「佐々木!ここの範囲を教えてくれ!俺よくわかんなくてさ。」
「そこは…これをちょっと工夫するだけでこの例題と同じになるんだ。」
「確かにそうじゃん!流石、万年学年二位!」
「喧嘩売ってるな、良し来た表出ろ。」
「またまたあ。」
彼は優等生としてなじんでいる。一年前、印照の言った策は、クラスの学力の底上げを印照が佐々木に依頼したというもの。それからというもの、佐々木はクラスメイトに勉強を教えている。初めの頃は印照が忙しいときくらいしか聞きに来るような人はいなかったが、今や何名かは印照よりも優先して佐々木に聞きに来る。
「佐々木君、これはどうやって解けばいいの?」
「それはね…」
そうしているうちに、冗談を言い合えるような友人も何人かできた。一年の終わりごろは印照と佐々木の空気は対照的だったが、今やほとんど変わらない。
「女の子に教える時だけ口調が丁寧だよな、差別だー!」
「はいはい、うるさいうるさい。」
そう言って席に戻る友人にぞんざいに言葉を投げかけた。
*
「それじゃあ、佐々木、また明日。テスト終わったらカラオケでも行こうぜ。」
「おう、分かった、また明日ね、竹内君。」
テスト期間になれば放課後も聞いてくるような人もいる。その人たちが満足するまで教えて学校生活が終わる。ちょうど印照も教え終わったようだ。クラスに印照と二人残る。
「さて、万年二位のまま二年も終わりそうだねえ。まっ、君はクラス替え試験に意識を割いてるみたいだけどさ。」
「点数的には毎回同率なんだけどね。こっちはずるしてるけど。」
周りに誰もいないことを確認してそう言った。佐々木の個性を知るものはいまだクラスメイトの中では印照だけだ。
「ふっふっふ、実力で満点を取る私に、個性を使えなくて勝てるかな?」
挑発するような不敵な笑みを湛える印照に佐々木はそう言えばとばかりにずっと気にしていたことを返す。
「ずっと気になってたんだけど、印照さんって実はほとんど友達いないんじゃないの。」
「へ。」
「いや、いつも帰るときはなんだかんだ一人みたいだし、優秀すぎるがゆえにある程度の壁を作られているみたいな。」
「うぐ…いやいや、それを言うなら佐々木君も大して変わらないでしょ。」
「ああ、図星か。」
「……なんか、口がうまくなったね。」
「おかげさまでいろんな人と他愛ない話をするようになったもので。」
個性によって悲観的で暗い性格だったのがこの一年でだいぶ改善され、佐々木本来の姿が出てくるようになった証だろう。今の佐々木は随分と明るい。ひねたところは素のようだが。
「じゃ、じゃあ、私と友達になってよ!」
その頬は夕日に染まっている。
「…ずいぶん唐突だね。」
「君に友達がいるのに私にいないのは納得がいかない。」
「…ずいぶん失礼だね。」
「そもそも君がクラスになじめているのは私のおかげなんだ。少しくらい恩を返したって罰は当たらないよ。」
そう豪語する印照に向かって佐々木はこれ見よがしにため息をつく。
「優秀な人だと思ってたけど、意外と残念な人みたいだ。」
「なっ…!」
「僕の
「あ、それは…どうも。」
急に言われて面食らっている間に佐々木はまくしたてる。
「それに、恩を返すのは
一息付けて、話す。それを実現できるように確かな覚悟を伝えられるように。
「賭けに勝って、君の誘いに乗ってあげよう。僕の力を
「賭けの意味がなくなっちゃうじゃん。」
そう言う印照ははにかんだ。
*
「速報です。本日未明、沼松市にて、プロヒーロー、日色足趾さんが殺害されているところが近隣の住民により発見されました。犯人はいまだ逃走中で、遺体の状態から、警察はヒーロー殺し・ステインの犯行とみて、捜査を続けています。」
日色足趾はオリキャラです