主導権のない体で見る世界はテレビの中の出来事のようで、どんなに干渉したくとも決してできない。
「な、んだよ…これはッ!」
AFOと志村弧太朗の関係が明らかになり、自分の憎しみがAFOによって仕向けられたものだと見せつけられた死殻木には隠しきれるはずもない動揺があった。
「分からないはずないだろう?君のお父さんと僕の記憶だ。君の原点は君が選んで形作ったものじゃない。僕が作ったものだったんだよ!君の憎しみも怒りも全部ッ!」
「違う、これは俺の意志、俺の個性がッ!この結末を選んだ。あんたが父に関わろうが関係ない。
「何を言う転弧君、君の個性は僕から与えられたものだったんだよ?僕がいなければ前提が崩れる。」
「違う、これは、俺のッ…!」
個性とは身体機能、そしてそれは扱う本人の精神状態が悪ければ効果を十分に発揮できない。精神世界で佐々木過渡にこびりついていたAFOの身体が、死殻木弔を、志村転弧を侵食し始める。
「君のじゃない。あの家から連なる物、あの家に連なる物さえも、僕が与えた!!」
「じゃあ、俺は、なんで、何のた、め、に…」
「強い憎しみはそのまま、いやさらに増幅されて絶望へと変わるッ!その僕ですら想定を超えた感情の奔流はッ!」
佐々木過渡についていたAFOの肉体が完全に死殻木弔に乗り移り、覆い尽くし、彼の存在がこの精神世界から消える。
「完全で完璧だったはずのAFOという個性を
AFOが離れたことで主導権が戻った佐々木は誰よりも先にその脅威に気づき、現実世界に帰還した。
*
「今すぐこの場から消えろ!」
佐々木過渡の絶叫と共にイレイザーヘッドの前にワープゲートが現れる。イレイザーヘッドを介抱していたルミリオンがその言葉の主導権が佐々木かAFOか判断するためにすぐには動けない。
「抹消取られたら取り返しがつかない!早くし…」
その言葉は最後まで話せない。ワープゲートが消された。その意味するところは。
「伝播するAFO、魔王どころか神になった気分だ。」
地面に手を着けたAFOが抹消を発動して佐々木を見たことを意味する。
「ルミリオン君は凄いな、こんな弱個性であんな理不尽にも思える強さをもってたんだから。」
速攻で遠距離攻撃ができる個性を撃ち込んだが透過で躱された。戦場に完全な足手まといが二人出来上がる。
「五秒留める、二人を逃がせ!!」
ベストジーニストが叫んでAFOの視界から佐々木を外させた。
「この体になったことだしせっかくだから貰っておこうかな、ベストジーニスト。」
ベストジーニストが個性を奪われたその時間の代償にルミリオンとイレイザーヘッド、そしてベストジーニストも佐々木の作ったワープゲートで戦場から遠くに飛ばした。
「状況を、死殻木になにが!?」
宙に浮いて距離を取りながら、緑谷が佐々木に問い詰める。
「AFOが進化して奪う力が崩壊のように伝播する。その力を使って抹消が取られた。」
緑谷の目が見開かれる。それは即ちAFOの奪う能力から逃れられないことを意味する。浮遊で浮いていた彼が地面に落とされて、個性を奪わんとする。
「くっ…このっ…!!」
OFAはほとんど唯一AFOに抗いうる力、ついでで奪われる僕の個性とは違う。個性の綱引きが展開される。
「無駄だよ、九代目。君たちの意志に張り合えた弔の憎しみはさらに深い感情となった。多少手こずる程度だ。」
その言葉を最後にOFAが奪われる。
「フフ、フフフ、フハハハハ!やっと、やっとだよ!!ただ一つ思い通りにならなかった力、それが今僕の元に!全てが僕のために存在するッ!さあ、今どんな気持ちか教えてくれよ、九代目」
趣味が悪い、最悪だ。もう勝ち目なんてないのに。そう佐々木が諦めようとしてもそれを緑谷出久は許さない。だからー
「まだ、まだ僕は…!」
「生きている、とでも言うのかな?個性を失い、ヒーローでなくなった、ただの人となった、君が生きてどうなる!?」
成功率がほとんどないたった一つだけのAFOを倒せる方法のために佐々木は奮い立つ。彼は過去視を奪わなかったから。
「ーどうか証明してくれ。君が無個性でも立派なヒーローになれることを。」
そう緑谷に告げた。