内通者   作:三軒過歩

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お久しぶりです。その過去シリーズとりあえず次の次までは終わらなそうです。今回は中途半端なところで終わってしまいましたが、今回ほどの間隔は開けないように努力します。


内通者、その過去3

「印照さん今回も一位じゃん。やっぱり凄いねえ。」

 

朝、朝礼までの時間で談笑している。勉強をクラスメイトに教えている印照を見ながらそう話す。

 

「あそこまで圧倒的だと妬む気にもならないよな。」

 

「そうそう。それにしても…」

 

そこまで言いかけたところで教室のドアが開く。クラスメイトが談笑していたが、その喧噪が一瞬止まる。しかしそれもすぐに元に戻る。

 

「佐々木は今回も二位か、あいつからしたら印照は目の上のたんこぶだろうな。」

 

少し声を落として話を続ける。佐々木は教室の隅の席に座る。その周囲に人は集まらない。一位と二位、学力的にはほとんど差がないとクラスメイトには映るが、この教室では明確に明暗が分かれている。

 

 

「一年の最後の期末でも、私には勝てなかったね。このまま三年まで行っちゃうよ?」

 

「戦う前から勝負は決まってた。なかなかずるいよね。君。」

 

そう言ってテスト結果を投げ渡す。

 

「ずるいんじゃなくて賢しいといって欲しいな。」

 

順位は掲示されるが点数は掲示されない。点数が同点だった時には()()()()()()()()()()()()()

 

「やっぱり今回も満点なんだね。」

 

「こっちは君のミスを待たなきゃいけないんだから分の悪い勝負だ。出来レースといってもいいくらい。」

 

「でも投げ出さない。それに最近ずっと勉強してるよね。なんで?」

 

過去視の個性を使えば勉強なんて必要ない。問題を事前に知れるのだから。

 

「テストで高得点を取るには勉強はできるだけできた方が良い。」

 

「それだけ?」

 

「問題を先取りできるテストばかりじゃない。模試とかそれこそ入試とかね。」

 

合点が行ったような顔になる。少し感心もしているようだ。

 

「ほうほう、個性に驕らず先を見据えている。うん。やっぱり君はヒーローになるべき人材だね。」

 

「勘弁してくれ。僕はヒーローなんて酔狂な仕事にはつかない。だから君がミスすることを全力で祈るし…」

 

そこで一度言葉を区切る。

 

「三年生でのクラス分け試験で僕が一位を取る。」

 

学校のテストは高順位の人が上になるという仕様上もう一番をとることは難しい、不可能と言ってもいいくらいに。しかし、三年生になる前に学校外の業者に外注した学力テストを受けることになる。そのテストならば前回の結果は関係ない。その業者は同点でも同率で一位なのだから。

 

「そうすれば君は僕から一位を死守できなかったことになる。」

 

ただし、そのテストでは過去視が効かない。

 

「どうしてそこまでしてヒーローになりたがらないのかなあ。世間一般で言う憧れの職業なのにさ。」

 

そこまで言って特大の爆弾を投下する。

 

「身内がオールマイトのサイドキックを務めたほどのヒーローだっていうのに。」

 

「サー…ナイトアイ伯父さんのことは関係ないだろ。ていうか、なんで知ってるのさ。」

 

隠していることではなく、少し調べれば分かることだが、それはサー、ナイトアイの方を調べなければナイトアイに甥がいることなど分からない。そもそもどうやってサーと自分を結び付けたのかが、分からなかった。

 

「君の個性は本当に優れているんだよ。だから君が欲しいんだ。」

 

「君が、じゃなくて君の個性が欲しいの間違いでしょ。あげられるものならあげてるよ。」

 

「ひどいなあ。私がこんなにも熱烈にアタックしてるのに。」

 

「うるさい。」

 

そう言ったところでチャイムが鳴る。どうやら下校時間のようだ。廊下から生徒があわただしくかけていく。

 

 

次の日、登校した佐々木はいつも通りに教室の隅の自分の席に座ろうとしたときにクラスメイトから声をかけられた。

 

「なあ、佐々木、お前、印照さんをフッたてマジ?」

 

「は?」

 

唖然としている佐々木に構わずクラスメイトがまくしたてる。

 

「いや、昨日さ、教室で二人っきりでいるのを見たってやつがいてよ。熱烈にアタックしてるのにって言うのを聞いたってやつがいてな。」

 

「いやいや、何を言ってるの。そんなわけないじゃないか。」

 

「でもじゃあ、二人で何してたんだ?」

 

それにうまく佐々木は答えられない。

 

「別に…ただの世間話だよ。」

 

「意外とお似合いな気もするけどなあ。学年一位と二位」

 

「…」

 

「あ、いや、ごめん。」

 

気まずい雰囲気が流れる。

 

「とにかく、誤解だから。ていうか本人に聞けば分かるでしょ。」

 

そう言って印照の席を見るが印照がいない。

 

「多分欠席だぜ。この時間いないってことはさ。」

 

「…ああそう。」

 

結局印照が欠席するという連絡が入ったことを担任から聞かされた。その次の日の夜印照から連絡が入る。

 

 

「もしもし。」

 

「ひどい!女の子が風邪で臥せってたのにお見舞いにも来ないなんて!」

 

「それだけ余裕があれば大丈夫でしょ。というか、そんな深い仲じゃない。」

 

「君の個性を知る仲じゃないか。」

 

「なんか僕の前だと性格変わるよね。」

 

病気というわりにはすごく元気な声音だ。

 

「君には隠し事ができないからね。」

 

「僕はむやみやたらに個性は使わないよ。」

 

そう見えてるのか、と咎めるような声音になる。それを感じ取ってか少し強引に話題を変えた。

 

「そうだ、噂になってるんだってね。私達のこと。」

 

「そうみたいだね。まあ、この手の疑惑は本人が否定してもしばらくは続くから、ほとぼりが冷めるまで待つしかないよ。」

 

「いやいや、そうじゃなくってさ。その噂をすぐにつぶせる画期的な案があるんだけど、乗らない?」

 

「え?」

 

思わず画面を凝視する。その顔には何かだまそうとしている様子はない。

 

「個性使って一時間前を見て。」

 

言われるままにビデオ通話で映った印照の目を見る。過去視はそれで完成する。

 

「いや、それ、噂を助長するだけでは?」

 

「いやいや、学年二位と一位なんだから別に変なことじゃないでしょ。」

 

「僕の学力は張りぼてだけど?」

 

「それはありえないよ。」

 

やけにきっぱりと断言する。

 

「君は勉強ができる。満点の答案を見れば分かるよ。ただ答えを暗記するだけじゃあできない解答があった。それにメリットもあると思うな。」

 

「よく見てるね。それでメリットって何。」

 

「個性で人間不信気味になってるの、きっと改善できる。このクラスの人はみんないい人ばかりだから。」

 

「そう。まあ、誰かに教えるのは学習効果も高いからね、乗ってあげよう。」

 

「そう来なくっちゃ。」

 

印照の策に乗り、瞬く間に一年が過ぎて行った。




策は次話です。
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