そういうのがあるとすれば、この出会いは間違いなくそれだろう。
あの人との出会いは、絶対に忘れることはできない。
ゆっくりパルスィ様とのコラボ part.1
博麗神社の台所は、まるで戦場と化していた。
戦場…いや激戦地と言ってもいいのかもしれない。
両手をせわしなく動かしながら、次々に調理を進めていく。
コンロにかけた鍋ではパスタが茹で上がりを待ち、フライパンの中では黄金色に輝く米が玉子やネギとともに舞い上がる。まな板の上では切りかけの野菜が変身の時を待っていた…。
え?なぜ俺が今ここで調理をしているのかって?
それにはいろいろと事情がありまして。
ちょっと、振り返ってみましょうか。
きっかけは2日前にさかのぼる…。
俺は食材の調達のために人里を訪れていた。
必要なものを手に入れ、さあ帰ろうかとしたときにそれは起こった。
なんと、人里のど真ん中に巨大な百足の妖怪が姿を現したのだ。
体長は優に4メートルを超えるかのような巨体で、節々からは強靭な足が突き出し、大きなアゴと鋭い角を持っていた。
そいつが暴れまわったおかげで俺の買った食材が台無しにされてしまった。
気付いた時には百足は真っ黒に焼け焦げていた。
後で話を聞けば、俺が全身に炎をまとって百足を殴りまくっていたらしい。
いやはや、食い物の恨みは恐ろしい。
その後、里の人々から妖怪退治のお礼にと、何かがぎっしりと詰まった大きな袋を渡された。
中には真っ赤に輝く宝石がゴロゴロと…。
そう、俺の大好きな唐辛子だ!!
唐辛子が大好きな俺は、唐辛子の良さをもっと知ってもらうために今回の企画を提案した。
そうしたら文さんったら張り切ってビラを作って幻想郷中にばらまいちゃった。
特に霊夢さんの張り切り度はものすごかったが…。
題して『第1回 真っ赤な晩餐会 ~Red Pepper Party~』だ。
内容はいたってシンプル。
博麗神社に集まり、みんなで仲良く唐辛子を使った料理を食べる。
酒の持ち込みは自由。
宴会の開催も自由。
それだけ!
俺が唐辛子を好きな理由?
俺が唐辛子を好きになったのは小学校を卒業したての頃だった。
ある日俺は親に連れられて近所のうどん屋に行った。
その時、うっかりうどんに一味唐辛子をぶちまけてしまった。
唐辛子で真っ赤になったうどんを食べた時…俺の体を電撃が駆け巡った。
口腔の粘膜をまるで電撃のように辛みが伝わり、ぶわっと噴き出す汗と涙。
電撃が去った後は何千本もの針に刺されたかのような痛みに襲われ、そして何ともいえない爽快感が訪れた。
俺は、その短時間のうちに口を…いや、体中を駆け巡った刺激のとりこになってしまったのだ。
それからというもの、うどんに一味唐辛子はもちろん、カレーにも一味、ピザやパスタにはタバスコ…といった感じに唐辛子をかけ続けてきた。
いやぁ、本当に唐辛子は最高だぁ~。
「わわっ!?こげる!!」
慌てて火を止めた。
くそ、回想に夢中になってチャーハンを焦がすところだった。
危ない危ない…。
「できたよー!!」
完成したばかりのチャーハンを皿に移し、調理の音に負けないよう大声を張り上げる。
「はいはーい!!」
すると、台所に小傘ちゃんが入ってきた。
小傘ちゃんもこの企画に協力してくれた1人だ。
唐辛子のアップリケがついたピンクのエプロンと赤いバンダナを身に着けていた。小傘ちゃんなりに唐辛子をイメージした格好らしい。
主に料理の配膳と写真撮影の仕事を担当してくれている。
「これを慧音さんに。」
「はーい!」
俺からチャーハンを受け取ると、元気よく台所を飛び出して行った。
さあ、俺も次の料理に取り掛からないと。
丁度パスタも茹で上がったし。
フライパンにオリーブオイルとにんにく、刻んだ唐辛子を入れて熱し、キャベツを投入して炒める。火が通ったところでパスタを入れ、塩こしょうで味を調えれば…。
完成、ペペロンチーノ!!
これで注文された料理は最後だ。
はぁ、疲れた…。
30分も立ちっぱなしで足が…。
ペペロンチーノをお盆に乗せ、台所を後にする。
縁側から外に出て、料理を運んで行く。
「布都さん、おまたせ!」
「おお、来たか!」
布都さんは目をキラキラと輝かせながらペペロンチーノを受け取る。
「ほぉ、これがペロロンチーノというやつか…。」
可愛いから、あえて心の中だけで突っ込んでおこう。
ペペロンチーノだよっ!
布都さんは箸でつまむと、ずぞぞぞぞぞっと豪快な音を立ててすすった。
辺りに飛び散る唐辛子…。
…まあ、パスタの食べ方が分からないから仕方ないよね。
「おぉぉぉぉぉ!!これ、美味しいのぉ!お主の料理を食べれて我は幸せじゃ。」
「ありがと。」
布都さんのキラキラと輝く笑顔を写真に収め、神社の縁側に向かう。
背後から布都さんの「辛ぁぁぁぁい!!」という声が聞こえたが、気にしないでおこう。
後から来るんだよ、唐辛子。
「はぁ~。」
縁側から部屋の中に上がり、畳の上にごろんと寝転がった。
両手両足を大の字に広げ、ぼぉっと天井を見上げる。
博麗神社の境内からは、集まった人たちの話し声や笑い声が聞こえてくる。
それらに耳を傾けながら、全身を休ませていた。
「お疲れ様。」
「ああ、文さん。ありがとう。」
上体を起こし、文さんが持ってきてくれたお茶を受け取った。
お茶の香りを楽しんだ後、湯飲みの縁に唇を近づける。
口の中に流れ込んできた温もりは、まるで雪解けのように身体にたまった疲れを溶かしてくれた。
「お、来たかレミリア!」
その時、外から魔理沙さんの声が聞こえた。
ついに紅魔館のみんなが到着か。
湯呑を床の隅に寄せ、立ち上がって縁側に移動した。
レミリアさんに咲夜さん、フランちゃんに美鈴さん、パチュリーさんにこあさんと、紅魔館のみんなが揃ってやってきた。
パチュリーさんが出歩くなんて珍しいな。
「…あれ?」
この人、紅魔館にいたっけ…?
いや、前に一度紅魔館を訪れた時にはいなかったはずだ。
腰まである長い髪を一つに束ね、執事服に身を包んでいる。
鋭い目つきをしているが、笑顔がとてもかわいくて…。
いや、かわいいよりも、美しいという言葉が似合う女性だな。
向こうもこちらの存在に気づいたらしく、礼儀正しくお辞儀をしてくれた。
俺も軽く会釈すると、カメラを片手にその女性に歩み寄った。