妖精魔界戦記ディス・アヴァロン   作:サンダーボルト

8 / 32
天才という言葉で収まらない逸材に限界突破の世界を与えた結果。

ただのチートになった。


がんばれモルガン

「コバヤシ。私と貴方が共同でブリテンを統治するプランを考えたのですが」

「バーゲスト、コーヒーおかわり」

 

 

 爽やかな魔界の朝、朝食をペロリと平らげたコバヤシはモルガンの話を聞かなかった事にした。もし考えてしまえば、折角のバーゲスト特製の美味い朝食を全て戻してしまいそうになる。リスク回避は当然だった。

 

 

「コバヤシ、せめて話だけでも聞いてください。きっと貴方にもメリットがありますから」

「へえ。ブリテンの面倒見るのに値するメリットねえ。ま、言うだけ言ってみろ」

「まず、貴方を私の夫として迎え入れます」

 

 

 ドタバタと、キッチンからバーゲストがコーヒー片手に慌てて戻ってきた。

 

 

「へへへへ陛下!!何をどさくさに紛れて求婚しているのですか!!コバヤシも言わせておいて良いのですか!?」

「どうせ仮定の話なんだし好きに言わせておけばいいじゃん。で、続きは?」

「私と夫婦になった貴方は、私の体を好きにする権利を得ます。コバヤシ、私の体では不足ですか?」

「お前の体じゃ全く釣り合い取れませんけど?」

 

 

 モルガンの口がへの字に曲がった。分かりやすく不機嫌になっておられます。

 

 

「例えば、お前の体を好き勝手できた俺の幸せポイントが10だとしよう。これにブリテン統治という不幸せポイントがマイナス一万足されるわけだから、俺は9990ポイント分の不幸に見舞われる訳。お分かり?」

「なるほど。私の体を1000回好き勝手すれば釣り合いが取れるのですね。安い出費です」

「どうしようコイツ引く気ねえ」

 

 

 1000回!?と絶句するバーゲストを他所に、モルガンは勝手に計算して勝手に納得していた。

 

 

「改めて伝えた事はありませんでしたが、私は貴方に深く感謝しているのです、魔王コバヤシ」

「ほー」

「最初こそ、貴方を利用しようという気持ちも少し……いえ、むしろそちらの方が大きかった。

 ですが、貴方はバーヴァン・シーを救ってくれました。今世で終わりを迎えるはずだった、我が娘の辿る道を覆してくれた。

 私はあの子の為なら、私の夢……ブリテンを捧げても良いとすら考えていたのです」

「重いわ」

 

 

 重い。想いが重い。ギャグでなく本当に重い。想われているバーヴァン・シーがプチッと潰れてしまうくらい重い。

 

 4000年もの間、救世主トネリコとしてブリテンを救おうとし、裏切られ続けて救うのを諦め、それでも更に2000年もブリテンに君臨し続けた彼女がブリテンを捧げても良いという。

 

 仮に個人の想いの重量が計れたとして、彼女のブリテンへの想いを表す重さの単位など存在しないのではないだろうか。

 

 

「貴方は私に様々な可能性の扉がある事を教えてくれた。汎人類史、異聞帯の更に外の世界。知識では知っていましたが、私自身が足を踏み入れるだろうとは夢にも思いませんでした。

 ……未だ問題は残っているとはいえ、今の生活は楽しい。かつて仲間達と共に歩んだ、割と気に入っていた冒険と挑戦の日々を思い出しました。

 私は貴方になら、身も心も全て捧げられます」

「自分丸ごと俺にくれてもいいとは、殊勝な心掛けだな」

「ええ。ですから私の夢であるブリテンも貴方へ捧げます」

「いらないんだけど」

 

 

 理性が残っているとはいえ、今の彼女はバーサーカー。多少の齟齬を無視してブリテンをごり押してくるモルガンに、コバヤシも飄々と躱し続けるのも限界だと感じ始めていた。

 

 しかし今更モルガンを放り出すのは彼の理念に反する。持ち主としての責任を放棄するなど彼自身が許すわけも無し。何よりそんな事をすればバーヴァン・シーが泣く。わんわん泣く。それだけは避けなければならない。

 

 そして一方で、この提案を受けるしかないかもしれないと考えるようにもなっていた。

 

 なんせ相手はモルガンである。あのモルガンである。6000年もの間ブリテンに固執し続けていたモルガンである。大半の魔王が裸足で逃げ出す程の執着心を持つ彼女に狙われ、果たして自分に逃げ切る術があるのだろうか?コバヤシは訝しんだ。

 

 魔王化により人間の寿命を克服してはいるが、精々百代後半のコバヤシではモルガンの人生の十分の一すら生きていない。策謀に関しては圧倒的な経験不足だった。

 

 それに打算込みとはいえ、彼女の提案は自分に対する好意の表れでもある。自分に全てを捧げてもいいと言われるのは魔王冥利に尽きるものだ。相手が有能で美女ならばなおの事。故に頭を悩ませる。

 

 

「そもそも俺に国を任せるとか正気の沙汰じゃねえよ。今の住人百人ちょっとのミニ魔界くらいがちょうどいいんだ。億単位の住人の面倒なんて、それこそ魔界大統領クラスの仕事だろうよ。俺には向かん」

「ほう……そちらには魔界大統領なる役職が存在するのですね。では妖精國にも同じような席を用意しましょう」

「やべ、墓穴掘ったわ」

 

 

 一を聞いて十を知る。聞いたばかりの知識を使ってプランを練り直すモルガンにコバヤシは戦慄した。

 

 汎人類史において冠位の肩書を持つマーリンに比肩する魔術師。天才という言葉すら生温い才能の塊。コバヤシが拾ってきた者の中でも、モルガンの成長はずば抜けていた。

 

 元より魔術を極めた頭脳の持ち主であるのも相まって、魔界で得た魔法と自身の魔術を掛け合わせての魔界での貢献度は計り知れない。

 

 その最たる例が分身である。

 

 コバヤシとの戦いでも見せた、自身と同じ存在を魔力で作り出す分身術。ドーピングで自身の魔力保有量の絶対値が増えたモルガンが、魔界で更に強力になった自分を増やす。モルガンは多数のアイテムのアイテム界に自分の分身を十数体送り込み、装備強化のローラー作戦を実行していた。

 魔術と魔法と宝具でアイテム界の住人を焼き尽くし、各階層の宝箱やボーナスを根こそぎ回収しながら進んでいくモルガン達の大行進。魔翔族(巨大な蛾の魔物)の群れに遭遇すると、対処を押し付け合った挙句自滅するという欠点を差し引いても、リソース回収において有効なのは誰の目から見ても明らかだった。

 

 コバヤシの知り合いのゼロッケンという格闘家は魔奥義で五人に分身できるが、モルガンのそれはただの魔術なのでどちらが有用かは比べるまでもない。

 

 更に言えば、モルガンの分身は本体と変わらないスペックを持つ――つまり、分身が分身を生み出す事もまた可能なのだ。

 

 バイバインを振りかけた栗饅頭の如く増えるという、敵からすれば地獄絵図である。

 

 幸いにも分身は本体の意思で消えるので、増えすぎて魔界がモルガンで溢れかえるという危機は発生しない。モルガン魔術は安全にも配慮されています。

 

 

「(甘く見ていたというか、なんというか。ここまでヤベー奴だとは思ってなかった。あの時はステータス差でゴリ押ししてたから何とも思わなかったが、コイツ元から凄い優秀だわ。

 ……というか、確かブリテンには女王の座を狙ってる奴等もいるんだったな……え?どうやってコイツを倒す気でいるの?)」

 

 

 もし本気で打倒モルガンを掲げてるなら、モルガンの実力を正しく測れているのだろうか。

 

 魔界に来る前から既に魔術師としては理想形。いかに軍隊を集めようとも、このスペックの分身が可能なら正面からぶつかった所で勝ち目はない。

 

 生き物や厄災を水鏡の術で過去に送る力も有しているので、厄介なものは妖精歴の終わりにでも飛ばしてしまえば消える。

 

 加えて城にはモルガンがギフトを与えた妖精騎士が鎮座し、果てに妖精國の最強生物の忠臣のウッドワスが控えている。仮にその場にいなくても水鏡で呼べばいい。

 

 

「(円卓軍や王の氏族に勝ち目無いだろこれ……。もしモルガンの命を狙うなら、信用を勝ち取って懐に入って暗殺……あ、無理だわ。コイツ妖精眼持ってる)」

 

 

 真偽を見抜く妖精眼持ちのモルガン相手におべっかは通じない。唯一の泣き所と言えるバーヴァン・シーを人質にでも取れば動揺は誘えるだろう。

 

 まあそれも昔の話。今のバーヴァン・シーをどうこう出来る相手はそういない。いればモルガンの警戒網に引っ掛かる。

 

 

「既に新しいキャメロット城の構図も考えています。凄く硬く、凄く広く、凄く強いのを建てます。今の私の魔力なら、ロンゴミニアドを更に増設しても問題ありません」

「モルガンは偉いな~……」

 

 

 ブリテンをめぐるコバヤシとモルガンの応酬は、もう暫く続く事となる。




・モルガン

 コバヤシが妖精騎士とかと絡んでた裏で色々やってた。ミニ魔界での貢献度から、ミニ魔界の住人からコバヤシの次くらいに慕われており、虎視眈々と外堀を固めている。
 ぶっちゃけもう立派に魔王になれる。ただ、本人はコバヤシとの共同作業としてブリテンを治めるやり方を望んでいるため、あの手この手でアピール中。統治の対価としてコバヤシに売れるものが妖精國に無いので、自分を売りこんでいく方法にシフトチェンジした。


・魔王コバヤシ

 作者と同じでモルガンの可能性を甘く見てた人。そもそも魔力を使う分身なのに同じ強さってどういう事…?魔力使った分弱くなるんじゃないの…?
 想像以上に育っていくモルガンに日々驚かされる生活を送る。戦闘面で言うならほぼ互角。モルガンがいくら分身しても、敵全体に一斉攻撃できる手段があるのでギリギリ均衡を保っている状態。接近戦ならまだ負けない。まだ。
「もう、とっくに俺超えてるんじゃないかな…」



・魔界病院院長

 回復アイテムを山ほど持ってきてくれるので正直助かってますね。…え?コバヤシ様とモルガンさんが夫婦?まあ……良いんじゃないですかね。



・暗黒議会議長

 モルガンさんが議員に渡す賄賂アイテムを持ってきてくれるので、議題が通しやすくなってありがたいですね。結婚?議題として出しますか?


・妖精騎士バーゲスト

 途中から霊圧が消えた。

この作品の設定を使った別の小説をぼんやり考えてます。なんか面白そうだと思ったものがあれば、一票どうぞ。

  • 転送事故でオラリオへ(ダンまち)
  • 転送事故でワノ国へ(ONE PIECE)
  • 汎人類史モルガンを陰から守る会
  • ゲーティア絶許・グランドオーダー
  • 原作6章、カルデア殲滅ルート
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。