内通者   作:三軒過歩

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ちょっと筆休め的な幕間回です、ドラゴンボールの方が行き詰ったのでこっちに浮気します。いつまでかかるか分かりませんがどっちの作品も完結させますので安心してください。


印照才加の目覚め

「起きましたね、起きちゃいましたよ。こんな大変な時に…」

 

タルタロスが解放されてしまい世界は混沌に包まれれている。ヒーローへの信頼は地に落ちて、ヒーロー科に在籍しているわたくしに対してもあたりは強い。ただの卵に当たって何になるというのでしょう。

 

首を振る。今はそんな感傷に浸っている場合ではない。

 

「才加、意識はしっかりしてますか?わたくしが誰か分かりますか?」

 

出来る限り冷静に、心配させないように。今すぐ抱きしめてあげたい衝動をこらえる。

 

「う、うん…お姉ちゃん?ここは病院?私は…ッ!佐々木君は…ッッッ!」

 

意識がはっきりとしてくるにつれ自分がこんな状況になった原因を思い出したのだろう。最初に心配する相手があの佐々木過渡君であることに思うところはあるけれど。

 

「大丈夫、あなたが一番重症だったのよ。こうして目を覚ましてくれて、良かった。」

 

今は才加を落ち着かせることが最優先だとこれからのことを考える。一番近い避難所は雄英だ。佐々木過渡君の在籍している学校。意識を取り戻してくれたおかげで生命維持装置を外して動ける。避難をはるかに早くできる。

 

「貴方は一年近く寝たきりだったんです。体が相当弱っているはずなのですが、ごめんなさい、出来るだけ早く移動しなければならないの。」

 

一瞬固まるがその後すぐにハッとした表情で言った。

 

「ごめんなさい。まだ頭がうまく働いていないみたいで。」

 

声が震えている。自分が一年も昏睡していたなんてすぐには受け入れられないだろう。ましてや、安全であるはずの病院が危険とかいう事態(世界が混沌に包まれている)なんて。

 

「無理もないわね。せっかく意識を取り戻した後だけれど、すこし休みなさい。起きたころには安全な場所にいるわ。今度は一年も寝ないでくださいね?」

 

そう言ってウインクをする。冗談は苦手だ。うまくできただろうか。

 

「ありがとう姉さん、少し休む、わ、ね…」

 

穏やかな表情でゆっくりと瞼を閉じる。慣れないことをした甲斐があったらしい。

 

「印照様、冗談にしても怖すぎます。」

 

「慣れないことをしたとは思ってます。もう二度としませんよ。」

 

「いえ、戸惑っている印照様は素晴らしいので是非やってください。」

 

「もう…」

 

ついてきてくれたクラスメイトにからかわれる。事情を話したら来てくれた人を運ぶのに便利な個性を持つ方たち。彼女らに笑顔が灯るなら慣れないことも悪くないかもしれない。

 

「まあ気が向きましたときに。」

 

 

「よかった、本当に起きたんだな!よかった本当に…」

 

「ああ、あなた、動いてるわよ、才加動いてる!」

 

目が覚めた目の前にかなり疲れの色が濃い両親二人。ちょっと何言ってるか分からない母親に抱きしめられる。

 

「父さんどうなってるの?…ちょっと母さん恥ずかしいってば!」

 

言葉では拒絶するけれど突き放すことはできない。どうやら自分が一年も昏睡していたのは本当らしい。夢に出てきたと思っていた姉さんは現実だったんだ。

 

「あれ?ここどこなの?」

 

よく見たら自分の家じゃない。いやそれは当たり前か。でも別の病院というわけでもなさそうだ。学校、にしては規模が大きすぎる気もする。

 

「ここは雄英だよ。」

 

「雄英!?」

 

私が目指していた学校。そして姉が在籍しているはずの学校だ。どうしてそこにいるんだろう。

 

「お前が一年寝ている間にいろいろあったんだ。それは後でゆっくり話すよ。でも心配はいらない。ここは安全だから。」

 

そして両親が話し出す。この一年、いや、わずか一ヶ月の間にあったヒーロー社会の壊滅を。

 

 

「才加、落ち着きましたか?」

 

大方の日本の情勢を聞いて、混乱しているだろうからと少し一人にしてもらった。昏睡してからの一年間、何もかも変わってしまったらしい。特に姉さんにはどんな顔して会えばいいのか。個性を使っても答えは出ない。誰かと話したいなと思ったところでちょうど姉さんがやってきた。

 

「…姉さん聞いたよ、雄英の普通科を辞退して聖愛学園のヒーロー科に入ったって。」

 

誰かと話したいというのは本当だ。でもよりによって姉さんが来るのか。もう少し時間が欲しかった。姉さんと向き合うための時間が。

 

「貴方が気にすることではありませんわ。わたくしは今の学園生活に満足していますの。」

 

「でもッ!」

 

「素晴らしい学友と巡り合えました、素晴らしい経験ができました。それは聖愛学園に行かなければ体験できなかったことです。貴方はわたくしの決断を否定しますの?」

 

姉さんは強い。人としてもヒーローとしても、強すぎる。

 

「私は、姉さんみたいに強くないんだよ…」

 

「あなたはわたくしに匹敵するくらい強いですよ。」

 

間髪入れずに答えてくれる。

 

「無理だよお姉ちゃん。私はもう、ヒーローを目指せない。」

 

その期待が私には重い。

 

「いえ、強かった、ですわね。」

 

そう、確かに強かったのかもしれない。あの殺人鬼に私が通用していれば。自分の信じていたものが壊れてしまっていなければ、私は姉さんにも負けないと思っていたの。そのトラウマを乗り越えられるわけがないのに。

 

「貴方は強い自分に戻れます。」

 

お姉ちゃんは自分が乗り越えられると信じている。

 

 

 

そんなこと、出来るわけないのに。




この作品のヒロイン?である印照妹の名前は才加にしました。才花とか彩加とか彩花とかいろいろ書き方はあったんですけど、ヒロアカの名前らしいのは才加だと信じてます。ちなみにトラウマ持ちヒロインが大好物なのでトラウマ克服イベントを考えないままトラウマを植え付けました。思いついたら書きますけどそのままトラウマを放置される確率もそれなり以上にあるということです。
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