内通者   作:三軒過歩

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一つの罵声が百の声援に勝るのはその一つの罵声が目立つからなのです。つまり、百の罵声の中に一つの声援があれば一つの声援が勝るのではないでしょうか。…ないな。


内通者と先生2

「今日でちょうど一週間か。」

 

受験が終わっても佐々木はいつもの通り勉強し、そしてAFOに言われた通りに街に繰り出しいろんな人の過去を覗く。たった今見た中学生くらいの子供とその家族は合格通知が来たお祝いにいつもより豪華な昼食を堪能していたようだ。

 

(今日はこんなものだろう。)

 

幸せを噛みしめている家族を最後にして帰路に着く。郵便受けを開けると合否通知が入っていた。

 

「…ゴフッ」

 

部屋に戻り封を切ろうとしたときに急に強い異臭と共に口から黒い液体が飛び出す。

 

 

「ゴホッコホッ!」

 

せき込んでいると目の前にスーツを着た大柄な男が現れる。

 

「いつも突然ですけど、今回はとびっきりですね。いつもみたいにゲートで呼んでくれれば…」

 

「いやあ、すまない。”転送”の個性を手に入れたんだけど、試運転がしてみたくてね。今回はこうして呼びだした。でも、ワープゲートにはない長所もあるがやはり使いにくいな。帰りは黒霧にやってもらおう。」

 

「そうしてください。急に口から黒い液体が出てきて何事かと思いましたよ。なんかすごい臭いですし。」

 

「まあそんなに怒らないでくれ。さあ、じゃあ特訓を始めようか。」

 

合否通知をポケットに押し込みAFOに向かって行った。

 

 

「うわっ!」

 

「まだまだ読みに体がついて行ってないね。今の状態でもそこそこやれるだろうけど、僕に一撃でも与える日は遠そうだ。」

 

「一年近く稽古をつけてもらいましたけど、何年経ってもあなたを凌駕する自分が想像できないですよ。」

 

その言葉を聞いてAFOはどことなく嬉しそうに言う。

 

()()、ふむふむ凌駕ね。まあ、これからの成長も楽しみにしているよ。」

 

「もちろんです。楽しみにしていてください、先生。」

 

黒霧にワープゲートを作らせる。その場に黒霧は現れない。

 

「ああ、そうそう、すっかり忘れてた。合格おめでとう、佐々木過渡くん。」

 

ゲートに入る直前で思い出したように佐々木に言った。

 

「まだ通知の封を切ってもいませんけど。」

 

ちょうど通知が届き、合否通知はこの中にある。合格通知ではなく合否通知なためにまだ合格してるかなどは分からない。部屋に戻ってから切ろうと思っていたがここで開くことにする。

 

「君を前にすれば、合格かどうかくらい簡単に分かるさ。」

 

「嘘ですね。」

 

にこやかに言うAFOに対して冷めた声で佐々木は言い放つ。

 

「…どうしてそう思うんだい?」

 

「だって先生は目が見えてないじゃないですか。」

 

佐々木はAFOに特訓をつけてもらう中でその凄まじい体術に何度もやられている。そしてその動きが全盲でできるなど、普通は考えない。

 

「僕が全盲なことを知っているのは今はドクターだけだったんだけど、今君の名前が加わったよ。流石は僕の見込んだ男だ。」

 

「不意打ちが全く効かないので、半分カマかけたんですけど…本人から言われても正直信じられないですね。どうやったら全盲であんな動きができるんですか。」

 

「僕相手にカマをかけたというならそれはそれでやはり凄まじいよ。佐々木過渡くん。」

 

その言葉を聞きながら佐々木は合否通知の封を切った。

 

「先生には本当に感謝してるんです。これからはきっちり働きますよ。約束は果たしてもらいますけどね。」

 

合格の二文字をみた佐々木は顔を笑顔のそれに変えて言った。

 

「ムーンフィッシュとステインにも近いうちに会わせる準備をしている。もう少し待ってくれ。」

 

「分かりました。楽しみにしてますよ。」

 

部屋に戻ってきた佐々木は眼鏡の位置を正した。

 

「本当に楽しみにしてますよ。先生。」

 

色のついた眼鏡の奥に朱殷色と象牙色に変色した目が輝いた。

 

 

「さて、今日はここまでにしよう。」

 

「あれ、今日は早くないですか?」

 

AFOとの特訓をするためにAFOの元にやってきていた佐々木がAFOに言った。

 

「今日はやってもらわなければならないことがあるからね。」

 

「…きっちり働くとは言いましたけど、それは報酬ありきなんですけど。」

 

「心配しなくていい。君に任せる仕事はムーンフィッシュ脱獄の手助けだ。彼に会いたいんだろう?」

 

「分かりました。で、何をすればいいんですか?」

 

「張り込みだ。」

 

「張り込み?」

 

佐々木は首をかしげる。

 

「これから黒霧を呼ぶ。黒霧と一緒にムーンフィッシュが現在服役している刑務所に言ってくれ。彼はいま九隠刑務所で服役しつつ死刑執行を待っている身だ。でも彼はタルタロスに近く輸送される。そこで彼を奪い取る。」

 

「ああ、その時の経路や護衛するヒーローの人数にその個性、そういう情報を集めろってことですね。」

 

「そう言うこと!脱獄させたら黒霧と一緒に僕のところに連れてきてくれ。彼にも働いてもらう。」

 

「分かりました。それにしても珍しいですね。こんな時期にタルタロスに輸送されるなんて。」

 

「死刑執行が決まったからだね。九隠刑務所も国内で五指にはいるほど厳重な場所ではあるが、やはりタルタロスと比べれば大きく見劣りする。死刑執行をするときに脱獄とは言わずとも反撃されて死傷者が出る可能性がある。そうなればまずいだろう?」

 

タルタロスでは法を犯すぎりぎりの行いが服役者に加えられることは珍しくないが、逆に日本ではタルタロス以外で服役者は厳格に法に守られている。

 

「理解しました。でも輸送中に襲撃されるなんて本末転倒ですよね。」

 

「情報が外部に漏れるなんてことがありえないことだからね。君がいなければ輸送くらいなら難しくはない。過去視、珍しい素晴らしい個性だよ。内通者稼業が終わったら是非もらいたいね。」

 

「あげられるならあげますよ。今すぐにでも。」

 

未だ過去視を先生たちに役立てられたことはない。内通者が板についてきた頃には渋るが、それはもう少し先の話。




その過去編から抜け出せてないですね。タイトルだけ変えて誤魔化してるだけです。でも原作時間でやることは大体1話でやったので原作時間にどう突入すればいいのか分からないという…
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