「どうせお前等あれだろ?こいつらだろ!?敵の襲撃を受けながらも乗り越えた奇跡の新星たち。一年、A組だろぉぉぉ!?」
そう言ってA組が入場していくさまを舞台袖で見ているクラスメイトが言った。
「やっぱりすごいな。A組。俺ら完全に引き立て役だもんな。」
「添え物程度にしか思われてないんだから、気を抜いて楽しめるでしょ。でも巻き込まれないように注意してね。」
クラスメイトの友人と話していると、同じクラスの子が不思議そうに聞いてくる。
「佐々木君、巻き込まれるってどういうこと?」
「雄英体育祭はヒーロー社会の生存競争をシミュレーションしてるから、人と競う競技ばっかりになると思う。だから、ヒーロー科はお互いに蹴落としあうはず。最初の競技では、まず有象無象をってなる可能性が高いし気をつけようねって。」
「ふーん。」
一応の相槌が返ってくる興味のなさそうな反応を見て話を打ち切る。
「あんまり体育祭で結果残そうって思ってる人以外にはあんまり興味ない話だったね。ごめんごめん。」
「あ、いや!うん。ありがとう。気を付けるよ。」
「まあ、開幕ぶっぱにさえ注意してればいいと思うからそこだけね。」
「うん!」
アナウンスが掛かり、D組も会場入りした。
*
「第一種目は障害物競走か。面白そうじゃん。」
楽しそうな級友に釘を刺す。
「いや、面白いとか言ってると死ぬよ?」
「死ぬ?死ぬのか体育祭の競技で!?」
大きな声で言うために、他の生徒から動揺が走る。
「冗談だけどさ。最後まで走り切れればそれだけで一次通過できるくらいにはきついって思っていいと思うよ。」
「へ、へえ。よく知ってるな。」
「やばいと思ったら棄権しなよ。体育祭が終わって大事なクラスメイトが欠けるとか嫌だからね。」
「お、おう。お前はどうするの?」
「少しだけ頑張ってみるよ。ヒーロー科志望でも何でもない無個性な生徒が一次通過したらなんか面白そうじゃない?」
「せいぜい期待しておくよ。」
冗談だと受け取ったのだろう。軽く返された。
*
「さあ、位置に着きまくりなさい。よーいスタート!」
「「「「「「へ?」」」」」」
ミッドナイトが速攻でスタートを切った。いきなりに慣れているヒーロー科と一部の生徒以外は出だしが遅れる。
「あー、ごめん。」
最初の篩いにかけられている佐々木は真横にいたクラスの友人の肩に両手を置き両足を浮かせる。
「あ、おまっ!」
文句を言おうとした最中、地面が凍り、足が縫い付けられた。
「今度学食奢るから。それじゃっ!」
スタート地点で凍り付いた生徒の合間を縫うように滑って最初の篩を切り抜ける。スタート地点すぐ近くに鉄棒が置いてあったのでこれ幸いと拾って行った。轟がかけた篩を切り抜けた生徒はわずか八十人弱。
「さて、実質最下位からのスタートだけど、一次突破してみますかね!」
現在の佐々木の順位は76位
*
「第一関門は、ロボ・インフェルノ!」
「入試の時の0p敵じゃねえか!」
「ヒーロー科あんなのと戦ってたのかよ!」
ヒーロー科を目指していないながらも最初の氷結攻撃を回避した運のいい生徒が驚愕して動けないでいる中、すぐさまA組の生徒が動き出し、わずかに遅れてB組、ヒーロー科志望だった他の科の生徒が動く。
どー--ん!
佐々木が第一関門に到着したのは、八百万が大砲を放った少し後。八百万の大砲によってフリーズしていた生徒も動き出し、0p敵がいなくなったために、1~3p敵が残るのみであった。
(試験に出てくる程度のロボットなんだから、こんなもんだよねえ。)
敵ロボットが追いかけてくるが、遠距離攻撃を持たないロボットたちに対して、長物は強い。間合いの外から一方的に攻撃できるからだ。力任せにたたくだけで、ロボットは動きを止める。
中位帯との差は縮まったが、いまだ最後尾に変わりない。現在68位。
*
「落ちればアウト、それが嫌なら這いずりな!ザ・フォール!」
「大げさな綱渡りね。」
そう言いながら蛙水が綱渡にしては相当な速度で進んでいく。実際、蛙水のいうことは最もで、もし落ちたとしても死んだりはしない。下には緩衝材が敷かれている。しかし、それを知らない人はやはり必要以上に慎重になる。万に一つも落ちてはいけないと、速度が鈍る。蛙水がそう言ってからかなり遅れて、佐々木は第二関門に相対した。
「気持ちの差ってやっぱり出るものだよねえ。」
そう独り言ちながら雲梯を進む要領で進んでいった。彼は過去視を使っている。この関門がただの綱渡りだと知っている。他の人が気後れする中、佐々木は全く気遅れしない。ここが第二の篩になる。向いてる個性を持っていないものが、それでも通過しようとするには、意志が必要だ。ヒーローになりたい、その強い意志。それを持っているかどうか。ヒーロー科は迷うことなく進むが、ヒーロー科を目指していた他科の生徒は本当にヒーローになりたいのか、それを試す場所。
(40番後半くらいかな。今年の一次突破は最大45名だからこの分だと微妙だけど…)
体育祭前日まで、佐々木は心操をマークし毎日過去視で覗いていたために、教師の過去を覗き、競技の対策はほとんどしていない。どんな種目があるのかと突破人数といった最低限のものだ。しかし、心操を追っていてよかったと今は確信している。彼はある意味でヒーロー科の生徒の誰よりも強力だったのだから。
(まあ、内通者としては動かなくていいのだから、負けても何も問題はないのだけれど。)
少し先生にねだりたいことがある。結果を残してヒーロー科に潜り込んでもいいかもしれない。そんなことを考えながら綱渡りを終え、数名抜き去り最終関門に着く。ちょうど緑谷もついたばかりのようだが、先に進もうとはせず考え込んでいる。ふと頭を上げた緑谷と視線が交錯する。お互いに獲物を持っていることに気づく。佐々木は彼が個性を使わずにここまで来たことを知る。
(流石はオールマイトの後継者。個性を使わずにここまで来れるとは。)
AFOの訓練を受けた佐々木とオールマイトの訓練を受けた緑谷。二人の素の身体能力はほぼ互角だ。緑谷は鉄棒を持ったままこの試練を潜り抜けた佐々木を見る。
「あのとき八百万さんが轟君の氷結攻撃をかわすために作った棒か。確かに棒なら重量もそれほどでもないし、遠距離攻撃できるから防御できなくても問題ない。失敗したなあ、スタート地点は団子状態だったから見逃してたけど取りに行く価値があった。いや、でもこの鉄破片なら…!」
一瞬ぶつぶつとお家芸を披露しかけるがなにか思いついたか鉄の破片で地雷を掘り始める。
現在43位
*
(一次通過は最大45名、そして今は43位。このまま抜かれずに走っても通過できるかは五分。そして地雷原の最初の方は警戒が強いからたくさん埋まってる、この障害物競争は何をしたってかまわない…ふむ。)
隣で地雷を掘っていく緑谷を見ながら佐々木も名案を思い付く。予選通過者は最大四十五名。四十五位以内でも選ばれない可能性がある。では、通過するためには何が必要か。目立てばよい。こいつは本選でどうなるのか見てみたいと、観客の興味をひければ、雄英はそんな生徒を無視できない。誰も見ていないような地雷原の序盤で、二人の生徒が地雷を掘り進めていく。
「大爆速ターボ!」
先に目的を果たした緑谷がその掛け声と共に爆風で猛追する。誰もがその様子に釘づけにされるかと思ったが、観客の目は二分された。
「うわっ!」
「きゃあ!」
「んなっ!」
地雷を大量に積み重ね、地雷原の入り口に立ち佐々木は前を進む生徒に地雷を投げつける。その地雷の威力は大したことはないが、地雷原でのこの妨害はどうしようもなく連鎖する。大量の地雷が爆発する。
「何でもありなのに先頭の二人以外妨害してないってどうなんですか?甘すぎる。ヒーローとは苦難を乗り越える者のことです。さらに向こうへ、
爆炎が晴れてそう言い放つ佐々木の顔はどう考えても悪人のそれだった。佐々木はさらに地雷を投げる。
「なかなかぶっとんでるなあ。人に地雷投げるとかもはやヴィランじゃないか。」
後ろのただ事でない様子を察知して物間が足を止め逆走を始める。逆走をしながら妨害をしている生徒を防ぎうる個性を持つB組の個性を借りていく。
「クラスメイトの援護とは意外とクラス想いじゃん。手伝うよ。」
その様子を見て取蔭も逆走を始める。
「別に、こんなとこで脱落されたらA組を見返せなくなるじゃないか。それだけだよ。」
素の身体能力は同じと言いましたけど、佐々木は個性による先読み能力が変態的なのでタイマン張ったら佐々木が勝ちます。そして、推薦組でありながら爆豪にボコされた取蔭さんを、頑張って供養してみます。できるか分かりませんけど。