内通者   作:三軒過歩

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今書いているのが完結しない限りは書かないといいましたね。あれは嘘です。嘘になりました。この作品は不定期更新にします。今書いているのが完結したら定期更新に昇格です。


内通者、その過去

僕の個性は、生まれつき発現していた。だからそれが個性だとも思わなかったし、それが普通だと思っていた。だから不思議でたまらなかった。なぜこの人たちはこんなゴミのような世界で笑っていられるのか。悪口をたたきあいながら、なぜか仲良くふるまう人たちを見ていて気味が悪かった。だから人とは極力関わらないように生きていたし、僕の周りには人が全く集まらなかった。

 

「あの子、人と話すときも全く目を合わせようとしないのよ。ずっと目を合わせながら話すのも変ではあるけど、あのままだと友達もできないんじゃないかしら。」

 

「人見知りの範疇を超えているからな。心配だ。こんどお医者様に診せにいこうか。」

 

そんな風に両親が話し、病院に行くことになる。その時初めて、自分に個性が発現していることを知った。十歳のことだ。それと同時にこの世界の人間すべてに嫉妬した。他のみんなは人の醜いところを見なくて済んでいるということに。

 

「今日の夕飯はあなたの好きなハンバーグよ。」

 

「どうだ、今日は父さんと遊ばないか?」

 

自分が過去を見ていることを知った両親はそれから腫物を扱うかのように自分に接し始めた。言葉では歩み寄っているのに、目を合わせて話してこなくなった。今にして、無理もないことだと思う。親子であっても、否、親子であるからこそ、明かしたくないこともあるだろうから。でもそれは十歳の子供には耐えきれないことでもあったし、今更なことでもあった。彼はこれまで何度も両親の過去を見ているのだから。

 

「過去視とは、また難儀な個性を抱えたものだな。」

 

そんな時に伯父さんに出会った。彼の個性は僕と異なるものでありながらよく似ていた。人の汚いところを見る個性。すでに起こったことを見る僕とこれから必ず起こることを見る伯父さん。彼の話を聞いて最初はこの人は人間の皮をかぶった何かだと思った。伯父さんはヒーローだったのだ。僕と同じように醜い人間を見ておきながらその人間を守るものになるなんて正気の沙汰ではない。

 

「伯父さんはどうしてヒーローになったの?」

 

理解できないものにふたをして避けようとするのは何もおかしなことではなかったが、自分の伯父がヒーローと知った時、僕は思わずそう聞いていた。

 

「お前は生まれつき個性を持っていたようだな。」

 

サーと呼べ、そう言いながら伯父さんは全く関係ない話をし始めた。話す気が無いならこの場を立ち去りたかったが、なぜだかそうできないだけの威圧感があった。

 

「俺が個性を発現したのは四歳の頃で、俺の両親も似たような個性だった。だから、個性が発現してからこういう個性が味わう苦しみとか、そういう物から俺は守られてきた。人がだんだんと受け入れていくものを俺も人並みの速度で受け入れていけたんだ。」

 

「弟、つまりお前の親父は無個性だったし、お前の母親も無個性らしいから、個性が発現するなんて思わなかったんだろう。それは不運だったな。お前は人がだんだんと受け入れてくるものを、生まれつき強引に受け入れさせられていた。」

 

両親が無個性で自分だけ個性が発現するのは、ないとは言わないまでも珍しかった。

 

「だから、まあ、人がろくでもないと思うかもしれないが、そのうちこんなもんかと諦めがつく。」

 

ここまで話していけば流石に分かった。伯父さんは僕のように個性で苦しんでいないってことが。だから普通に笑えるし、ヒーローなんて酔狂な仕事をできるのだろうと。普通に笑えたりしている人が、ユーモアに執着するようになることはないだろうに。その時の僕はそう思ったのだ。

 

「もういい。ありがとう。」

 

結局最後まで伯父の話を聞かずにその場を立ち去った。もしここで最後まで話を聞いていたら、人並み以上に追い込まれていた伯父がいかにしてヒーローになったのかを知れれば、僕は伯父のようなヒーローを目指していたかもしれない。

 

「佐々木君、ちょっといいかな。」

 

「何か用?」

 

中学でも教室の隅にいるような生活を送ってきたが、最初の中間テストで学年一位をとってから話しかけてくる人が一定数いた。それから一ヶ月以上経っていまだに話しかけてくるのはもう一人しかいない。

 

「もうすぐ期末試験だから、どこが出そうとかそういうのないかなあと思って。」

 

「委員長がそういうことしていいの?」

 

「別にカンニングしてるとかそう言うわけじゃないしさ。頭がいい人に少し知恵を借りようとしているだけだよ。」

 

「国語はこの問題の改変が出てくるし、数学はこの問題の数字が変わるだけ。理科はこの問題集のこの部分を覚えとけばいい。社会は…」

 

いい加減うざかった。だから佐々木は個性をつかって知った問題を教えていく。

 

「ちょっと待ってよ。そんなピンポイントで流石にないでしょ。それに今言ったとこなんて重箱の隅をつつくようなところだし。」

 

「だってあんた、相当頭いいじゃん。」

 

「私、前回の中間テストでは学年二十位だったけど?」

 

この学年は百二十人、佐々木の言う相当からは少しばかり下回っている気もする。

 

「個性を使ってなかった。」

 

「何のことかな?」

 

「これは最近知ったことなんだけど、一番になると何かと面倒なんだ。」

 

個性を使ってなかったから一番になれなかったというのは正確な表現ではないだろう。一番になって、他の人を先導できる下地を準備しきれなかったのから、中間では手を抜いた。僕に話しかけてきたのは無個性でトップをとる人に興味があったのだろう。

 

「私みたいなのがってこと?」

 

「お姉さん、凄いよね。生徒会長でずっと学年トップを取り続ける天才。しかも、さらに頭がよくなれる個性を持っていて、それをテスト中に使ってないときた。」

 

「彼女を目指すのは勝手だけど、だからって目の敵にされるのは困る。僕は()()()()()()()から。」

 

「え、」

 

「お姉さんが個性を使わないのは使ったら対等じゃないから。頭脳系の個性は珍しいし二年生にはお姉さんしかいないんじゃないかな。でも、僕は個性を使ってる。だから君も個性を使えばいい。そして、それをした君に僕は勝てない。」

 

「で、でも、君は自己紹介の時に無個性って…」

 

「人の過去を覗き見る個性。そんな奴がクラスにいるなんてただ怖いでしょ。まあ、実際には大したことのない没個性だけどね。見れるのが未来ならまだよかったのに。」

 

「だから、僕は凄くもなんともない。」

 

その言葉を聞き流して、印照は思わず目を閉じる。加速した思考が、その個性で佐々木が何をしたのかの解を出す。

 

「せ、先生の過去を覗いて、テスト問題を事前に知っていた。」

 

「正解。じゃあ、これ。」

 

そう言って話しながらまとめていたノートを渡す。

 

「テスト問題がまとめてある。見るも見ないも君の自由。」

 

これで彼女は確信するだろう。テストが終わった後にこのノートを見て自分が言っていることが事実だったと。




不定期故に週一以上のペースで更新も不定期と言える。年一ペースの更新もそう言える。不定期って使われるとがっくりしますけど、使う分には汎用性凄いなあ。
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