内通者   作:三軒過歩

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これ書いた当時AFOさん死殻木に取り込まれたままだったので原作と矛盾しますがご理解ください。それとは別に弧太朗君は孤児院に送られたわけではなく里子にだされているのですが(この情報は執筆時判明済み)勘違いの末この場面を書ききってしまったので佐々木が来たことによるバタフライ効果ということで許してください。


AFOと志村弧太朗

「それじゃあ、行ってくるね。」

 

「ヒーロー活動頑張ってね、今日もいい子にしてるから!!」

 

「ありがとう、弧太朗。母さん頑張ってくるね。」

 

その日のことはよく覚えてる。いつも保育所に僕を預けて去り際に頭をなでてくれるだけだったのに、その日は去り際に僕のことを苦しいくらいに抱きしめて、そして仕事に向かって行った。

 

当時はただ母親に抱きしめられたことに特別な意味があるなんて思わなくて、そしてその日迎えに来たのは孤児院の職員だった。既に保育所の人には母から話が通っていたらしく、僕は保育所の友達に別れさえ告げられずにその保育所から遠く離れた孤児院に移り住むことになった。急なことに目を白黒させている僕に母からの手紙が渡された。その手紙に書かれていたすごく悪いやつとの戦いが終わればきっとまた一緒に暮らせると、その時までいい子で待っていようと、会えなくなった悲しみよりもヒーローとして頑張る母親に対する誇りが勝っていた。母親が負けるなんて想像できなかったし、二度と会えなくなるとも思ってなかったから。少なくとも、孤児院で暮らし始めてしばらくの内は。

 

 

「こたろうにーちゃん、ヒーローごっこしようーよー!」

 

孤児院での日々は寂しさを紛らわせてくれた。小学校に通う歳になって、ヒーローがどんなに大変なのか、どんなに凄いのか、だんだん分かるようになってきて、

 

「…ちょっと待ってね、これ終わらせたらすぐに行くから。」

 

母さんが悪いやつに負けたのかもしれないと思うようにもなってきた。

 

 

「初めまして、志村弧太郎君。今日は僕がカウセリングをするよ。よろしくね。」

 

月に一度この孤児院ではカウンセラーがやってくる。敵に親が殺されて孤児になった子がここに来ることもあり、そう言う人のメンタルケアのためだろう。弧太郎にとっては少し退屈な時間、だった。

 

「先生はどうしてカウンセラーを?」

 

新しいカウンセラーの人とはすぐに打ち解けた。別に前のカウンセラーとソリが合わないとかそんなことはなかったけれど。多分この人が特別なんだと思う。

 

この問いがカウンセラーに対して相応しいものではないと思っていたけれど。カウンセラーとしてではなく一人の人間としてこの人が好きになったんだと思う。だから知りたいと思った。

 

「ヒーローのおかげだよ。ヒーローがいるから今僕はこうしているけれど、ヒーローは自分のことを守る対象としなくて、それで不幸が生まれるから、そんなことがなくなればいいと思ってね。」

 

おかげと言っていながらその実せいだと言っているように聞こえた。ヒーローのことを悪く言うのはカウンセラーとしてはふさわしくないから、これ以上は踏み込んで欲しくなさそうだった。それでも僕は彼の言葉に自分でも信じられないくらい深く共感した。だから。

 

「カウンセラーじゃなかったらなにをやってたんですか?」

 

踏み込んだ。

 

「それは、また別の機会に話そう。今日はもういい時間だよ。」

 

その時はそう言って躱された。

 

 

「弟さんがヒーローだったんですね。」

 

「もう亡くなって…すいません。」

 

「全てのヒーローが意味のある死を迎えられるわけじゃないって、それは間違ってないかもしれないですけど…!」

 

「取り乱してすみません。気休めが欲しいわけじゃないんです。お母さんが、いや…あの、何でもありません。」

 

「荷が重いんだと思います。ヒーローは特別な人間にしかなれないものだったはずなのに、誰もがヒーローを名乗れるようになっちゃってるから。本人や身近な人がそのしわ寄せをもらう。」

 

受け入れていたはずだった。母さんが選んだ道が間違いなんて思いたくない。母さんを否定したくない。自分が受け入れれば、自分が肯定していることが母さんが正しいと証明し続けられるって。なのに、今この人の前では受け入れ続けていられなかった。それは自分以外にヒーローの存在に辛い思いをした人が目の前にいて、我慢することが目の前の、先生の選んだ道の否定になってしまうから。

 

「ええ、そうです。母はヒーローでした。とても、立派な…」

 

「君を一人にしたのに?」

 

「それはッ!」

 

どうして僕を置いていったのかそんなの分かってる。この世に敵がー

 

「ごめんね軽率だった。ヒーローだったんだもんね。」

 

「そうです。ヒーローだったから、だから仕方なかった。母さんは僕以外にも大切にしなければならないものがいっぱいあるから。」

 

母さんが自分に愛情を注いでくれていなかったとは思わない。母さんとの記憶がどこか遠くに行ってくれればよかった。いっそ恨ませてくれればと思った。でもそう思えば思うほど自分が母と過ごした時間は記憶の中で鮮明になってしまって、それが母さんが自分に愛情を注いでくれた証となってしまった。

 

「弧太朗君はお母さんのことが大好きで、でもヒーローは嫌いなんだね。」

 

ああそうだ。ふたをして、見ないようにしてきた感情に名前がついた。そうか、僕は母さんにヒーローなんかなって欲しくなかったんだ。

 

 

「こたろうにーちゃん、ヒーローごっこしようーよー!」

 

「ごめん。今忙しいんだ。」

 

「最近ずっとそればっかじゃん、もう知らない!」

 

むくれて部屋を去っていく弟分をしり目に再び机に向かう。決して自分のように無理に我慢をさせない幸せな家庭を築いて、ヒーローとは縁のない平穏な生活を送れるように。早く自立したかった。この孤児院はヒーロー嫌いな僕をきっと優しく否定するから。

 

 

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