全面戦争で死殻木を逃がし、次の日。ヒーローの信頼は地に落ちて、社会は混沌に包まれる。タルタロスを含めた七か所の刑務所から大量の個性犯罪者、敵が解放された。そしてその日からヒーローを見限った一般市民とダツゴクとの戦闘が各地で起こる。対敵戦闘訓練を受けていない一般市民の武装戦闘は周辺一帯を巻き込みさらなる被害を生む。
そんな事件が頻発する中、数日間雄英ヒーロー科の一人が自室に閉じこもっていた。
「ハハハハハ!見てみろよ取蔭ェ!筋肉が!筋肉が湧き出てくる!」
ノックもなしに扉を開き、実際には鍵がかかっていたために扉を破壊して物間がずかずかと部屋に突撃していた。B組のだれが説得しようとしても心を開いてくれたりはしなくて最後に物間にお鉢が回ってきた。B組最後の説得者だからこその暴挙なのかもしれないが後ろでは拳藤が頭を抱えている。
「物間…鍵かけてたはずなんだけどな。」
「いやあ、ごめんねえ。新しい力が使いこなせなくってさあ。」
よく言うと、あきれた視線が背中に突き刺さる。その力をこの数日使いまくっていただろうにと。実際のところ、オートで働く超再生はもちろん、筋肉増強だけでなく、ジェットに変態もある程度使いこなせるようになっていた。ドアを破壊するようなそんなふうにとんでもなく加減を間違えたりはしない。
「他にも凄いんだぜ。飛べるようになったし体の形も自由自在、ついでにどんなにやられても頭さえ無事なら再生する。」
ドアを破壊した轟音にも視線を寄越さなかったが、新しい力という言葉に反応したのか死んだ目で物間に視線を寄越した。それを見た物間は何を感じ取ったのか、拳藤に視線を送るとため息をついて拳藤が部屋から離れる。
「そう言う力を僕は佐々木から与えられたわけだけれど、君は佐々木に何を与えられた?」
「与えられた?ふふ、敢えて言うなら役割かな。ある意味で私は彼の切り札になった。」
彼は内通者だった。敵連合、今は超常解放戦線となった死殻木側と通じていた。林間合宿で私たちを、A組に至ってはUSJ襲撃事件を含めて二度も死の危険に晒していた。乾いた笑いが漏れる。合同訓練の時は本気で心を痛めていたんだ。ねえ、本当に理解できないよ。君はどんな思いでヒーロー科編入とか言ってたのかな。
「なるほどね。そのイヤーマフと眼帯は佐々木とつながってるからか。」
「今は何も見えてないけどね。彼の意識がない状態みたいだから。」
「彼の意識が戻った時、AFOの情報は取蔭に筒抜けってわけだ。後手に回らざるを得ないヒーロー側が確実に先手を取れる、ふむふむ確かに切り札だ。彼が生きてればの話だけど。」
あえて言及しなかった可能性を物間は触れてくる。彼はいつもそうだ。見逃したい可能性を、現実を突き付けてくる。
「死んでも仕方のないことをしでかしてるのは間違いない。同情なんて絶対してやらないが、生きていて欲しいと思うよ。僕らの勝利のために。」
「そうだね。私達を死地に送ったんだから彼には役立ってもらわないとね。」
悩みは尽きたりはしてくれないけれど、物間と話せて少しだけ気が晴れた。
*
長い長い眠りから覚めたような、そんな気がする。ここはどこだと周りを見渡せば鼻から上が欠損している男…AFO。脳みそおっぴろげの化け物、脳無。スピナーと、荼毘、トガ、そして先ほどからのたうち回って怨嗟を叫び続ける死殻木弔。
「目が覚めたかな、僕の友達。」
「!」
その声が自分を呼んでいるのだと認知するのに数秒かかった。頭を振って思考をクリアにさせる。なるほどここはAFOの隠れ場所か。
「君が壊れてしまわないように、いくつかの
そうして考えてみれば自分を襲っていなければおかしい激痛はなりを潜めている。そもそも気絶する前の状況を考えればまともに思考ができている時点で
「君は大切な友人だ。これ以上無理は見過ごせない。監視をつけさせてもらった。君の視覚を僕と
言われてようやく合点がいった。きっと今気を失ってる時からではない。ずっとだ。この
「僕らが動き出すのは一週間後。残された個性の調節、特に新たに与えたいくつかの個性は使いこなすのに時間が掛かるだろうし、それまでは好きにしていてくれて構わない。時が来たらまた僕の力になってくれるかい?」
頷く、今の自分にはそれしかできないかったから。そうして私の意識は再び暗転した。
ヒロアカ完結おめでとうございます。其れではこの作品はこれより週一ペースで更新します。お付き合いくださる方はよろしくお願いします。