妖精魔界戦記ディス・アヴァロン   作:サンダーボルト

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杭が足りないせいでバーヴァン・シーをこれ以上強く出来ない病にかかってます。


トネリコの夢

 毎日毎日、モルガンからの勧誘を避け続ける日々。アイツとブリテンの事が頭のどこかにこびりついたまま、いつものように寝床に就く。

 

 

 ――――微睡んだ思考が急に覚醒し、俺の視界に見た事のない景色が飛び込んできた。

 

 

「…………夢か」

 

 

 何の事もない、単なる夢。だが、起きているのと大差ない体の状態を見て、これが人為的に引き起こされたモノだと確信した。

 

 

「そういや、モルガンは夜魔もコンプしてたっけか……」

 

 

 夜魔族。男の望む姿で現れるという淫魔。確か、寝ている相手に自由に夢を見せる能力もあった。

 

 ステータスの引き上げの為にサブクラスをマスターさせていたが、その中には職業だけでなく魔族も含まれている。

 

 夢の中にまで干渉し始めたのか、あの魔女は?

 

 

「……意図的に見せてるのか、それとも……」

 

 

 だが、いくらモルガンといえども魔族の力まで自由に操れるとは思えない。サブクラスをマスターしていたとしても、あくまでも力の一部が手に入るだけだ。

 

 俺だって、夜魔族に襲われた事も一度や二度じゃない。頭の中にそう易々と侵入されはしない。

 

 悶々と悩む俺の前を、最近見慣れた金髪が通り過ぎた。

 

 

「……アルトリア?……いや」

 

 

 あのみずぼらしい田舎者の服装ではない、シャンとした服を着ているアルトリアに似た何者か。

 

 その眼前には、夥しい数の呪いの化け物が蠢いていた。

 

「…………まさか」

 

 

 ブリテンの大厄災を何度も祓った救世主。楽園の妖精トネリコ。

 

 モルガンの過去が、そこにいた。

 

 どういう事だ……?トネリコ時代のモルガンを夢に見るとかどうなってやがる。しかもなんだ、今とは全然性格違うぞ。何か表情豊かだし、見た目だけじゃなく性格までアルトリアに似てたのか?トネリコの事はモルガンからしか聞いていないから、こんなんだとは知らなかったな。

 

 傷つきながらも厄災を祓い除けたトネリコは、妖精達に囲まれて歓迎されていた。

 

 やれ自分たちの救世主だ、自分たちの希望だと……。

 

 トネリコも満更でもない表情で揉みくちゃにされていた。

 

 

「…………」

 

 

 見てるだけなら微笑ましい、後々英雄記として語られそうな1ページ。

 

 だが俺は知っている。

 

 トネリコの歩む道を。トネリコの運命を。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

『どうして……!?私じゃない!私のせいじゃないのに!私は皆の為に戦ったのに!どうして!?』

 

 

 救世主として扱われていたのもつかの間の事。トネリコは助けた妖精達から追われる身になっていた。

 

 大厄災は退けたが、呪いの怪物モースは変わらず湧き続けている。誰かがそれを、大厄災を祓ったトネリコがここにいるせいだと言い出した。

 

 石を投げられ拳を振るわれ、泣く泣くトネリコは逃げ出した。歓声は罵声に変わり、感謝の気持ちも消え失せた妖精に追われたトネリコは意気消沈していた。

 

 

『……きっと、皆不安なんだよね。うん、次はもっと上手くやろう。皆が笑えるように。皆が救われるように』

 

 

 妖精眼で妖精の本音なんぞ見えていただろうに。トネリコは気丈に振舞っていた。

 

 けれど、いくらトネリコが優しくあっても妖精は変わらない。災害が起きたならその力を頼られ、災害を治めたならその力は疎まれる。

 

 楽園から遣わされたトネリコは大災厄からブリテンを守る使命があり、いくら酷い目に遭おうとそれを放棄するような真似はしなかった。

 

 トネリコには僅かだが仲間もいた。彼女の苦悩を理解し、苦楽を共に出来る本物の仲間が。

 

 

「アルトリアよか、多少はマシ……なのか?」

 

 

 いや、どっちもどっちだろう。どちらも悲惨だ。

 

 そもそも、こいつらにブリテンでの居場所なんて無いのだから。

 

 

『くそー!みんな寄ってたかってトネリコをいじめやがって!』

『いい加減、ウンザリしてくるな』

『うん。でも逃げるわけにはいかないよ』

 

 

「……いや、逃げていいだろ」

 

 

 思わず口から出た言葉に、夢の中のトネリコは何も返さない。

 

 その背中は、あまりにも小さい。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 モルガンが語った歴史と相違なく、トネリコはそれからも迫害され続けた。どれだけ努力しようとトネリコの周囲を渦巻く運命は変わらない。何も変わらない。

 

 トネリコは年々消耗していく。心も体も、傍から見えないが擦り減っていく。

 

 当たり前だ。誰が耐えられるんだこんなの。

 

 

「なあ、トネリコ。もうやめようぜ」

『…………』

「いくら頑張ったって、妖精共がお前を本当に称える訳無いだろ?使命なんて捨ててしまえばいい」

 

 

 一人歩くトネリコに、悪魔のように囁いてみた。返事が無いのは分かり切っているが、あんなモンずっと見せられてて、正直こっちも参ってんだ。

 

 

「救世主なんて止めよう。こんな世界勝手に滅べばいい。自分達のエゴで滅んで泣き叫ぶ様を、遠くから眺めてればいいのさ」

『うるさい』

「おうっ……!?」

 

 

 一瞬返事が返ってきたかと驚いたが、どうやらそうでもなさそうだ。

 

 トネリコはしゃがみこんで耳を塞ぎながら、自分に暗示をかけるかのように呟き続ける。

 

 

『うるさい、うるさい……!皆がなんて言おうと、なんて思ってようと構うもんか。

 私は諦めない。私はブリテンを救うんだ!

 もうブリテンを、失わなくて済むように……!』

「――――」

 

 

 これは、無理だ。

 

 無理だと悟ってしまった。

 

 トネリコは止まらない。誰が止めようと止められない。

 

 

「お前が頑張るのって、案外普通の理由だったんだなぁ」

 

 

 勿論、これはただの夢なのだが。どうにも俺は、モルガンが頑張り続ける理由が間違っていないように思えるのだ。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 仲間達と焚火を囲み、珍しく上機嫌のトネリコ。

 

 明日に控えるのはロンディニウムでの戴冠式だ。

 

 

『これで旅も終わりか』

『ああ!トネリコの頑張りが報われる時が来たんだ!もうすぐ平和な国が出来るんだぞ!』

『ええ。これで私の使命ももう終わり。ようやく楽園に帰れます』

 

 

 妖精の氏族達を少しずつまとめ上げ、円卓軍のウーサーを王としたブリテン国の誕生する日。

 

 トネリコのこれまでの集大成とも言える、先の先まで見据えた最大級の試みだ。

 

 だがあのウーサー坊や、確実にトネリコにホの字だったんだけど。お前、放置して帰る気?

 

 焚火から離れたトネリコが、夜空を見上げてひとりごちる。

 

 

『ようやくここまでこれたんだ……。皆が笑える国。妖精達も協力してくれるし、大丈夫だよね』

「…………」

『……あはは。ホント、大変だったなぁ。次こそ上手くやってみせるって、二倍頑張れば、二倍石を投げられる。

 幽閉。磔刑。斬首。水牢。火刑……』

「うげえ……」

 

 

 やめろや、嫌な事思い出させるの。

 

 閉じ込められて衰弱しきったトネリコ、磔のまま放置されていたトネリコ、ギロチンで首がスパッと飛んでいったトネリコ、酸素を求めてもがき苦しむトネリコ、体を焼かれて悲鳴をあげるトネリコ……。

 

 全部見ちまってんだぞ、俺。

 

 

『あとされてないのは、()()()()()……』

「お前――!」

 

 

 ぼそっと呟いた一言を聞いてしまい、軽い目眩がした。

 

 なんてこった。トネリコは気づけたんだ。催事の前に浮かれてしまい、対策するのを忘れてしまっていた。

 

 もしも、その一言で気づけたのなら。トネリコの未来はまた違ったのだろう。

 

 ……だが、気づけなかったとしても、一体誰がトネリコを責められるというのか。

 

 明日はブリテンで一番めでたい日。そう信じて疑わないトネリコに、そこまで考えろというのは酷ではないのか。

 

 明日を、未来を明るいものにするために全てを捧げたトネリコが、明日を楽しみに出来ないなんて、そんなのあんまりではないだろうか?

 

 

「……」

 

 

 でも、まあ。これは所詮、夢だしな。

 

 もしかしたら、トネリコに都合の良い展開になるかもしれない。

 

 何事も無く戴冠式が終わり、トネリコは楽園へ帰るのかもな。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

『嫌ああああああああああああ!?なんで、なんでぇっ!?』

 

 

 血溜まりの広間に響き渡るトネリコの悲痛な絶叫。

 

 分かっていた。分かっていたさ、こうなるなんて。モルガンに聞いた通りの展開だ。

 

 トネリコが面倒を見ていたウーサー坊やは死んだ。

 

 トネリコが集めた円卓が死んだ。

 

 人間の杯に毒酒が盛られ、皆一斉に殺された。

 

 人間に支配されるのを嫌がった、少数の妖精の蛮行だ。

 

 トネリコの反応が遅れたのは、彼女の酒には毒は仕込まれていなかったからだ。これが偶然なのか、それとも計略の内なのかは判断つかないが……。

 

 

『ウーサー!!ウーサー、ウーサー、ウーサー……!!お願い、もう一度、もう一度何か言って!みんな、これまで頑張ってきたのに!!』

 

 

 錯乱したトネリコは何も言わないウーサー坊やを揺すり続ける。トネリコの服に血が染み付いていく。

 

 お前はウーサー達の事を優秀な道具だとか言っていたが、それでもそれなりの愛情を持って接していたんだろう。それが無惨に殺されて、何も思わない女じゃない。

 

 人間の断末魔が聞こえる。妖精兵士の怒号が聞こえる。円卓軍はここで皆殺しにされる。

 

 トネリコはこれを仕組んだ黒幕として、また妖精達に追われる。

 

 これまで散々ウーサーやトネリコを頼り、讃えていた妖精達も掌を返し、この虐殺に嬉々として参加するだろう。

 

 トネリコは逃げた。燃え盛るロンディニウムから必死に逃げた。妖精とは名ばかりの畜生から逃げ続けた。

 

 

『はあ、はあ……あ、は。あはは…あはははははははははははははは!!』

 

 

 トネリコは狂った。狂って笑った。泣きながら笑った。

 

 狂って当たり前だ。むしろ今まで良く保ったほうだと思うぞ。

 

 トネリコは自分達を氏族達に売った妖精の記憶を消し、トネリコの身代わりとして奴等に殺させた。

 

 トネリコは死んだ。この世界の救世主はもういない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖精達が引き上げて、全てが燃え尽きたロンディニウム。新たな城になるはずの場所は、瓦礫と灰だらけの墓所になっていた。

 

 

『私は妖精を許さない。私は妖精を救わない』

 

 

 ロンディニウムの真ん中にトネリコは立つ。より良い世界を目指した街の成れの果て。風に吹かれて舞う灰が、トネリコの体に纏わりつく。

 

 

『私は魔女。モルガン・ル・フェ。救世は止める。私がブリテンを支配する』

 

 

 煌めく黄金のような髪の輝きは、仄暗い灰色の下に埋もれた。

 

 俺のよく知る、モルガン・ル・フェの誕生だ。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「……ん、な?」

 

 

 一瞬、視界にノイズが走り、次の瞬間に別の場所になっていた。

 

 

「……ここは確か、モルガンがいた広間か」

 

 

 俺がモルガンと対峙したキャメロットの大広間。今、俺の目の前には、多数の兵士に囲まれたモルガンがいた。

 

 玉座を離れ、何故か手負いのモルガンに対峙するのは土の氏族長のスプリガンという男。

 

 

『モルガン陛下。ブリテンはあなたの庭ではない。少女らしい夢からは、そろそろ卒業して頂こう』

『――――舐められたものだ。例え首だけになろうと、雑兵に討たれる私では――』

 

 

 杖に魔力が迸る。目の前の反逆者共を焼き尽くさんと、女王モルガンは杖を、振るおうとした。

 

 

『――――』

 

 

 振るえなかった。奴の近くには手足が腐り落ちたバーヴァン・シーがいた。

 

 

「……野郎」

 

 

 モルガンの唯一の泣き所。どうやって手に入れたかは知らないが、最も効果的なカードを最高のタイミングで切ってきた。

 

 動きが止まった隙を見逃さず、兵士の凶刃がモルガンを襲う。

 

 四方八方から斬りつけられ、倒れ伏すモルガ――

 

 

『なんとぉ!?』

 

 

 ――モルガンは倒れない。咄嗟に左手だけを庇い、魔力の刃を纏った杖で周囲の兵士を斬り殺した。

 

 

『は――、ァ――――……。舐めるな、と言った』

「――見事」

 

 

 思わず身震いする程の圧倒的な王者の風格。死に体であろうと僅かにも薄れない執念がモルガンを立ち上がらせていた。

 

 ボロボロの状態でゆっくりと玉座へ戻ろうとするモルガンを、妖精達は遠巻きに眺めていた。

 

 

『キャメロットで戦う皆様、どうかお聞きください――』

 

 

 聞きたくもない声が聞こえてきた。風の氏族長の力でキャメロット中に言葉を流している。

 

 

 ――モルガンの正体は救世主トネリコ。

 

 ――トネリコは厄災を引き起こし、氏族の絆を乱していた。

 

 ――トネリコはウーサー王を殺した。

 

 ――そのせいで大厄災は過去最高の規模になった。

 

 ――ブリテンは一度滅び、モルガンによって蘇った。

 

 ――モルガンは世界樹を枯らし、その魔力でブリテンと妖精達を蘇らせた。

 

 ――妖精達はモルガンの私利私欲の為に苦しめられてきた。

 

 

 聞きたくないから聞き流したが、ざっとこんな感じの事を言っていたと思う。静寂の後、一人の妖精が声を上げた。

 

 

『……ひどくない?』

『ひどい』

『ひどいよね。女王が聞いて呆れるよね』

 

 

「酷いのはお前らの頭の出来だよ……」

 

 

 ここにいるなら、お前らどっちかと言うと搾取する側だったんじゃないのか?何をいまさら被害者ぶってるんだか……。

 

 そもそもこんな話鵜呑みにするのか。トネリコが厄災を引き起こした話、どっから出てきた?

 

 あー……。でもウーサーが殺された後、偽物とは言えトネリコが処刑されたのか。否定するの難しいかこれ……。

 

 

『はあ……はあ……っ』

 

 

 またこの繰り返しだ。妖精共は寄ってたかって、死に体のモルガンに物をぶつけ始めた。

 

 ……ただ、今度のモルガンは逃げなかった。止まらずに玉座へと向かう。

 

 

『――ぐっ。貴様たち、なにを――』

『うるさい!もう騙されないぞ、悪辣な魔女め!』

『お前のせいでこんな酷い世界になったんだ!』

 

 

 妖精共は落ちていた剣を拾ってモルガンへ突き立てる。あらん限りの罵詈雑言を投げつけながら。

 

 

『怠慢だ!もっといい世界なんていくらでも作れたのに!』

『役立たず!役立たず!お前なんかもういらない!』

 

 

 剣を突き刺す。踏みにじる。不快な音が聞こえてくる。

 

 血みどろのモルガンは地に倒れ伏して尚、玉座へと手を伸ばす。

 

 

『やめろ、やめろ――。誰か、私を、玉座に――』

 

 

 不快感のままに魔法を放つ。

 

 炎。風。氷。星。

 

 その全てが通り抜ける。

 

 

『やめて、誰か、お願い、私を、玉座へ――』

 

 

 この場に仲間はいない。モルガンの願いは叶わない。

 

 どうしてお前は一人なんだ。

 

 一人で出来る事なんて、たかが知れているだろう。

 

 

『玉座に、戻せ――!もう、()()()()()()()()()()()――!』

 

「――――」

 

 

 モルガンが動かなくなると、今度は捨てられていたバーヴァン・シーに目を付けた。

 

 バーヴァン・シーはぐちゃぐちゃにされ、大穴へ捨てられた。

 

 俺は動かなくなったモルガンの傍へ行く。

 

 俺はモルガンの頭に触れた。

 

 まあ、触れないからフリなんだがな。

 

 

「お前はよく頑張ったよ。逃げずによくやってきた」

 

 

 もしかしたら、俺がブリテンに来なかったら。モルガンやバーヴァン・シーの末路はこうなっていたのかもしれない。

 

 結局は夢の中の出来事。現実でモルガンやバーヴァン・シーはこうはならない。

 

 外から耳障りな歓声が聞こえてくる。モルガンが倒されたのを喜んでいる。

 

 こうして悪逆非道の女王は倒されました。めでたし、めでたし。といった所か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――冗談じゃない」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「おはようございます。良い朝ですね。……少し顔色が悪いようですが?」

「ああ、昨夜の夢見が悪くてね。思い出したくも無いから聞かないでくれ」

「それは災難でしたね。もし続くようであれば相談してください。悪い夢を追い出す手段はいくらでもあります」

 

 

 反応から察するに、モルガンが意図してあの夢を見せたわけではなさそうだ。

 

 

「おはよーコバヤシ!ねえねえ、アルトリアに新しい服着せたいんだけどさー、嫌がって着たがらねーの。説得して?」

「そんなお腹丸出しの色々際どい服なんか恥ずかしくて着れるかー!!」

 

 

 バーヴァン・シーとアルトリアはいつの間に仲良くなったのか…。波長が合うのだろうか。

 

 

「服かー。僕も新しい服が欲しいな。コバヤシ、一緒に買いに行こうよ。恋人の君に似合うのを選んでほしいな」

「眠いならもう一度寝たらどうですメリュジーヌ。起きながら寝言を言うなんて淑女として恥ずかしいですわ」

「え?僕はちゃんと起きてるけど?」

 

 バーゲストはメリュジーヌと仲があまりよろしくないらしい。というかいつの間に恋人扱いになってんだ……。

 

 やいのやいの言いながら、結局みんなが同じ食卓を囲むんだよな。

 

 

「なあ、モルガンよ」

「はい、なんですか?」

「もうさ、ブリテンなんかぶっ壊しちまおうぜ」

「――――え?」

 

 

 そんな和やかな食卓をぶち壊す俺の発言。モルガンは明らかにうろたえて俺を見つめる。

 

 

「そんな、何、を――」

「気に入らない妖精共を皆殺しにして、くだらないしがらみも全部ぶち壊して、更地にしてやってさ。妖精共の亡骸で新しい島を作ろうぜ。

 お前が気に入ってる奴だけを連れて行って、小さな島で暮らせばいい。統治だって簡単だ。皆が仲良く幸せに暮らせる、お前だけのブリテン島を作ればいい。

 資材が足りないなら、こっちで融通してやっても構わないぞ。こう見えて、お前の働きは評価してるからな」

 

 

 モルガンはこちらを見て動揺している。妖精眼で分かるだろう?これは俺の本心だ。

 

 あんな面倒くさい場所、一旦全部掃除してしまえば楽になる。今のお前ならそれが可能だ。

 

 

「ま、待って、ください。どうか、それだけは――」

「嫌なのか?」

「……はい。嫌、です」

 

 

 モルガンは俺の目を真っ直ぐ見返しながら、ハッキリ嫌だと答えた。

 

 

「確かに私はブリテンを支配したい。でも、壊したいわけではないんです。

 ――私はただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ――そうか。今も昔も、お前の願いは変わっていないのか。

 

 故郷を守りたいという、誰にでもある、ありふれたシンプルな理由。

 

 それは単純で。単純だからこそ、強くて折れない。

 

 

「ふーん。言ってみただけだ。お前が嫌だって言うならやらない」

 

 

 ホッとして、胸を撫で下ろすモルガン。緊張した空気が緩んでいくようだ。

 

 

「俺はな、ミニ魔界を運営するにあたって自分でルールを決めてる」

「ルール、ですか?」

「ああ。働いた奴には報酬を必ず与える」

 

 

 何を当たり前の事を、と思われるかもしれない。だが、その当たり前が力の差で消えるのが魔界だ。

 

 

「そりゃあ、仕事の出来でイワシが煮干しやシラスに変わったりもする。でも報酬そのものを出し渋った事はない」

 

 

 それが俺が自分に課したルール。無償の奉仕なんて馬鹿馬鹿しい。俺はそんなのやらないし、させない。

 

 

「お前は、俺になら身も心も捧げると言ったな。その言葉に嘘は無いな?」

「――はい。貴方が望むなら。未来永劫、貴方に私の全てを委ねます」

「そうか」

 

 

 俺はお前に同情しない。お前を哀れとは思わない。

 

 どれだけ酷い最期を迎えようとも、どれだけ厳しい旅路だったとしても。

 

 お前自身が選んだ道だ。困難を承知で進むと決めた道だ。

 

 ………………

 

 だがまあ、それはそれとして。

 

 本当は嫌だが。死ぬほど嫌だが。

 

 お前の献身の見返りに、お前が一番欲しいものを用意しよう。

 

 

「――モルガン・ル・フェ」

「――はい。我が夫」

 

 

「――お前にブリテンをくれてやる」




・魔王コバヤシ

 モルガンは無意識に夢を見せようとしていたが、それを迎え入れたのは間違いなくコバヤシの意思。トネリコ時代はモルガンの過去だが、玉座のシーンはコバヤシが自分がいなかったらどうなっていたかをシミュレーションして出した答えの一つ。
 別にこれでモルガンに同情とかした訳ではない。
 今まで散々働かせてきたツケを連中に払わせる。それだけだ。


・モルガン

 内心嫌がってるのにブリテン統治にやる気を出した魔王に困惑&歓喜。そして我が夫呼びを遂に解禁した。ベリルの事はもう忘れている。
 コバヤシは彼女に夢の事は話さない。まあそれで正解だ。自分が夢魔みたいな真似仕出かしてると知ったら発狂しかねない。
 というのは建前で、ただでさえ淫蕩気味な彼女がサキュバスの能力なんて身に付けたらヤバいから、ずっと知らないままでいてほしい。


・妖精騎士バーゲスト

 遂に魔王と女王が組んで本格的に動く。覚悟はしていたが、どうなるのかちょっと想像つかなくて胃が痛む。基本的に魔界側だが、まともな妖精には寛大な処置をお願いするつもりでいる。


・妖精騎士メリュジーヌ

 パーシヴァルの為に選定の槍に変わる武器を選別中。折角なので目一杯強化したものをお土産にするつもり。強く生きろパーちゃん。


・妖精騎士バーヴァン・シー

 よく分からないけど、お母様とコバヤシが嬉しそうだからヨシ!


・アルトリア・キャスター

 あれ?私もしかして蚊帳の外?

この作品の設定を使った別の小説をぼんやり考えてます。なんか面白そうだと思ったものがあれば、一票どうぞ。

  • 転送事故でオラリオへ(ダンまち)
  • 転送事故でワノ国へ(ONE PIECE)
  • 汎人類史モルガンを陰から守る会
  • ゲーティア絶許・グランドオーダー
  • 原作6章、カルデア殲滅ルート
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