「やはり過渡君の瞳は緑色に変わっているみたいだね。」
彼と同じ雄英生の
「瞳の色が変わるとはのう。だからあ奴はいつも眼鏡をかけておったのか。」
ドクターが今まで佐々木がAFOに会いに来ていた時の映像を流し見ながら言う。
「やっぱり彼の個性はとびっきりに優秀だよ。初めて会った時に驚いたね。」
AFOが最初に佐々木に接触したとき、佐々木はAFOの過去を覗けないと歓喜した。それは当然である。彼はその時AFOに個性を
「そんな優秀な個性なのに奪わなかったのか?」
ドクターが意外そうに聞く。今佐々木が過去視を使えるのはAFOが個性を返したからだ。
「危険だと思ったんだよ。」
「危険じゃと?」
佐々木の過去をAFOがのぞいたことで分かった。この力は二十四時間などという制限には縛られない世界のすべてを視る力だ。それは同時に、AFOが扱いきれないほど強大なことを意味した。
「過去視には三つの視方がある。一つは過渡君が普段使っている、二十四時間限定で遡る過去視。もう一つはその人の過去すべてを視る過去視。これには二人までという人数制限があって、つい先日まではステインと黒霧に使ってたんだろうね。」
佐々木がAFOに会いに来た時の彼の様子はすべて映像データとして残っている。自分の動きを客観視させるためという理由もあったが、これで佐々木が誰を見ているのか分かった。
「そしてもう一つ、僕が過渡君に最初に使ったのもこの力だ。」
感覚的な話だ。これが一番強力な過去視だと奪った瞬間理解できた。最初にこの視方ではなく、瞳の過去視や、時間制限のある過去視だったならば確実に個性を奪っていただろう。
「彼の過去を見た時に彼の、過渡君の思念とでもいうべきものが再現されたんだ。思考が彼のものに侵食される感覚。まるで…」
ー”思念再現”とでもいうべきものかなー
穏やかな声音で言うAFOにしかし、ドクターは戦慄する。出会ってからずっと穏やかな微笑を湛えていたAFOが恐怖していると、そのわずかな声音の揺らぎから感じ取った。
「彼の過去をすべて瞬時に知れた。まるでもともと知っていたかのように彼の過去が僕の記憶に張り付いた。そして僕は彼になりかけた。」
「彼に、佐々木になりかけたじゃと?」
「そう。僕の個性の性質上、どんな個性でも体になじむ。俗にいう
少し先の未来の話、AFOがベストジーニストから個性を奪わなかったのは、個性が自分に合わない、使いこなすまでに時間が掛かるからだ。
「過渡君は多数の人格が共存できうる体なんだよ。だから彼に至っては三つ目の過去視、思念再現を際限なく使える。」
「それは、世界の全てを知る力じゃのう。しかし、脳の容量は無限ではあるまい?」
「まあそうだね。だから、過渡君は普段思念再現をしない…いや、無意識のうちに封印していたんだ。その封印が解かれたのは偶然にも僕が過渡君に会う少し前だったみたいでね。」
「運が良かったのじゃな。」
ドクターの言葉にああと相槌をうって言葉を続ける。
「ステインやムーンフィッシュとの出会いが彼を致命的なまでに変えてしまっていた。それは僕にとっては素晴らしい変化だったのだけれど。」
ご機嫌に笑う。
「それでも、思念再現をすると二十四時間の過去視や、瞳の過去視が使えなくなる。それでも弔や、他の人間に比べて優れた器ではあるが。」
個性の性質上は限界はないが、それを収める
「個性特異点を迎えた個性は制御不能になる。しかし佐々木の身体は個性に対応できる器たろうと進化しつつあったということか。」
「そういうこと。」
「仮にAFOを引き継ぐ後継が佐々木だったら死殻木よりも負担の少ない改造で済むってことじゃな。」
負担の少ない改造とは言えども常人には耐えきれないほどの改造が必要だ。
「まあそうだね。でも、過渡君には耐えられないよ。彼には弔が持つような強い憎しみが無いからね。」
そう言ったAFOは今度は穏やかに言った。
*
個性:過去視 視線を合わせた人の過去を合わせてから二十四時間いつでも見ることができる。ただし巻き戻せるのも二十四時間。
最大二人まで定めた対象の過去をすべて視ることができる。片目がその対象のイメージカラーに変化する。
両目を定めた対象のイメージカラーに変化させることで対象の過去すべてを知り、思想、人格も取り込むこめる。瞳の色は最も最近に個性を使った対象のイメージカラーとなる。この力を使っている間は上記二つの力は使えない。