「体育祭ベスト8に残るほどの実力がありながらヒーロー科を目指さないなんて信じられないよね。」
体育祭が終わってその日の放課後、体育祭の疲れを癒すためにそうそうに帰っていくクラスメイトの中で教室に残った生徒が二人。
「同感だね。彼が何者なのか正直興味はあるかな。」
「だよねえ。彼危ういんだよ。やり方がどうもヴィランよりだ。」
一次種目を突破したときも、芦戸に勝った時も彼のやり方はヒーローの弱点を突いた戦い方。人の個性をコピーする、人を真似る。そんなことばっかりを磨いてきたから。なんとなく分かってしまうのだ。
「こらこら、言いすぎだ。それはヒーロー志望がただの一生徒に対して決して使っちゃダメな言葉だぞ。彼も最後の戦いは必死にやってた。」
「そうだね、忠告ありがとう。言い過ぎた。」
「まったくもう」
聞いているのが私だけだからよかったものと諫めてくる。流石に取蔭も気づいてない。必死に戦っていた常闇相手の時ですら、戦い方が歪んでた。そんな奴がただの生徒であるはずがないんだよ。
「まあどっちにしても気になる相手だ。彼のことちょっと調べてみるよ。まずは彼の個性からかなあ。」
彼は自分のことを無個性と自称したが、性質の悪いブラフだ。あの身のこなしと雄英体育祭ベスト8という結果をみればありえないだろう。ほぼ間違いなく肉体強化系の個性を持っているはずだ。
「気になるってのはそうだね。私も協力しようか?探偵みたいなことは得意だよ多分。」
片目を切り離してウインクする取蔭に首を振る。
「そんな真剣なもんじゃないよ。とりあえず知れる範囲で調べて、分かんなかったらそれで終わりだ。犯罪者ってわけじゃあるまいし。」
「まあ確かにヒーローを目指す私達にはそんな余計なことをしてる余裕はないか。何か分かったら教えてよ。」
「はいはい。」
意外なことにかその調査はすぐ終わる。戦い方が歪んでいる理由であろう事実がすぐに分かったから。でもこの時、取蔭に調査を頼んでおけば、僕達が彼の隠した事実を知るのはもっと早くなったのだろう。それが良い方向に転がるかどうかは別として。
*
「彼の歪んだ原因が分かったよ。」
あれから一週間。普通に調べて知れる範囲だからそんなに時間が掛かることはないとは思っていたし、だからこそ調べ終わったことを伝えられるだけで何か分かるとは思ってなかったが、その上っ面の情報からその原因が分かったのだろう。
「彼、無個性だった。」
「へ?」
ムコセイ、ムコセイって何言ってるんだ。聞いたことのある言葉なのに理解を拒んでいる。
「だから、彼は無個性だったんだよ。無個性。最低な言い方をすれば旧人類だ。」
旧人類、そんな言い方をされれば嫌でも理解できてしまう。
「そんな馬鹿なことがあるわけないでしょ。だって彼は雄英体育祭ベスト8、いやいや、雄英流に言えばベスト5だ。信じられない…いやあってはならないことだよ!」
無個性に負けた、それもヒーロー科が、
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「そういう君は、まるでヴィランだよねえ。」
「どうしてこんなに動ける人がヒーロー科に落ちてるのかなあ。」
「そりゃあ、
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無個性はヒーローになれない。どんなに暴れてもヴィランとも呼ばれない。この社会の最下層、それは私達には変えることのできない社会の真理。
「ここからは勝手な予想だけれど、彼元々ヒーロー志望だったんじゃないかなあ。」
ああ、そりゃ歪むよ。無個性の人間が個性持ちにここまで出来るのに、彼はヒーローに成れないんだから。そんな現実を歪まずに受け入れることなんてできるわけない。
「後悔してるよ。興味本位で調べるべきじゃなかった。それに取蔭に言うかどうかも悩んだんだれどね。」
言わないことの方が不誠実な気がしたんだと謝る物間に言ってくれてありがとうと礼を言う。
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「今回特別参加者がいます。」
物間が相澤先生の捕縛布で首を絞められることをきっかけに静かになるA組とB組に対してブラトキング先生の言葉が響く。
「ヒーロー科編入を希望している、C組心操人使君とD組佐々木過渡君だ。」
「「どうぞよろしく」」
(無個性なはずでしょ。どうしてここにいるの。)
そいつがここにいるということがどうしたって信じられないけれど、来たとしたなら終わらせてあげなきゃ。雄英ヒーロー科は無個性に負けることはもうないんだと証明しなければと、思っていたのに。
「B組は取蔭のところだな。」
よりにもよって私のチームに来てしまって、かと思ったら状況が百八十度変わってた。
「ハハ。確かにそうだね。だから普通科しか受験しなかったわけだし。でも今はそうじゃない。僕も資格を得たんだよ。」
きっと神様はいたんだろう。だから彼が報われるんだ。だとしたら。
「さて、先手必勝、倒しましょっと」
必ず勝たせてあげなくちゃ。