妖精魔界戦記ディス・アヴァロン   作:サンダーボルト

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筆が乗りに乗ってます。

三話のあとがきの話。


妖精騎士が堕ちるまで(後編)

 俺のコレクションルームに新しい品が入った。あのバーヴァン・シーが作ったというヒールだ。

 ヒールと言っても回復魔法のヒールではなく、靴の方のヒールだ。

 

 いやあ、俺は収集癖はあっても自分で何かアイテムを作るって発想は無かったからな。これは目から鱗だ。

 

 性能としては無いに等しいものの、そんなのは問題じゃない。バーヴァン・シーが俺の為に作った。俺への捧げ物にオリジナリティ溢れるアイテムを選ぶとは、中々分かってやがるぜ。

 

 防護と清潔の魔法を三重にかけたガラスケースにバーヴァン・シー作のヒールをしまい、ライトアップする。アイツのイメージカラーの赤色が映えるぜ。マンチェスターの赤色とは雲泥の差だ。

 

 モルガンの成長具合も半端ない。ブリテン解説の時に分かった事だが、アイツの年齢は6000歳以上。とんでもない婆さんだった。そんでそれだけの年数、ブリテンを手に入れる為だけに注いでいるんだから俺もドン引きだ。

 それだけ長く生きてる魔王なんて、少なくとも俺は知らない。それを思えば魔王になる素質はあったわけだ。

 

 ひょっとしたら、俺も無意識にそれを感じ取って魔王の道を示したのかもな。

 

 バーゲストは何かもう、遠慮しなくなった。夜会のドレス姿とかいうのになって抱き着いたり噛みついたりしてくるし、明らかにサイズの合ってないメイドの服を着ようとして、破裂させて怒られたり…。まあ良く気が利く女だし、乳もデカイし尻もデカイ。それにアイツの作る飯は美味いから、それはそれで構わないんだけどな。

 ただモルガンがバーゲストの作った飯を一口食ったら、ショックだったのか敗北者の顔をしていた。その次の日からミニ魔界にあるカレー屋へ出入りが増えたのは偶然じゃないんだろう。

 

 

「コバヤシ、少しいいかな?」

 

 

 俺の至福の時間を邪魔しに来たメリュジーヌ。一体何の用なんだ。

 

 

「ソールズベリーに一度戻りたいんだ。オーロラに今の僕達の現状を説明しなければならないし、僕は君の所有物になったから、これからあまり顔を見せに行けない事も伝えたくてね」

「アレの所?別に行かなくていいんじゃないの?」

 

 

 俺の物言いが気に食わないのか、メリュジーヌの顔が少し歪む。

 

 

「……コバヤシはオーロラの事が嫌いなの?氏族長の名前だって知ってるのに、オーロラだけ呼ばないじゃないか」

「別に。ただ名前も呼びたくないし、可能な限り視界にも入れたくないと思ってるだけ」

「十分嫌ってるじゃないか!!」

 

 

 メリュジーヌは吠える。どんなに吠えたって俺の中のアレに対する嫌悪感は変わらん。

 

 

「出来れば君にも付いてきて欲しかったけど、この分じゃ無理そうかな……」

「何だその悪辣な嫌がらせ」

「……なんでそう執拗に彼女を嫌うんだ。オーロラの事なんて殆ど知らない癖に」

「俺よりアレの事知ってるお前が、なんだってそうアレに尽くせるのか俺は不思議なんだが」

「――っもういいよ!君なんて嫌いだ!」

「そうかい。俺はアレは嫌いだがお前は嫌ってねーからな」

「ばかーーーっ!!」

 

 

 メリュジーヌは部屋から飛び出して飛んでいった。アイツはアイツで、このミニ魔界からブリテンへ単独で飛んでいける力を身に付けてんだよな。

 

 

「コバヤシーーー♪♪ティータイムしようぜ!バーゲストが図体に似合わねーちっさくて可愛いクッキー焼いたから一緒に……あれ?メリュジーヌもいたの?」

「おー。もう飛んでいったけどな」

「ふーん。もしかしてオーロラの所行ったの?」

「そだね」

 

 

 それを聞いたバーヴァン・シーが、うげぇ、と舌を出して嫌な顔をする。ハハッ、アレの本性バレバレでやんの。

 

 

「理解できねー……メリュジーヌの奴、まだあの女に入れ込んでるのかよ。ていうかコバヤシは止めなくていいの?」

「自分でも薄々分かってて行ってんだから止めやしねえさ。言ったろ、俺の物だって分かってるなら好きな事やれって」

「そっか。私はあの二人の終わってる関係好きだから良いけどさ」

「お前も分かってるか。にしたって、メリュジーヌもわざわざ自分から傷付きに行かなくてもいいのにねー」

「ねー。最高に終わってるよねー。私達もメリュジーヌなんかほっといてティータイムと洒落込もうぜ☆」

「いやぁ、どーせすぐ戻ってくるし待ってようぜ」

「えー?まあコバヤシが言うなら待つケド。でもその間、私を退屈させたら承知しないわよ?」

「なら、俺が昔、罰ゲームで馬のチンチンって名前付けられてた頃の話でもするか」

「乙女とする話題じゃねー!でも面白そうだから続行な!」

 

 

 あの頃に比べたら、俺も愛のある名前を付けてもらえたモンだな。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 魔界からブリテンのソールズベリーまでひとっ飛び。境界を司る霊基アルビオンなら、これくらいの芸当は簡単だ。

 ソールズベリーは相変わらず活気に満ちていて、変わっていない事に安堵する。

 

 

 オーロラに会う為に大聖堂に赴くと、彼女の側近のコーラルに出会った。

 

 

「メリュジーヌ……!?ああ、無事だったのですね!」

「うん。ただいま、コーラル。色々あったけれど、一応無事かな。オーロラはいる?」

「ええ、オーロラ様ならお部屋に」

「そうか。オーロラに話があるから、人払いをしておいて欲しい」

「分かりました。何があったのか、私にも聞かせてくださいね、メリュジーヌ」

 

 

 人払いをコーラルに任せて、大聖堂の一番上…オーロラの部屋へ向かう。

 

 ノックをして部屋に入ると、そこには何も変わらず美しいままのオーロラがいた。

 

 

「メリュジーヌ?――メリュジーヌなのね!お久しぶり、私の大切な騎士!急にいなくなったから、とても心配していたのよ」

「うん、ごめんね。オーロラ、君の美しさも変わっていなくて良かった」

 

 

 久方ぶりに、僕を抱きしめてくれるオーロラの心地よさをもう少し感じていたかったけど、本題は他にある。

 

 

「オーロラ、どうか聞いてほしい。キャメロットで何が起きたか。今の僕達がどういった状況にあるのかを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――オーロラに包み隠さず全てを話した。キャメロットに現れた装備目当てのおかしな魔王。

 

 敗北して、戦利品として持ち帰られ、転生して強くなった僕達。

 

 キャメロットは崩壊、マンチェスターもバーゲストが自分で滅ぼしてしまった。

 

 マンチェスターの妖精達がソールズベリーにいるのは、その、驚いたけれど。

 

 

「そうだったの……とても恐ろしい目に遭っていたのね、メリュジーヌ」

「そうだね…だけど、結果的に僕は新しい体も手に入れたし、強くもなれた」

「ええ、貴女はとっても勇敢な騎士よ。私も嬉しいわ」

「オーロラ――」

「だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「――――ぇ」

 

 

 思わず、息が詰まった。

 

 

「どうしたの?自分を犠牲にして誰かを助ける。それが騎士の本懐でしょう?ああ、でも犠牲になったのは貴女だけではなかったのよね。女王陛下と騎士三人で、ブリテンが助かったのです」

「……そう、だね」

「世界を渡り、時には世界を破壊してしまう、とても恐ろしい魔王様……そのような存在から守ってくれるなんて。貴女と、攫われた人達には感謝してもしきれません」

「…………うん」

 

 

 そうだ、僕達がコバヤシの元に売られたから、コバヤシは一度ミニ魔界へ帰ったんだった。

 

 

 ……でも。

 

 

 装備にしか興味の無いコバヤシが、陛下を倒した後にブリテンをどうこうするとか、あるのかな。

 

 

「でも、そうだとしたら困ったわ。貴女はもう魔王様の物なのでしょう?」

「え?そう、だけど?」

「だったら、貴女がここに居座っていること自体、魔王様にとって面白くないのではないかしら」

「――――」

「きっと魔王様は、少しでも長く貴女を手元に置いておきたいはずだわ。だって、そうでもなければ持って帰ったりしない筈ですもの」

「――だ、大丈夫だよ。コバヤシにはちゃんと、ソールズベリーに行くって言ってあるから」

「――いいえ、貴女は戻るべきよ。こんなつまらない事で魔王様のご機嫌を損ねては、貴女達の犠牲が無駄になってしまうわ」

 

 

 オーロラの綺麗な顔が引き締められた。確かに、オーロラからすればコバヤシは、とてつもない脅威にしか見えていないだろうけど……。

 

 

「メリュジーヌ。貴女が無事だったのは喜ばしい事よ。でも、もしこのソールズベリーが魔王様に目を付けられてしまったら…私の翅はきっと、不安で曇ってしまうの。

 大丈夫、何があっても私だけは貴女の味方。だから時々、魔王様のご機嫌を損ねないように帰ってきて、魔界でのお話を私に聞かせてね?」

「…………ああ。オーロラ、君の為なら僕は何だってする」

「分かってくれたのね!嬉しいわ、メリュジーヌ!」

 

 

 最後にハグをして帰ろうとすると、コーラルが入ってきた。

 

 

「失礼します。オーロラ様、メリュジーヌ。お茶を持ってきま……した?」

「あら、コーラル。その心遣いはとっても嬉しいのだけれど、メリュジーヌは今すぐ戻らないといけないの」

「え?でも、さっき来たばかり、ですよね?」

「ごめん、コーラル。僕はもう行くよ」

「で、でも久しぶりに帰ってきたのに。お茶くらい――」

「いけないわ。コーラル、メリュジーヌが困っているでしょう。聞き分けの無い事を言っては駄目よ」

「も、申し訳ありません……」

 

 

 困惑して道を譲るコーラルに申し訳なく思いながら、僕は扉をくぐる。

 

 

「メリュジーヌ、今日はありがとう。次に会える日を待っているわね」

「――――さよなら、オーロラ」

 

 

 どうして僕は、オーロラの顔を見れないんだろう。

 

 

 オーロラはとても綺麗なのに、見たくないって、思ってしまったんだろう。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 ミニ魔界に響く着陸音……てかコレもう、爆撃だろ。

 

 『ギャーッス!!』『しゅーげきッスー!!』なんて騒ぐプリニーの悲鳴が煩わしい。

 

 荒々しく扉を開けて、俺の背中にメリュジーヌが突撃してきた。痛え……。

 

 

「お帰りメリュジーヌ。久々の再会にしては早かったな」

「なーんだ、もう帰ってきた訳?あのクソ女どうしてた?アンタを見て泣いてた?」

「…………」

「――プッ、ギャハハハハ!!そんな訳無ぇよなぁ!あの最高で最低のクソ女が!アンタを心配して!泣くなんてあり得ないんだもんなぁ!!」

「う……ううー……!!」

「アレ、お前が帰るの渋ってた?ちょっとでも引き止めた?どうせさっさと帰れとか言われたんじゃないの?」

「ううぅぅぅぅ……!!!」

「そらそうよな。王都襲ったヤバい奴に連れ去られたお前の事、ずっと手元に置いてるとか恐くて仕方ねえよな。それで自分まで目を付けられるなんて冗談じゃないよな」

「うー……!!うぅぅー……!うー……!」

 

 

 何を言われても言い返さず、うーうー言うだけのマシンと化したメリュジーヌ。爪が背中に食い込んで痛え……。

 

 

「言っただろコバヤシ!こいつらの関係終わってるって!」

「いや全くだな。あんだけ愛を捧げられておいて、一欠片すら返さないとか終わってるわ。お前もお前でそのままズルズル引きずってるし」

「……オーロラは、僕を拾ってくれたんだ。ただの汚い肉塊でしかなかった僕を。ああなりたいって思ったから、僕はここにいる」

「それだけで全て捧げるってか」

「僕は、オーロラを守りたい。オーロラの輝きを守りたい。そのためなら――」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 メリュジーヌの手に更に力がこもる。だから痛いって。

 

 

「…………引き止めて、欲しかった」

「なんて?」

「引き止めて欲しかった!!行くなって、私の傍にいてって!!

 僕は騎士だ、オーロラを守る騎士だ!……騎士、だけど…!!

 少しでも、長く一緒にいたいんだって!そう言って欲しかった!!

 ……それだけで、良かったのに…!!」

 

 

 背中からメリュジーヌを引きはがし、その頭に手を置いた。

 

 

「俺がアレの事嫌いな理由、それなんだよね。()()()()()()()()()()()()

「拾ったもの……」

「拾われたお前があんだけ尽くしてるのに、拾ったアレは知らん顔。この魔界で最底辺のプリニーにだって、働けばイワシくらいは与えられるのになあ。お前は拾われたから、見返り無しでアレに全てを捧げんの?いい加減、アレの事見限れよ」

「そんなの……」

「うっざ。本当は愛されたいクセに、我慢して忠義の騎士気取りかよ。見てる分にはおもしれーけど、いい加減見苦しいっつーの」

「ほら、バーヴァン・シーも心配してるだろ」

「だ、誰がこいつの心配なんかしてんだよ!?」

「お前」

 

 

 自分の髪みたいに顔を赤くしたバーヴァン・シーがぽかぽか殴ってくる。こいつ正直者だから、思わず口に出しちゃうんだよね。

 

 

「……」

「踏ん切りつかないなら、もう全部俺のせいにしちまえ」

「えっ……」

「アレの所に行って俺に目を付けられたくないから、ずっとここにいるって事にすればいい」

「……マジ?コバヤシ、こいつの為にそこまですんの?」

「別にアレに何言われようと関係無いしなぁ。これで解決するならそれでいいよ」

「…………」

 

 

 

「コバヤシ……」

「んー?」

「…………甘えても、良い?」

「いいよ」

 

 

 少しはマシになった顔のメリュジーヌを抱えて立つ。

 

 

「さて、バーゲストも待ってるだろうし、ティータイムと洒落込もうぜ」

「やっとかよ……というかメリュジーヌ!そこから降りろ!私と代われ!」

「やだ。今日からここは僕の特等席になったから、そのつもりで」

「ふざけんじゃねーよ!」

「そのつもりでって、もしかして俺にも言い聞かせてんの……?」

 

 

 尚、せっかく言い訳を用意してやったのに、メリュジーヌは暫くの間アレの元に行く事は無かった。




・妖精騎士メリュジーヌ

 二人がかりで現実突き付けられてフルボッコ。今まで目を背け続けてきた二人の関係を自覚させられ、それでもオーロラへの想いは捨てきれなかった。
 ……のだが、魔王からの助け舟というある種の愛を受け取ってしまったために、愛を向けられなかった寂しがりの彼女は無自覚に堕ちた。報われない想いはそのうちポイする事だろう。流石ランスロットと言うべきか。
「え?僕は勿論今でもオーロラの騎士だよ?うん、きっと(目逸らし)」


・魔王コバヤシ

 モルガンが氏族長の働きを見せてくれたものの、オーロラだけなんかおかしかったので少し突っ込んで調べてみたらコレだよ…と呆れ果て、挙句に彼女が気まぐれに拾ったり、作ったりしたものが放置されてるのを知って完全に見限った。
 彼自身、例え些細な物でも返し返される関係が心地いいので、オーロラとは永遠に分かり合えない。まあ分かり合える奴がいるのかという話だが。


・オーロラ

 あれ以来メリュジーヌが滅多に帰ってこないし、帰ってきても碌に話も出来ないまま、文字通り顔だけ見せて帰ってしまう。
 話をせがんだり”お願い”しようとしても、彼女が一番敵に回したくない魔王からの言伝を言い訳にされて断られてしまい、完全にデッドロック状態にはまっている。
 これについて風の噂を広めているが、コバヤシがメリュジーヌをさらったのは噂でも何でもなく事実なので、煽ってもさして効果は薄い。
 もっと言うなら噂に流されるような妖精はコバヤシにとって害悪でしかないので、敵意向けられたなら拳と剣と魔法で返すだけである。


・コーラル

 ソールズベリーの良心。最初高飛車な女とか思っててごめんなさいでした。
 メリュジーヌが魔界で酷い目に逢ってると思っているので、たまに帰ってきたときに心からのおもてなしで迎えるが、なんかオーロラといた時より生き生きしてて目を丸くしている。


・パーシヴァル

 メリュジーヌの扱われ方を風の噂で聞いて、表向きは平静を装っているが内心気が気ではない人。尚、彼が持っている選定の槍もメリュジーヌ経由でこわーい魔王からロックオンされてる模様。
「ッ!?!?……何でしょう、今、この世の者とは思えない相手から狙われたような…」


・モルガン

 魔界で力を付けて頭角を現しつつある妖精の女王。各氏族の生活を魔法の鏡で覗いて弱みを集めている。特にスプリガンの弱みを見つけたのは大きく、ついガッツポーズをとった。そしてウッドワスの苦悩を覗いて頭を抱えた。
 最近は並行して女子力も高めている模様。決してバーゲストの料理に負けたからではない。ないったらない。
 

この作品の設定を使った別の小説をぼんやり考えてます。なんか面白そうだと思ったものがあれば、一票どうぞ。

  • 転送事故でオラリオへ(ダンまち)
  • 転送事故でワノ国へ(ONE PIECE)
  • 汎人類史モルガンを陰から守る会
  • ゲーティア絶許・グランドオーダー
  • 原作6章、カルデア殲滅ルート
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