「なあ、佐々木、A組見に行こうぜ。ヴィランの襲撃を切り抜けたクラスってどんなもんか見てみたいし。」
体育祭の告知を受けてから数日、そして、A組がヴィラン襲撃を受けてから初の登校日。クラスメイトが提案する。
「敵情視察をしている人が多そうだから、今はやめた方が良いと思うよ。」
「敵情視察?B組がってこと?」
「違うよ。確かにB組のライバルはA組だし、ヒーロー科は意識もしてないかもしれないけど、体育祭は結果によってはヒーロー科編入を検討してくれるらしいから、ヒーロー科落ちて普通科やサポート科に入った人が下剋上をしようとしてるのさ。」
「うちのクラスにそんな奴いなくね?…ひょっとしておまえか?」
声を落として佐々木に聞くが、それを笑い飛ばす。
「まさか、そう言う人は一つのクラスに集中してるんだよ。普通科はC組に集まってる。」
「よく知ってるなあ。そう言うの大っぴらにしてる人なんて少なそうなのに。」
「はは、まあね。委員長だから。」
実際は違う。過去視を使ったからこそ知れたことだ。この数日、体育祭にかける思いの差はヒーロー科を狙う人とそれ以外で如実に表れている。
「まあでも、せっかくだから話題性があるうちにヴィランを退けた有望な
「そう来なくっちゃ。」
*
「油断してると足元ごっそり掬っちゃうぞって言う、宣戦布告しに来たつもり。」
様子を見に来た集団に揉まれながら、その動きが止まったかと思うと、そんなセリフが聞こえてきた。
「すげえ、本当にヒーロー科狙う生徒がいるんだな。」
「他の学校のヒーロー科で三年学ぶよりも、ここで二年学ぶ方がいいって人がいるのも当然でしょ。ここは
場合によっては一年だけでもここで学んだ方が良いと思う人もいる。それほどまでに雄英のブランドは強い。そんな話をしているうちに大胆不敵に他クラスを挑発した生徒、我関せずと帰宅を始めた生徒が出ていく。
「目標は違えど、身が引き締まるな。」
「そうだね。」
そう言って宣戦布告してきた人と見えた範囲のA組に過去視を発動する。内通者として情報を得ようという物ではない。個性は使えば使うほど慣れてくる。視える範囲も増える。だから使う。もう佐々木は人に個性を使用することに躊躇はない。
*
(爆破、無重力、エンジン、氷結。なかなか凄い個性が集まってるなあ。)
帰宅して彼は見れたA組の個性を過去視を使って暴いていく。体育祭で勝つ気があるわけではないが、求める情報を素早く拾う力が培われる。
(A組、B組全員個性を把握するまで視てもいいけど…)
考えをめぐらすはあのC組の生徒、心操人使。彼は個性を一度たりとも使わなかった。この体育祭間近でヒーロー科を狙っていながら個性の訓練をしないのはおかしい。
(徹底してるな。対人でないと意味のない個性なのか、初見殺し的なもの?)
どうであっても面白いと、そう思った。その初見殺しに対応してやろうと。それから毎日、彼は心操に対して個性を使った。
(全部視れればすぐに個性を暴けるんだけどな。)
瞳と連動した過去視を彼は使わない。一人はステイン、もう一人は黒霧。両者ともまだ経験を吸い取れる。彼はまだ、個性をこなしきれていない。何年間も過去を遡って覗き見るのにはそれ相応の時間が掛かる。
*
「群がれマスメディア!刮目しろオーディエンス!今年もお前らが大好きな高校生たちの青春暴れ馬、雄英体育祭が始まるぞ!エヴィヴァディアーユーレディ!?」
二週間はあっという間に過ぎさり、雄英体育祭が始まる。
内通者と体育祭は2や3では終わらない香りがします。