「では、見せてください!プロヒーロー!」
「ッ!」
そう言うと、佐々木はムーンフィッシュに向かって飛び出す。姿勢から自分の方に向かってくると予測していたガベルはワンテンポ遅れる。
(衝撃変換!)
先の踵落としで受けたダメージを両足にエネルギーとして送る。瞬発力を強化し、拘束器具にはりつけにされ眠っているムーンフィッシュの顎をつぶそうと振るわれる蹴りから庇う。
「そいつは殺人者です。わざわざ庇う必要がどこにあるのです?」
「犯罪者を庇うのは業腹だが、貴様たちの目的はこいつの奪取だろうがッ!」
「あらら…誰かさんが余計なこと言うから。」
ガベルと佐々木は近接戦を展開する。ガベルを攻撃するのではなく、そばで拘束されるムーンフィッシュを狙ってくる佐々木にうまく対応できず、実力では佐々木を上回っていながら苦戦を強いられる。
「これは失言でした。すいません。すぐに任務を達成して、挽回しましょう。」
「ガベル!」
ドアをこじ開け、ランダーが援護に入る。一瞥しただけで状況を把握し、すぐさま指向性を持たせた麻痺毒を放つ。
「うわっ!」
「これは…」
黒霧と佐々木はすぐさまムーンフィッシュとガベルから離れて毒の攻撃をかわす。
「打撃無効のその体でも、あの毒は食らったらやばいですよね。」
「ええ。しかし、彼も味方を巻き込んでは打てないでしょう。だからこそ指向性を持たせて放ったのでしょうし。」
「選定する人が増えたことは喜ぶべきでしょうか。」
「始末すべき人が増えたということで面倒なことになっただけでしょう。さて…」
一度距離が離れたことでガベルとランダーが状況を確認する。
「あの二人組の目的はムーンフィッシュの奪取だ。あいつらは俺達ヒーローの弱点を巧みについてくる。あの靄の奴はワープの個性、少年の方はまだ個性を使った様子はないが、身のこなしからして増強系の可能性が高い。」
「分かった。靄の方は打撃が効かなそうだから俺が受け持つ。片を付けたら援護頼む。」
増強系で近接重視の相手に対してガベルは相当強い。しかも相手は少年だ。すぐに片をつけられるだろうと踏んで、そう役割分担した。二対二なら苦戦するが一対一が二つなら負けはないだろうと。
「任せ…。」
そこまで言いかけたところで、倒れこむ。ランダーが個性を暴走させて腐敗毒を噴き出したからだ。
「どうし…」
「あまりあの方に頼るのは良くないのですが、徒に長引かせる必要もないでしょう。」
黒霧がノーモーションでワープゲートをつないだのだ。AFOの個性強制発動がランダーを襲う。
「個性強制発動。味方を巻き込む個性の中では無類の強さを誇りますね。」
強制発動で発生した鞭でランダーを貫通させながら個性を発動させる。体に穴が開いたランダーも致命傷だ。
「ではムーンフィッシュを連れて行きましょう。」
「そうですね。ですがその前に、姿を見られた警官を始末してきます。」
佐々木が倒れこんでいるヒーローたちに言葉を突き刺す。
「残念です。
断末魔が響いた。
*
「ガベル!ランダー!応答しろ!おい!」
人命救助を済ませて連絡を取るが一向に反応がない。嫌な想像を振り払いつつ、個性を使って事前に伝えられていた変更したときのルートを走る。
「!」
事故にあったかのような輸送車の惨状を見て、近くで倒れている二人の人影に駆け寄る。
「ガベル、ランダー!そんな、嘘だ。おい、嘘だろ、返事をしてくれ。頼む、頼むよ。なあ!」
悲痛な叫びが道路にこだまする。
*
「ココハ、ドコ?」
目を覚ましたムーンフィッシュが拘束器具をガチャガチャと動かす。
「お久しぶりですね。ムーンフィッシュ。この目が変わったその日からずっとあなたに会いたかった。」
「キミハ…?」
ムーンフィッシュの瞳と、佐々木の象牙色に変化した左目が交錯した。
ムーンフィッシュ編を次書いて、ステイン編を書いて、神野区編書いて、そしたらとりあえず完結かなあ。何話かかるんでしょうか。