転送事故でワノ国へ(ONE PIECE)
  • 汎人類史モルガンを陰から守る会
  • ゲーティア絶許・グランドオーダー
  • 原作6章、カルデア殲滅ルート
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