運動場から戻ると先生たちの総評を聞いて反省する時間が設けられる。
「過去のデータと戦力差を考慮した堅実な策だったな。だがそれゆえに相手の成長に対応できず奇襲したはずなのに逆に戦力を削られた。」
「下手したらそこで全滅だっただろうが、
仕切り直したい気持ちは分からんでもないがな。とフォローを忘れずに添えて佐々木に向き直る。
「で、佐々木、お前個人の反省点は?」
「捕縛動作です。あのとき砂糖君を完全に捕まえてれば僕も引けた。いえ、捕縛布にこだわらなければあこからでも引けたんです。」
爆豪があそこまで味方をフォローすると分かっていれば一撃離脱という作戦はとらず、先手をとって総力戦が最善だった。だからあのときは全員が離脱できなきゃ仕切り直せてないことになる。
「せめてもと個性で戦力削りましたけど所詮は削り、決定打にならなかった。負けた原因は僕です。」
AFOに鍛えてもらった一年。強くなったという確信があって、これまでもある程度は通用した。けれどあの場で必要だったのは捕縛技術で近接格闘術じゃなかった。三人に囲まれて僕の近接スキルは通用しなかったのだから。
「ヒーローとして戦うのって大変です。」
戦い方が敵よりなんだろう。僕の師匠は敵の頂点だから。
「何言ってんだァお前ェ」
そんな風に思っていると後ろから声をかけられる。
「ごめんねえ。僕がもうちょっときびきび動ければよかったんだけど。」
「そうそう、間違いなく敗因は俺らだよ。爆豪単品を脅威だと思ってやつにマークしすぎてフォローできなかった。フォローするからって言ってたくせに。」
「そもそも俺が爆豪食い止められりゃァよかった話なんだよ。お
凡戸が、泡瀬が、鎌切が、それぞれに励ましてくれる。
「大事な時だってのに、足引っ張っちゃってごめんなさい。」
そして取蔭が頭を下げてくる。こんな人間に気を遣う必要なんてないってのに。
「いえいえ、あなたがいてだめならあのチームに勝つのは無理ですよ。ここまで僅差で終わらせたことを誇るべきです。ありがとうございました。次があったら勝ちましょう。」
取蔭は本物の卵、彼女がいてだめなら物間も引っ張ってこなきゃ無理だろう。少なくとも僕の知る限りでは。多少は気が晴れただろうか。
*
「損壊を最低限、こっちの投獄者はゼロ、敵チームの妨害にも爆豪はうまくフォローがしていたが、今回は爆豪に頼りすぎだな。充分4-0狙えたはずだが最後に綻んだ。」
「チッ!わーってるよ。敵が全員割れてるんだから、
最後で単身突撃せずに二人でB組チームに攻め入れば取蔭も凡戸も倒して全員捕獲できた。最後の最後で仲間を信頼しきれなかった。
「まあ今回はどっちかと言えばお前達がしっかりしてなきゃいけないところだ。耳郎、お前の個性なら見ることに頼りすぎるな。耳を使って周りを視ろ。索敵だってそうしてるだろうが。」
「ヴッ」
「瀬呂もだ。混乱するのは分かるが一度相手に利用された技をするな。」
「はい…」
「まあ、結果だけ見れば悪くない。これに満足せずこれからも授業に励め。」
「「「はい!」」」
「チッ!」
第四チームの反省が終わり、佐々木が参加する試合が連続するため後回しにしていた第二チームと第三チームの反省会が第五試合の前に設けられた。
*
「他チームが反省会してるうちにもう少し具体的に詰めよう。佐々木君との連携は初めてだしどの程度動けるのかちょっと見ておきたい。」
佐々木の動きを知るために事前に運動場γに移動していた。
「それなら緑谷君、少し手合わせしてください。個性無し勝負なら多分負けません。個性使ってきても負けるつもりはありませんけど。」
「ええっ!流石に危ないんじゃないかな。訓練の前に怪我したら大変だよ!?」
言外に訓練だったら怪我はするものだと伝えられる。当然だけれど。
「じゃあ個性は無しで一発有効打を当てた方が勝ちでどうですか?それなら怪我しませんから。手加減したら怒りますからね。」
そう言って構えをとると緑谷も構える。
「それじゃあ、始め!」
「それっ!」
「はやっ!?」
先手必勝、先に蹴りを放つ。これで決まるとは思ってなかったが意外にも想像以上に的確に反応された。そのせいで懐に潜り込まれる。振るわれる拳を払う。距離を取る。
「舐めてたわけじゃないんですけど…動きいいですね。」
なんとなく動きが自分と似ている。相手の行動を推測して行動する、そんな動き。
(英雄の頂点と敵の頂点、真逆だからこそ似通ることもあるってことかな?)
「体育祭での君の動きもシュートスタイルの参考にしてる。だから最初は左の蹴り技からくると思ってた。映像よりだいぶ鋭いけど、僕もあの頃よりずっと強い。」
「じゃあ次の動きは何ですかぁ!?」
(分析と予測、彼の気質か。じゃあその予測を破ってやる。)
距離を詰める。相手がこっちの動きを予測してくることが分かったのならその予測した動きを予測するだけだ。サーの事務所でインターンを過ごしたようだが、その程度の時間で僕の過去視に匹敵する予測なんて身に付けられはしない。
右の殴打のブラフを混ぜる。それにかかる。
「そぉれっ!」
「うわっ!」
ぎりぎりで止める。有効打一発が条件だけれどどっちが勝ったかなんて一目瞭然だ。
「ふふふ、個性使わずに僕に勝てる人はヒーロー科含めてもそうそういない。」
「参りました。…凄いね佐々木君、予測した動きをさらに上回る動きをされちゃった感じだった。流石ナイト…あ、ごめん。」
「いえ、ほとんど接点はなかったんです。気を遣わなくていいですよ。」
サーと自分との関係を知っていたのには驚いたがよく考えてみれば何もおかしなことはない。彼は重度のヒーローオタクだし。
「さて、捕縛術は心操の劣化なので悪しからず。僕の方はこんな感じです。うまく使ってくださいね?」
「任せてよ!」
*
「とりあえず、緑谷君最優先、次いで佐々木君でよいと考える。」
「佐々木君が単独で動いてくれてればそっち優先すべきだけど。」
「まあ無理だろうね。佐々木は俺の特攻みたいなやつだから。多分守られると思うよ。」
「そうだね。緑谷君をフリーにさせるとさっきの試合の二の舞だ。とりあえず僕と心操君とで彼を止める。」
「そして四人が緑谷のとこ行くのを三人で足止めする、かな。」
「合流される前に緑谷を確保できればこっちの勝ち、出来なきゃ負け。うんシンプルだ。」
物間がコクコクと頷く小大を始めとする仲間を一瞥した。
「さあ、勝ちに行こうか。」
佐々木のヒーローアイテム
イヤーマフ
片耳のみでも両耳にでも瞬時に切り替え可能で取り付けると音を一切遮断するようは豪華な耳栓
ゴーグル
仲間の目と共有したときに仲間が混乱しないように眼帯の役割を果たすための物。ついでに目の防具としても機能している。音声機能付き。ライトで右目が覆われてレフトで左目、オープンで解除。レフトオープンとかいえば左だけ解除される。手動でもできる。
服装は体操着です。