「すごい、印照さん学年一位じゃん!」
「ほんと、委員長は凄いよ。お姉さんもそうだし、印照姉妹はとんでもないな。」
「姉さんには負けたくなかったし、少し頑張っちゃった。重点的にやったところも出たし、運もよかったのかな。」
あれから数日後のテストで印照は一位を取った。逆に佐々木は二十位となり、奇しくも二人の順位が入れ替わった。これで平穏な生活に戻れると安心して教室の隅の生活を謳歌した放課後、まだ声をかけるものがいる。
「こんにちは。佐々木君。」
「何か用?」
「いやあ、本当にテスト問題を知ってたんだね。びっくりしちゃった。」
「じゃあ、僕の個性も確信を得たでしょ。僕は君が思うような頭脳を持つ天才ではないんだ。」
「そうかもね。でも素晴らしい個性だよ。」
「こんな個性が?」
「うん。こんな個性が。」
笑顔で言い切る印照に佐々木は気圧される。過去をのぞき見されるということが分かって、近づいてくる人間は今まで周りにいなかった。
「すっごく便利な個性だよ。ヒーローにだってなれる。」
「この個性でヒーロー?何言ってるのさ。暴動が起こっても止められないし、救助にも役に立たない。ただの無個性と変わらないじゃないか。」
「何言ってるの。確かに救助には向かない個性かもしれないけど、ヴィランからすれば君みたいなヒーローがいる町では絶対に犯罪なんてしないよ。」
「存在が抑止力になるから?」
「そう。裏の社会とつながりがあるならなおさらあなたに見られたら困るでしょ。強烈だね。オールマイトをもしのぐ抑止力になるんじゃないかな。影響範囲はオールマイトほどじゃないだろうけどさ。」
「僕はそもそもヒーローになんてなりたいと思ってない。」
「残念だなあ。私がヒーローになったらサイドキックにしたいのに。」
「気が早いね。でもまあ、印照さんならなれるんじゃない?頑張ってね。応援してるよ。関係のないところでね。」
「あらら。振られちゃった。」
「誤解を招くようなこと言わないでよ。誰かが聞いてたら僕の平穏な学生生活が崩れちゃうじゃないか。」
それを聞いた印照が何か得心のいったような表情で言った。
「なるほど、だから君は二十番だったんだ。」
「…何か文句でも?」
「ないない。二十番でも百番でも好きな順位を取ればいいよ。でも、もう一番は渡さないから。」
「前回だって順位が張り出されると知ってたら一番なんてとらなかったよ。」
「何かそう言われるといつでもとれるって言われる気がして悔しいな。…よし!」
「勝負しよう。これから三年間、私が君から一位を死守したら、ヒーローを目指して私のサイドキックになってよ。」
「それ、僕に何の得もないんだけど。」
「ふっふっふ、拒否権なんてないのだよ、佐々木君。」
眼鏡の位置をただし、得意げに言う。
「へ?」
「君が勝負を受けてくれないなら、君が本当は過去をのぞき見できる個性だってバラす。」
「は?ちょ、何言ってるのさ。」
「これから二年半くらい、平穏とは程遠い学生生活を過ごすことになるねえ。」
平然と言ってのける印照に佐々木は根負けする。
「分かった。分かりました。受けるよ。受ければいいんでしょう。」
「そう言ってくれると思ってた。そうそう、君が一位を取ったら…何がいい?」
「何がって何が?」
「私ばかり言うことを聞いてもらうのもずるいでしょ。なにか、うん。私のできる範囲と君の良識の範囲内で何か一つなんでもいうことを聞いてあげよう。」
「はい?」
「不満かね?自分で言うのもなんだけど、結構優秀な部類よ、私。」
「それは知ってる。」
「それじゃあ、勝負!全力で叩き潰しに来てね。もちろん私もそうする。」
そう言って印照は去っていった。
この時佐々木は楽観していた。印照は確かに優秀だが、全教科すべて満点とまでは言ってない。逆に、自分は問題を事前に知れるのだから満点もたやすいと。だが、その目論見は簡単に崩れ去る。