また貯めなきゃ…。
暗黒議会の会議室を使って行われる、今後の方針及びブリテンを襲う脅威への対処法の確認。
魔王コバヤシと議長を中心にして、錚々たる面々が顔を突き合わせる。
妖精國女王モルガン・ル・フェ。
妖精騎士バーゲスト、バーヴァン・シー、メリュジーヌの3名。
楽園の妖精アルトリア・キャスター。
モルガンの子飼いの妖精騎士達。
メイド長などの配下のまとめ役。
屈指の戦闘力を持つ魔界の戦闘部隊。
皆が真剣な空気を纏い、宙に浮くディスプレイの情報を読み込んでいた。
「今後の異聞帯ブリテンの処遇について、改めて確認させて頂きます。
我々の最終的な目的はブリテン島の魔界への併合。太古の神、ケルヌンノスの死骸を除去した後に、ミニ魔界から魔槍を撃ち込んで異聞帯ブリテンの成り立ちを改竄し、我々の領土として奪い取ります。間違いはありませんね?」
議長の言葉に妖精國代表のモルガンが深く頷いた。
「獣神ケルヌンノスの対処法ですが、コバヤシ様が有識者様と相談するとの事ですので、この場での討論は割愛します」
「アルトリアが楽園の使命を終わらせてエクスカリバーを造ったから、聖剣が造られないという前提で存在していたブリテン異聞帯は緩やかに消滅していくだろう。悠長にはしていられないが、焦る必要も無い。
だが、最初に言っておく。あの獣神の後始末は俺達でも一筋縄ではいかないだろう。どうにも、ただ吹き飛ばせば解決するような障害じゃないようだ。呪いに詳しい奴等と話し合って、有効な手立てを探しておく。ケルヌンノスの対処は最後に回して、総力戦に持ち込みたい。それまでに、他の問題はなるべく解決しておこう」
妖精國側に動揺が広がった。魔界に住む彼らの力を借りて、女王や妖精騎士である自分達も大きく成長した今ならば、さしたる障害も無いだろうと考えていた。悪く言えば、楽観視していたともとれるだろう。
確かに魔界住民の力は異聞帯と比べても圧倒的な高みにあるが、それでも出来ないものは出来ない。一万年以上もの間に積もり積もったケルヌンノスの呪詛は、彼等でも容易に触れてはいけない悍ましいモノへと成長してしまっていた。
「一応、それっぽいプランも考えてあるんだが……こればっかりは一度相談してみないと確信が持てないからなぁ……」
「魔王コバヤシ。それは妻である私にも教えられませんか?」
「相談相手はお前よりも神様に近い関係にあるからな。まずは上手くいくかどうかを確かめてからだ」
「……分かりました」
不承不承にモルガンが頷いたのを見て、議題は他の脅威についてに移る。
「まずは異星の神についてですね。これに関しては、既にモルガンさんの殺害を企てて刺客をブリテンに送り込まれているので、コバヤシ様の命令により抹殺が決まっています」
「メリュジーヌが潜伏先を見つけて、魔界調査団が敵側の戦力を暴いた。
どうも、まともに動ける戦力は異星の神一人だけのようだ。何してるかは知らんが、妙な動きをされる前に始末するぞ」
「異星の神の討伐隊はメリュジーヌさんを尖兵として、彼女に敵の居城への侵入通路を切り開いてもらいます。そしてコバヤシ様、バーゲストさん、アルトリアさんと戦闘部隊の皆さんによる本隊で殴り込み、異星の神を討伐します」
「僕……ううん、私が一番槍なのね。任せて」
「奴は自分だけの領域を作り出して。そこに潜んでやがるからな。アルビオンの力で通り道を作るのが一番簡単だ」
「久々の本格的な戦闘だ……腕が鳴るぜ」
「今回の敵は神か?我に相応しい相手ではないか」
「ガオーーーーーーー!!(腹いっぱい食ってやる!!)」
「神様のお城……お宝一杯あるかなぁ?」
「力いっぱい戦うわよ!おー!!」
魔王コバヤシが自ら育て上げた、戦闘部隊の悪魔や魔物達が昂っている。彼が培った育成のノウハウを叩きこまれ、魔王級の力を手に入れた戦闘部隊はミニ魔界にとっての虎の子だ。
魔王にも匹敵する戦闘力が集まった部隊は、余程の事態でない限りは全員で動かない。それが今回、部隊全員の出撃を命じられている。この問題に対する魔王コバヤシの本気度具合が感じられ、悪魔達もやる気に満ちていた。
「次に、人理継続保障機関カルデアについてです。クリプター、スカンジナビア・ペペロンチーノからの情報提供により、彼等の実態が明らかになっています。
現在のカルデアは非戦闘員含めて十数名で構成されており、極めて少人数な状態で運用されています。ですが、彼等の有する守護英霊召喚システム・フェイトにより数多のサーヴァント……使い魔のような存在が認められており、実際の戦力は数値以上だと想定されます。
彼等が剪定した異聞帯の数は計5つ。また、いずれの異聞帯でもカルデアはクリプター、異聞帯の王を戦闘で打ち破っています」
「カルデアは近いうちにこの異聞帯に乗り込んでくるだろう。その時の対処はモルガンに任せる」
「待って。どうしてカルデアがここに来るの?もうエクスカリバーが製造されたんだから、ブリテン異聞帯は剪定済みなんじゃないの?」
アルトリアが手を挙げて発言する。その指摘に頷く者も何人かいた。
「このブリテン異聞帯は次元断層で覆われていてな、中と外とじゃ時間の流れが違うんだよ。ここの数日が、外にとっては一時間程度らしい。カルデアには未来予測できるシステムもあるらしいが、こっちに起きた変化が外に伝わるまではズレがあるんだ」
「加えて、モルガンさんがギリシャ異聞帯へ放ったロンゴミニアドが、カルデアに目を付けられた可能性があります」
「それは、どうして?」
「彼等もまた異星の神と対立している勢力です。しかし、現在のカルデアに異星の神を倒す手段はありません。故にロンゴミニアドの譲渡をこちらに求める可能性は否定できません」
「異聞帯の王とか倒してる連中だが、相手はその異聞帯を作り出した地球外から来た大将だからな。カルデアが勝てた一因に、人理修復の旅の中で様々な時代や国の英霊と縁を結んだのもあるんだろうが、それが通用しない異星の神相手に出来る事があるとは思えない」
「そっか……ありがとう」
納得したアルトリアは神妙な顔つきで頷いた。
「それで、カルデアへの対処についてだがな。情報元のペペロンとの約束で、まずは対話を試みる。とは言っても、カルデアにブリテンを自由に歩き回らせたくはないから、ブリテンに入ってきたらその瞬間に捕まえてくれ」
「捕獲ですか」
「そう。次元断層に脆い場所があっただろう?カルデアは巨大な航空母艦を保有してるらしいから、そこにそれごと突っ込んでくると思う。そこで一網打尽にして欲しい。出来るか?」
「当然です。ですが侵入されるタイミングが分からない以上、ロンゴミニアド一基に捕獲用の砲弾を装填した上で、常に起動状態で待機させる必要があります。よろしいですね?」
「ああ、そうしてくれ。バーヴァン・シーはモルガンのフォローを頼む」
「それはいいんだけどさ、そこまで警戒する必要あるの?」
「……というと?」
「だって、カルデアって異星の神以下のザコなんだろ?わざわざお母様が出向く必要、無いんじゃないの?」
「いんや、連中を甘く見るべきじゃないね」
あまり納得のいっていない采配に意見を出したバーヴァン・シーに対して、コバヤシは腕組みをしながら首を横に振った。思ってもみなかった反応に、バーヴァン・シーの興味が向いた。
「へえ、魔王サマがバリバリ警戒してるの?」
「考えてもみろよ。ごく少数で敵地に乗り込んで、敵の大将をきっちり討伐して生き残ってきた奴等だぞ?一度や二度なら運が良かっただけとも受け取れるが、もう既に発生した異聞帯の半分以上を剪定済みときてる。油断できる要素なんて無いだろう」
「……それはそうね」
「いくらサーヴァント召喚システムがあるといったって、カルデアの戦力で異聞帯を相手に正面から戦えるとはとても思えない。十中八九、奴等が得意としてきたのはゲリラ戦だろう」
「そんなに上手くいくものなの?」
「異聞帯だって一枚岩で成り立ってる訳じゃない。この妖精國にだって、モルガンに対抗する勢力がいくつもあっただろう?他の異聞帯にもきっと、異聞帯の王に反抗する勢力が誰かしらいたはずだ。
カルデアはそいつらを仲間に引き入れるなり、利用するなりして戦力を増強していたに違いない。俺も反乱軍にいたからな。巨大な敵組織相手にどう立ち回るかはよく知ってる」
100億の軍勢相手に反乱軍の一員として戦っていた彼の経験が、異聞帯でのカルデアの戦い方を推測していた。ロスト軍と敵対していた魔界を助けて回り、戦力として取り込んできたのだ。経験に基づいた推測ならば、説得力も増すというものだ。それに疑問を抱く者はいなかった。
「それに付け加えると、汎人類史の抑止力が異聞帯へ英霊を派遣しています。土地に呼応して関係者が召喚されるのなら、カルデアに協力する為に現地でなにかしらの準備を行っていたとしても不思議ではありません」
「ブリテン異聞帯では人類史が存在しないから、その可能性は無い。と、思いたいがな……。
なんにせよ、カルデアが最も弱いタイミングは現地での縁が何も無い突入直後だ。そこで連中を全員捕まえて、このブリテン異聞帯の成り立ちから現在までの情報を余すことなく与えてやれ。
くれぐれもブリテンに降ろすなよ。元々が移ろいやすい妖精相手に、連中がどんな影響を与えるか想像できん。面倒だろうが、頼んだぞ」
「……コバヤシがそこまで言うなら、やるわよ」
「よし。じゃあ次はこの、奈落の虫だな」
ディスプレイに映し出される、ロンディニウムの壁画。巨大な獣と六人の妖精、その真下に口を開けて吸い込もうとしているような竜のような何か。
「真ん中のデカいのはケルヌンノスで、周りのは亜鈴の妖精。そしてそれを丸ごと食おうとしてる下の奴。牙生えてるっぽいし、汎人類史の情報から見て、ブリテンの脅威になるドラゴンという特徴から、こいつは魔竜ヴォーティガーンだと予想している」
「位置関係から見ると、ケルヌンノスの排除が終わった後に、更に下からこのヴォーティガーンが現れると予測されます」
「モルガンが何度か、ブリテンに滅びをもたらすモースの王とかいうのを打ち払ったんだが、ひょっとしたらコイツの関係者かもしれないな」
「だとするならば、地下深くにいる元凶と、ブリテンで飛び回る端末がいるのですね。端末を滅ぼしたとしても、元凶が健在ならば復活は可能なのでしょう」
「問題は、ケルヌンノスを対処した後にコイツと戦う元気が残ってるかだな……。ま、どうにかするさ」
「それでは最後に、風の氏族長オーロラについてですね」
その名を聞いて、分かりやすく体を跳ねさせた彼女の騎士メリュジーヌ。どんな裁定を下されるのか、不安になってコバヤシの方を見続けている。
「というか、オーロラもブリテンの脅威扱いなのか……」
「ノクナレアとかボガードとか円卓は、あくまでモルガンを倒そうってだけで、妖精國を滅ぼそうとはしてねえしな。
だけどアレは駄目だ。自分が一番になる為なら何でもするぞ。たとえブリテンを滅ぼす一手だろうともな」
「だ、そうだぜメリュジーヌ?オーロラの騎士なら何とか言ってみろよ?」
「…………否定できない」
「マジかお前……」
趣味悪く話を振ったバーヴァン・シーだが、メリュジーヌに苦虫を嚙みつぶしたような表情で返されて唖然とした。
――コイツにまで愛想尽かされるとか、どんだけだよ。
「オーロラは過去にメリュジーヌを教唆して鏡の氏族を虐殺し、またソールズベリーの人間で編成された軍隊が、ロンディニウムの非戦闘員含めた者達を皆殺しにしようとしています。後者は未遂で終わりましたけどね」
悪魔達が揃ってドン引きしていた。自分より目立っているから皆殺しなど、エゴの極みのような理由でこれだけの暴挙を行っているのだ。彼等が把握していないだけで、余罪はもっとあるのだろう。
『え、こんなのの騎士とかやってるの?』と、悪魔達から信じられないものを見るような目で見られて、肩身が狭くなるメリュジーヌ。
「……問題は、どちらもオーロラが明確に指示をしていない点です。法に基づいて彼女を罰するのは難しいですね」
モルガンが悩まし気に声を発した。メリュジーヌが妖精騎士として活動しているのも、オーロラの行動に対するお目こぼしを頼んでいるからなのだ。曖昧な罪状でオーロラの処刑は実行できなかった。
が、そんな彼女の長年の懸念を、コバヤシは一言で吹き飛ばした。
「んなモン監督不行き届きでいいじゃん。どっちもアレの私兵みたいなモンだろう。それが勝手に動いて虐殺なんてしてるんだぞ。アレに全く責任が無いなんて言えるか?」
「それは、そうですが……」
コバヤシは視線をメリュジーヌに向けた。愛想は尽きかけているとはいえ、オーロラが彼女にとって特別な存在なのに変わりはない。少し悲しそうな目をしているメリュジーヌを見て、コバヤシは思わず溜息を吐いた。
「とは言え、だ。仲間の悲しい顔を見るのも本望じゃない。アレは俺達にとってどうしようもない存在だが、未だに慕っている奴が大勢いるのも確かだ。それを殺すのは要らんリスクを生む。
…………と、いう訳で折衷案として、アレをモルガンの棺に閉じ込めてソールズベリーに飾っておこう」
「「「「異議なし」」」」
メリュジーヌはガックリと項垂れた。現状、それがもっとも温情の有る裁定だと分かっていたからだ。
「(すまない、オーロラ。でも、うん、流石に庇えない)」
どちらかと言えば、自分も裁かれる側なのだ。ここでごねた所で無意味である。
こうして会議は終わり、各々が今後に向けて動いていく事になる。
決戦は近い。
この作品の設定を使った別の小説をぼんやり考えてます。なんか面白そうだと思ったものがあれば、一票どうぞ。
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