「さて、お前達もそれなりに捕縛布を扱えるようになっただろう。二人同時でかかってこい。どちらかが俺を捕縛布で捉えられたら今日の訓練は終わりにしよう。」
佐々木と目線を合わせる。二人同時に捕縛布を使ってもお互いに足を引っ張り合うだけだ。一人が肉弾戦で攻めその隙を突く。そしてこういう時、どっちが前に出るべきかは身体能力を考えればはっきりと分かる。
「隙作るから。」
そう言って佐々木が飛び出す。佐々木の格闘術は本当に凄まじい。いや、身体能力に関しては俺から見れば凄まじいがそこまで跳びぬけているわけではないらしい。現にイレイザーヘッドの方が動きは鋭いのだ。彼が本当に優れているのは
「相変わらず、やりにくいな。」
その凄まじい先読み能力。相手の次の動きが分かっているかのようにイレイザーの動きを避けて、そして掴みかかる。
「置いてある動きに対応するのやめてから言ってください。」
イレイザーが避けた先に置いた攻撃を躱す。動きが次第に鋭くなって動きの音だけが残る。
(今ッ!)
イレイザーの左脚に佐々木が仕掛けた足払いが掛かる。バランスを崩したその瞬間に踏み込む、捕縛布を飛ばす。
「よし!」
左手に捕縛布が巻き付く。四肢の一つを封じられればあとは芋づる式だ。
「フン」
その油断に付け入るようにイレイザーが自身の捕縛布を展開する。
「わっ!」
「おわっ!」
右手で操った捕縛布はまるでそれ自体に意志が宿っているかのように俺と佐々木はまとめて捕縛された。左手に絡めた捕縛布をほどきイレイザーが言う。
「佐々木、なぜ捕縛布を使わなかった。格闘術に頼り切るんじゃねえ。」
「逆のことがお前にも言えるぞ心操。捕縛布しか使わない相手は脅威じゃないんだ。」
「お前等近接と捕縛布の扱いで得意分野が分かれてるからって役割を明確に分けるな。何のために近接と捕縛術、両方教えてると思ってるんだ。」
二人とも縛られたままで説教を食らう。
「いやだって相澤先生相手に捕縛布の扱いじゃどう頑張ったって勝てないでしょう。役割を分けるのは当たり前では?」
「先読みのおかげで勝負にはなるがお前お得意の近接技術も俺には及ばん、自惚れるな。」
反論した佐々木に対しても容赦ない正論の拳が叩き込まれる。
「捕縛布の技術も近接技術も俺に追いつくには数年はかかる。」
「逆に言えば、数年で追いつけるんですか?あなたがそれ以上にかけて習得した技術を。」
つい疑問が口から滑り出す。不安なのだ。本当に自分がヒーロー科の生徒たちに追いつけるのか。
「追いつくだけなら可能だよ。ノウハウがあるのとないのじゃ違う。」
それを聞いて少し安心する。
「焦るべきだが空回るな。言った通りに練習しろ。」
「「はい」」
「そういえば文化祭が近いんだったな。お前等普通科にとってはビックイベント、この練習も文化祭が終わるまでは無理か。」
非合理だが仕方ない、と愚痴る。
「それじゃあ今日はここまでだ。教えてもらったことを反復しとけよ。」
話は終わりと去っていった。
「これ動けないんだけど、どうすんだよ。」
「わざわざ相澤先生が普段使ってる捕縛布じゃないもので捕縛したところを考えるにこの状態から脱出するまでが訓練なんでしょ。」
うげという顔をする心操に佐々木もげんなりとした表情で話す。
「分担作業ではなく共同作業をってことだよ。合理的じゃないですか。」
言葉尻にクソがとでも言いたそうな雰囲気だ。これからこいつと一緒に捕縛布から脱出しなければならないというのに。
「授業間に合うか?俺移動教室なんだけど。」
「…とりあえず手を自由に動かせるようにしようか。」