え、何でこのタイミングでそんなこと書いたのかって?それはこの数話先で公開される内通者と取蔭切奈まで秘密です。内通者と伯父さん読んだ人なら分かってもおかしくないかもしれませんが。
最初は違和感とも呼べないような直感。彼と捕縛訓練を初めて一月ほどの合同訓練の数日前のこと。
「ふっふっふ、今日も僕の勝ちだね。捕縛技術だってすぐに追いつく。焦るだろう?」
いつも放課後に二人で訓練をしてる。大体は二人で戦うだけだ。捕縛技術だけの勝負だったり、格闘術だけだったり、あるいはその両方のなんでもありの勝負だったり。その後にお互いにこうすべきだったの教え合う。もっとも俺が教えられるのなんて先に学び始めたアドバンテージがある捕縛技術だけだけど。
「ああ、焦るね。だからもう一本勝負してくれ。もう少しでつかめそうなんだよ。」
「これ以上はオーバーワークだよ。動きも悪くなってる。その技術も今日中には習得できないさ。」
確信を持った声音。彼の格闘術は恐ろしいまでの先読みがある。その力があれば俺の動きから俺が目指す技術が今日中には身につかないと分かるんだろう。どうやって身に着けたのか分からないがその先読み技術はいくら佐々木に教わっても追いつくことなんてできないのだろう。俺の捕縛技術はどんなに訓練してもそのうち追い付かれるのに。
「頼むよ。後一本だけだ。」
焦る。ヒーロー科も佐々木も俺よりも何十歩も先にいて進んでいるのに、今のままじゃ追い付けない。
「はいはい。それじゃあなんでもありの一本勝負だ。
「ああ。」
だから彼にわがままを聞いてもらって相対する。接近して組み合って、佐々木の蹴りを躱して距離を取ろうとする。
ドンッ!
「ぐっ!」
間違えた。避けさせられたんだ。掌底をくらう。態勢を崩され吹っ飛ばされる。
(チャンスッ!)
今なら、捕縛布の距離。ずっと練習してきた態勢を立て直す技術、それを活かす。捕縛布で簀巻きにしようとする佐々木が見える。この速度でリカバリできればそれを躱せて逆に簀巻きだ。
「うそでしょ!?」
ビシィッ!
驚愕のあまり動きが鈍かった、否、鈍すぎた。それが最初に感じた違和感。だけどその時は、偶然ではなく狙って佐々木を崩せたことに高揚してその感覚を無視した。
*
直感が違和感に変わったのはそれから二ヶ月後。冬休みが終わってすぐ。
「調子が悪いなら今日は自主練やめないか?今日は明確に動きが悪いぞ。」
格闘戦ですら一本取れた。彼の先読みが鈍っているのか、むしろ進化しすぎていろんな可能性が見えるようになったような…
「ごめん、ちょっと無理しすぎたのかな。」
「ヒーロー科の連中はインターンに行ってどんどん進んでるもんな。焦るだろう?」
「ああ、焦るよ。できるだけの可能性を探っておきたいから。」
佐々木は同じところにいると言っていたけれど、彼らの成長速度と俺らの成長速度は同じじゃない。この数ヶ月の間にも彼らは俺らから離れていく。そんな気がする。きっと佐々木もそう思ってるんじゃないか。
「ごめん。しばらく自主練には付き合えないや。ちょっとやっておかなきゃいけないことができちゃって。」
それから三ヶ月、彼は俺とただの一度も自主練をしなかった。顔を合わせるのはイレイザーヘッドとの訓練のときだけ。その訓練もある日を境にイレイザーヘッドが忙しくなってしまいしばらく休みとなる。時々学校で見かける佐々木は日がたつにつれて焦っているようだった。この時彼に何かが起こっていると思っていた、のに。
俺は彼に寄り添わなかった。佐々木なら大丈夫だって思ってしまった。無個性の極致にいた佐々木が個性を持った。そんな佐々木なら俺の力なんてなくても自分で吹っ切ってまた一緒にヒーローを目指せるって。佐々木もまた俺と同い年の卵に過ぎないってのに。
だから
「嘘だろ、なァ、嘘って言ってくれよ。」
こんなことになった原因の一端は間違いなく俺にある。
この話は五期の範囲なので六期が放送される前に投稿したかったんですけど無理でした、へへっ。さて皆さんはアニメ六期一話見ましたか?竹下君がいましたよ、竹下君が!この作品ではヒーローを引退している竹下君がヒーローやってるとこうこみ上げてくるものがありますね。