東方共作録   作:戌眞呂☆

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★☆注意!!☆★

後半にグロテスクなシーンがあります。
そういうのが苦手な方、正邪は俺の嫁!という方は読むことを控えてください。

それでもオッケーな方は、どうぞ。


影のビツケンヌ様とのコラボ part.2

 

どうして小櫃さんはこれほどまで正邪を抹殺することに執着するのだろうか。

これほどまで親友に恐怖を抱いたのは初めてだ。

 

 

「小櫃、さん…。」

 

 

名前を呼んでみたが、恐怖によって声が震え、囁くような小さな声しか出なかった。

それに、この後どんな言葉を続けて良いか分からず、何も言い出せずに口をつぐんだ。

 

 

「まあ座れ。落ち着くんだ。」

 

 

そんな状態の俺に小櫃さんは優しく声をかけ、ロッキングチェアを引きずって移動させる。

恐怖で半ば硬直した身体を動かし、何とか腰を下ろす。

 

小櫃さんは俺の目の前に立ち、何も言わずに俺を見下ろしている。

サングラスの奥にある、ハイライトの無い赤い目で…。

 

 

「小櫃さん、どうして…」

 

 

「至極単純な理由だ。悪は滅びる。正義に勝てぬからな」

 

 

やっとのことで絞り出した質問に、小櫃さんは表情を変えずに淡々と答える。

 

 

「そうじゃなくて…!退治ならともかく抹殺だなんて…。」

 

 

幻想郷で異変を起こした者は、みなスペルカードルールに則って勝負を行い、勝ち負けを決めている。そのおかげで誰も殺さずに異変を解決でき、その後も首謀者を含めて宴会を開き、和解しあってみんなで笑顔で暮らしている。それだけで十分なはずだ。今回輝針城異変を引き起こした正邪だって例外ではない。

…でも、小櫃さんは正邪を最大の悪と決めつけ、それを抹殺することに自分のすべてを賭けているように感じた。

俺は、親友である小櫃さんの事について何も理解できていなかったのかもしれない。

 

小櫃さんは俺の前にしゃがみ、おもむろに口を開いた。

 

 

「…欧我、お前にも、『絶対に許せないもの』があるはずだ。無論俺にもある。『自身の目的の為に他人を顧みない者、他人を不当に傷付け利益を得ようとする者』。それが俺にとっての最大の悪だ。鬼人正邪は…」

 

 

その直後、小櫃さんの声を遮るかのように部屋に無機質な電子音が鳴り響いた。

ピッ!という電子音は徐々に音の間隔を詰めていき、それに合わせて部屋の緊張感を高めていく。

 

 

「来た…!」

 

 

小櫃さんがそう叫んだ直後、体の動きが止まった。まるで何かを探知するかのように見えたが、何かを見つけたのか「飛んで火に入る夏の虫ッ!」という言葉を漏らした。

その直後小櫃の背中、踵、尾てい骨の部分から漆黒の奔流が吹き出す。それによって発生した加速力は凄まじいもので、あっという間に窓ガラスを突き破って青空の中へと飛び出していった。

 

俺は、ただそれを座ったまま見つめることしかできなかった。

一体何が来たというのだろうか。それに、その何かを見つけた時の嬉々とした表情。それに言いようもない恐怖を感じた俺は、割れた窓ガラスの先を見つめることしかできなかった。

絶えず鳴り響く電子音は、今度は逆に徐々に間隔を広げていく。

 

 

「まさか…」

 

 

慌てて立ち上がる。

俺のイマジネーションが弾き出した結末に驚きを隠せなかった。

ここに近づいてきたもの、それは鬼人正邪だ。小櫃さんは正邪を倒す…いや、抹殺するためにこの部屋を飛び出していった。

 

まずい、このままでは正邪は殺されてしまう!

正邪の笑顔を写真に収めることができなくなってしまう!

小櫃さんの絶対に許せないものが『自身の目的の為に他人を顧みない者、他人を不当に傷付け利益を得ようとする者』だとしたら、俺が許せないものは『誰かの笑顔を奪う者』だ。それが例え、霊夢さんだろうが、文だろうが、小櫃さんだろうが…。

 

気付いたら、考えるよりも先に身体が動いていた。

正邪を護るため、そして小櫃さんを止めるために彼の後を追って割れた窓から大空に飛び出した。

普段は高速で飛ぶときには常にゴーグルを目の位置にあてがって前から打ち付ける強風から目を守っているが、今はゴーグルを動かす暇はない。早く小櫃さんに追いつかないと!

 

 

しかし、幻想郷最速のスピードを真似たからと言って俺の出せる速度には限界がある。

このままでは、小櫃さんとの距離を縮めることはできない。間に合わなければ、正邪は確実に命を奪われる。

文の能力に屠自古さんの能力を重ね掛けし、雷で神経系や筋組織を刺激。それによって速度の限界を突破し、小櫃さんを追いかける。

 

 

 

 

 

目の前に爆炎が見えた。と言う事は、もう少しで小櫃さんに追いつく!そうすれば、正邪の抹殺を止めることができる。

しかし、俺の期待を裏切るかのように小櫃さんの頭上で何かが光を放った瞬間、それは振り下ろされた。

 

 

「ぎゃあああああああああああああ!!」

 

 

耳をつんざくほどの女性の悲鳴が響き、思わず両手で耳を塞ぐ。

遅かったか…。

 

しかし、近づくにつれてその状況が見えてきた。

どうやら正邪はまだ生きている。

小櫃さんに押さえつけられている女性がおそらく正邪だろう。赤と白が混じった黒髪には血のような真っ赤なものが付着し、赤い瞳が恐怖に覆われている。そして左腕が肩のところから斬り落とされ、斬り口からは真っ赤な鮮血がどくどくと溢れ出していた。

 

目を覆いたくなる光景に加え、ここまで漂ってくる鼻を突く臭い。口を押え、胃の中からこみあげてくるものを必死に堪える。それとは別に、また違った感情が込みあがってきた。

そう、怒りだ。

生きている者に対して、これほど酷い事ができるのだろうか。いやできない。それなのに、正邪を抹殺することをさも当たり前のように平然とこなす小櫃に激しい怒りを覚えた。

 

 

「許せねぇ…。」

 

 

身体に纏う雷を踵に集中させ、最高速のスピードを乗せて小櫃の背中に踵による一撃を叩き込んだ。

 

 

「雷槌『クエイク・オン・テスラ』!」

 

 

「か…はッ…?!」

 

 

間髪入れずに体を回転させ、回し蹴りで小櫃を蹴り飛ばした。

怒りに任せて蹴り飛ばしたので、そのまま地面をバウンドしながら転がり、家の壁に激突して止まった。

 

正邪と小櫃の間に立ち、涙をたたえた目で俺を見上げる正邪を見下ろした。

深手を負って血がとめどなく溢れだしているが、まだ生きている。妖怪の生命力は桁違いだな。

 

 

「早く逃げて!!」

 

 

俺の言葉に小さく頷くと、空に飛び上がって逃げていった。

これでひとまずは安心だ。それよりも…

 

 

「欧我…!何故邪魔をする!」

 

 

怒りに燃える瞳で俺を睨みつける小櫃の方に顔を向けた。

 

 

「目の前で人が殺されそうになっているのに、助けずにいられますか!!」

 

 

そう叫んだ。

今の小櫃は、俺の親友なんかじゃない。

まるで化け物のように思えた。

小櫃の許せないものである『自身の目的の為に他人を顧みない者、他人を不当に傷付け利益を得ようとする者』に、今、小櫃自身が成り下がっている。

正邪には親密な関係を築いている人だっているだろうし、俺だって正邪と仲良くなりたい。それなのに、その人たちの事を顧みなることなく正邪を抹殺するという目的を貫き通す。悪を抹殺して幻想郷の平穏を保つという利益のため、自分で正邪を悪と勝手に決めつけて不当に傷つける。

 

そんな小櫃を、俺は許せなかった。

 

 

「分からんのか?!奴を放っておけば、奴はまた必ず異変を起こす!多くの人々を苦しめる!鬼人正邪は人類全ての絶対敵だ!」

 

 

小櫃は俺を説得するかのように声を荒げる。

しかし、俺は聞く耳を持たなかった。

人類全ての絶対敵?

それはお前が勝手に決めたことだろう。他人がどう思うかは知らないが、少なくとも俺はそうは思わない。

 

絶対に親友の目を覚ましてやる。

拒絶と否定の気持ちを込め、何も言わずにじっと小櫃を睨み返した。

 

 

「貴様の土俵に上がってやる。スペルカードルールだ。貴様を倒し、そして鬼人正邪を殺す!!」

 

 

小櫃は背中に翼を形成し、空高く飛びあがった。

 

 

「望むところだ。」

 

 

そう小さく呟き、ゴーグルを目の位置に合わせると小櫃の後を追って上空に飛び上がった。

 

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