「(か、わ、れ…)」
「ッ!」
死なない程度に群がるトガの分身体を蹴散らして、一瞬の余裕ができたその意識の隙間、抑え込んでいた佐々木過渡の意識が表に漏れ出してきた。
「(じっとしててよ。これ以上罪を重ねさせたくない。)」
一瞬気が緩んだだけだ。その隙にしては佐々木君の自我が強すぎる気がする。借り物の体だから彼を抑え込んで居られないとは思っていたがそれにしても強すぎる。
「(
「…う、あ…」
再現された印照才加の意識はそこで主導権を明け渡した。
*
「ぐふッ!」
「ぐぁ…」
「あ…が…」
(動きが変わった!?)
トガを一人で抑え込んで居られるだけでこの戦場では大きく有利を取れる。あと数分もすれば他の脳無や敵を捕えてトガの拘束に回れ、数十分後には他の戦場に援護に回れるはずだ。事態の好転を予期してより一層奮起していた矢先に、敵を殺してもおかしくない威力の攻撃を仕掛けたことにギャングオルカは動揺した。
「殺すな!」
すぐさま叫ぶ。シャチの個性を持つ自分の叫びはただの叫びで終わらない。衝撃波が佐々木の体を襲って動きを鈍らせる、はずだった。
「本物の限界は僕が超える。」
まるで
「やめろ!」
鈍い音がトガの首からなる。
「さあ、次だ」
蹂躙が、始まった。
*
本物の
「ハッ!」
0と1は違う。でも1と100は同じだ。まして相手は
「ギャングオルカ、通信で各地の状況は分かっているのでしょう?援護が必要な座標を全て教えてください、繋げてあげます。」
「お前のやり方をここでは止められなかった。でもこれ以上ヒーローに唾を吐きかけるやり方を認めるわけには行かない。」
素直に情報を教えてくれない。捕まえられたくなければ英雄らしく動けと駆け引きのつもりなのだろうか。
「貴重な戦力、潰したくないなあ…」
脅しの言葉一つ、お前等から逃げおおせるなどたやすく、蹂躙すらしうると言外に言った。数瞬にらみ合う。根負けしたのはギャングオルカだ。
「国立多古場競技場に動けるヒーローを全員送れ、ただし俺とお前は別の場所だ、雄英に行く。」
トガがトゥワイスに変身して暴れまわった影響で死なずとも負傷者も多い。手当てにも人を割く必要があって、実質送れるヒーローは十人程度だ。それでもずっと楽になるだろう。ヒーローを送り出して、ギャングオルカと二人、並ぶ。
「貴方と僕とでも勝つ可能性はある。」
緑谷のことをどの程度知っているのか、そんなことを言ってくる。緑谷が死殻木と戦い始めてから既に五分以上経っていて、加速による一分間のインターバルは致命的な隙になる。それを援護できるだけの余力はもう残ってないだろうから、二人で勝てないといけない。ほぼ最高戦力を集めたチームが敵わなかった敵に対して。だからそんなことをこいつは言うのだろうか。
「勝てないから戦わないということにはならない。そんな気遣いは不要だ。そもそも、
「失礼しました。」
少し嬉しそうに笑って、ゲートをくぐった。
*
「物間ッ!もう五分経っちゃうってば!頭を、早く頭を再生させてよ!」
プロミネンスバーンでAFOを灰にして殺し、エンデヴァーや荼毘も灰となった。一緒にいた私も物間も死ぬはずだったけれど、私は腕の一部をホークスによって引きはがしてもらったからそこから再生できた。同じことをすれば物間も再生できるはずで、彼は頭さえ再生させれば超再生で復活できる。でも借り物だからか、それまでのダメージの蓄積か、
「ねえ、物間ってば!」
急かしたところでどうにかなるものではないことは自分が一番よく知っているけれど、それでも声を上げずにはいられなかった。そんなとき、肩を叩かれる。
「あー、リザーディ?慌ててるのは分かるけどとりあえず目を再生させてみて。」
自分も体力が限界で未だ左腕と首から上、口と両耳程度しか再生できて無くて、目は再生できていなかったところにホークスの声が届く。神経を集中させて何とか片目を再生させてホークスを見ると、ホークスの上着を羽織った物間が五体満足でそこにいた。
「あれ?」
一瞬理解できないものを見て掴んでいた物間の左手を放すとその左手が物間の肩に収まった。
「頭さえあれば復活できる超再生、もう二度とはしたくない経験だけど、エンデヴァーが頭吹き飛ばしてくれたんだよ。おかげで死なずに済んだ。」
「も、のま…良かった、生きていてくれてほんとに良かった!!」
思わず物間に抱きついて、ただそれだけを繰り返す。まだ各地で戦いは続いていて、こんなことを繰り返す時間なんて本当はなかったのだろうけれど、それを咎めるものはこの場にはいなかった。