内通者   作:三軒過歩

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多分この話の掲載時には判明していることなのですが、執筆時には判断が微妙につかないのでこの作品ではトガが変身して増やしたトゥワイスは倍化で死殻木や荼毘を増やせないという設定で行きます。


エンデヴァーの選択

「ここは、地獄か。俺は…死んだんだ。」

 

目が覚めた時、その場所は地獄と呼ぶにふさわしくて、郡訝山荘にいたヒーローの大半がどこからか現れた大量のトゥワイスと、大量殺人鬼と化してしまった燈矢に殺されていた。自分を許すことなど絶対にないから死後もこんな光景を見せられることに絶望はないけれど、これが現実に起きていないことだけは切実に祈りたい。

 

「(残念ながらあなたはまだ死んでないです。文字通り死んでないだけですけどね。)」

 

そんな声が脳内に響いて、貫かれたはずの心臓に、何やら肉片が詰め込まれている。誰かの心臓を無理やりつなげたような、そんな処置をしたのだろうか。いや、今重要なのは俺がどの程度の力でどれくらい動けるのかだ。

 

「(あなたがその執念を燃やし続ける限り、個性があなたを生かす。足りないところは僕が補う。とはいっても僕はあなたの熱に耐えられないから大技一発撃てば終わり。)」

 

「おい、おいおいおいっ!マジかよ奇跡だ、お父さん!」

 

黒霧は解放されてしまったのか、荼毘が、燈矢がここにいる。焦凍はどうなった。確保したんじゃなかったのか。

 

「(AFOを相手してもらいます。そのために生かした。)」

 

さっきから響く謎の声がAFOの方向を示してくる。全盛期の肉体を持ったAFOが死殻木と合流すれば負ける。止めなければならない。

 

「燈矢…!」

 

燈矢に向き合えば、そこで俺は力尽きる。俺はヒーローだ。張りぼてでもなんでもヒーローとして活動してきた。今ここで父親に戻ることが許されない。でも。

 

俺はまたこの期に及んでまで、死の間際まで燈矢と向き合わないのか。俺は燈矢の父親なのに。

 

「(きれいごと実践してみせろ、ナンバーワン)」

 

声が響く。そうして覚悟が決まった。

 

「おいおい、そりゃあないぜお父さん。」

 

「父親とヒーロー、両立する。空中散歩に付き合ってくれ。燈矢。」

 

ヘルフレイムを噴射して、AFOに向かって飛び立った。

 

 

「あっつううううう!」

 

叫びながら炎を放つ。それを受けて、皮膚が焦げるより早く巻き戻って傷一つつかない。超再生すら劣化だと断言できるほどの威力。理を壊すとはよく言ったものだ。彼女が十全にその力を発揮できるような社会だったなら、こんなことにはなってなかったのに。

 

「取り繕えなくなってるね。超再生は痛みまでは消してくれないから。」

 

腕をつかむ。コピーを奪おうとしてる。

 

「な、め、るなあァァァァ!」

 

痛みに奇声じみた叫び声をあげながら、AFOに奪わせまいと腕を灰にして崩した。

 

「狂気的なヒロイズムと執念、英雄症候群の病人とはよく言ったものだよ」

 

そう言って頭に手を伸ばしてくる。超再生は頭を潰されると再生できない。頭を灰にしたら死ぬ。

 

「物間ッ!」

 

取蔭の叫び声がまともに機能してない耳に辛うじて届く。自分を少しでも援護しようと背についていた肉片に剛翼が加わって、何をして欲しいのか、それが伝わった。

 

「これで終わりだね。」

 

だから、頭に伸ばされた手を受けて、個性(コピー)を奪わせた。隙ができると思ったから。

 

「お前のなぁ!」

 

ヘルフレイムを発動させる。知ってたか、コピーは残る。時間切れまでナンバーワン(ヘルフレイム)に付き合えよ。

 

「ほう、コピーされた個性は残るのか、これは奪えない。」

 

物間のジェットバーンに押し込まれながら、それでも余裕の表情を崩さずに反撃をする。

 

「ファントムシーフだけを苦しめるわけにはいかないんでね!」

 

「あとちょっとなんだから!」

 

ホークスと取蔭がその反撃を身を焦がしながら阻止する。ひと固まりとなった三人が目指したのは、あとちょっととは時間切れじゃない。

 

「んなっ!」

 

「巻き戻しで熱も感じないんでしょ。だから気づけない。」

 

「よくやった!」

 

「俺を見ろよ、エンデヴァーーーー!」

 

エンデヴァーと荼毘が戦っている戦場だ。エンデヴァーが最後の大技を放とうとしていることに荼毘も呼応する。向かい合っていた二人がその中間点である四人の元へと突っ込んでくる。

 

「「赫灼熱拳!」」

 

ホークスの羽が焦げていく。最後の最後に力尽きることに忸怩たる思いを顔に乗せてホークスが海に落下する。リザーディの肉片も灰になってほとんどが消えた。辛うじて手の部分が物間の左手に張り付いている程度、本体は別にあるだろうし、あとはファントムシーフの対応をすれば死ぬのは俺達だけだ。

 

「俺達と一緒に地獄へ堕ちろ!」

 

「二倍程度で僕が…!」

 

「三倍だよ、ばーか!」

 

「「「プロミネンスバーン!!」」

 

体を焦がして灰になりながらもまとわりついて、三倍の地獄の業火がAFOを焼き尽くした。

 

 

「ごめんなさいエンデヴァーさん、最期までヒーローさせてしまって。」

 

海にぷかぷかと浮かびながらまばゆいばかりに光るエンデヴァーを見上げる。肉体が残らず灰とかしたのか、何も落ちてくることはない。エンデヴァーはもちろん荼毘もAFOも死んで、しかも自分が落下するとき、リザーディの肉片はすべてが物間の援護に使われていた。咄嗟に雑魚羽でリザーディの肉片の一つを物間の左手もろとも切り落としたが、ファントムシーフのみならずリザーディも死んでしまった可能性は高い。

 

「いや、探さないと。もし生きてるなら近くに落下してるはずだ。」

 

彼等を立派なヒーローと認めた。だから死ぬことも覚悟していると分かってる。それでも俺は大人として、彼等を夢半ばで終わらせてはならないと足掻く義務があった。咄嗟に切り落とした肉片が海に沈んでしまわないようにホークスは湯だった海を泳ぎ始めた。




一か所脱字かなってところがありますがそれは伏線です。まあ自分が想定していない誤字脱字はある可能性があるので何か見つけたら報告くれると嬉しいです。
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