内通者   作:三軒過歩

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内通者に触れられた今がこの作品が伸びるかどうかの分水嶺な気がします。内通者の伏線回収ありがとうございます!


内通者とステイン

「答え?ハア。お前の個性を知っていることなどおかしなことでも何でもない。お前はオールマイトと関わりがあるのだからな。」

 

「ひょっとして雄英関係者全員覚えてるんですか?」

 

流石に常軌を逸していると、少しばかり後ずさる。

 

「有象無象に興味などはない。お前はナイトアイの縁者だろうが。」

 

「サーの?まあ確かに彼は私の伯父さんですが。それとオールマイトに何の関係が?」

 

不思議そうにしている佐々木に対してステインは訳知り顔だ。

 

「ナイトアイはオールマイトの相棒だった男だ。もし知っていたなら、お前がこんな愚図になり下がるはずもなかっただろうに。」

 

衝撃の事実よりも、佐々木にとっては挑発するように言うステインの言葉に引っかかってしまう。佐々木は平静を装いながら聞き返す。

 

「愚図とは、言ってくれますね。私の行動理念はあなたと同じだと思いますけど。腐ったヒーロー社会を正すために、ヒーローを殺す。」

 

「違う。」

 

間髪入れずにそう返答した。

 

「お前は俺や自分の行いが正しいと思っている。正気を疑うな。俺がやっているのは大義があるだけの人殺しだ。」

 

「でもあなたもそう言いながら人殺しを続けている。後ろにいる邪悪な後援者の存在を感じていながら、むしろ利用すらしながら。」

 

ステインは自分がなぜ殺人を続けられてきたのかを理解している。確かに単独ではあったが、その行動の裏にはAFOがついていた。佐々木が会うならば捕まらない方が都合がいいと、彼によって逃がされていた。

 

「それは正しい行いだと思っているからできることではないんですか?」

 

悪の力を利用することに抵抗がないのは、その行動がより強い正義を全うするために必要だからだ。そう思って佐々木はAFOの元で内通者をやっている。

 

「論外。」

 

しかしその質問には取り合わずに吐き捨てられた。

 

「僕は貴方の一番の理解者なんですけどね。残念です。…では、もともとの本題です。私の個性を試させてください。」

 

そう言うと佐々木は朱殷色に変色した右目をステインに向ける。しかし目の前にいたはずのステインは既に視界から外れていた。慌てて移動先を予測し振り向こうとし、たおれこむ。

 

「なっ、な、に、を…」

 

短剣から血を舐めとったステインが話す。

 

「心配するな、殺しはしない。貴様は生かしておいたほうが正しき社会に貢献できる阿呆だ。」

 

利用してやると。暗に言われている。AFOを利用するように、佐々木も利用するのだと。

 

「貴様の個性は過去視だろうが。であれば、俺の個性についても知ってるはずだが?」

 

どうしてステインは自分の個性を知っているのか、棚上げしてきたその疑問がここにきて降りかかる。

 

「貴方と敵対することが想定外です…!」

 

個性によってステインの過去すべてを視た佐々木はステインの理解者だという驕りがあった。それを的確にステインはついてくる。

 

「己の個性に胡坐をかくのは偽物である証だ。貴様は俺の理解者にはなれない。理解と最も遠いところにいる。」

 

「ちが、僕は、あなたの…」

 

何とか首をわずかに傾けステインの方を向く。血走った瞳と視線が絡み合った。

 

ー------

 

「貴様の腐った思想で何人もの罪のない人間が死んだと思っている…!」

 

ステインが殺害対象としたヒーローがそう言い放つ。近接戦を得意とし、鋭い足技を繰り出してくるヒーローだった。近接かつこちらの個性を知らない時点で決着はついていた。

 

「ハア。お前で十六人だ。俺に下らん罪悪感を植え付けて殺意を鈍らそうと思っているなら無駄だ。」

 

殺すよりも生かした方が社会の警鐘となる偽物もいた。そいつらを引いて、十を超える殺人をなしたステインは目の前のヒーローにも躊躇しない。

 

「貴様は必ず、ヒーローが、オールマイトが!捕まえに来る…!」

 

「そうだな。では死ね。」

 

「カフッ」

 

「英雄が、オールマイトが、捕まえに来るさ。それまでは俺が血に染まる。」

 

「く、そ…」

 

そう言い聞かせ、自分をだまして殺人を敢行する。

 

「すべては正しき社会のために。」

 

彼はオールマイト狂信者、自分の信じる社会のために殺人を繰り返す、ヴィラン。彼は自分が殺人者であり犯罪者であると理解している。自警団(ヴィジランテ)をやめて(ヴィラン)になった時、覚悟を決めた。ステインの刃は鈍らない。

 

ー------

 

「あなたの、あなたよりも!あなたを理解した!自警団(ヴィジランテ)のあなたを、僕は信奉している…!」

 

「違う。俺は(ヴィラン)だ。お前は俺の事情を知っているくせに全く理解していない。お前の上司はちゃんと(ヴィラン)だった。お前よりもはるかに俺を理解している。」

 

信奉、憧れ、理解から最も遠い感情だ。そう言い放ち、ステインは夜闇に消えて行った。佐々木の右の瞳はいまだ赤い。

 

 

 

「ご無事で何よりです。」

 

数分したのちにステインの個性の効力が切れ、自由を取り戻した佐々木は黒霧の元に戻る。

 

「ええ、ムーンフィッシュの時のようにはいきませんでしたが、まあ、彼よりは実りのある邂逅でした。」

 

「実り、ですか。」

 

「己の個性に胡坐をかいていると言われました。気づきましたよ。その人のすべてを視なければ、その人を理解するなんてできないと。」

 

ステインに後れを取ったのは一年があったからだ。ステインはこの一年でさらに強くなっていた。ずっと拘束されていたムーンフィッシュとは違い、彼は成長していた。

 

(だから、僕は先生のこともよくわかってないみたいです。)

 

実際にステインに会って知れたことは自分の個性のことよりも、先生のこと。先生はステインと会ったことがあるし、僕の個性をステインに教えている。だって、僕の個性届は無個性なんだから。サーから僕のことをたどっても、個性を調べることはできない。では、何のためにそんなことをしたのか。考えても結論は出ないとそう結論づけて黒霧を視る。

 

「ともかく、目的を果たせたようで何よりです。では戻りましょう。」

 

「ええ。」

 

佐々木の左目が紫色に変色した。

 

(この力。対象の過去すべてを覗き見るこの個性で、僕は正義を全うする。)

 

個性:過去視 視線を合わせた人の過去を合わせてから二十四時間いつでも見ることができる。ただし巻き戻せるのも二十四時間。

最大二人まで定めた対象の過去をすべて視ることができる。片目がその対象のイメージカラーに変化する。




佐々木の小物感凄い。私に影響されてますね。間違いない。
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