軍師 諸葛亮 異世界記   作:YJSN

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第3話

「チッ、ここまでついてくるなんてしつこ過ぎんだろ!」

 

ふぇると、という少女 かく申す。

 

が、こればかりは孔明にすらお手上げである。

 

「ふぇると、貴殿には道理をお教え致しましょう。

下心あらば、また下心に犯されるべし。

己が盗みを働いて、いかようにして自らには盗みが働かれないとお思いでいらっしゃるのだ。」

 

と、申せば

 

「うっせぇよ!ウチらはこうでもしねぇと食ってけねぇんだ!」

 

と、こちらをふりかえり、憤怒と悲観を携えし目で射抜いてくる。

 

「...いや、今度ばかりはワシもダメかもしれんのぅ...。」

 

すると、そこでろむ爺なる者 腰を曲げ案ずる。

 

「んだよロム爺!戦う前から諦めてどうすんだよ!」

 

と、確かにあまりに慎重なるかのご老体に叱責を下すふぇると。

 

だがそれとは裏腹に、私も何かかの銀髪の少女とは別の気配を感じていた。

 

(...4里先に人...早歩き、されど急ぎつつ...。)

 

耳から得たこの事を、取り敢えずは片隅に置き、場へと戻りたる諸葛亮。

 

「お主...エルフじゃろう。」

 

(...えるふ、またも新たなる種族であらんか。)

 

はぁ、とため息を少しついたその少女は、暫し目を閉じつつも数瞬の後、口を開き、

 

「...正確には違うわ。私は半分だけだもの...。」

 

そう聞いた瞬間、ろむ爺なる者 ふぇるとと申す者 皆目をギョロリとかの少女に見向け、

 

「ハーフエルフッ...それに銀髪じゃと!!」

 

と、激しき畏れを感じ入るかの如く問う。

 

すると、かの少女、なんすれぞ(どう言う訳か)急に慌てふためきて

 

「ご、誤解しないでッ!ただの他人の空似よ!

私だって迷惑してるんだから...。」

 

と、何やら細かな訳を持った外見にあると推測する諸葛亮。

 

しかし、もはや時間も猶予も残されしは少なくありて、一寸の後、口を開く孔明。

 

「それは宜しいとして、...貴殿は3秒のちに首を刎ねられようぞ。

首元に隠れし殿方、お守り申し上げよ。決して流血沙汰にするでないぞ。」

 

「おやおやぁ、ぼくの正体に気付いていたとはね〜。でもまぁ、その情報ありがたく貰っておく...よッ!」

 

ガキンッッ

 

と刹那に至りて孔明の申した通り、銀髪の少女の首元で強き鋼鉄の違うる音、交わる音、響き渡る。

 

彼女の首元から姿を表した、さながら猫の如き...人語を操る不可思議な浮いた生き物が飛び出し、

 

孔明の命の通りに幾何学模様の盾を空中に生み出してかの少女の斬首を救いになられた。

 

そうして数瞬の後に、その真なる刺客、高く飛び上がりて蔵の内にてかく、姿を見せり。

 

「あらぁ...避けられちゃったわ、残念。」

 

「何者か、お答え申し上げよ。

さもなくばこの孔明、罪なき民を殺むる者斬らずを得ずあるぞ。」

 

と、申すとかの刺客、顔を上げ、その美貌を見せり。

 

「変な格好に変な物言い...

あなたぁ、珍しいわねぇ...。

...それに、私の初撃を予知した...あなたこそ一体何者かしら。」

 

顔は美しく整い、その目には妖艶の詰まったどす黒き殺意 深く読み取れり。

 

「我が名は諸葛亮、字を孔明と申す。」

 

「うーん、私、コーメイのお腹も切り裂きたくなっちゃった。食べてもいいかしらぁ?」

 

ニタリ、ニタリと口を釣り上げ舌を出し舐め回す様に孔明を見つめあぐるは卑しき下郎女の如し真似。

 

さすがに孔明も頭に来るものありて、

 

「...そこの毛むくじゃら、半分のえるふの少女よ。かやうな不届き者、万死に値す、(たが)うるにあるか。」

 

と、とかく目の前の敵を討ち滅ぼさんとするその姿勢に、かの二方も

 

「...私の名はエミリアよ。その、半分のエルフ、とか言うの、やめてよね もうっ。」

 

「僕も、毛むくじゃらじゃなくてちゃんとパックっていう名前があるのになぁ。」

 

「それは失敬した。ではそちらの二方は下がるが宜しいかと。」

 

と、彼女達に援軍を求めた後に、ふぇると達二人には後退を求めた。

 

「ぇ...え、なんでだよ!私らは取引をしたいだけなんだ!どうして殺す必要があんだよ!」

 

されど、その問いにかの殺人鬼は答うる。

 

「...持ち主まで連れてこられたら商談なんてとてもとても...。あなたは仕事を全うできなかった。口だけは達者でも仕事はおざなり...流石は貧民街の娘といったところね。」

 

「うっ...それ...は......っ、くそったれが...。」

 

冷ややかな目で見下すその下郎人は、ふぇるとという少女に現実を突きつける。

 

そして激昂を買ったのか、このふぇるとなる少女も剣を抜き、この女と対峙しようとするが、

 

「申したであろう、かの刺客は、恐らく其方では歯が立たない...大人しく下がっておれ。」

 

孔明、この女の身体の能力、並外れ、どころか天により生まれ変わりを果たした我と互角に値する勢い。

 

「け、けど!」

 

「フェルト!奴の判断は賢明じゃ。さ、早くこっちに来い!」

 

「お、おいロム爺!」

 

と、彼女を抱き寄せて無理やり店の奥へと引き下がらせるろむ爺。

 

「うむ...感謝致す...。」

 

と、ご老人に礼を言った後、

 

「...んもぅ、待ちくたびれちゃったわぁ...早く楽しませてちょうだい...ッ!」

 

と、振り返ればかの刺客、目の前にまで跳躍していたり。

 

私は僅かな木の軋む音から既に1秒前に予期していた故に

 

ガァンッッ

 

と、鉄の羽で構を成す我が扇を一振り、この女の漢代の頃、西方の異民族の使うていた曲がった刀剣を弾き返す。

 

「...あぁ...いいわ...久しぶりに楽しめそうだわ...。」

 

この女...あろうことか戦いに快楽を求むる有様。

 

「...ぱっく、と言ったか。御時間、稼ぎたるぞ。

私も直接の戦はあまり得意手とはせん故にお早めになされ。」

 

「うぅむ、間が悪い様だけど、こっちの事も忘れないでよ、ねッ!」

 

ズガガガンッッ

 

と、少女の隣で緑色の鋭い氷柱を精製していたぱっくなる者が、その何十もある氷柱をかの女に降り掛からせる。

 

「おぉ...まるで天の怒りの如き攻撃...感服致す。」

 

されど、その攻撃はかの女の持つ刀剣とその恐るべき跳躍力により全て避けられし。

 

「褒めるのもイイけど、戦うのも忘れないでよッ。」

 

ギンッッ

 

と、氷柱を真っ二つに切り裂かれる音が響き渡る。

 

「ふむ...確かに。」

 

ガァァンッッ

 

と、不意をついた孔明への頭上からの一撃も、彼は難なく扇を振り翳し、女を奥へと跳ね除ける。

 

「へぇ〜、随分と余裕みたいだね。」

 

「だからと言って攻撃の手を緩めないで頂きたい...危うく首が繋がりませんでしたぞ。」

 

「いやー、ついね。ごめんごめん。」

 

と、笑いながら済ますこのぱっくなる者...私の技量をおそらく推し測っているのであろう...。

 

疑い深く、私がこの女に殺されるならそれはそれで後の災いを取り除けたとして喜ぶであろう。

 

「...ふっ、この世も、戦乱であったか。」

 

「あらぁ、よそ見しないでくれるかしらぁ。」

 

ギギギギッッ

 

形容しがたく、耳に不快とも言えよう金属の摩擦音が聞こえ始める。

 

「...お前も諦めてはどうだ。3対1では勝ち目は薄い。...ここは貧民街、故に逃げるに術は難くなかろう。それに刀剣をもう5本は削り切ったぞ。」

 

「いいえ、私はこれでもはらわた狩りよ...

剣が無くなれば足で...足がなくなれば爪で...

爪がなくなれば歯で...これが私のやり方よ。」

 

ギィンッッ、と今度は横に薙ぎ払う様に刀剣を突き立ててくる。

 

「ふっ、丁度腹の位置とは、欲深き下衆であるな。」

 

「ふふ...まだあなたの事諦めてないのよ?」

 

と、かの女は手を緩めない。

 

「ぱっく...!助けなきゃ!」

 

と、えみりあ、と申した銀髪の女はぱっくなる者にそう申せど

 

「...ダメだよリア。射線をわざとコーメイの後ろに流れて隠れる様に戦ってる...。

誤射の危険が高すぎるよ。」

 

「で、でもっ!」

 

と、会話が漏れ聞こえてくる。

 

「根は優しいようで安心したぞ、ぱっくよ!」

 

と、本心から伝えるその安堵に、あの毛むくじゃらは

 

「僕も見殺しにはできないからね。」

 

と、一言ありし。

 

こうして、孔明の守り一策の手によってほとんどの刀剣の刃を叩き折られてゆくあの女。

 

勝機はこの孔明に傾いていた...。

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