内通者   作:三軒過歩

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その過去シリーズだけでなく、この作品自体が中だるみしてると断言できます。早く完結させてたいのですけど文才が無いから完結まで持っていけない。ヤバイ。


内通者、その過去5

「ハア、この世は、偽物ばかりだ。」

 

ヒーローを殺し始めて、この市で三人を殺した。初めて人を殺した時の人を殺した感触は今でもはっきりと覚えているのに顔は思い出せなかった。それに気づいたときに恐怖した。殺した人が人でなく数字になっていくさまが嫌だった。自分がやっていることは必要なことで正しいことではない。自分は罪人であるとそう自覚している。ただし裁ける英雄(ヒーロー)がこの市にもいなかった。そうだろう、この近くに自分を裁ける者がいるのならば、もうすぐ両手で数え切れなくなるほどヒーローを殺した俺が捕まっていないはずがない。

 

「ヒーローは、見返りを求めてはならない。」

 

一人を殺すと、オールマイトならすぐに捕まえにくる。二人殺して捕まえにくるなら、オールマイトに及ばないまでも確かな信念がある可能性がある、試してみる価値がある。三人殺して捕まえにくるならならそいつは偽物だ。すぐに粛清してかまわない。そのヒーローが住む場所への警鐘としてちょうどいい。だから俺は四人殺す。それが大罪だと知っていても、この腐った社会を放置するよりはましだ。

 

「すべては、正しき社会のために。」

 

 

「ありがとう、竹下。僕のためにいろいろ気をまわしてくれて。」

 

「お前が必死に勉強するなんて珍しいから、協力するのは当然だ。お前には恩もあるしな。それを返しているだけだよ。」

 

竹下は若くして独立し、今はヒーロービルボードチャートにも乗るほどの人気ヒーローの息子だ。父みたいなヒーローになるべく、苦手な勉強も佐々木の協力を得て精力的に取り組み、現在は普通の公立中とはいえトップクラスの成績をとるに至った。今は竹下の家にお邪魔して勉強をしている。

 

「今度お礼するよ。」

 

「じゃあ、やっぱり、将来俺が独立したときに一緒に働いてくれないとな。無個性だからヒーローは難しくても、父さんの事務所を見てると、お前みたいな人材がいれば一気に楽になる。もちろん薄給で!」

 

「調子に乗りすぎだ。今度何かおごってやるからそれで我慢しろ。」

 

軽い調子で言った竹下の頭を軽く小突く。

 

「分かってる分かってる。お前は印照さんのものだもんな。とれたりしないよな。」

 

「からかうな。」

 

今度は強く頭をぶった。

 

あの日、佐々木が印照に宣戦布告した翌週、冗談交じりに竹下が佐々木を今のように勧誘したのだ。その時の言葉が印照にも届いていたらしく、焦ったように言い放ったのだ。

 

「佐々木君はもう私が取っているんだから!」

 

と。今思え返しても恥ずかしい。しかしその件以降、意外とポンコツであることがクラスメイトに知れ渡り印照に仲の良い友人ができて行ったことは歓迎すべきなんだろう。公認カップルのような扱いは受け入れがたいが。

 

「いてて、いやあ無個性の佐々木をヒーロー関係者にしようとする審美眼があるやつが俺以外に、よりによって印照さんなんて運がないよなあ。あいつより優秀になるのはちょっと厳しそうだ。」

 

「印照さんより優れてる部分はお前にもあるだろ。それこそ、身体能力だけで言えばお前には勝てないだろうし。」

 

竹下の個性は竹を生成する個性。武器にも防具にも使える優秀な個性だ。

 

「肉体派の俺と頭脳派のお前がコンビ組めば相性抜群だって言いたいけど、そう言う要素を考えても、印照さんと組むってお前は判断してるんだろうから勧誘が成功しなくて残念だよ。」

 

「悪いな。っとそろそろ帰るよ。あんまり遅くなるのもよくないし。」

 

「じゃあ送るよ。最近は物騒だしな。」

 

この町にステインが潜伏している可能性が高いと言う。最近現れた殺人鬼でありながらステインが殺したヒーローの数は十名を超えた。今この市は厳戒態勢でヒーローたちがパトロールしている。

 

「お前の父さん、ここら辺のヒーローのまとめ役してるらしいじゃん。凄いな。」

 

「だから全く帰ってこなくなったんだよ。訓練の相手になってくれないんだ。」

 

「今はステインが潜伏しているみたいだから、仕方ないさ。期待してるよ、プロヒーローバンプルが新聞の一面を飾るのをね。」

 

「バンプルなら大丈夫。なんてったって俺の自慢の親だからな。」

 

優れた親を持つと自分と比較してつぶれてしまう子もいる中で、竹下一家は子育ても順調なのだろう。そう言った竹下の顔には気負いがない。本人が優秀であることもあるだろう。雄英高校を目指して、それが絵空事ではないほどに。

 

「ここまででいいよ。ここからは表通りだしな。」

 

「おう、じゃあ、また明日。」

 

二人はそう言って別れた。

 

 

「あれ、佐々木君、珍しいね、こんなところで会うなんてさ。」

 

駅を通過している最中、不意に声をかけられる。

 

「印照さんもね。何かの帰りかな。」

 

「習い事のね。ギターをやってるの。」

 

「お嬢様じゃん。」

 

「凄いでしょ。だから給料は期待してくれていいんだからね。もちろん、君がしっかり働いてくれる前提だけど。」

 

「いや、君の家がお金持ちであることと、君がお金持ちになれることはイコールじゃないでしょうに。」

 

「私が稼げないと?」

 

「失礼しました。君ほど優秀なら大丈夫でしたね。」

 

「優秀な相棒もいますしね。」

 

「違いない。」

 

そこまで話したところで口をとがらせて言った。

 

「ところで最初から突っ込んで欲しかったんだけど、この姿が優雅にレッスンしてたように見えたの?」

 

「違うの?」

 

真顔で聞いてくる佐々木にこれ見よがしにため息をつく。

 

「髪は乱れてるし、服装だってカジュアルじゃん。見れば一発でしょ。というか、君の力ですぐに知ったでしょ。」

 

「前も言ったような気がするけど、僕は力を普段使わないようにしてるんだ。」

 

「それは、凄いね。」

 

「何が」

 

「君の個性は強力だ。どんな人の弱みを握ることもたやすい。いわば知恵の実のようなものだよ。それを目の前に出されて食べないでいられてるって相当強靭な精神の持ち主じゃないとできない。」

 

「これが知恵の実って思えるのは持ってないからだよ。過去を覗き見たってろくなことがない。」

 

「そう?いいこともあるでしょ。思春期の男の子なら特にさ。」

 

「女性を信じられなくなるだけだよ。」

 

(女性どころか人間不信になりかけたし。)

 

中々危ないセリフを軽々と言ってのける印照に佐々木は心中複雑ながら冷静に返した。

 

「で、結局何をしてたの?」

 

その言葉を待っていたかのようにほほ笑むと印照は言った。

 

「合気道。」

 

「まあ、僕も君も戦闘向きのじゃないし、鍛えておくに越したことはないけど、そんな自信ありげに言うことじゃないと思うけどな。」

 

個性が一般に広まっているこの時世では、戦闘向きの個性である人とそうでない人には隔絶たる差がある。銃を持っている人と丸腰の人が戦うほどの差があるのだ。戦闘向きじゃない個性のヒーローが少数なのはこういう背景がある。もちろん戦闘向きの個性以外でも戦闘をしなければならない場面はあるわけだし、なんなら戦闘向きの個性でない武闘派のヒーローもこのヒーロー飽和社会では一定数いる。

 

「まあねえ、私の知るなかでもプッシ―キャッツの二人くらいしかいないし。その二人がいるチームも救助が中心だしね。でも、意表を突けるって武器になるんだよ。」

 

そこまで言って理解する。例え小型ナイフ程度の短剣であっても丸腰だと思っていた人が繰り出せば致命傷になるのと同じだ。普段使いするために鍛えているわけではないということだろう。

 

「気が早い、いや、先を見据えていてすごいというべきかな。流石。」

 

「ふふん。もっと褒めてもいいんだよ?」

 

「ああ、凄い凄い、さっすが印照さんは違うなあ。」

 

「うわあ、適当だあ。」

 

「いや、凄いと思うよ。ヒーローは一芸では務まらないからね。」

 

最近のニュースを見ていれば特にそう感じる。プロヒーローが市民を守るために殉職したという話は日常的にあるなんてことはないが決して珍しいことではない。

 

「残されたもののことを想えば、ヒーローは手放しで喜べる職業じゃないのかもしれないし、親や大切な人が安心してみてられる最高のヒーローを目指さなくちゃ。」

 

「ホント、先を見据えてるね。僕もこの力と向き合って行った方が良いんだろうなあ。」

 

そう言って、何気なく視線を大衆に映す。まだ、個性を使うことに抵抗はあるけど、ずっと先にいるように感じる印照に対して、このままではいけないと佐々木は感心してそう言った。

 

「あっと!あまり遅くなっても心配されるから、そろそろ帰るよ。」

 

「っと、引き留めてごめんね。また明日、学校で!」

 

そう言って佐々木は()()()()()()()()()()()()

 

 

「もしもし、バンブルですか、すぐに来てください、殺人者が…!」

 

印照と離れてすぐに携帯でヒーローを呼ぶ。佐々木にとって一番身近で強いのが竹下の父親であるバンブルだった。

 

「君は、佐々木君か!落ち着いてくれ、落ち着いて詳しい情報を教えて欲しいんだ。」

 

深呼吸をして、詳しい場所を教える。すぐに合流するからと携帯の位置情報をオンにした。改めて犯罪者を尾行しようと目を向けると既にいない。

 

(あの歯刃の人がいない、見失った!)

 

駅で個性を使ってみた人の中に殺人者がいるなんて流石に想像の埒外だった。その場で取り乱さなかったことだけでも褒めてほしいくらいに。自分が意外とプライドが高かったんだと思い知った。

 

「いた、佐々木君、無事でよかった。ヴィランはどこだ!?」

 

「すいません、連絡しているうちに見失ってしまって。」

 

悲鳴が響く。

 

「こっちか!?」

 

 

「肉、肉を、みせてぇ!」

 

「や、やめっ!」

 

グシャッという音と共に一人の命が失われる。死体となった相手に向けるにはあまりにも恍惚とした表情でその体に見とれる。

 

「きれいな肉面…やっぱり人の肉は違うなあ。」

 

「遅かったか…!」

 

殺人現場に殺人者とヒーローが一人、そして、中学生が一人。…死体が一つ。

 

「君たちも僕に肉を見せてくれるんだねえ。」

 

「佐々木君、こいつはただの殺人者じゃない。連続殺人で指名手配中の極悪犯罪者だ。今すぐ逃げろ。」

 

そう言ってバンブルが端末を取り出す。

 

「逃げながらこれで応援を呼んでくれ。こいつは俺一人だと怪しい。」

 

「あ、ああ…」

 

「クソッ、無理もないが…!」

 

応援を呼ぶことを諦め、両頬に付けていた竹を変形して竹刀と盾を作り出す。バンブルの個性、繰竹は竹を自在に変形し操る。その個性はヒーローとして使っていくうちに強化され、頬に付けたわずかな竹からでも竹刀や盾といった大きな物を作り出せるようになった。その攻撃力や防御力も個性に強化され、ただの竹刀や盾のそれにとどまらない。

 

「肉、ニグゥゥゥゥゥ!」

 

ヒーローの肉を見る時に一番有効なのは民間人を狙うこと。それをムーンフィッシュは感覚で分かっている。人が殺される場面に初めて遭遇し、動けない佐々木を庇ってバンブルは防戦一方だ。

 

「佐々木君、とにかくここから離れてくれ!このままじゃ。」

 

竹刀としていた竹を盾に変え、両手に盾を装備して佐々木を庇うが少しずつ削られていく。服が裂け、皮膚まで食い込み、血が滲みだす。

 

「…は、はい!」

 

なんとか足を動かし、後ろを向き逃げ始める。

 

「待って、マッテマッテマッテ、ハハ!僕の、ボクのニグダァァァァ!」

 

「させないぞ!」

 

血をにじませながら両腕の盾を構えて佐々木を庇うように立ちふさがった。

 

「え?」

 

「なっ!」

 

「は?」

 

その凶牙は佐々木に向けたものではなく、バンブルを狙ったものですらなく、その歯牙は印照を貫いていた。




前話の日色足趾はオリキャラかつ端役ですって書こうと思ったのに忘れてたのでここに書きます。それと、竹下君のヒーロー名くっそださい。何とかしたかったです。ついでに竹下君の息子さんの名前も決まってないのもどうすればいいんでしょうか。
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